「いった...」
雨が降りしきる中,同僚の侍を抱えてよろよろと歩く。
同僚のほうは意識こそないが怪我はそこまで酷くない。こんこよに診てもらえば
助かるはずだ。
自分の方は全身傷だらけで出血も止まらない。
少しずつ手足の感覚も鈍り始めている。せめていろはちゃんだけでも連れて帰らなきゃ...
そういえばなんでこうなったんだっけ?
最初は楽な仕事探してインターンに来たはずだったのに...
【掃除屋】なんて汚れ仕事背負って...少ない給料は殆どパチスロに使って...
ガスとか水道止められるのなんかしょっちゅうで...
電気も止められるから勝手にアジトで寝泊まりして...ラプラスに怒られて...
深夜にルイを起こしてゲームしたり...
こんこよの怪しい発明でアジトの部屋が吹き飛んだり...
いろはちゃんのブランケットの匂い嗅いだり...
「これって走馬灯ってやつかな...」
今までの思い出が頭の中で再生されていく。
走馬灯って本当にあるんだなぁ...まさかこんなに早く体験するとは思わなかったけど。
『———はちゃん! いろはちゃん聞こえる!?』
「...こんこよ?」
どこからかそんな声が聞こえた。恐らくはいろはちゃんが持ってるトランシーバーか
何かだろう。さかまたのは壊れてしまったし...
一旦屋根のあるところにいろはちゃんを置き,ポケットを弄ってみると予想通り
無線機が出てきた。
「...こんこよ聞こえる?」
『———クロたん!?二人とも無事!?』
「無事だよ。いろはちゃんは意識ないけど,怪我も少ないし...」
『よかった...二人とも応答しないから心配で...』
「ごめんごめん...さかまた一人じゃいろはちゃん連れて帰れそうにないや。迎えに来て?」
『わかった!すぐ行くね!』
そういってこんこよは通信を切った。
「...うそつき...」
自分は助かりそうもないのに「無事」なんて嘘をついた。
なんでこんな嘘ついたんだろ。どうせこんこよが迎えに来たらそんなのすぐバレるのに。
いろはちゃんの近くに三角座りして,下を向いてみる。
足元では自分の血が雨水と混ざって流れていく。
なんだかずいぶん雨の音が大きく聞こえる気がする。
「———やば...眠くなってきた...」
視界が霞み始め,手も震える。自分の血がべっとりとついた赤黒い手...
いつの間にか,傷の痛みも感じなくなってきていた。
「———だいすきだよ...」
誰に向けたかもわからない言葉と一緒に,まぶたを閉じた。
続きは書かないかもしれないし書くかもしれない