頑固爺のちゃぶ台返し   作:ニャンニャン丸

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こんにちわ、地の分LV1です
本シリーズでは基本的に主人公の一人称で物語が語られていますが、今回はとある事情により私(ワタクシ)地の文による三人称というか二人称となっております、いやちょっと知能指数というかひら仮名が多くなりそうというか、主観の文章だと色々おかしい事になりそうですので、ご了承ください。
 二人称は珍しい?いえいえ、横田順彌をはじめ割と使う人は多いのですよ、最近ですと「地球さんはレベルアップしました」の作者さんなどは見事な文章を書かれます、今回の地の文(わたし)がレベル1ならあちらはレベル99くらいはあるでしょうか、ドラクエ3ならカンストしてますね。


テイク12_ナーロッパチート軍師(ただし超人強度ひゃくおくちょうまんぱわーとする)

ーーー第一幕、炸裂!包囲殲滅陣ーーー

 彼は自称大軍師、その名をコーメイ・ウェンリー・ソルジャー なんか頭よさそうなのをつなげた偽名とのことだが、登録時にそう名乗ったために本名と言う事になっている、無駄に長く頭が悪そうであるため以降は彼、やしゅじんこう、あるいは軍師という表記で記載することをお許しいただきたい。

 

 現在彼は地平線が見えるほどの広い平原で、その地平線を埋め尽くすほどの、恐らく数万は居るだろう大軍を前に、手にした羽根扇を揺らめかせながら不敵な笑みを浮かべています、何となく中華系の軍師っぽい恰好をうろ覚えでしているつもりのようですが、その姿はどちらかというとチンドン屋や食い倒れ人形のような珍妙さを醸し出しています。

 その背後には主に弓と長槍で武装した兵士、とはいえ目の前の大軍勢の前には蹂躙以前に通過されるだけの小勢にしか見えません、ざっと200人程度、相手の1%にも満たない小勢です。

 それでも何とか士気が崩壊せずにいるのは、これまで軍師が起こしてきた数々の功績を信じて、あるいはすがっているからでしょう。

 

 世界はいわゆるナーロッパ、剣と魔法がって頑張れば初期の銃も作れなくもない、そのくせ衛生観念と食事については魔法や何かで現代にも匹敵するという都合のいい世界、中世ヨーロッパ風と言ってはいますが、実際の当時のヨーロッパとは似ても似つかぬ、どちらかと言えばファンタジー系ゲームの世界観風、と言った方が近いでしょうか。

 主人公の名前同様特に固有名詞を覚える必要はありませんが、仮に彼らがいる国を王国としましょう。

 王国は小さくまた周辺を4000m級以上の山々やあまり大きな港には向かない海などに囲まれており交通の便が悪く、大して特筆する産業もなく、主食に至っては小麦も米も大麦も育ちにくい気候で、品種改良した猫じゃらしが主食だったとまぁいろんな意味で美味しい所がなく、これまではいい意味でも悪い意味でも侵略者には目もむけられない平和でのんきな国でした。

 しかしまぁ主人公が来ればイベントが起こるのがナーロッパの世界設定、近年山で魔法的に貴重な金属が採掘されたためにその注目度は赤丸急上昇、にわかに周辺各国が、あそこは元々ウチの国の土地だった、古事記(的なサムシング)にもそう書いてあると言い出したり、もっとシンプルに侵略しようとしだしたり、そういう国から守護ってやるぞもちろん有償でとか善意に目を金マークにしてやって来たりとしだしたわけであります。

 

 で、そこに現れたのが我らが主人公、彼はその知略軍略(?)で次々と周辺国を打ち破り、今では国の大軍師の地位についているのであります、とはいえ、前世でも趣味レーションゲームは大の苦手だった彼に出来る計略などたかが知れている物でして、まぁ、代わりにチートがありますので何とかなるでしょう。

 

 ちなみに地の利を生かした山岳や砦ではなくだだっ広い平原なのは、連勝を重ねすぎて領土が拡大してしまったことや、最寄りの街が防御が薄いためにまだ機動力でかき回した方がましだとか色々と事情がありますが、基本的にはこの軍師殿の発案によるものだからと言う事が大きいでしょう、行間でだいぶいろいろ無双していましたので、バカじゃないでしょうかとお思いでしょう?はい、バカなんです、事実陳列罪かもしれませんが、それが彼の選択でしたので。

 と言うのも、今回の彼のチートはいわゆるポイントによる能力設定によるもので、まぁ適当に転生後のキャラクターを作ってもよほどのことがない限りチートで無双出来るのものであったのです、ガープスで言うなら普通の人が25ポイントでキャラクターを作るところを英雄候補なら100,英雄なら200程度のポイントで作りますが、彼の能力は数銭とか数万とか、下手をすると億単位とか言う頭のおかしいポイントで作るような物だと思ってください、すでにバランスは崩壊し、システムの想定など遠く離れたものでした。

 まぁ世の中には∞とか空想科学読本の某氏が助走を付けて殴りに来るようなチートを持ってる人も居りますし、これでもまだおとなしい方だというのが怖い所ですが、どうするんでしょうね?そんなに数値だけ高くして、そういう方々に暮れべればおとなしいとはいえ、主人公君も大概なんですけどね。

 で、馬鹿の話ですが、転生先のキャラクターを作ってるとき、ちょっとポイントが足りなかったんですね、少し体力とか能力を削れば十分なのですが、そこはガープスが例えに出たように生前TRPGゲーマーだった彼は、ごく自然にこう考えました。

 

「知力ちょっと下げてマイナス特徴取るか、人間なら、9までは行けるな」

 

 と。

 

 一応四則演算は出来ます(方程式は怪しい所です)し健康で文化的な最低限の生活もできます、記憶はなくしてませんので経験と身に着けた技能からそれっぽい言動もできます、ナーロッパの世界ならばギリギリインテリ層の端っこくらいに入るかもしれませんが、その知性というか頭の回転は色々抜けているうえにうっかりも多い、いわゆるFランク校とかそういうところのレベルになります、しかもとったマイナス特徴から無駄に自信満々、これで失敗すれば経験からいわゆる「体で覚える」ことも出来たのでしょうが、無駄にハイスペックな肉体が間違った知識をごり押ししてしまうのです。

 今回もまた、彼の自称深謀遠慮は炸裂してしまうのでしょう。

 

「軍師殿、言われたとおりに足の速い兵科のみで、飛び道具を持たせましたが、こちらの兵はわずか200、到底帝国に立ち向かえる戦力ではございません」

 

 彼は軍師付きの将軍、彼の持って回った言い方の割にふわっとした計略を兵に分かるようにかみ砕いて伝えることが出来てしまったがために、いつも軍師のそばにいる羽目になった苦労人です。

 無駄だと分かっていても一応こういう常識的な突っ込みをしている貴重な突っ込み役でもあります、しおれたカイゼル髭が彼の心労をありありと表していますが、それに気付くようなら軍師など自称できるはずもありません、自信満々に主人公君(14歳、一番中二病が重症な(脂がのっている)時期です)は返します。

 

「だからこそですよ、カイゼル将軍(本名は覚えていません)。

 無理に辺りから兵を集めても弱兵が多めに見ても1000人ほどでしょう、それなら機動力と遠隔攻撃ができる少数の方がまだ役に立ちます。

 ご安心を、すでに策はあります」

 

 策(それ)は事前に伝えておくべきものじゃないでしょうか?

 少なくとも相手の軍勢が目視できる状態で言うものではないと思うのですが、将軍も毎回となればなれたもので、今のところ胃痛程度で収まっているようです、部下も青い顔をしてはいても逃げ出すものはおりません、まぁ、逃げ場がないというのも大きいでしょうが。

 

「なぁにまだ間に合いますよ、今回の作は、すなわち包囲殲滅陣!遠く異国の独逸(どいつ)では電撃戦(ブリッツナントカ)と呼ばれている実績のある戦法です」 

 

 包囲殲滅陣は相手より数が多い時の陣形だと思います、それと電撃戦(ブリッツクリーク)は陣形ではなく先方というか、戦闘教義のようなもので、まるで別物です、電撃魔法と野営の準備くらいに違います、あとブリッツナントカとか覚えてないのに自信満々に言わないでください。

 

「(独逸(どいつ)?)まもなく接敵となります、急ぎその策をご教示ください」

 

 将軍は慣れたもので彼の電波言語をスルー、必要な事項を根気強く聞き続けます。

 

「つまり、機動性を生かして遠間から相手ひとりに複数をもって攻撃に当たるのですよ、高速で移動すればこちらが相対するのは常に少数、敵がいかに大群だろうと一度に少数だけ相手をすることで大軍を包囲して殲滅することが可能なのです、これを車係の人とも言います」

 

「????」

 

 多分どこぞのオーガの同時に四人に勝ち続けられるなら全人類に勝てる敵なことを言いたいのではないでしょうか、それと車係ではなく車懸かりですし、そもそもそれは元々の車懸かりの人とは全く関係ありません、そして陣形と作戦と計略がごちゃ混ぜです。

 

「とはいえ言ってすぐ出来るようなものではないでしょう、言って見せてやって見せてそれから真似させろとも言いますし、百聞は一見に如かず、まぁ見ていてください」

 

 そろそろ突っ込みに疲れてきました、休んでいいでしょうか。

 軍師殿は足元にあった石(事前に準備しとけ)…がなかったらしく、辺りを見回して普段は旅人の休憩所になっているらしい日陰の涼しそうな広葉樹とその根元の座り心地のよさそうな岩に目を止めると、片手でその岩を引っこ抜きます。

 

「まずは弓でも投石でも構いませんので相手に飛び道具で先制し、勢いを殺します」

 

 そう言ってまだ弓も魔法も届かない距離からその岩をフォームの適当な横投げで投げつけます、投げ方の割に、恐らくトン単位であろう岩は水平に帝国軍の陣営に放物線を描かずに直進、いやちょっと狙いからずれて飛来、途中で勢いに負けて崩壊して散弾の様になった岩は不幸な兵士たちを吹き飛ばしあるいは貫通し、一撃で本陣まで半壊させます、恐らく今の一撃で相手の一割くらいは命を落としたのではないでしょうか、出鱈目です、あの時もう少し筋力を落として知力を温存しても十分だったと思われますが、当時の彼は「ここで一点下げると称号減ってダメージのダイスが2d減るしなぁ」とか言って筋力の方を優先したのです。

 強いて彼を擁護するなら、ゲーマーはお互い同じポイントでキャラを作りますしのでお互い同士では平等なので、お互いのキャラ分けをするには不要な部分を削るのは定番だったのと、キャラクターの行動は操作する人(プレイヤー)によるので、お馬鹿でも判断力は失われないから蔑ろにされがちだったという所でしょうか、彼はむしろお馬鹿キャラを楽しんで演じていることが多かったようですが、知性よりは体力を優先する派閥ではあったようです。

 ですがここは彼にとっては現実、下がった知性も彼に反映されています、されてしまっているのです、そしてそれに気が付くほどの洞察力さえも、今の彼には望むべくもないのです。

 

「さぁ、ここからが今作戦のキモです」

 

 すでに先ほどの一撃だけで崩壊しておかしくない哀れな帝国軍に彼は追撃するつもりです。

 

「先制攻撃で陣形が乱れた所を、陣形から外れた少数から殲滅していきます、そのための機動りょ」

 

 そこまでしか将軍には聞き取れませんでした、何故ならその直後に彼はすでに敵陣に突っ込むと手足を振り回しながら帝国軍の陣営の周りをぐるっと回り始めたからです、最初はまだチーター程度の速度での走行で当たるを幸いになぎ倒していましたが、やがては音速を二足歩行で越えたのか衝撃波を発しながら目にもとまらぬ速度で回り始め、手足が触れる以前に近くにいたあらゆるものを吹き飛ばしながらぐるぐると回転していきます。

 もし上空で全体を俯瞰して見ることが出来るものが残っていたのなら、超高速で駆け抜ける軍師様が帝国軍を包囲する円のように見えたかもしれません、実は上空には帝国軍の観測役飛行魔導士が居たのですが、最初のまだ音速を少し超えた程度の数周で衝撃波となぜか発生した竜巻に煽られて墜落しているので見ることはかなわなかったようです。

 やがてその円運動が螺旋状にその半径を小さくしていくと、最後には帝国軍の陣営の中心で彼だけが立っている状況になっていました。

 

「これが包囲殲滅陣、少数で多数の敵を殲滅する秘策です」

 

 おい連れてきた200名の決死隊をどうしてくれるんだいたたまれなさそうにしてるぞ!

 

 失礼、言葉が乱れました。

 

 どや顔で返り血すら吹き飛ばして結果的に血の一滴もついていない(着ている服もチートで取得しているので汚れません)彼はそう言って将軍の方に声を掛けます、兵士たちはこれから戦闘ではなく戦後処理に勤しむ事になるのでしょう、お疲れ様です。

 ちなみに軍事用語やゲーム用語では全滅や殲滅や壊滅には区別があるのですが、彼は覚えていません、その時思い出せた用語で全滅と言ったり殲滅と言ったりしていますが大体どれを言っても皆殺しもしくは生きていても全員捕虜になって一人も逃がさない状態をそう言ってます、繰り返しますが一人も逃がさない状態です。

 遠くから戦況を観察していた連絡兵まで野生の勘で見つけてアルゼンチンバックブリーカーからのエアプレーンスピンで狙(・)撃(・)して落としていますから徹底しています、相手はコレだけ派手な理不尽が起こったにもかかわらず、何が起こっていたのかの情報すらまともに得られないでしょう。

 

「このようにやれば少数の兵でも大軍に立ち向かうことが出来るわけです」

 

「ご高説はありがたく、ですがその、立ち向かうべき大群がすでにおりませんが」

 

「おや、これは失敗しました、ですがまぁ、勝利しているのですからまぁ良しとしましょう」

 

 多分いつも失敗していると思います。

 

ーーー第二幕、必殺!隘路殲滅陣ーーー

 

 さて前回は鮮やか?な蹂躙劇で戦略関係ない力押しで帝国の野望をすりつぶしたわれらが軍師殿。

 さて戦力が激減した帝国がナーロッパで行う陰謀と言えば、他国を巻き込むか魔族と手を組むかといったところが定番です、和平という言葉はあんまり内容です、頭を下げたらそのまま尻の毛まで抜かれて骨までしゃぶられた国は現実にも割とありますし、そうでなくても主人公のカタルシスのためにはそう簡単に敵に倒れられては困るという物語上の都合もあるのでしょう。

 今回は魔族と手を組み、更に魔物を誘引するアイテムで戦力を水増しして、魔物の多いいわゆる魔の森近くの都市への侵攻を開始してきました。

 勿論それにいち早く(野生の勘で)気が付いた我らが軍師様、せめてそこは物流の流れや間者の情報から相手の動きを読んでとか言えればいいのですが、そんなものはありませんしそもそも手配してすらいません。

 

「今回は魔物の森から誘導されてくる魔物が中心です、念のため冒険者と守備兵の方々は街の防壁で水際で打ち漏らしの対応に努めてください」

 

 相変わらず自信満々です軍師殿、まぁ前回のようにガープスで例えるなら、自信過剰の不利な特徴に知性の低さも相まって自信過剰な行動を取りやめる知性判定にことごとく失敗していると言えば近いでしょうか。

 

「その間に我々が本隊を叩きます、幸い相手は魔物の誘因のためそれほど細かな行動はとれません、シンプルに森の方からこちらに進んでいるため進路は限定されています」

 

パト、パチ、と地図にチェスっぽい駒を置いて指し示すポーズだけは本当に軍師のようです。

 

「戦力のほとんどを町に残して、この行動が陽動であった時のために備え、我々は必勝の策、隘路(あいろ)殲滅陣によって本体を叩きます」

 

「隘路(あいろ)?でございますか?」

 

 カイゼル(仮)将軍は首をかしげます、それはそうでしょう、隘路殲滅陣などと一般的に言われるものは、谷や崖などの地形を利用して相手を狭い空間に集めることで、周りから集中攻撃を浴びせる手法かと思われます。

 しかし、森があることから推測される読者諸氏も居るかもしれませんが、この辺りは別に崖や山が近くにあるわけでもない平地、多少の木や岩位ならあるかもしれませんが、隘路(あいろ)、つまり狭くてそこしか通れないルートと言えるようなものは、進路予想されるあたりにもそれどころか都市周辺のどこにも存在しないからです。

 

「はい、わたくしの策略をもってすれば、このような平地に隘路を生み出す、すなわちころ島にすることも簡単な事です、そして一度隘路が出来てしまえば相手は魔物、隊列を整えることも引き返すことも出来ずにそのまま罠に進んでいくことしかできないのです」

 

「ですが、なにがしかの壁を作るにしても建材を今から用意するわけには」

 

 おそらく秀吉の一夜城のように、何かがしかの工法で壁かなにかを作り出し隘路にすることを想定しているのでしょうが、彼にそんな頭はありません。

 まぁ、建材さえあればあふれるパワーで壁どころかピラミッドでも一夜で作りそうではありますが。

 

「ここに一本の頑丈な(破壊不可能設定)丸太があります、これで、十分です」

 

 インベントリから持ち出した丸太を手に微笑む軍師殿。

 魔法のステッキのように持っていますが、それ滅茶苦茶密度があるから破壊不可能ですって設定だけ有って6mほどの長さで10トンほどの重さがありますからね?なんで片手で持てるんです?重心がおかしいでしょう?

 

「さ、あまり時間がありません。

 進軍がはじまった今なら罠があっても対策はとれないでしょうから、急いで隘路を作って殲滅しますよ」

 

 そう言って散歩にでも出るように丸太を持ったまま門を飛び越える軍師様、さすがに着地の衝撃は殺しきれなかったのか、深々と街道脇の草地にめり込んでいますが、気にする様子もありません。

 

 埋まったまま構えると拳を連打、天馬流星拳ではなく修羅魔破拳なのは何かこだわりポイントでしょうか、丸太は左手に持ったままなのでポーズが変になっていますが。

 埋まったまま地面を超音速、それもマッハいや2ではなく時速36万キロ、マッハ約300くらいは出てるでしょうか、大参事です。

 もう一度言います、大参事です。

 音の壁を無理矢理引き裂いた拳は衝撃波でマッハコーンの形に砕け散るはずですが、このナーロッパにそうした概念がないのか、あるいは本人がデタラメなのか、まぁ後者でしょうが、とにかく諸々の常識ごと音の壁も地面も吹き飛ばし、そこには彼を中心として、ドラゴンブレスでもあったかのように前方に地面が円錐形に掘り抜かれましした、着工からおよそ10秒で隘路殲滅陣用の隘路が竣工しました、重機人間(ユンボル)もびっくりの超高速工事です、安全性は全くなさそうですが。

 

「これは早さが何より肝要です、あとはここに相手を誘導するだけでよいのです、皆さん、誘導を行ってきますので殲滅の用意を」

 

 そう言って丸太をもって文字通り飛(・)び(・)出していく軍師殿ですが、すでに最初の工事の巻き添えで先発隊どころか奥の正規兵まで吹き飛ばされ、あるいは吹き飛んだ土砂の下敷きになって壊滅的打撃を受けてます。

 巻き込み事故で大参事です、やはりこの工事に安全性は全くなかったようですね。

 うん、今回もすでにほっておいても帝国軍+魔王軍+魔物連合は潰走しそうですというかし始めていますが、魔物はこの状況でも操られているためか突っ込んできていますので、今回は追撃も正しいでしょう、方法はともかく。

 空中で飛行型の魔物、大物だと飛竜(ワイバーン)くらいでしょうか、を、次々と丸太で隘路に叩き落としていきます、叩いた時点でもう死んでると思いますが。

 偉そうで人型で蝙蝠の羽根のようなものを背中から生やして、更に何かCGで適当に作られたようなエフェクトやオーラをまとった、いかにもな推定魔族と思われる何某かも何か言いかけたところを叩き落とされました、あ、まだ生きてますが上から降ってきた飛竜(ワイバーン)に潰されましたね。

 更に衝撃波の範囲外にいた地上の魔物は、丸太をブルドーザーのブレードのように横にして、ゴリゴリと隘路まで突き落としていきます、すでに隘路(?)というか、人工の谷間からあふれて山になってきてるんですが、良くこれだけの魔物を集めたものです。

 

 ほぼ壊滅状態となった軍団の漬物を前に、軍師殿は自信満々に言い放ちます。

 

「我が策、成れり!」

 

 策じゃねぇよ!

 

 失礼、また取り乱しました。

 とはいえ彼がやっていたのはほぼ出鱈目ステータスのごり押しですので、どちらかというと策というよりは無双ゲームでしょう、あるいはボム∞のシューティングゲーム。

 

「さぁ、あとは殲滅するのみです、皆さん!出番ですよ!」

 

 その時点でもうほぼ壊滅しているんですけどね、前回と違ってまだ原型が残っているだけましでしょうか、一応素材の剥ぎ取りも出来そうですし。

 

「いや、ありがたい事ですがこの量では素材の剥ぎ取りにいつまでかかることか」

 

「はっはっは、まだ勝利したわけではありません、まずは目の前の敵を仕留めることに集中しましょう、大丈夫、軍師の仕事とは少し違いますが、こうした状況での鮮度を保つ策もございます。

 名付けて、円環の理」

 

 困った顔でしかしこの怪獣相手にもツッコミを入れる苦労人(カイゼル)将軍、そういえば昔怪獣の後始末を題材にした映画がありましたねぇ、どちらかというと漫画初期の8号の方が描写としては好感が持てる題材の様に見えましたが。

 いやあなたが軍師の仕事をしたことは一度もないと思いますが、なぜそこまで軍師にこだわるんですかねぇ。

 

ーーー第三幕、神謀!円環の理ーーー

 

「解体する方々を増やすことは難しいですが、素材を保存する事なら可能です。

 そもそもなぜナマモノが悪くなるのかと言えばその体の菌や酵素が分解を促進し腐敗させるからです、これは高温で酵素や菌を破壊したり、冷却することでその活動を抑えたり、あるいは乾燥や油、塩などに漬け込むことによって大気に触れさせないことで防ぐことが出来ます」

 

 珍しくまともなことを言っています、知識自体はあるんです、それをうまく使えないだけで。

 とはいえここはナーロッパ、周りが菌?酵素?と疑問を持っているのですがおかまいなしです。

 そういえばこうしたもともと存在しなかった用語はいったいどんな翻訳をされているのでしょうね?かれはそのまま「kinn」「kouso」と発音していますが、ローマ字です。

 とはいえカイゼル(仮)将軍は慣れたものです、彼の言っていることから必要な要素を抜き取って適当に合わせてくれます。

 

「この場でできそうなのは塩か魔導士による冷却、冷凍魔法ですな、とはいえいささか量が多すぎます、我々の側の魔導士ではあのオーガを数体冷やしたところで魔力が切れてしまうでしょうし、軍師殿は魔法のような力(きんにく)こそお持ちですが、魔法は不得手と聞きます。

 潮にしたところで町中の塩を集めても果たしてあの内の幾らを塩漬けに出来るかは疑問ですな」

 

「何、この円環の理に魔力は一切関係ありませんよ、もっと物理的、化学的作用によるものです。

 円環すなわち回転運動というのは、これで中々に便利な運動でしてね、真っ直ぐ投げるだけなら一瞬の直線や放物線の運動でも、回転させることでエネルギーを継続的に蓄え作用させることが出来るのです」

 

 そう言うと足元の金属片、武器の一部だったものでしょうか、を拾って指先で軽くはじくと、ほ(・)ん(・)の(・)時速数百キロで打ち出された金属片は鎧だった金属塊に着弾し、わずかにその金属にめり込んで止まります。

 それを見て今度はベルトか何かの紐に金属の金具がついたものを拾い上げると、これまた軽く、ひゅんひゅんと回転させます、すぐにその音はヒュヒュヒュからビィィィィン!!と言った高音に上がっていき、その状態で先ほどの金属塊に充てることでジュガガ!と削りながら大きな傷を付けたところで紐がブチっと切れてどこかに飛んで行きます。

 これがなぜ冷凍に関係あるのかは疑問ですが、まぁ今までよりはまだ物理法則に従っていますからマシではないでしょうか。

 

「そして回転でエネルギーが蓄えられるというのであれば、それは粉ひき小屋の石臼や馬車の車輪のように、様々な形に利用できると言う事です。

 例えば大気との摩擦は摩擦熱を発し」

 

 そういうと軍師殿片腕をぶんぶんと駄々っ子パンチのように回転させると、自動車のエンジンのような高速回転に達し、指先からボッと発火。

 服はチート製のために無事ですが、そうでなければ先にそちらが燃えるか千切れるかしていたでしょう。

 

「このように炎を生み出すことだってできるのです、またタツマキを起こし風を、砂を巻き上げ土を、水を巻き上げて雨を降らせることさえも可能なのです、粒子加速器なども直線ではなく円環上にすることで、狭い土地でも実験を行うことが出来るようになりますしね」

 

 ありましたねぇ、炎のコマ、でもそれを言うと年がバレますよ、異世界(ナーロッパ)だから大丈夫だとは思いますが。

 と言うかそれが出来るのはゲームセンターあらしとゆでたまごの超人レスラーとウルトラマンと…意外といますね…

 とはいえ周りの方々はぽかんとしています、そんな規模のエネルギーを生み出せるのはレベルという超人化の道程のあるナーロッパでも本当にトップレベルの高レベルの中にいるかどうかですから。

 いえ、常人の限界が一億パワーだとしたら軍師殿はひゃくおくちょうまんぱうわぁー(失笑)なので普通に(仮に不可能でも物理法則を撲殺して)できるでしょうが。

 

「まずは殺菌です、熱ではせっかくの素材を痛めてしまいますので、ここは定番の一つである電撃を使いましょう。

 乾燥した大気との摩擦は摩擦電気を体内に蓄積します、これは静電気の一種、冬場に金属に触れるとパチッとなるあれですね、実は落雷(カミナリ)もこの静電気なのです。

 回転運動によってその静電気をため続けることで神の雷(カミナリ)を発生させて、おっとその前にアースにならないように地面から足を離さないと」

 

 そう言って両手を広げて竹トンボの様に高速回転する軍師殿、手のひらを微妙に斜めにしてるのも竹トンボ要素でしょうか、たかだか手のひら程度の面積で揚力が得られると思ってるんでしょうか。

 そのままなぜか上空高くに風をはらんで舞い上がり、バチバチと電気っぽいエフェクトまで発しています。

 一つ一つは間違ってないのに組み合わせるとなんでこうベンジャミン・フランクリンにケンカを売るような話になるのでしょう。

 

「これが円環の理、雷の章のその1 パルス電界殺菌です!

 バルス!!」

 

 なんか鬼滅の刃の呼吸みたいなこと言い出しましたよこの方。

 叫びとともに軍師殿から強烈な電光が下の戦利品の山に撃ち落されます、強烈な光でまともに見ればしばらく目が使えなくなるのではないでしょうか、確かにネットミームでネタにされる方のバルスかもしれませんね、でも殺菌の方はパルスです、バルスではありません。

 というかパルス電界殺菌とかよく知っていたなとは思いますがこんな方法ではありません、もっとまじめな技術です。

 

「ちなみに大気に湿気が多い時は逆に湿気を利用し、雲の中で水分子同士がぶつかる摩擦で静電気をため込んで雷となすように雲に雷を蓄積させるのです、こちらは雷の章のその2となるのですが今回は割愛しましょう」

 

 多分その違いを理解して実践するにはモンゴルマン並みの技がいるのではないでしょうか。

 

「そして殺菌が終われば次は冷凍です、リンケの計算式に寄れは風速が1m上がるごとに気化冷凍などの要素によって気温は一度下がると言われています、水を入れた瓶に濡れタオルを巻いて高速回転させると中の水が冷える原理ですね。

 すなわち超高速回転で相対的に高速で大気に触れ続けることで人工的に氷河期の冷気を生み出すことも可能!」

 

 リンケの計算式とペットボトルを冷やす原理は一部被ってますが別物です。

 そしてそのリンケの計算式もよく知っていましたね!でもあれについては諸説あるからそう単純な物ではないというかそれで下がるのは体感温度であって大気の温度ではありません。

 というかあなた同じ回転でさっき摩擦熱で火を出すとか言ってませんでしたか!?

 

「これが円環の理、氷の章のその2

 アイス・ロック・ジャァァィロ!!!!!」

 

 物理法則を捻じ曲げてとうとうゆで理論を大声で叫び出した軍師殿の周りから吹雪が発生、その冷気によってビキピキと素材の山が凍り付いていきます。

 十分に周辺を吹雪かせたと判断したのか、回転を緩めた軍師殿はゆっくりと地上に舞い戻ってきます、急な豪雪災害であわてる人々を安心させるように自信満々な笑顔のまま。

 

「このように魔力がなくとも簡単な回転さえ学ぶことが出来れば、まるで魔法のように地水火風を味方の付ける事は可能なのですよ、皆さんもぜひ試して見てくださいね」

 

 そんな無茶ぶりまでしてくる始末です、が、我らがカイゼル(仮)将軍、本名はサイベリアン・ベンガル(48)はもう慣れたものです、本名ねこさんなんですね。

 

「なるほど、これならかなり日持ちも期待できそうですな、軍師殿のお手を煩わせてしまい申し訳ない。

 しかし軍師殿程の知略のない我々では、火と氷の使い分けすら難しいでしょうな、正直ワシでさえ言われたようなことを模倣することは出来そうにありません。

 我々はもっと簡単に剣を振り回し弓を引っ張る事がせいぜいですよ、ああ、それと獲物の剥ぎ取りと解体などの雑事はお任せください、軍師殿は思うままにその頭脳を人々のためにお使いくだされ」

 

「私としてはこんな力など不要とされるほどでもそれはそれでよいと思います、皆が試して進歩するのもよいですが、急速な進歩は暴走と破滅の元ですから、少なくとも王国以外の国に伝えるつもりはありませんしね」

 

 伝えられても大丈夫だと思いますよ、誰も真似できませんし。

 

「なんにせよ、ここまで戦力を削れば周辺諸国も早々には再侵攻しないでしょう、今のうちにじっくりと内政に力を入れて、そもそも進行する気にならないような体制を整えねば」

 

 それもどうせ物理でやるんでしょう?

 

「なぁに、馬鹿時からだけが取り柄で暴君として君臨するよりは、無茶苦茶でも自称軍師として人を守る方がよほど気が楽ですしね、それに、軍逆軍略と阿呆な事を言っていれば誰も真似できませんししようとも思わないでしょうからね、私の頭で思いつく、それがたった一つの作戦です」

 

 それが落ちなんですか、いいこと言ったふうにしてますけど、普通に周りに相談すればもっといい方法なんか思いついてくれたんじゃないですかねぇ。




 思ったより地の文がツッコミさんというか辛辣なキャラにw
 なろう戦記定番の包囲殲滅陣を我も真似して見んとするものなり、
 どうせもともと無茶な方法なんだからゆで理論全開で。
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