作戦名、オペレーション・ラブラブハンターズ
ホワイトボードにマーカーを書く音。それが終わって、来ヶ谷さんが自慢げにホワイトボードを引っぱたきました。
「オペレーション・ラブラブハンターズ。開幕だ」
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色々(30話)あって、私達は現実世界に帰ってきて、いつの間にか夏も終わって、秋も知らない間に始まっていた頃です。
残暑の残る部室で、私を含めた女の子達はお菓子パーティーをしていました。
「まだまだ暑いっすネ〜、せっかく暑苦しい夏をスキップできたと思ったらまだこの調子なの〜?」
「部室はエアコンとかもないからね〜、今度はアイスとか持ってこよっと」
「はー……」
ため息一つ。
「図書館などは、冷房も効いていて涼しいですよ」
「そこじゃお菓子食べれないよ〜」
「はーぁ……」
二つ。
「ならばプールはどうだ、おねーさんが全員分の水着を選んでやるぞ」
「ぜったい、いやだ」
「はーあぁ……」
三つ目のため息が上がったところで、優しい小鞠さんが声をかけてくれました。
「ど、どーしたのクーちゃん。ため息吐くと幸せがばいばーいってしちゃうよ?」
「小鞠さん……私、わたしぃ……」
「クド公、いつになくセンチメンタルわんこですネ。恋人と別れた?」
「うっ、ううぅ……! もう終わりですぅ……!」
「えっ、嘘。ほんとに!?」
そう、何を隠そう不肖クドリャフカ。
なんと、恋人に嫌われてしまったのかもしれません。
__
「つまり、だな。あの事故以降、普段通り接しようとしても避けられてしまうと」
「はい……おはようのハグも寸前で止められてしまいます」
「多分、あれだな。ケ○タッキー」
「りんちゃん……それを言うなら倦怠期だよ」
倦怠期……確かに、あれ以降カノジョっぽいイベントもありませんし、今だって△△はリキの方に行ってますしー……。
「そもそもですヨ。あれって結局夢の中みたいなものでしょう? だったら、□□もよく覚えてないんじゃないの?」
「あの時の記憶は、人によってまちまちだからな。その可能性も大いにある」
「そんなことありません!」
机をぽんっと叩いて立ち上がる。
「何故そう言い切れる?」
「それはですねー……」
__
放課後、私の荷物を女子寮に運ぶのを手伝って貰ったことがあったんです。
「よいしょっと、これで全部?」
「はい! いつもありがとうございます、△△」
「容易いことよ。いつでも言ってくれ。命なら幾らでも差し出せる」
「もー、またそんなこと言ってますっ」
荷物を運んでもらっている途中、ふと、あの時のことを思い出します。
テストが終わって、翌日のデートの帰り道。ここでした事。
「……△△」
「なぁに?」
「覚えていますか、ここでした事」
あの時は、ぶらっくほわいとのドキドキよりも、その後のことが印象的でした。倒れた△△をどうにかする必要があったので……
「どうですか? △△……」
と、見上げた△△の顔は、夕日に照らされてる中でもわかるくらいに真っ赤で。
「ちょ、ちょっとご、ごめん用事思い出したっ、から……ごめん!!」
「△△ーっ!?」
荷物を置いて走り去って行ってしまいました。
後からリキが「荷物運ぶの手伝ってあげてって言われたんだけど……」と、なんだか困った顔でやってきたのが忘れられませんでした。
__
「と、このよーに。私の一世一代の大勝負のことは忘れていないはずなので……あれ? みなさん?」
「く、クーちゃん積極的だねぇ……」
「いやー……あはは、はるちんもまさかクド公がここまで進んでいたとは、なんか敗北感……っていうか」
みなさん何故かそっぽを向いてしまいました。何かおかしなことを言ってしまったんでしょうか……?
そんなことを考えていると、西園さんがその空気を割くように口を開きました。
「能美さんは、頼花さんと付き合っているんですよね」
「はい、もちろんです! 手だって繋ぎましたし、毎日ぎゅーもしてます!」
「結局どこまでいったんだ、クドリャフカ君」
「どこまで……わ、わふ……」
「な、なななクド公ー! 私を裏切って!」
「お、おとな、なんだね、クーちゃんって……」
「ふふふ、可愛い……っ」
「それは置いておきまして」
「置いておかれました!?」
西園さんは、読んでいた本をパタンと畳み、まるで当たり前のように言います。
「頼花さんの方は、そう思っていないのかもしれませんよ」
「わふ? どういう事ですか?」
「☆☆は、クーちゃんと付き合ってないと思ってる、ってこと? みおちゃん」
「はい。頼花さんならあり得ると思います」
「さっきも言いましたケド、あれって夢の話ですからネー」
「そ、そそそ、そんなこと……っ」
「じゃあ、聞いてみるか?」
鈴さんが携帯を出します。
「お、お願いします……!」
「わかった。ちょっと待て」
携帯の通話履歴をカタカタとする鈴さんの手を、来ヶ谷さんが止めました。
「直接聞くのはやめておけ、理樹君伝いでそれとなく聞いてもらおう」
「わかった、そうする」
鈴さんが、リキへと通話を掛けます。数回のコールの後に、通話が繋がりました。スピーカーでつなげてくれたので、私達は携帯を囲んで見守ります。
「リキか?」
『そうだけど、何か用事?』
「今、○○は居るか」
『うん、すぐそこに。変わる?』
「いや、それはいい。だが、お前にミッションがある」
『随分唐突だね……何?』
「それはだな」
と、鈴さんが作戦概要を伝達しました。
『了解、このまま繋げとけば良いわけね』
「助かる」
「さすがリキですー!」
こちらのマイクをミュートにして、ミッションスタートなのです!
私は何もしないのですけど。とにかく、通話から聞こえてくる声に耳を済ませます。
『○○ー、ちょっと良い?』
『んー? 今オニテンジクネズミとハダカデバネズミとの熱い共闘が……』
『また変な漫画読んでるんだね……別に時間取らないからさ』
『じゃあ良いけど、何?』
『クドの事なんだけどさ』
『なんだ!? 怪我か!? 火事か!?』
『すごい食いつきっぷりだなぁ……いや違くてさ、○○とクドの関係ってどうなのかなって』
「よーし言ったれ理樹くん! 痴情のもつれを顕にしろー!」
「どきどき……」
「聞こえないので静かにしてください」
『関係……関係って?』
『ほら、あっちだと、確か付き合ってたんだよね』
『……ん、はい……』
『だから、今はどうなのかなって』
『ど、どうも何も、あれって結局夢の中の話だし? 今の私が、クドとどうこうとか……そんな……ないよ』
「ガーン!?」
「案の定でしたね」
「おのれー! クド公を傷物にしておいてこの言い草とは! 私は三枝、ぷぷぷ!」
「どういう意味だ?」
「意味は〜、ないんじゃないかな?」
『そっか……なんかさみしいね』
『そんなことないって。理樹こそどうなんだよ、結局誰が好きなんだよクド以外で言ってみろや』
『まぁそれは置いといてさ』
『置いとくなし』
『結局、○○はクドの事好きなの?』
『当たり前じゃん。大大大好きだけど』
「こいつ告白したぞ!」
「☆☆も、だ、大胆だね」
「わ、わふー! △△、皆見てますよー!」
「いやけっこー今更ですヨ?」
『じゃあ付き合ったら良いのに』
『あんなぁ理樹よ、私はこれまで散々言ってきたと思うんだけどさ。クドってのは私にとってのエンジェルでありフェアリーでありマイラバーズな訳よ』
『ラバーズは恋人では……』
『うるさいなぁ、とにかく私が愛を注ぐべき対象であって、私から付き合いたいとか結婚したいとか海辺の一軒家で子供二人育てながら慎ましく余生を過ごしたいとか、そういうのはお門違いなわけ。わかる?』
『そこまで具体的な人生設計考えてるのに?』
『……クドは私の事恋愛対象として見てないと思うし……それこそ、上の兄姉とか家族みたいな』
『無いって』
『可能性が1パーセントでもあるなら無理! 出来ることなら私は壁になりたい!』
『1パーセントも無いって』
『じゃあマイクロパーセント?』
『そういう事じゃないよ』
『ていうかそもそも__』
それから、頃合を見計らって通話が切られます。ありがとうございますリキ……。
「思った通り、頼花さんは能美さんの事が好きなのは相変わらず、恋仲だとは微塵も思っていないようです」
「つまりクド公の勘違いってこと?」
「うぐっ」
「そうなりますね」
「ぐはっ」
「でも……このままじゃ、クーちゃんも☆☆も可哀想だよ、好き合ってるのに結ばれないなんて」
私はそんな言葉に打ちのめされても、私は手を握って食いしばります。
そう、私は絶対に忘れないって決めたんです! あの日の事も、あの夢の中であった△△との全てを!
「もう一度、します」
私はそう宣言しました
「何をだ?」
「ぶらっくほわいとです!」
__
「それが良いだろう。失敗する可能性も無いわけだからな」
「まー100%成功しますし、確定演出光ってるなら楽なもんですネ」
「応援してるよ〜クーちゃん。デートスポット調べておくね」
「えっ、いや、あの……みなさん!」
「なんですか藪から棒に」
「ほ、本当に100%……成功、しますかね?」
私がそう言うと、辺りがシーンとして、この残暑の中でもわかるくらいの冷ややかな目が私に突き刺さります……うぐっ。
「……逆に何故失敗すると思えるのか」
「だ、だって! 私は来ヶ谷さんみたいなぷろぽーしょんじゃなくてぺったんこですし……小鞠さんみたいに性格もよくなければ西園さんみたいに頭がいい訳でも三枝さんみたいに可愛くもないですし鈴さんくらいの付き合いもありません……オマケにぺったんこです……」
「ぺったんこ二回言ったな」
「わ、私は性格良くないよ〜、直ぐ嫉妬しちゃうし」
「てんめぇクド公! そんなチワワみたいなめんこい面しといてなーにが可愛くないだぁ〜??」
「ひ、ひっぱりゃないでくだしゃい〜」
「あたしも別にあいつと特別仲良いわけじゃないぞ。たまに猫と遊んでるくらいだ」
「それに、恐らく今懸念していることは、頼花さんにとっては加点ポイントでしかありません」
「わふゅ〜……ひょんとうに、しぇいこうしましゅかね」
「大丈夫だってクド公。いざとなったら押し倒せ!」
「お、おおお押し倒すぅ!?」
小鞠さんが悲鳴をあげてます。ですがもうそれは夢の中でしましたし……。
「……こうなったら、やるしかないか」
「やる? 何をだ、○○をか」
「拘束して持ってきますか。確かに手っ取り早いですね」
「えー姉御マジでやるんすか」
「……そんなことはしない」
「冗談ですよ。何か案があるんですか? 来ヶ谷さん」
「あぁ、勿論だともそれはだな__」
__オペレーション・ラブラブハンターズ。開幕だ