「オペレーション……」
「らぶらぶ?」
「ハンターズ? ですか?」
唐突にそんな事を言い出す来ヶ谷さん。こういう事を言い出しそうなのは、どちらかと言えば恭介さんのような……。
「あちらの世界で、理樹君が私と過ごしていた時に恭介氏が発案したものだ。私達が各男子共に告白し、それで印象が良いものを実際にクドリャフカ君が行えば良い」
「あー、そんなこともあったな」
「本当に覚えていますか?」
ほ、本当にやるのですか……? こんな、とんちきちっちきちーな企画を!?
「わ、私達が男の子達に告白するの? 迷惑じゃないかなぁ」
「我々美少女に告白されて喜ばぬ男など居ない。そもそもは奴らの発案だ。仕返ししてやってもバチは当たらない」
「でもでも姉御、男の子達と私達の人数が合わないから誰か余ることになりますよ」
「私は見ていたいからやらん。これで丁度だな」
「じゃ、じゃあ、私と、はるちゃんと、りんちゃんと、みおちゃんで、理樹君、真人君、謙吾君、きょーすけさんに」
ど、どうも本当にやる気です……一体なぜこんな事を……。
「一体なぜこんなことを……とでも言いたげな顔をしているな、能美女史」
「わ、わふ!? なぜそれを!」
「決まっているだろう……面白いからだ。恭介氏ならそういう」
完全にノリに飲まれている来ヶ谷さんを止めるものもおらず、そのままなんだかんだ作戦開始になってしまうのでした。
「あたしは理樹にする」
「あーズルいっすよ鈴ちゃん!」
「はるかにはやらん」
「じゃあ〜、私はきょーすけさんで良い?」
「おう、あんな馬鹿兄貴でよければ一人でも二人でも持っていけ」
「では井ノ原さんで」
「ちょいちょいちょーい! はるちんもしかして『愛について語り合わないか』とか言い出す人押し付けられそうになってますよね!!」
「早い者勝ちのようでしたので」
三枝さんが激昂しますが、結局そのペアのままくじ引きで順番を決めることにしました。
__
「ターゲットは、責任を持って私がこの中庭に連れてこよう。皆はそこの草陰で待機してくれ」
「ら、らじゃーなのです……が、本当にやるのですか」
「ちょっと悪い気もするけど〜……楽しそうだし、行っかなって」
「こまりちゃんがやるなら仕方ない。理樹なら任せろ。秒殺だ」
「こ、ころさないでくださいーっ!」
「はるちんは不服なのでした、ぷっぷくぷー」
「早い者勝ちですので」
と、皆さんと談笑している中、真人さんがやって来ました。
「西園のやつ、なんの用だよ……ったく」
いつも通りの勇ましいお姿です! 頭を掻きながら、辺りを見渡しています。
「では、行きましょうか」
「がんばってね〜みおちゃんっ!」
そこへ、西園さんがとてとてゆっくり歩いていきました。お互いの視線が交わしあって……なんだか、ロマンチックかもですっ。
「おう、西園。俺になんか用事か? つっても、わざわざこんなとこまで呼び出さなくったって、寮の前で良いんだぜ?」
「いえ、ここでないといけない話ですので」
「ここでないと、いけない話?」
ぽかーんと口を開けた井ノ原さんへ、西園さんが手に持った本を開いて、そこに書いてある文面を読み上げます。
「思ひつつ ぬればや人の 見えつらむ 夢と知りせば さめざらましを」
「……」
井ノ原さんはぽかーんとしたままでした。
「これが私の気持ちです」
「……あー、はー、なるほど、そうか」
また何度か頭を搔いた後、親指を立ててこう言います。
「ありがとよ!」
__
いつもの無表情ですが、少し誇らしげな西園さんが帰ってきました。
「完璧な成功でしたね」
「いや絶対わかってなかったって! ていうかみおちん何今の!?」
「小野小町の短歌です。『好きなあなたを思って眠ったら、あなたが夢に出てきました。それが夢だと分かっていたら、ずっと覚めないで眠っていたい』と、言う意味です。できるだけ有名なものを選んだんですが」
「あの反応じゃあ日本語ですらないと思われていそうだな……」
「もういいから次行くぞ」
__
次に呼ばれたのは__
「む、誰もいないな。少し早かったか」
謙吾さんでした。……あのジャンパーは本当にずっと着ているつもりなのでしょうか。
「よし、はるか頑張れ」
「おうおうやり返してやりますよう!」
肩をブンブンと振り回した三枝さんが、宮沢さんへと向かっていきました! い、一触即発の雰囲気です……。
「改まってどうした、三枝。俺をこんな所に呼び出して」
「まぁまぁ座ってよ、少し話したいことがあってさ」
三枝さんは、木陰に宮沢さんを誘って二人で座り込みました
「ふむ……それで、話とは」
「謙吾くん……私と、愛について語り合わない?」
え、えぇーー!? それさっき言ってたやつですよね!?
「はるちゃんロマンチックだね〜」
「何回みてもキモイな」
「謙吾少年は本当にあんな口説き方をしたのか……?」
「謙吾はロマンティック大統領だからな」
「そうか……とうとう、お前にも語ることのできる愛がわかったか」
「……は?」
「そうと言うなら存分に語り合おう! 良いか三枝、愛とはな__」
それから小一時間、宮沢さんのお話は止まりませんでした。
__
「目には目をじゃあ……争いは無くならないんだ」
「改めて知れて良かったですね」
「もう、やめませんか? なんだかふもーな気も……」
「いや、まだやるさ。残った二名が『女の子からの告白なんて、どう返したらいいんだモテちまって大変だぜ』と待っているからな」
「私としては残ったお二方でくっついてくれた方が」
「今のところ二戦二敗だ。心を引き締めていきたまえ、鈴君、小鞠君」
「やらないくせにえらそーだな」
__
次に呼ばれたのは__
「小鞠から呼び出されるなんて珍しいな……」
ポケットに手を入れた恭介さんがやって来ました! わふっ、なんだか一瞬こっちを見たような……。
「じゃあ、次は私だね〜、よぅし、頑張るよ〜!」
「がんばれ、こまりちゃん」
茂みからファサッと飛び出した小鞠さんが、恭介さんの元へと駆け出します。
「きょーすけさ、あっ、とっ、わっわわわっ!?」
そんな中、小鞠さんが欠けたタイルの窪みに足を引っ掛けてしまいました!
しかし、転びそうになっている小鞠さんを、恭介さんはそっと抱き抱えます。
「大丈夫か、小鞠」
「ふぇっ!? だ、だだだだいじょーぶっ、です!」
「そうか……気をつけろよ。それで、俺に何の用だ?」
「その……これ、きょーすけさんに作ってきたの、受け取ってくださいっ」
小鞠さんは、小袋に入ったお菓子を差し出します。
「ほう……なるほど、悪いな小鞠。ありがとう。早速食って良いか?」
「も、勿論だよ〜! 沢山食べていいからねっ」
中からは、ハートの形のクッキーが出てきました! なるほど、小鞠さんらしい方法です。
「ん、美味いな。流石小鞠だ」
「い、いえいえ〜それほどでも……あ、お手ふきあるよ」
「すまないな小鞠」
「そ、それでね、きょーすけさん」
「あぁ、なん……」
なんだかとっても良い雰囲気です! このまま、成功しちゃうんでしょうか……。
「それにしても、良いんですか鈴さん」
「ん? 何がだ?」
「いえ、あのまま成功してしまうと、小鞠さんと恭介さんが恋仲になってしまいますが」
あれ……何してるんでしょうか? 二人顔を近づけて……間が恭介さんの手で良く見えませんが……。
「こまりちゃんに手出すなぼけぇーーっ!!」
な、なんと一瞬のことか! さっきまで隣にいた鈴さんが、恭介さんへと飛び蹴りを放っていました!
恭介さんはそれをモロに受け、「なべしきっ」とよく分からない声を上げて芝生の方向へ……。
「り、りんちゃん!?」
「こまりちゃん大丈夫か! 変なことされてないよな!」
「ほぇ? う、うん、だいじょーぶっ、だよ?」
その二人の近くから、何かが飛び立っていきました。虫か何かですかね?
「あ、ハナムグリさん、またね〜」
「はなむぐりさん?」
「そうそう、さっききょーすけさんが見つけてね〜」
なるほどー、だからあんなに近くに寄っていたのですね、納得です。ぽんっ。
「ではなくてですね!? 恭介さーん!」
芝生で傷を置いながら木陰に座り込む恭介さんがそこにいました。
「理樹……まさかそこまでやり遂げるなんて……思いもしなかった」
「恭介さーん! ここ学校ですー!」
__
「んだよぅ、そんな楽しそうなことしてんだったら俺も混ぜろよっ!」
「数少ない男子を減らす訳にはいかなかったものでな」
な、なんでさらっと恭介さんもこっち側(茂み)に来てるんでしょうか。
「そんなお兄さんにいいお知らせですゼ! 次は念願のペアっすよ〜」
「りんちゃん、きっと上手くいくよ〜」
「あぁ、頑張る。よぅしっ」
「いつか、こんな日が来ないかと夢見てたんだ……気張れよ鈴ッ!!」
「やっぱキモイな」
__
さて、最後にやってきたのはリキなのです!
「恭介ー? 何処まで行ったのー?」
「呼ぶ手間が省けて助かったな。さぁ鈴君」
「うむ、瞬殺だ」
「だからころさないでくださいっ!」
「いつでも報告を受ける準備は出来てるぞ、理樹」
恭介さんが携帯を構えたところで、鈴さんがリキへと向かいました、
「あれ、鈴。どうしたのこんな所で」
「あのな、理樹」
「うん、何?」
「あたしたちが付き合おう」
「……」
その言葉を受けたリキは、一瞬目を見開きますが、そのあと周囲をキョロキョロとした後、携帯を手に取ります。
「直で仕掛けたな……ここまで育てた甲斐があるってもんだっ、うぅっ……幸せにしてやってくれ……ん、なんだ、電話か。はいもしもし」
「……あのさ、恭介」
「あぁわかってるさ……鈴だろ」
「鈴だよ、恭介の差し金でしょ……って」
「わ、わふっ、どうもーリキー」
携帯の着信音を聞いたリキがこちらへとやってきてしまいました……。
__
「ミッション……失敗だ」
「恭介のせいだぞ」
「俺だって、妹の晴れ舞台はテンションが上がるものさ……」
「いやいや……て言うかなんの集まりなのさ、これ」
という訳で、リキにも状況を説明しました。リキはなんだか色々と納得したような表情でした。
「なるほど、○○にね……え、それ考える必要ある?」
「無いな」
「無いです」
「無いっすよ」
「ないかなぁ」
「ない」
「だよねぇ」
「そ、そんなことありませんっ! あちらは夢の中でしたけど、こっちはしょーしんしょーめー、いっせーいちだいのおーしょーぶですよ!」
「だったら、俺たちで告白の方法を考えてやるってのはどうだ? 作戦名は、リトルラブラブ__」
「もうやった」
「どちらかと言うとロリロリハンターズが近い気も……」
「ろ、ロリロリハンターズですか恭介さん!?」
「やめろ理樹! 思い出したくないもん思い出させんじゃねぇ!」
それからまた、しばらくやいのやいのと案を出しても良いものは浮かばず、今回の作戦も……あまり参考になるものはありませんでした。
__
「じゃあお疲れっすー、クド公もこれらを参考に頑張んなよ」
「さ、参考に……うー」
「詩はおすすめです。思いを伝える言葉だけでも、様々な伝え方がありますから」
「お菓子持ってくと、雰囲気も甘くなるよ〜」
「あたしは……んー、わからん。てか考える必要も無いだろ」
三者三様のアドバイスをして、皆さん寮に戻っていきます。……うむむ、どうしたものでしょうかー……。
「いざとなったらうちのロマンティック大統領を派遣する。気負わずにいけ能美」
「いやむしろ悪化してるからそれ……」
「うむむー……リキ達は何かありませんか?」
「んー……恭介にやらせると地面爆破させちゃうからな」
「俺だって次やるときゃ真面目にやるわいっ!」
「あ、そうだ。だったらさ__」
__
すっかり日も暮れて、今日は解散になりました。
リキ達には、しばらく考えてみますとその場で別れて、校舎を一回りしてから、私は一人寮への帰り道へ着きました。
私はとぼとぼと、新たなぶらっくほわいとについて考えつつ歩いていると……。
「ん、クドー」
と誰かに呼ばれました。考え事をしながら歩くものではありませんね、とそちらに目を向けてみると。そこに居たのは△△でした!?
「わふっ、わ、わふー!?」
な、なんという運命のいたずらなのでしょう……。私はまだ心の準備が出来ていないというのにー!
「帰り遅いね、復習とかしてたの?」
「い、いやまぁ復習と言えば復習かもしれないのですが……っ」
私はきっと、この夕焼けに隠されていなかったら随分真っ赤なお顔をしていることでしょう。
い、一体なんの復習だと言うのですか、確かに今みたいな夕焼けの中でぶらっくほわいとは行われたのですが……。は、はたしてもう一度なんて……。
先程、リキから教えて貰った方法は、『もう一度、夢の中と同じ告白をする』という方法です。
確かに、あの時は私も勇気を振り絞りました! △△の事が好きで好きでたまらなくなったからこそ、出来てしまったと言っても過言ではありませんし、この前ちょっと聞いてみたのだって、ただの思い出話の気持ちだったんです!
と、誰に言っているのかもわからない言い訳をして頭を抱えていると、何度か咳払いをした△△が私へ言葉を掛けます。
「クド、ちょっとこっち」
「? は、はい。なんですか?」
「前髪、何かついてるから、ちょっと目つぶって」
「わふ? はいっ」
やっぱり、△△はよく私のことを見ていてくれます。何か少し変わったことでもあればすぐに気がついてくれるんです。三枝さんにネイルをつけてもらった時とか、落書きされた時とか……。とにかく、とっても素敵な人なんです。皆さんが絶対に成功するといっても、私はまだ、こんなにいい人が私だけを見てくれている事実に実感が持てずにいます。今もこうしてわざわざ私の身だしなみを整えてくれていて__
__あれ? でもどうしてわざわざ目を閉じる必要があるのでしょう?
「やー・るぶりゅー・てぃびゃー……」
私の頬に、ほんの少しだけ、触れるような感触がありました。
バッ、と目を開くとそこには口元を隠して、夕焼けだと言うのにわかるくらいに顔が紅潮している△△の姿がありました。
私も、きっと同じ顔です。
「△△、あ、あ、あにょ、今のって……っ」
「あってる、よね……ぶらっくほわいと」
ぶらっくほわいと
好きな人に気持ちを伝える「告白」のことを、「告」と同音異義語の「黒」を使い、「黒白」と誤魔化し、さらにそのまま英語に直訳したもの。(Buster pediaより)
つ、つつつつまりそれって……!?
「……嫌だったら、ごめん」
「嫌なわけないですぅぅう!!!」
がばっちょ。
いても立っても居られず、△△を抱きしめます。
あの時はこれから一悶着ありましたが、色んな経験を踏まえて成長した私達に敵はいません!
「私も好きですーーっ!!……あれ?」
すりすりと頬擦りした後、△△の顔を下から除きこみます。
とても穏やかな顔で、△△は意識を飛ばしていました。
「△△ーっ!?」
それからは、また小鞠さんを呼んで西園さんを呼んで三枝さんを呼んでと、色んな経験を経てなお、こういったことに関してはさっぱり成長していない私達なのでした。
そのあと、当然のように家庭科部室で二人きりの私達です。
こうして二人でいると、ぶらっくほわいとの日とか、初めてキスした日とか、二人で色々お勉強した日とかを思い出してなんだか照れてしまいます。
ほっぺを抑えて左右に震えるのをやめて、そういえばと私は△△へ尋ねます。
「△△から告白をしてくれるだなんて、ど、どう言った気持ちの変化が……?」
「き、気持ちのへんかって程でもないけど……」
「だって、私と付き合うとかお門違いなんてそんな悲しいこと言ってたりしたというのに……」
「な、なんでそのことを知ってるのかはさて置くけど、さっき理樹の部屋にいた時にさ__」
__
理樹に電話が掛かってきてから、男共が集まってきてしばらくすると、真人が西園に呼び出されたらしく、一度離脱して帰ってきた頃。
「おかえりー、なんだってばさ」
「いや、よく解らなかった。なんでも、オレへの気持ちらしいが……濡れたサメがなんだとかって話だったか?」
「それくらいかっこいいってことかな?」
「おぉ、なんだそりゃ、褒められてたのか? オレ」
「サメはだいたい濡れているだろう」
「それもそうか」
「真人はサメより強いからな。俺が保証する」
「それは言い過ぎなんじゃないかな恭介……」
とまぁ、それから謙吾が行って帰ってきて。
「なんかツヤツヤしてんね」
「あぁ。三枝と、愛について語り合っていた」
「おいおい謙吾、まだロマンティック大統領の座は空かないみたいだな」
「空いても別にいらねぇよ……つか、なんだその呼び出し理由」
「三枝も、いい愛が見つかったのだろう。そうだ○○」
何故か目の細まっている謙吾は私の方を見る。なんだよ気持ち悪いなぁ。
「お前も、能美との愛は結局どうなんだ」
「いや……だから無いって」
「なんだと!? お前達の愛は偽物だったのか!?」
「んな訳あるか表出ろやジャンパー馬鹿がよぉ!!」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いてさ」
と、理樹が言うので先程の話を皆に共有。その間に恭介はどっかに行ってた。
「○○、率直に聞くが」
「おう」
「お前はバカなのか?」
「喧嘩を売られてますか? いま」
「言い方は少しあれだけど、僕もそれに同意するよ」
「理樹まで……真人は!」
「悪いが、この件に関しては何も言わないことに決めてんだ」
「なんでさ!」
「いや……だって、オレがアドバイスとかしだしたら『取り敢えず筋トレするしかねぇ』としか言えねぇぜ?」
「うん、自己評価が完璧だったねなんも言えない」
「○○貴様! 女子に恥をかかせるとは何事か!」
「うるせぇそのジャンパー脱いでから言え!」
「嫌だ」
やいのやいのしばらく言い合って、結局どうするのかと言う話に落ち着く。全員うんざりしてる顔なのが癪だった。
「でも、僕は早めに告白した方がいいと思うよ? クドは素敵な女の子だし、いつ誰に取られるかわかったものじゃない」
「く、くくくクドが選んだやつなら……わた、わたわた私は……ぁっぐぅ」
「すっげぇ苦しそうじゃねぇか」
「いい加減、自分の気持ちに正直になるんだ。いざとなれば、このロマンティック大統領が力を貸してやろう」
「お前それ気に入ってんのかよ……」
「いつでも愛について語り合おう」
謙吾が菩薩のような顔で腕を広げるので、私は距離をとった。気持ち悪いから。
「なんであれ、早く告白してあげなよ。クドの事が好きならさ」
「いやーだってー……」
「お前が能美の命の恩人であるように、能美だってお前の命の恩人なんだ。少しくらい勇気見せてやれ」
「そもそもさ、こっちでもクドが私のこと好きかなんてわかんないじゃん? 夢の中の記憶ってみんな曖昧だし」
「いや好きだろ」
「好きだな」
「好きだよ」
「なーんで寸分も迷わず即答なのさ……」
「いくらオレだってそのくらいはわかるぜ。じゃあ今日どう過ごしてたか言ってみろよ」
「今日? 別に普通だけど」
朝は……そうだな、確か……。
「朝はクドが遅れそうだって連絡来たから、昇降口から教室まで運んだよ」
「どうやって?」
「抱っこして」
おいなんだよこの空気は、そんな目でみんなし。
「昼は?」
「中庭で食べたよ?」
「誰と?」
「クド……だけど」
「何を食べたんだ?」
「クドが作ってくれたお弁当。明日は私が作っていこうかと思ってるけど……」
え、なに、怖いんだけど何その目。
「○○、もう一回聞くんだけどさ」
「なにさ」
「付き合ってないんだよね?」
「もちろん」
「嘘をつくなぁぁあ!!!!」
「うぉう、どうしたロマンティック大統領」
急に謙吾が激昂した。どうした、何があった。何が癪に触ったんだお前の。
「能美が可哀想だと思わんのかぁぁぁあ!!!!」
「なんでだよ!? いつもと変わらない過ごし方だろ!」
「オレはなんも言わないと言ったが……流石に引くぜ」
「もうお前は直ぐに告白してこいさっさとしてこい能美をこれ以上誑かすな!!」
「で、でも……そんな告白とかしたことないしやり方わかんないしぃ……」
「だったら、あれ、もう一回する?」
理樹が指を立てて、何かを提案する。
「あれ、とは?」
「決まってるでしょ、真人と謙吾は覚えてるよね?」
「あぁ……あれか」
「まぁ、時間も時間だから会議だけだけどさ」
「それでも構わん、この唐変木を一度叩き潰す必要があるからな」
「誰が唐変木だ」
「それじゃあ、リトルバスターズのリーダーにおいて、オペレーションリトルラブラブハンターズの開始を宣言するっ!」
__
「と、言うわけです」
△△は事情説明を終えて、私の淹れたお茶啜りました。
な、なんという偶然か、全く同じ作戦が同時期に行われていたとは、リキの反応の鈍さにも納得がいきました。
「で、結局一回目の告白がクドからだったから、二回目は私がやるべきと言うことで話がまとまり……方法は思いつかなかったから、やられた時のお返し」
「ほ、ほー……まさか先を越されてしまうとは」
「先?」
「あ、はい。こちらでも同じようなことが……」
「男子共も女子共も考えることは一緒だな……」
「です……」