ベイブレードNEO Season3   作:マツザキ蓮

16 / 21
ベイブレードNEO 第58話 不死鳥の決着

ソウタ達に自身の過去を語り、自らの原点に立ち返った少年・焔ツバサ。

 

嘗てのチームメイトとの確執を解くべく前に踏み出す。(ナレーション)

 

「お前が迷いを断ち切ろうが関係ねぇ。勝つのはこの俺だ!」

 

相対する嘗てのチームメイト。

 

ユウマの瞳には勝利への執着のみが映し出される。

 

『Ready……Set!』

 

3・2・1 ゴーシュート!

 

シュート直後、トルネードイーグルはスタジアム中央を陣取る。

 

「チェインケルベロス・アタックモードで退かすか……」

 

「俺を忘れてもらっては困るな!」

 

チェインケルベロスがスタジアム中央へ向かう寸前、レオのスクリューレオパードがそこへ乱入する。

 

当たった瞬間、ブレードに小突くような音が走る。

 

「まるで豹に引っ掻かれるような攻撃……これは一体……!?」

 

「レオパードのエクストラブレードはギミックブレードをずらすことで細かい連打刃と巨大なアッパー刃を切り替えられる!」

「今は連打攻撃に特化したラッシュモードだ」

 

(これではツバサのサポートも出来ない……!)

 

「もう終わりか? なら……」

「トドメだ! スクリューレオパード!」

 

スクリューレオパードの名を叫び、レオパードから豹のオーラが現れる。

 

「ハンティングクロー!」

 

(一気に畳み掛けてきたか……こうなったら)

「覚悟を決めるぞ! ケルベロス!」

 

レオパードの畳み掛けるような攻撃に臆せず、立ち向かう。

 

現に2機はバランスタイプでありながら、高い攻撃力を持っている。

 

ブレード同士が接触し合い、互いのスタミナを削り合う。

 

「何ッ……!?」

(まさか、相打ちを狙って……!?)

 

相打ちになるかならないかのギリギリさに互いに目を離すわけにはいかなかった。

 

「おおーっと! ケルベロス、相打ち覚悟でレオパードに特攻していきます!! 果たしてその結果はいかに!」

 

実況のまくし立てるような話し方に多くの観客がスタジアムに注目。

 

__カタッ……

 

「!」

 

「よし……」

 

「レオパード、停止ーー! ケルベロス、僅かに余力を残しています!! 象栄学園、残るはトルネードイーグルのみとなりました!」

 

先に回転が止まったのはレオパードの方だった。

 

象栄学園で残ったのはユウマのトルネードイーグルのみ、ケルベロスはまだまだ余力を残していた。

 

「バン……!」

 

「ツバサ。俺には更なる『策』がある」

 

「策?」

 

「相手が技を出してきたらそれを受け止めてほしい。お前の力が必要なんだ」

 

「……!」

 

バンは更なる策があるといい、ツバサに力を貸してほしいと言う。

 

(レオまでやられるなんてよ……!)

(だがここで勝たなきゃ、『親父』が……!)

 

窮地に立たされ、勝利への執着は更に強まる。

 

ユウマはそんな中、父親のことを思い返す。

 

――

 

『親父、英検3級受かったんだ』

 

『そうか……』

 

(また無関心な……)

 

ユウマの父は多忙な人物であった。

 

仕事がない日も予め片付けておくと言って、息子のことにはあまり目もくれなかった。

 

そんなある日。

 

『親父……。俺、ベイブレードのアマチュアリーグで優勝したんだ』

(どうせ言っても無駄だろうけど……)

 

『何……! 凄いじゃないか!』

『流石は私の息子だ』

 

(褒めてくれた……? 親父が……?)

「ありがとな、親父!」

 

普段褒めもしない父が、褒めてくれた。

 

ユウマの心は初めて「優越感」というものを覚えた。

 

(つまり俺は勝ち続ければ……親父は俺を褒めてくれる……! 認めてくれるんだ……!)

 

だがそれと同時に「勝利への執着」へ支配されるようになってしまった。

 

無論、彼自身その支配に気づくはずもなかった。

 

――

 

「俺は勝つ! 親父に認めてもらうために!」

 

「ユウマ……」

 

会場に来ていたユウマの父親は、息子の執念に複雑な顔をする。

 

「ユウマ、君の気持ちは理解できる。けど……そのために仲間を責めることは違うと思う……」

 

「黙れ、黙れ、黙れぇぇぇッ!」

 

ツバサの説得にも耳を貸さず、その執念は暴走しかけていた。

 

「こ、これは……! ツバサ選手、ユウマ選手、互いに何やら言い争っている様子です! 生駒町長これは……!」

 

「これは大変なことになりましたね。まぁでもツバサ選手のことですし、この状況も大丈夫でしょう」

(凄まじいほどの負の感情のエネルギー……! これです……! こういうのを待っていたのです!)

 

実況はその様子を見て心配するが、征二狼はどうでも良さそうにしていた。

 

寧ろエネルギーの獲得の方が彼にとっての優先だった。

 

(おかしい……町長にしてはやけに他人事な言い方だ)

 

その一方で、観客席に紛れ込んだ瀬際刑事は確かに町長の違和感を感じ取っていた。

 

(さて……、エネルギーはどのくらい溜まっているか……)

 

町長に成り代わった征二狼は、腕時計のようなツールを見てエネルギーの具合を調べていた。

 

(やはりおかしい……! あのツールもそうだがヒカル君の言う通り、言動の違和感は確かだ!)

 

(町長と同じ髪型、髪色、服装だが決定的に『何か』が違うッ……!)

 

(一旦、この場を離れて町長の家を調べてみよう……!)

 

瀬際刑事は言動の違和感を確定的なものとし、町長の自宅を実際に調べることにした。

 

――生駒家――

 

「町長の家はここだな」

 

「鍵は開けっ放し、電気もつけっぱなしだ……。一階には見当たらないな」

 

町長の自宅にたどり着き、早速違和感を感じつつも2階へ向かう。

 

「ん? 寝室か? なんで電気が……」

「……ハッ……! 町長!!」

 

そこにはパジャマ姿でベッドに放置された生駒町長本人がいた。

 

「頭部に外傷が……! 体も冷えている、これはもう……」

 

本人は見つかっても、絶望的な状況だった。

 

しかし……。

 

「まだ希望はあるぜ」

 

「誰だね君は……!?」

 

「俺の名は剣山聖。通りすがりのブレーダーだ」

「だが今はこいつの治療が先だ」

「聖剣の光!」

 

突然やって来た聖が、町長本人にロードエクスカリバーをかざす。

 

その光はすぐに町長を包みこんだ。

 

「あれ……、私は……」

「なんでパジャマ姿に……」

 

「町長!! 良かった……!」

 

町長は無事意識を取り戻し、頭部の外傷も消えた。

 

「私は何を……?」

 

「あんたは気絶させられたんだ」

 

「何だって!?」

 

「これを見てみろ」 

 

そう言うと、聖は彼に向けてスマホで撮った動画を見せる。

 

――

 

『すっかり遅くなってしまった』

 

『……ふふっ……!』

 

――ドシュゥゥ――

 

『がっ……!』

 

――

 

「これは……! 神世征二狼……!?」

 

「そんな……私はベイをぶつけられたのか……」

 

「まっ、そういうことだ」

 

「でもなんで君がそんな動画を……」

 

「帰り道に見かけたんだ」

「やつはずっと構えていた。どっちにしろ不審な行動には変わりねぇから録画しとこうとした。そいつはそのついでってところだ」

 

成り代わられるプロセスを聖は偶然とはいえ、目撃していた。

 

「そういうことだったのか……」

 

「だが君のおかげでいい証拠が掴めた。ありがとう、聖君」

 

「偶々この様子が撮れただけだ……」

 

瀬際刑事からの感謝に対し、照れながらもぶっきらぼうな返事をする。

 

「ところでおっさん、名前は? あと傷害罪も適用されるんだろ? この場合」

 

「おっと、自己紹介が遅れてしまった。私は瀬際勝。根尾警察本部所属の刑事だ。そして君の言う通り、傷害罪が適用される。加えてやつは器物損壊罪も適用されている。いわゆる『併合罪』というところだな」

 

「はぁ……どうやらそいつは『根っこからの悪』のようだな」

 

聖は征二狼の所業に呆れながらも「根っこからの悪」と怒りを滲ませていた。

 

――根尾開成国立競技場――

 

「ユウマ、君が本当に欲しかったのは『勝利』よりも『お父さんからの愛情』だったんじゃないか? 君の孤独を、僕のフェニックスとバンのケルベロスが解放してあげる」

 

「うるせぇ! 勝たなきゃ意味がねぇんだよ……勝たなきゃ……そうでないと親父は俺を見てくれねぇんだッ!」

「飛ばせ! トルネードイーグル!」

 

ユウマは更に苛立ち、トルネードイーグルとの共鳴を始める。

 

彼の声に呼応し、鷲のオーラが現れた。

 

(来たっ……!)

 

「トルネードサークル!」

 

ベイから放たれた気流がフェニックスとケルベロスを飛ばそうとするが……。

 

「何ッ!?」

 

リヴァイヴァルフェニックスのスライドギミックが気流を分散、ツバサはそれを見て成功を確信した。

 

「待っていたよ、この時を」

「頼んだよ、バン」

 

分散した気流がチェインケルベロスを運ぶと同時に、リヴァイヴァルフェニックスもトルネードイーグルに向かっていく。

 

「行くぞッ! トルネードブレイクW(ダブル)!」

 

「なっ……!」 

 

『チェインケルベロス、リヴァイヴァルフェニックス、バーストフィニッシュ! 根尾中学校の勝利!!』

 

2機同時による挟み撃ちが炸裂し、イーグルをバーストさせた。

 

「決まったぁぁッ! 根尾中学校、コンビネーションの強さを見せつけAブロック決勝突破です!」

 

「俺が負けた……? 俺の存在意義は……? 俺の価値は……?」

「俺は……もう親父には……」

 

ユウマは膝をつき、絶望の表情すら浮かべていた。

 

「ユウマ!」

 

「親父……?」

 

そんな中、ユウマの父が彼のもとへ近づいてきた。

 

「ユウマ、惜しかったな……」

 

「惜しかった……? 完敗だよ……。完全に……」

 

「ユウマ、少し聞いてくれないか?」 

 

「私はお前に関心を向けなかった……。そのせいでお前を歪ませてしまった……、寂しい思いをさせてしまった」

 

「すまなかった……」

 

ユウマのことを強く抱きしめながら、寂しい思いをさせてしまったことを詫びる。

 

「親父……」

 

「互いにやり直して行かないか? お前が寂しいなら、ずっと側にいることを誓おう」

 

「親父……親父!!」

「うわぁぁぁぁ……!!」

 

嫌味な態度、攻撃的な態度から一変、小さな子どものように泣きつく。

 

それは父から認められるために勝つという一種の「呪縛」から解放されたことへの喜びだったのだろう。

 

「ツバサ、悪かったな」  

 

「僕も悪かったよ……」

 

「私も……」

 

「俺の方こそ、すまなかったな」

 

「分かってくれればいいさ、これから君達は互いに切磋琢磨し合うライバルだ」

 

彼をはじめ、象栄学園のメンバーたちはツバサに詫びの言葉を送る。

 

「ああ!」

 

握手を交わし、今和解が果たされた。

 

「素晴らしい! Aブロックから今、和解の瞬間が描かれました!」

「そして、次のBブロックからは聖永学園が決勝を突破し、Bブロック代表となります!」

 

「次は聖永か……、てことはマイ達と戦えるってことだな! 楽しみだぜ!」

 

一方で次のBブロックでは聖永学園がその代表となった。

 

次に控えるのは嘗て、行動をともにした仲間。

 

それでも彼らは超えていくことを誓う。

 

自分達の歩んだ道を証明するために。(ナレーション)




__イメージCAST__ 

蒼龍ソウタ-小林千晃

門守バン-梶裕貴

焔ツバサ-榎木淳弥

羽田ユウマ-林勇

月野リク-村瀬歩

川島ルカ-茅野愛衣

野山レオ-佐藤拓也

古面定太-小野坂昌也

神世征二狼、生駒柊斗-遊佐浩二

瀬際勝-玄田哲章

剣山聖-小野友樹

ナレーション-森川智之

ベイブレード

トルネードイーグル.C2.Y
(サークルツー・イールディング)
(鷲モチーフのスタミナタイプ。)

アッパーフォースモード→ギミックブレードを上向きにセットすることでアッパーフォースを生み出す。

ダウンフォースモード→ギミックブレードを下向きにセットすることでダウンフォースを生み出す。

スクリューレオパード.Rc3.U
(リーチスリー・ユナイト)
(豹モチーフのバランスタイプ。)

ラッシュモード→ギミックブレードをずらすことで細かい連打刃での攻撃に特化。

アッパーモード→ギミックブレードを重ねることで巨大なアッパー刃によるアッパー攻撃に特化。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。