恭介からのメール『リトルバスターズのキャプテンだが、理樹に決まった。祝いのメールでもしてやれ』
……絶対押し付けられてるじゃん。一応メールは送っておこう。
タイトル:『おめ』
本文:『明日のスポドリは理樹のだけコーラ割りにしてあげるよ』
と。理樹は今ノートに向かって色々と考えているようだ。今日くらいはジュースでも奢ってやるかと思いつつ。今日が始まるのだった。
試合は明日。マネージャーとは何をすれば良いのか。西園さんにでも尋ねてみようか
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休み時間。西園さんの席へと向かう。今日も今日とて何か本を読んでいるようだ。
「西園さん今大丈夫?」
「はい。別に構いません」
「明日の試合ってマネージャー何すれば良いのかなと思って。相談に」
「でしたら、私に聞くのはお門違いです。精々冷たいお茶くらいしかご用意できませんし」
「……それもそうか。何か特別にやろうとしてる事とかある?」
「いえ、特には。頼花さんの方はどうですか?」
「……応援用のうちわでも作るとか」
「でしたら、そうしましょうか」
という訳で、それぞれ1枚ずつうちわを作ってくる事になった。これで良いのか、マネージャーって本当に。
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国語の時間が終わったあと、鈴が変なことを言い出す。
「今の授業、前にも受けなかったか?」
理樹に向けられた問いかけだが、何故か私にも思い当たることがあった。
デジャ・ヴュのことだと西園さんが言う。それが前世の体験だとか、脳のバグだとか。様々な説があるが、結局のところ気のせいだと言う答えに落ち着く。
思い返せば、以前から良くあるこの既視感を、だが、私は気のせいと断定できずに居た
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それから、昼休みに何故か缶蹴りして二木さんに怒られたりした後、小鞠さんに声を掛けられる。
「☆☆っ」
「なんですか藪から棒に」
「☆☆はホットケーキはお好きですかっ」
「ホットケーキ」
「うんっ、ホットケーキです」
好きか嫌いか絶妙に考えないような部分のお菓子が来た。幼少期に食べたっきりな気がする。それこそ、ゼラチンの粉と牛乳とかいちごとか混ぜて作るあのお菓子とかそういう区分のお菓子だ。
特段嫌な思いでもないので、好きだと回答すると、何かしらメモ帳に書き記す。
「い、一体なんだって言うんだ」
「ホットケーキパーティをやるんだよ〜」
「ホットケーキパーティ」
「みんなでホットケーキ焼きながらいろいろお話するの。ホットケーキも美味しいし、みんなのお話も弾んで、とっても楽しいよ」
「祝賀会みたいなもの? 勝つ気満々だね」
「買ったら祝勝会、負けちゃったら残念会って事で2度美味しいのです。ちなみに、今のところ、ホットケーキ嫌いな人は1人もいませんっ」
メモ帳を突き出してくる。そこにはほとんどのメンバーの欄に『好き』と書かれていた。一体なんの必要性があるのか不明だ。
「じゃあ、みんなに連絡がいったらまたメール送るね〜。よおーし次は理樹くんだー」
随分張り切ってるなと思った。マネージャーよりも余程みんなの事を考えていると思う。
あちあちなホットケーキを頬張るクドの顔を想像して、開催日が楽しみになった
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本日最後のチャイムが鳴る。
それと同時に、理樹からメールが来た。『これから2-Eにてミーティングを行います』
そうしてミーティングが行われているところをぼーっと眺めていた。私と西園さんは裏方だし。忙しそうな人の所に飲み物を持っていったり怪我の手当したりとか、その程度しか出来ないし。何処のポジションが忙しいとかは聞いていれば何となくわかったので、そこに注意をやるように気をつけることにした。
そうして練習は日没まで行われた、前日だからか、みんな気合いが入っている。
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帰宅後、お風呂から上がってのんびりしていると恭介から人形劇をやるとかでその練習に駆り出された。何だこの人今日イケイケじゃん。遊びに余念が無さすぎるだろ明日試合だぞ。
一先ず今日の夕食は学食で済ませることを伝えて、学園へと向かった。
そうして、学園の食堂に集まると、全員集結していた。なんだかんだみんな乗り気なのが私達らしい。
一度来ヶ谷さんの台本が却下された後、各女子が人形を持ってきたりでようやく纏まりそうだと思ったら、恭介に電話が掛かってきて、程なくして無期限延期が言い渡される。この数時間は一体なんだったのか……。
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そうして翌日。待ちに待った試合当日だ。午前中の授業を終えて、昼食後に始まるらしい。
今日は学食でメンバー全員一緒に昼食を取ることになっている。
私は西園と一緒に、理樹の肩をつついた。
「え、なに?」
「周りみてみろ理樹」
「みんなガチガチです」
いつもは談笑してるみんなも、今日だけは黙々とご飯を食べている。
「わふー、とても緊張の夏なのです〜……」
「うーん、私もすっごい緊張してきたよ……」
「わふー、みなさんも緊張の夏です〜……」
理樹が鈴に声を掛けるが。
「鈴……」
「任せろ……だいじょうぶだ……」
見るからに強がっている。
「このままじゃ折角練習したのに本来のパフォーマンスが発揮できないね」
「……どうにかした方がいいと思いますよ?」
今この状況で冷静なのはマネージャー共くらいなものだった。
「こういうときは……号令だ」
恭介がそう言う
「え、なにそれ?」
「号令! いち! にー! とか、やるだろう?」
「あれは士気を高め、さらには各自の連帯感を強める精神効果がある」
「へえ……」
「よし、やってみろ、理樹」
「うん」
お、理樹がみんなの前に出た。
「みんな、号令だ! 恭介!!」
「いち!!」
「小鞠さん!!」
「ふえ?」
「クド!!」
「わふーっ」
「○○!!」
「わふー可愛いね」
「来ヶ谷さん!!」
「なんだ」
「葉留佳さん!!」
「はっ」
「鈴!!」
「見えてるだろ」
「西園さん」
「……はい? わたしですか?」
「……ま、真人」
「わりいな理樹……オレひとりでも点呼に応じてやりたかったが、今オレが何番なのかわかんねえよ……」
「え、なんだ? 俺には振ってくれないのか?」
「ごめん……謙吾」
「じゅう!!」
「バッチリだな……」
「本気でやらなきゃよかったと思ってるよ……」
ボケといてなんだが可哀想だと思った。
「終わりよければ全て良しというだろう。謙吾がいい返事をしてくれたじゃないか」
恭介
「どうだ? 号令を終えた今の気持ちは。晴れやかだろ」
「低空飛行から大しけの海に落ちた気分だよ」
「ほう、粋な例えだな。冴え渡ってるじゃないか。その調子で采配も頼むぜ、監督」
理樹がうだうだ言っているが、それん無視してコロッケそばを平らげた。
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グラウンドに着いても緊張は収まらないどころか悪化しているようだ。
私達は二週間何となく練習し続けた素人。相手は各部活の主将と戦力差は明らか。勝敗など行わずともわかる程だろう。こういう時こそ恭介がまとめあげるはずだが、動く気配が無い。クドは私の手を握る。すっかり遠慮が無くなってしまったな。私も握り返す。
と、そんな凝り固まった舞台を前に、理樹が姿を見せる
「みんな」
一斉に全員が理樹を見る。分かりやすくあいつも緊張してるな
「え、えーと」
「……」
「が……」
「頑張ろう!!」
しん、と静まり返る。グラウンド一体が静寂に包まれた時、最初に口を開いたのは小鞠さんだった。
「うん、がんばろー」
「そうだねー、張り切っていきまっしょー」
「がんばるのですっ!!」
「…頑張ってください」
「応援してるよー」
作りたての応援用うちわ(クドこっち向いてと書かれたうちわ)を見せる。
「理樹君も、一緒にがんばろ~」
「え……」
「う、うん」
空気が変わった気がした。一斉に周囲の緊張が解かれ、いつもの雰囲気へと置き換わる。来ヶ谷さんが理樹に何かしら呟くと、恭介が学校の方を見て呟いた
「おいでなすったぜ」
そこからは筋肉隆々のいかにもスポーツマンのような方々が現れた。えっ、あれと戦うんですか私たち。
「……キャプテン、ほら」
恭介が理樹を肘でせっつく。
「うん、じゃあ……行こうか」
「了解っス!!」
「お〜」
「……わかりました」
「行きましょうっ」
「気合い入れて応援するぞー!」
「うむ」
「へっ、やってやるかっ」
「ヒーローインタビューは俺のものだっ」
「理樹」
鈴が理樹を呼び止める
「頑張るぞ」
「うん」
そうして、一世一代の大勝負が始まった。
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はい。12-2でぼろ負けしました。
みんなが悔しがる中、来ヶ谷がこう言う。
「何、別にいいじゃないか。これまで、誰か一人でも『勝とう』などと言ったこともないだろう?」
確かにそうだ。私達は勝ちを求めてこうして戦った訳ではない。
「うん、みんなで集まっていっぱいできただけでも、私はすごい楽しかったよ」
「まー、悔しくないっていったら嘘になりますけどネ」
「みんながんばったのです。それはとても価値のあることだと思いますっ」
「……そうか」
「感極まって泣き出さないのか? 恭介氏」
「そんなカッコ悪いことできるかよ。だが……」
恭介がそらを見上げる?
「やってよかったと、思うよ」
「うん」
それに理樹が頷いた。
……こうして、リトルバスターズの初試合は、終わった。最初は理樹に誘われ、一度は断った身だったが、こうして一緒に試合が出来てよかったと思う。
「……感傷に浸っているところ悪いですけれど、私達はマネージャーで直接的に試合に携わった訳ではなありません」
「うっさい」
「頼花さんも悔し泣きをするのですね」
「うっさいよ。ほっといてよ」
「能美さんを連れてきますか?」
「ほっといてって」
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帰宅後メールが届く。
差出人:神北小毬
タイトル:『ホットケーキぱーてぃのお知らせ(^▽^)』
本文:『明日の3じからホットケーキパーティをします。学食でやります。いっぱい食べてほしいのでちょっとおなかすかせて来てね(^▽^)』
……あの人文面でも棘が無いな。私も練習してみるか
タイトル:『わかったよ(>▽<)』
本文:『機材とか必要なものはあるかな?( 〜'ω' )〜』
『材料沢山買ってきてくれたら嬉しいな〜(*´∇`*)』と帰ってくる。この人数では確かに、一度に買える量では足りなさそうだ。『ついでに買っていくよ( 〜'ω' )〜』と返信した。
携帯を閉じて、天井を見上げる。この2週間で色々あったな。理樹がこんなにも主体となってチームを引いて行って、鈴もいつの間にか、お泊まり会に参加出来るほどにまで成長し、何より、クドとやたら距離が深まった。
何かと頼られたり、何故かお風呂に一緒に入ったり、肝試しでペアになったり。抱きしめても嫌がられなかったし。
……私の事好き? いやそんなことは無いか。クドはあくまでも、私の事を上の兄弟や姉妹のようなものとして扱っているはずだ。私だって、クドの事は好きだし結婚したいけど、扱いは妹のそれと大差ない。
しかし、クドの最近の応対は少し違和感がある。色っぽい顔をしたり、スキンシップを求めたり。……まるで好きな人に向かっていくような。いや、これはきっと兄弟姉妹やペットに向けたものと変わらないな。私がそんな立場に立てているわけが無い。傍から見たら変態と大差ないしな__
__と、少し寝てしまったようだ。夕日に照らされていた部屋はいつの間にか真っ暗だった。
マネージャーとはいえ、気張っていたぶん疲れが溜まっていたようだ。見てるだけだった割に贅沢な身体だと思う。
そんな真っ暗な部屋の中、携帯の通知ランプが光る、一体なんだろう。
差出人:能美クドリャフカ
タイトル:『明日のご予定』
本文:『明日の朝、お暇ですか? もしよろしければ、お買い物にお付き合い頂けないでしょうか KN』
先程の疑問を全て忘れて、私は直ぐに返信をした
『暇です!!!!』