ロトゼタシアや異世界の出来事を冒険の書として記録や保管を使命とする時の化身とも呼ばれるヨッチ族。
そんな彼等から合言葉を貰い何者かによって歴史を汚された異世界へ行き、元の歴史に修正する依頼を受けた命の大樹に選ばれた2代目勇者アッシュ一向は次なる冒険に向かったのだった。
異世界に繋がる旅の扉から出て道なりに歩いて行くと勇者一向は聞き慣れたトゥーラの音楽と共に踊る村人達と遭遇した。
彼等はこれまでもヨッチ族の合言葉を貰って異世界へ何度も行った事がある経験上、どうやらこの村で何かが起きたと悟り話を聞いて回った。
どうやらこの村人達はユバール族と言う神を復活させる為に世界中を旅して回る一族で、モンスターに襲われ謎の病によって倒れて苦しむ次期族長ライラの為に祈りを込めた演奏をしているそうだ。
「それで族長様、そのライラって人を治す手立ては見つかっているのかしら?」
「えぇ、そうですな……。つい先日、ライラの夫であり一族の守り手でもあるキーファと言う金髪の青年が病に効くとされる
「なんでも6年前、我々一族を助けて下さった大恩人達と旅をしていた時に回復呪文や薬でも治癒しない怪我を治した緑石なら可能性があるとの事ですわ」
「ただ、幾ら婿殿が強いとは言え若く新米の守り手達へ御守り代わりに武器を置いて向かったのは少し心配で……」
「旅人様、会ったばかりで不躾なお願いではありますが我等ユバール族が誇る最強の守り手キーファ殿の手助けをお願いしたく思います」
「分かりました。僕達が絶対にキーファさんと合流してカラーストーンを手に入れて来ます」
ユバール族の重鎮は依頼を受けてくれた勇者アッシュに対して、僅かばかりの報酬に旅の途中に手に入れた世界樹の雫を与える事を約束したのだった。
そこからユバール族から詳細なキーファの特徴やカラーストーンがあるウッドパルナの採掘場について情報を得て一度帰還した。
「それにしてもびっくりしたわね〜、みんな」
「あぁ、そうだな」
「まさか、
「セーニャ、流石に偶然、よね……?」
「まぁ、音楽と言う代物は時代や文化次第では異なる世界だとしても偶然の一致もある事だろう……」
「ですがロウ様、それにしてはその……。アレンが奏でた時とユバール族のメロディに込められた気持ちがあまりにも似過ぎていますわ」
「ふむ……。確かに、姫様の言う通りですね……。音楽にあまり明るくない私でもあれは同質のメロディだったと思います……」
「それに……! それに、あの曲はアレンが兄弟の様に育った親友が好きな大事な曲だって言っていたわ……。そんな大切な音楽が異なる世界で偶然にも一致するなんて……」
「……これ以上は考えても仕方ないから、取り敢えず先にキーファさんと合流しよう。
ウッドパルナのカラーストーン採掘場は少し前に行った爆弾岩の場所だと思うからそこに行けばキーファさんと合流出来ると思う。
アレンさんに関しては僕も気になるけど、それは一旦キーファさん達ユバール族の依頼が終わってからここにいない
ユバール族の休息地から帰還して来た勇者一向は全員困惑していたが、アッシュの一言で冷静さを取り戻してカラーストーン採掘場へと足を運んだ。
勇者一向はヨッチ村には居ないアレンと言う仲間に大なり小なり言う仲間に恩を感じている。
特にマルティナやベロニカ、セーニャ達は幼い頃から自分達を鍛えてくれた師匠であり兄の様な家族同然の親しい存在だった。
また、アッシュやロウに至っては16年前の悲劇で死ぬ筈だったアーウィン国王とその妻エレノアを救出した大恩人だ。
アッシュの両親達は今もなおイシの村で暮らしており、
勇者アッシュの幼馴染であり恋人でもあるエマやもう1人の母の様なペルラ達が、モンスターに襲われずに済む様に彼等が勇者に代わって命懸けで守っているのだった。
だから、アッシュ達は安心して旅が出来ていた。現在は復活した邪神二ズゼルファに対抗する為の情報収集に詰まってしまい、後回しにしていたヨッチ族の依頼を行っている最中だったのだ。
そして、ここで話題となっているアレンと言う青年はアッシュ達がヨッチ村に行っている間、世界各地を回って情報収集に出ていて一時的に離脱していた。
そんな彼は自分の過去についてはあまり多くは語らない。ブチャラオ村で商売に失敗して夜逃げした両親に捨てられた幼い日からずっと旅をしていたそうだ。
そして、その旅の途中で立ち寄ったデルカダール王国で既に引退していたが若い頃にトレジャーハンターだったテオと意気投合し、そのままの勢いでイシの村へ行って住み着いた事くらいしか話さない。
トレジャーハンターとしての冒険譚は嬉々として話すのに彼の年齢に見合わない呪文や技術、知識などの数々については色々あったと笑って誤魔化していたのだった。
その表情はとても懐かしく楽しげではあるが何処か寂しそうな笑みで、そう言う時に限ってみんなが寝静まった夜に少し離れた場所で件のトゥーラを弾いていたのだった。
その光景はあまりにも幻想的で彼が奏でるトゥーラの技量は長年国王を務めて来たロウだけではなく、音楽にあまり縁が無いグレイグでさえも魅了される程の実力があって聞いた後はしばらく余韻で放心する程だった。
だから、アッシュはずっと気にはなっていた。いつか邪神を倒して時間が出来たら問い詰めようと思っていた事に関係がありそうなユバール族の依頼がとても気になっていたのだった。