俺の彼女が邪神だと電波巫女がのたまうんだが 作:納豆シェイク
4月、高校の入学式を終え――夕焼け空の下の河川敷。
「……」
「……うぐ」
相対する男女。
角刈りのもっさり学ラン男子である俺と絶世の美女が一人。
腰まで伸ばした黒髪。
さらさらとしていて風に揺れれば甘い香りがする。
身長は170ほどありそうな長身で、モデルのようにすらっとしていた。
白を基調としたお嬢様学校の制服を完璧に着こなし。
服の上からでも分かるほどに豊満な胸にくびれた腰。
ルビーのように綺麗な赤い瞳に、端正過ぎるほどの美しいお顔。
おっとりとしているような柔らかい表情で、その頬は少し赤くなっていた。
ぷっくりとした唇が静かに動き――
「好きです。付き合ってください」
「――喜んで!」
春の訪れが――俺に最高の出会いを届けてくれた。
#
時が流れて、日曜の休日。
幼馴染のいる神社を訪れて、テーブルを挟んで俺は彼女の事を語る。
料理が上手で、愛嬌があって。
動物にも好かれて、胸が大きくて。
全てがパーフェクトであり、実家も太いようで、と。
それを聞く幼馴染はバリバリと煎餅を齧りながら。
胡散臭いものを見るような目で俺を見つめていた。
「――っていうことでな! 俺、彼女出来たから!」
「……ふーん。アンタみたいな下品な猿に、彼女ねぇ……あ、もしもし? 15歳の男子で、山で幻覚作用のあるキノコを食べたみたいで」
「おい!!」
レトロな黒電話で何処かに電話を掛け始める幼馴染――
俺は慌ててそれを止めさせる。
すぐに電話を掛ける癖は何時もの事だが。
今回はマジで彼女が出来たんだと伝えた。
「はぁ」
「な、何だよ?」
黒髪のツインテールであり、その装いは巫女さんのそれ。
胸は絶壁であり、身長は本人が言うには158らしいがもっと小さいだろう。
年齢は同じ十五歳でありながら、巫女としてはそれなりの貫禄がある。
愛嬌は欠片も無く、気だるげな黒い眼であり、眼の下には若干クマがある。
実際に実家であるこの神社は、地元では有名な
本人も巫女としての修行を積んできて、跡取りとして十分な資格はあると無い胸を張っていた。
今は土日や忙しい時は巫女としての仕事をしているらしく。
今日も仕事だからと顔を見に来てやった。
幼馴染はため息をつき「妄想も大概にしなさいよ」と言う。
俺は悔しくて悔しくて、それならばと証拠のスマホにあるツーショットの写真を奴に見せた。
「これが証拠だぁ! どうだぁ!! 平伏せやぁボケがぁ!!」
「…………え」
俺のスマホに表示された写真。
それを間抜け面で見つめるアホ巫女。
俺は鼻を鳴らして、これで信じただろうとどや顔をし――アホ巫女が俺のスマホを奪う。
「あ、おい!」
「待って…………コラじゃない。本物、ね……でも、この禍々しさは……アンタ、これと何時から付き合ってんの?」
「こ、これって……いや、まだ数日程度だけど……」
「そう、じゃハッキリ言うけど――別れなさい」
「はぁ!? おま!?」
アホ巫女がアホな事を抜かす。
唐突に別れろとは何だと俺は怒る。
「嫉妬か!? 嫉妬してんのか! 自分だけ彼氏いないからってお前!」
「違うわよ! 親切心で言ってやってんの! これは明らかに危険な存在よ! 写真からでも分かるほどに邪気に満ちてんの! こんなのと付き合ってたらアンタ死ぬわよ!?」
「は、はぁぁ!!? 邪気って何だよ!! 意味不明なんですけど!! そんなんで別れる訳ねぇだろ電波巫女!!」
「で、電波ぁ!? こっちが親切心で忠告してやってんのにこの下半身野郎!!」
「あぁぁん!?」
「はぁぁあ!?」
俺たちは立ち上がり取っ組み合いの喧嘩を始める。
机を吹き飛ばしごろごろと床を転がって――電流が走る。
「……!? 何だ今のびりって感じは?」
「――結界が! 嘘でしょ!? 此処にいて!」
「あ、おい!」
御子子は立ち上がる。
そうして、近くに置いていた木箱を持って出て行った。
俺は何事だと思いながらも、何をしに行ったのか気になってついていった。
廊下を歩いていき、すぐに玄関に着いて。
靴を履いて外に出ようとすれば、御子子の叫び声が聞こえて来た。
俺は急いで御子子の元へと向かって――へ?
「な、
「ふふ、こんにちは。恭介さん」
「――逃げて!!」
「え?」
神社の門の下、黒を基調とした服を身にまとった長身の美女。
俺の彼女である
彼女は俺を見つければにこりと微笑む。
相対している御子子は膝をついて札のようなものを持っていた。
逃げろと言われて何の事かと思っていれば、御子子が赤い札を撫子さんに投げる。
紙の動きではない不可思議な動きで彼女の元へとそれらが殺到し――バチリとスパーク音がし全ての札が燃え散った。
「う、嘘!?」
「……トリックか?」
「ふふ」
手品かと見ていれば、撫子さんは歩き出す。
御子子は札を投げ続けるが全て一瞬で燃え散る。
撫子さんは俺へと近づいて来て、撫子は間に割って入った。
撫子は指の腹を口で噛む。
そうして、血を指から出しながらそれで石畳の地面に何かの文様を描く。
「止まりなさい!! 邪なるモノ、現世の不浄を纏いし呪われた獣よ。その歩みを止め、異界へと戻り給え!!」
「うぉ!?」
眩いばかりの光。
一瞬見えたのは、撫子さんの足元に黒い穴のようなものが――が、砕け散る。
鏡を割るように砕け散った。
そうして、彼女は何事も無かったかのように御子子を通り過ぎて俺の前に立った。
「う、嘘よ。私の、術式が、通用しないなんて……神、いや、ま、まさか――邪神」
「じゃ、しん……中二病?」
俺は電波巫女の発言に少し引く。
すると、目の前に立った撫子さんが俺の手を取り――見上げて来る。
「寂しかったです。とても、とても……ですので、会いに来てしまいました。嫌いに、なりましたか?」
「――いえ、全く!! 大好きです!!」
「あぁ嬉しい……では、これから一緒にカフェでお茶でも」
「――はい、喜んでぇ!!」
俺は鼻の下を伸ばしながら彼女の誘いに応じる。
すると、御子子の奴は「行っちゃダメ!」と叫んでいた。
「そいつは邪悪なる存在!! おそらく邪神よ!! 人の生をむちゃくちゃにする存在!! アンタの人生を遊び感覚で滅茶苦茶に!」
「うるせぇぇ!!! こんな美女になら滅茶苦茶にされてぇよボケがぁ!!」
「な!? この発情猿がぁぁぁ!!! どうなっても知らないわよぉぉ!!」
「うけけけけ!!! あばよぉぉ!! 俺は今日、大人の男になってやるぜぇ!!」
「死ねぇぇぇボケがぁぁぁ!!!」
俺は笑う。
天高く響くほどに笑う。
そんな俺の手を氷のように冷たい手で握りしめる撫子さんを見れば――薄い笑みを浮かべていた。