……いいよな……これで?
「よくない、です」
……○○の気持ちは変わらない
……現実でも今の通り同じになるはずだ
……おまえたちは幸せになれる
……何が不服だ
「△△がいません」
「私達しかいません」
……無理だ
……救えない
……おまえたちまで死んでしまう
「可能性はあります」
「私が、隙間を広げます」
……無理だ
……そうしたとしても、お前じゃ引き上げられない
……お前一人ではどうにもならない
「私一人じゃありません」
「リキ達もいます」
……そうか……
……けどもう世界はないぜ?
「大丈夫です」
「世界は、私が作ります」
波紋が広がる。
大きな世界は作れなくても良い。ただ、△△と話せる場所があれば、それで良いんです。
私は不器用ですから。
一つを持つと、うっかりもう片手に持ったものを落っことしちゃうくらい不器用ですから。
ですから、絶対に無くしちゃいけないものは、抱き抱えるんです。
私は、すっかり欲張りさんになってしまいました。
__
目が覚める度に懺悔した。
私の最愛を、ここに連れてきてしまったことを。
何度、何度、何度繰り返しても、私は世界の狭間で願った。他の波紋と振るわせず、独り孤独なまま。
もう、こんな事が起こらないように。せめて、この虚構の世界だけでは、私が馬鹿な勘違いを起こさないようにって。
そう、願った。
願っていたのに、馬鹿な私は何度でも同じ過ちを繰り返した。
差し伸べられた手を取ってしまったから、私はもう、『ただの人』では居られなくなったんだ。
記憶というのは酷く曖昧なもので、忘れたいと願っていたことすら忘れてしまう。
他人は変えられなくても、私がクドを想っていたことを忘れてしまえば、きっと、いつかクドもこんな愚かな私を忘れてくれるだろうって、思ってたんだ。
だけど、結局そんなことは無くて、皆に心配かけて、いっぱい悩んで……やっと、答えが見つかった。
私はもう、思い残すことが無かった。ただ、一つを除いて。
だから、もう私は去ろうと思う。後はクドと理樹達の話だから。今度こそ、お役御免。
とはいえ、理樹がどうなってるのか私には分からないけど……。きっと、恭介達が導いてくれることだろう。
私は不器用だから、一つの事しか見れなくて、沢山迷惑をかけちゃったけど、それでも、何とか走り抜くことが出来たからさ。
今のクドなら、きっと大丈夫。
だから、この世界はもう終わらせよう。
最後の一つ前。そうして思い馳せている私。
白い、世界の幕間の中。閉じこもった白い世界の中に入ってくるものが居た。
いつものように憎たらしい顔じゃなくて、やけに憔悴したような顔の恭介だった
「恭介、どうやって来たの?」
「俺も、お前がここに来た時と一緒だ」
「そっか、失敗したんだ」
「……あぁ」
孤独な白の檻の中。独りになろうとした二人がそこに居た。
「三枝も、西園も、来ヶ谷も去っていった。残ってるのは、俺達と理樹達。クド、それにお前だけだ」
「もう、本当の終わりも近いんだね」
「あぁ。……どう終わるのか、俺にはわからない」
「大丈夫だよ、恭介なら。ここまでやってきたことは無駄じゃない。クドも、きっと……大丈夫だよ」
「お前も、行くのか」
「うん」
この幕間は、どれだけ続くのだろう。きっと、もう私が忘れることは無いだろう。私はクドに伝えたいことを伝えられたから。もう一度、あの顔を見ることが出来たから、もう、十分なんだ。だから、恭介に最後のお願いをする。
「恭介、私がここから離れたらさ、クドの記憶……消しておいて欲しいな」
「……いいのか」
「私があったって切ないだけだもん。クドは、ちゃんと進めるようになったから」
「そうか……」
私は穏やかな顔のまま、体育座りをしている恭介に微笑みかけた。
「私は心底お前のことが嫌いだったよ。何でもかんでも先回りしてくるし、裏で糸引いてる感じが本当に気持ち悪かった」
「……だろうな」
「だけど、それと同じくらい頼もしかった、理樹があれだけ懐いてる理由もわかるくらい。だからさ、まだ終わった訳じゃないよ。私の走り様見てたでしょ?」
「俺はお前じゃない」
「でも理樹達のことは好きでしょ。私がクドのこと好きなのと同じくらいにさ」
「……」
恭介は何も言わない。ただずっと、白い虚空を眺めているだけだった。
「だからさ、最後まで裏で糸引いててよ。恭介が読んでた漫画の主人公は、最後の最後まで足掻いてたじゃん。君達がいる間、世界はまだ終わらないんだから」
「……俺は取り返しのつかないことをしてしまった」
「つかないかどうかは、全部ネタバラシして泣きついた後に決めな、恭介。この世界だって、恭介一人で出来た訳じゃないんだ。どれだけ絶望的な状況でも、独りじゃなけりゃどうにかなるもんさ。……二木さんや、恭介が私に声掛けてくれたみたいに」
波が強くなる。波紋が早く、激しくなっていく。
「そろそろ私は行くよ。じゃあね、恭介」
「待て」
「何さ、忘れ物?」
「お前……能美が、お前の事を忘れて、本当に前を向いて進めるとでも思ってるのか」
私は少し考えて、こう答えた。
「クドが幸せになれるなら、何でもいいよ。私はそれが一番って思っただけだから」
その言葉を最後に、私は世界から消えていく。成仏ってこんな感じなのかなとか、いつも通りどうでもいいことを考えていた。
あとは、クドのこれからに幸があることを。
それをずっと、私は願っています。
__
目が覚めた場所は、冥界や極楽浄土では無くて、ただの家庭科部室。
私と、クドの思い出の場所。
去る前の、がらんどうな部室ではなく、あの日のような賑やかで、物に溢れた記憶通りの場所。
目の前には、私が忘れたくて、忘れられたくて。
なのに、ずっと留まり続けた、クドが居た。
「やっと、逢えました」
「……会っちゃったね、クド」
恭介は失敗したのだろうか。それとも、何もしなかったのか。私はこれからどうするのが、一番クドに傷を負わせないで済むのか、そればかりを考える。
「恭介さんが、私の記憶を消したんですよね。△△が頼んで」
「……」
どう、返すのが正解なのかわからなかった。それでも、沈黙がそのまま答えとなっていた。
「私、何回記憶を無くしても、何度忘れても、△△の事を思い出します。絶対に、絶対に忘れないって約束しましたから」
「……」
「だから、だから」
私はクドの傍に近寄って、クドが流している涙を拭った。
「クド、良いんだよ。私のことはもう」
「良くありません! いい訳ないです……どうして、△△は私から離れようとするんですか!」
「離れたくないけど……仕方ないから。私はクドを守れてよかった。クドを救うことができて……私が生まれた意味があったって思ったんだ」
「だからって……っ! 私のこと放っていくんですかっ!! 私の気持ちは、少しもっ、考えてくれないんですかッ!!」
激昂するクドの、いつものように眺めていた。ぽろぽろ流れ落ちる涙は、もう拭いきれない。
「考えてるつもり……だよ、だからこそ、クドは私に囚われてちゃいけない。クドの人生に触れてしまった私が、その責任を取らなきゃならない。クドは優しいから、ずっと私のことを忘れないでいようとしてくれるのも知ってる。だから」
「だから……忘れろって……」
「……」
私は静かに頷いた。
「……私、△△のことが好きなんです」
「……うん」
「ずっと、傍を離れたくないって、言いました」
「……うん」
「私に、独りになろうとしないで、って、言ってくれましたよね」
「……」
「なのに、△△は独りになろうとするんですか……?」
「……」
何も言わずに、涙をこぼすクドの頭を抱きしめた。クドは私の胸の中で、えずくように泣きじゃくる。
「……きっと、鈴は、クドの良い友達になれる。それに、理樹にだったら、私はクドを任せてもいいと思ってる」
「っぐ……ひっ、……ほんきで、いってるんですか」
「もちろん。私は……助からないけど、リキ達は無事だからさ、クドも独りぼっちじゃない。あいつらになら、胸を張って、クドを任せられるんだ」
声が上擦ってくる。
「△△は……っ、良いんですか……? 私が、他の人と一緒にいても、リキと、恋人になれれば、△△は安心出来るんですか……っ!」
「……っ」
「答えてください……っ!! △△は、本当にそれで良いんですか!!」
私は、クドを抱きしめて……最後の、嘘……嘘を、言うだけで、終わり、に……。その、はずだったのに。
「いいわけ、無いだろうが……ッ!! 私の大切な人をっ、私が、生涯かけて愛したいと願った人を、誰かに、理樹にだって、渡したいわけ無いだろうがッ!!」
掃いて捨てるような慟哭は止まらなかった。
この顔が、クドに見られてなくて良かったと思う。
歯を食いしばって、ずっと言いたかった言葉が、感情と一緒に溢れて止まらない。
「こんな所に連れてきて、っごめんクド……っ、私が、クドを無理に連れてこなければっ……私は……っクドがもう一度、笑ってるところが見たかったんだっ……ぐっ、……なんで、こんなことになっちゃったんだよ。私達が何したって言うんだよ……っ、私の命なら、幾らでも差し出してやるから……クドを、幸せにしてやってよ……お願いだから……」
誰に言っているのかもわからない懇願。願い。神様なんてものが居ないことは、とうに知っていた。
この小さな家庭科部室はぽろぽろと崩れていく。端から順番に、少しづつ。
クドの震えと涙はいつの間にか止まっていて、脱力した私の肩に手を置いて、顔を覗き込む。酷い顔をしてることが、クドにバレてしまった。こんな弱み、本当は見せたくなかったのに。
なのに、クドはそれを見ても、優しそうに微笑んでいた。
クドは、可愛い八重歯が見える口を開いた。
「やっと、△△の本音が聞けました」
そのまま、クドは私のことを抱きしめる。久しぶりに感じた、小さな暖かみ。
「今度は、私の番です」
そう言って、世界が壊れていく。真っ白な世界に投げ出された。これから、残酷な現実が待ち構えていると言うのに、クドの表情は穏やかなままだった。
白い、雪のような世界の欠片が舞う中、ひらひらと白い妖精の様なクドが目に入って。
本当に、好きだなぁって思った。
__
この世界に生まれ落ちたような生々しい感覚。今までいた世界とは違う、全身の痛み。この強い耳鳴りは、意識を失っていたからなのでしょうか。
何か、大きなものに包まれている感覚。手に着いた生暖かい液体、それが、まだ暖かいままだったことに安堵を覚えた。
痛む身体の中、私を抱く腕を無理やり剥がして、そこから這い出る。
どこもかしこも痛いけど、動けないほどじゃない。
目の前にある隙間から、小さな光が漏れて……外には、ゆっくり立ち上がるリキと鈴さんが見えた。
目を逸らしたくなるような凄惨な事故。
でも、△△がここに居るから。
助けないと……。
ひとつ、ふたつ、深呼吸をする。
こんな切羽詰まった状況で、闇雲に最適解を探してと、見つからない。それこそ、間違えて何かを切り捨ててしまわないように、一度呼吸を整えました。
血と鉄の匂いの中、微かに香るガソリンのような匂い。
時間が残されていないことを確認して、私は、ここから何が出来るのか考えます。
先ずは……。
「り、げほっ、リキ!! ここに、ここに居ます!!」
「クド!! わかった、直ぐに……」
「先に他の方の救助を! ここは塞がれてるので、何かこじ開けれるものを見つけてください!」
「わかった、鈴! 電話が終わったら荷物を調べて! 添え木になりそうなものとか、止血できそうな布、あと、こじ開けられそうなものとか、なんでもいいから集めておいて!」
「わかった!!」
リキに、ここの事を伝えられました。あとは、中から出来そうなこと……。
辺りを観察しましょう。
周りは土砂や、バスの一部で塞がれているようです。隙間以外に外に出る方法は見つかりません。隙間は本当に小さくて、私一人がやっと通れるかどうかと言ったところです。ここから這い出るだけでも数分は掛かるでしょう。
……隙間は、外側に鉄板のようなものがひしゃげていて、内側からの衝撃なら、少しでも広げられそうだと思いました。
力を入れて……いや私ではそれ程の力は出ません。ぶつけるような何かがあれば……。
周りに落ちているものは、荷物から落ちた衣類、日用品、流れてきた土砂は土塊ばかりです。……土砂の中に、△△が返してくれた機械部品がありました。
手で何とか掘り起こして、それを手に入れます。
△△がせっかく、私に届けてくれたこのパーツを、ここで打ち付けて本当に良いんでしょうか……。いえ、いいに決まっています。例え物が残らなくても、『きもち』は、ずっと無くなりませんから。
ガン! ガン!
いつか、テヴアへ帰った事を思い出しました。そんな経験はしていないはずなのに、確かに脳裏に焼き付いた恐怖。
そんなもので、……私は、止まりません。もっと、強く。何度も打ち付ける……!
ガン! ガジャッ!
部品が摩耗して、嫌な音が立ちます。それでも、手を休める訳にはいきませんでした。
握り込みすぎて、手のひらから血が滲んでも。
どれだけ、部品が壊れゆこうとも。
私は、ひたすらに、部品を叩きつけました。
なんども、何度も打ち付けて、最初の倍くらいの大きさになったところで、その隙間に何かが差し込まれます。
ギィッ……バコンッ!
「よく頑張った、クド」
「鈴さん……っ」
とうとう、その鉄板が開け放たれました。
鈴さんと一緒に、△△を運び出して、離れた場所まで非難させます。
「恭介がまだだ、クド、手伝ってくれ!」
「はいっ!」
鈴さんに手を引かれて、バスの底部、燃料タンクのある方向に向かいました。……メラメラと火の手が上がる音がします。
そこから、恭介さんを背負ったリキが息も絶え絶えでやってきます。
風が、強く吹きました。
「鈴! クド! 手を貸して!」
「っ!?」
「早くっ」
鈴さんが慌てて駆けつけて、恭介さんを反対側から肩で背負う。その間、私は障害物になりそうなものを退かしました。
「こっちです!」
「急いで離れるんだ!爆発する!」
「うん!」
それから、後ろを振り返らず。ただ、真っ直ぐにひたすら真っ直ぐに走りました。
火が立ち上る音と共に、世界が白く染まります。
私は、還された物を絶対に手放さないように……。
__
夢を、見ていた気がした。
私が、クドと結ばれるなんて言う、私に都合のいい夢物語。
それが高望みだったのか、大変なことが起こった。
そして、私はそこで……。
そうなるとわかっていても、私はずっと、夢を見ようとは思わなかった。
私のわがままで、クドを閉じ込める訳にはいかなかったから。
だから、クドには、私のことを忘れて欲しかった。
でも、それは、わがままな私が、嘘をひた隠す為の詭弁だった。
だってそうじゃん。自分でクドを幸せにします。って、言えないやつに、クドは渡せない。
だから……私は……。
……。
目を覚ますと、知らない天井だった。まさか本当にこのセリフを言うタイミングが来るとは思わなかったので少し興奮した。身体が痛すぎる。もはや感覚がないと言っても差し支え無いほどに痛い。ビックリするぐらい痛い。よく出産で例えられる鼻からスイカを出す痛みとか、多分それとどっこい。そのくらい痛かった。
でも、私は、生きていた。
何か奇跡が起こったのか、私を取り囲む因果が「やーめた」って言ってどこか行ったのか、それとも、私がそうなることを望んだからか。
理由は定かではないが、とにかく、生きていることが嬉しくて、同時に色々とクド相手に好き勝手しまくってたことを思い出して酷く恥ずかしかった。
私はそもそもクドとの距離感があんなに近い訳でもない。最初の頃は面と向かって話すだけで赤面してまともに話せなかったし、だいたいなんであんな会う度に「クド、可愛いね」とか口説き回すめっちゃ気持ち悪いチャラ男ムーブをかましていたのか本当に理解に苦しむ。身体の痛みよりこういう痛みの方が実際辛い。じんじん痛む黒歴史とはこういう事だろう。
まぁ、上記の意味のない独り言はともあれ、私は生きてた。死に損ないは何処まで生きていけるのか不安ではあるが、とりあえず、クドに会ったら土下座しようと思った。
__
それからしばらくして退院日、リハビリも終わって、すっかり秋も始まってしまった。
「頼花さん、お迎え来てるわよ」
「……お迎え?」
受付のお姉さんがそんなことを言う。
親は無事がわかった途端、私のことを放置してバカンスしてるし、今更迎えに来るような親戚も思いつかない。と言うか家近所だし。歩いて帰れるし。
「なんだか沢山居たわね〜、あなたお友達多いのね〜」
「たくさん」
なんか嫌な予感がした。
病院から出て、駐車場に向かうと、わっかりやすいワゴン車がそこにあった。そして、そこに居る10名。
「よう、遅かったな」
「随分大往生だったな」
「いや真人それ死んでるから」
「何!? 謙吾またてめぇ!」
「騙される方が、悪い」
賑やかな男ども。
「○○、お勤めご苦労さまだ」
「それだと出所ですね」
「じゃあ〜、お帰りなさいませご主人様?」
「それはメイドカフェです」
「帰投、確認ッ!」
「それはどこですか」
「素直に退院おめでとう、とすら言えんのか君達は」
うざった……かしま……んー、賑やかな女子たち。
そして。
「……おかえりなさい、△△」
「ただいま、クド」
私の最愛の人。
リトルバスターズの物語。その、端くれに書いた、落書きのような一ページ。
きっとまだまだ、続いていく。遥か彼方まで、その夢が覚ても、夢のような物語は続いていく。
「さあ、おまえら準備はいいか?」
「えっ、あのいや何も聞かされてないんだけど」
「これから修学旅行だよ〜」
「はぁ!? どういう事私病み上がりなんだけど!?」
「よし、それじゃあ、出発だ!!」
__
海。さざ波の音が聞こえる中、クドが皆を集めていた。
「私達皆で、写真を撮りませんかっ」
その案に、全員が賛同して、海をバックに集まる。しかしノリのいいやつらだ。
「これ……だれが撮るの?」
理樹がそう言うので、率先して手をあげようとしたら、クドに止められた。
「あ、お前は!」
鈴が誰かを指さす。
「さささささささみ!」
「さ さ せ が わ さ さ み!! あなたたちこんな所で何してるんですの?」
「こっちのセリフだ」
「うっ、うるさいですわね……時期外れのバカンスですわよ」
「丁度いい、謙吾、行け」
「任せておけ。んんっ、笹瀬川、俺から折り入って頼みがあるんだが、いいか?」
「み、宮沢様!? い、居るならそうと早く言いなさいよ棗鈴!」
「すごい目立つだろ、言わなくてもわかる」
「そ、それで宮沢様? 頼みとは一体?」
「俺達全員が収まる写真を撮りたいんだが、生憎、三脚も何も無くてな、写真を撮って欲しいんだ」
「それくらいでしたら、お易い御用ですわ」
と、さの着く人が言うのでお言葉に甘えて。
「場所はどうすんだ?」
「流石に理樹が真ん中だろ」
「え、いいよ僕は端っこで」
「まぁいいじゃないか、女の子に囲まれて『ひゃっほいハーレム気分だぐへへ』とでも思っておくといい」
「思わないから!」
「りんちゃん、隣いい?」
「いいぞこまりちゃん」
と、それぞれが言う。私もいつも通り理樹に肩でも乗せるかと思ってたら、クドが私の手を掴んで寄せる。
「く、クド……?」
クドは繋いでない方の手の人差し指を口に当てて、はにかんだ。顔が赤くなるのを感じる。
「……○○? なんでそんなに顔真っ赤にしてるのさ」
理樹に言われる。
私はすっかり涼しくなったというのに、頭から湯気を出してこう言った。
「うるせー、恋してんだよ」