俺の彼女が邪神だと電波巫女がのたまうんだが   作:納豆シェイク

4 / 4
第4話:夢のお城で黒歴史

 人がいない公園のベンチ。

 時刻は昼過ぎで、撫子さんはベンチに座り――俺は膝枕されていた。

 

「……どうですか? 気持ちいいですか?」

「あ、あ、あ……気持ち、いいでふぅ」

 

 膝枕された上に、耳かきをされている。

 美女にされたいシチュエーションベスト10に入るほどのイベントだが。

 そんな事など気にならないほどに彼女のテクは最高だった。

 

 ただホジホジするだけじゃない。

 絶妙な力加減によって気持ちの良いポイントを的確に掻いてくれるのだ。

 至福の時間であり、最高であり――致してしまいそうだった。

 

 俺は必死に快楽に抗う。

 が、チラリと彼女の顔をおっぱい越しに見れば目を細めて笑っている。

 

「……絶景かな」

「ふふ」

 

 俺はこの時間を大いに楽しむ。

 もしかしたら、本当にこの後、大人の男になれるのではないかと考えて――

 

「なりたい、ですか」

「ふぇ?」

 

 急に声を掛けられた。

 彼女は耳かきを耳からのけていた。

 彼女の顔を見れば、変わらず笑っていたが。

 その瞳の奥には妖しげな光が見えた気がした。

 

「大人の男に……なりたい、ですか?」

「え? あ、え、あ――なりたいっす」

「そうですか。では――行きましょうか」

「い、行くって何処に……え、マジっすか!?」

 

 ベンチから起き上がれば、彼女も立ち上がる。

 そうして、白い手を差し出してきた。

 ドギマギしながら握れば、彼女は微笑みながら俺を先導し――

 

 

 #

 

 

「はぁ! はぁ! はぁ!」

 

 夢にまで見た大人の城へ入城し――シャワーの音を聞く。

 

 これは夢かと頬をつねれば痛い。

 夢ではなく現実であり……あぁ、これが俺の理想の果てか。

 

 俺はそんな事を思いながら、このシチュだけで致しそうになっていた。

 

 撫子さんがシャワーに入ってからどれほど経ったか。

 彼女が出てくればいよいよ戦いが始まる。

 俺の最初で最後の戦いになるかもしれないが、この日の為にイメトレは十分してきた。

 

 

 が、それでも――怖い。

 

 恐怖。純粋な恐れで――俺は戦えるのか?

 

 

 もしも、失敗すればこの先一生俺には出会いがないだろう。

 こんな奇跡は二度と起きない。

 だからこそ、失敗は許されない。

 

「うぐ!?」

 

 俺は顔面を殴る。

 思い切り殴れば、鼻から血が垂れた。

 

 恐れるな、戦え。

 俺も立派な戦士であり、息子は何時でも戦える状態だ。

 何も怖がる必要はなく……ふと、彼女の荷物に目がいく。

 

 可愛らしい小さなバッグだ。

 高そうなバッグであり……きっと、彼女の両親が買ってくれたんだろう。

 

「……」

 

 俺の家族もそうだが、彼女にも大切な家族がいる筈だ。

 こんなどうしようもない俺なんかを愛し、家族は育ててくれた。

 馬鹿ばかりやってきて、今も馬鹿な事をしている。

 

 スポーツも勉強も碌なもんじゃなく。

 何かで誇れることなんて無かったが。

 今は世界で一番綺麗だと思っている彼女がいる。

 

 ……そんな彼女との大切なイベント……違う、よな。

 

 ため息を吐き、頭をぼりぼりと掻く。

 すると、そのタイミングでシャワー室の扉が開く。

 中からはタオルを体に巻いた撫子さんが出て来た。

 

 少し濡れた黒髪。

 水を弾くほどに綺麗で白い肌。

 少し肌が紅潮していて、何時も以上に色っぽい。

 

 俺は興奮し喉を鳴らす。

 すると、彼女は笑みを浮かべながらゆっくりと近づいて来て――タオルを外す。

 

 そのまま俺はベッドに押し倒された。

 彼女は頬を赤らめていて、俺へとゆっくりと顔を近づけてきて――俺は彼女の肩を優しく掴む。

 

「ご、ごめん!」

「…………?」

 

 俺は思わず謝った。

 彼女は笑みを浮かべながら首を傾げていた。

 

 既に俺の息子はフル状態だが。

 俺はなけなしの理性で彼女を優しく押し返した。

 そうして、そそくそと落ちているタオルを掴んで彼女を見ることなく差し出す。

 

「…………どうして?」

「え、えっと……ご、ごめん! すげぇやりたいけど! けど! ……その、俺たち、まだ未成年だし! 俺、責任とれるだけの人間にもなってねぇからさ!! だ、だから……今はやめておこう!! 本当にごめん!!」

「…………へぇ」

 

 俺は火が出るほどに顔に熱を感じる。

 恥ずかしい。尋常じゃないほどに恥ずかしい。

 これでは完全に怖気づいてやめたようにしか見えない。

 ザ・童貞であり、穴があったら入りたい……でも、違う。

 

 俺以上に彼女の方が恥を掻いた。

 俺がダサすぎるから、彼女は心に傷を負ったかもしれない。

 彼女だって色々考えて此処に来たはずだ。

 それなのに、俺の勝手な考えでやめろなんて言って……最低だ。

 

「……っ! 撫子さんの事は、大好きだ!! 本当に心から愛してるよ!! 正直、今すぐにもやりたい!! で、でも!! もしこれで、君の人生を決めるような事になったら、今の俺じゃ何の責任も取れない……だ、だから!! もし、俺が立派な社会人になった後も好いてくれたのならその時は――ひぅ!?」

 

 俺は汗をだらだらと流しながら必死に説明する。

 すると、急に背中に柔らかいものがおしつけられた。

 驚いて妙な声を出せば、白く長い指が俺の顔を優しく撫でた。

 

「大丈夫。分かっています。貴方はそういう人ですから、例え何度、生まれ変わろうとも……ね?」

「へ、へ!? にゃ、にゃにが!?」

 

 耳元で囁かれれば、背筋がぞくぞくする。

 俺の息子は発射五秒前だった。

 これがASMRかと震えて――

 

 

 

「何年でも、何代でも、私は待ちます。貴方が私を最期まで愛してくれたように――永遠であろうとも」

「ほ、ほおぉぉおあああぁ!?」

 

 

 

 彼女は甘く囁き最後に耳をあまがみして来た。

 それだけで俺は限界を迎えて――果てた。

 

 俺が絶頂の余韻で震えていれば――扉が蹴り破られる。

 

「ちょお客さぁぁん!!」

「いたわね!! ……! 遅かったか!」

「ふふ、お迎えが来たようですね。では、後はお任せします。また、明日からも――愛しい旦那様」

「待て!! ……くっ!! 気配が消えたか。流石ね……恭介! 大丈夫!? 何をされて」

「――え、何が?」

 

 駆け寄って来た電波巫女。

 俺は真顔で何もされていないと伝えた。

 が、奴はそんな筈はないと俺の体を触って来る。

 

「おいヤメロヤメロアホ」

「……妙ね。特に変なところは……少し磯臭い? 何かの術式か」

「は? は? は? え、え、何? は、え、俺じゃねぇけど? え、ちょ何? え、は、は?」

「………………え?」

 

 奴は俺の下半身に目を向ける。

 そうして、ゆっくりと俺を見てきて――俺を投げ飛ばす。

 

「いで!」

「……最低ね。死ねよゴミ野郎」

「テメェが勝手に入ってきたんだろうがぁぁぁぁぁ!!! ふざけるなぁぁぁぁ!!!」

「……あのぉ、他のお客様の迷惑になるのでぇ」

「失礼しました。私は帰るので……ぺっ!」

 

 奴はゴミ箱にタンカスを吐き捨てる。

 そうして、道端に転がるうんこを見るような目で俺を見つめて去っていった。

 

 俺はまたぐらを濡らしながら、ホテルの受付らしい男に生暖かい目を向けられて――

 

「うあああぁぁぁぁぁどぉぉぉぉしてだよぉぉぉぉぉぉふざけるなぁぁぁぁ!!」

 

 俺は叫ぶ。

 いたいけな少年の思い出の一つが――黒く塗りつぶされた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。