創星学園にて神世カイ、ロキ、エリス、神世ハルトに勝利したソウタ達。
いよいよ彼らは次なる刺客にして神世家長男・神世轟に挑む。
――創星学園(4階)――
「遂にここまで来たな」
「相手は神世家長男……。更には自分の兄弟まで吸収したんだ……油断は出来ない」
ソウタ達は階段を上りきり、轟が待ち構える4階へ辿り着いた。
ヒカルの言う通り、自身の兄弟を取り込み更なる力を得ているため、一切の油断は許されない状況にある。
「……」
そんな中、メイがハデスを握りしめ、心からの不安を静かに訴える。
「メイ、不安だよな……」
(何か俺にできることは……そうだ……!)
その心情を察知したソウタはすぐさまスマホを取り出す。
緊急連絡手段として両親・学校から携帯を許可されていた。
彼はある人物に繋がる番号を入力し、連絡を取り始めた。
「おや、どうしたのかな? ソウタ君」
「!!」
「お久しぶりです、師匠。貴方に少しだけ話を聞いていただきたく電話をしました」
その相手はエクストラブレードの創造主でありソウタ達の師である「キング・ジン」だった。
彼の声に対し、真っ先にメイが反応した。
「話を……? 何か相談をしたいってことかな」
ジンの声を聞く度に彼女は心音を刻んでいた、それでもソウタにスマホを渡すよう、そっと手を伸ばした。
スマホを受け取り、耳に当て、師の声に胸が高鳴りながらも話し始めた。
「師匠、お久しぶりです……!」
「君は……メイちゃんか。久しぶりだね、相談をしたいのは君ということかな?」
「はい……! 実は……兄の『神世轟』とこれから戦うことになりました。でも……眷属から力を与えられた彼に勝てるのか……そんな不安が膨らんでいき……」
最初は嬉しげな返事をしていたが、これからの戦いのことを考える度に声を震わせ、自信が失くなっていく様子を見せる。
「……君の抱えている不安……確かに受け止めたよ。だが私から少し話をしたい。聞いてもらえるかな?」
「はい……」
音声通話であるが故、互いの顔を見ることは出来なかったが、ジンの声から彼は今どんな表情をしているかは想像に難くなかった。
「私から言いたいことは一つ。『君は一人じゃない』」
「……!!」
「実は私も少し前にあった根尾杯を見ていたよ。象栄でのソウタ君との『連携』や聖永での『戦術』とバトル後の『温かい会話』……正しく成長している証だった。それに私との通話もソウタ君が、君の気持ちを察知してくれたから始まった。無理やり気持ちを抑え込まず、正直な思いを伝えられている……その時点で君は『幸せ者』さ」
「師匠……!」
ジンのしっとりしつつも熱さを秘めた声がメイの心を癒していく、彼女は無意識に涙を零した。
「最後に君に言っておく。君ならどんなことでも成し遂げられる、師として愛弟子の健闘を祈るよ」
彼は最後にそう言い、電話を切った。
温かい励ましの言葉に彼女の不安は和らいでいく。
「ありがとうございます……師匠。私、精一杯頑張ります!!」
メイの瞳には更なる輝きが宿り、一歩一歩前にその足を進めていく。
そんな中、ソウタはあることを考えつく。
(神世家のベイで出てないのは何タイプだっけ……メイのハデスは『ディフェンス』、カイのポセイドンは『アタック』、ハルトのソルは『バランス』、だから……轟のベイは恐らく『スタミナ』だ……!)
(師匠はメイは一人じゃないと言っていた、俺も仲間として出来ることがあるはず……そうだよな、相棒《ドラグニル》!!)
返事をするかのようにドラグニルが一瞬だけ輝いた、それを見てソウタはある行動に出る。
「メイ!」
「どうしたのよ、ソウタ」
メイを呼び、彼女が振り向いたことを確認すると……。
「!!」
ソウタはアルティメットドラグニルから『レガシー』ギアを取り外した。
「あなた、何やって……!?」
当然、メイは戸惑うが、ソウタは何故か笑顔をたたえていた。
「メイ、このギアをお前に託すぜ。師匠が言っていた『君は一人じゃない』という言葉から俺も仲間として最大限出来ることをしたい……」
「ソウタ……。……しょうがないわね、あなたのお節介さ……受け取ってあげる」
ソウタの意思が本気であることを察したのか、彼からレガシーギアを受け取り、ハデスにセットした。
それにより、デミスハデスがアタックタイプにカスタマイズされた。
「行こうぜ……メイ」
「ええ」
フロア内を進んでいくと遂に彼の声がベイブレード部の鼓膜に届く。
「おや、てっきり泣いて逃げるかと思ってたけど本当に来るなんてね」
遂に神世家長男・神世轟と相対、神経を逆撫でるような発言は相変わらずだ。
「轟お兄様、悪いけど私はもう逃げない。カイお兄様とハルトお兄様を吸収したのは許せない……!」
「そして……あの日のこと、忘れもしないわ……!」
――
3年前、当時11歳だったメイは母親の神世杏子からある話を聞いた。
『お母様、話って……?』
『あのねメイ……お母さん、『離婚』することになったの……』
『え……!?』
突然の話題に彼女の頭は真っ白に染まった。
『それって……何かの間違いじゃ……』
『ごめんね……本当なの……』
『お父さんと話し合ったうえでの離婚だから……』
娘の戸惑いを重々承知しつつも、杏子は言葉を続ける。
『あの人はずっと何かの研究に一生懸命になって……しかも子どもたちを誰一人連れて行くなって……』
『でも、これだけは言わせて。メイ、あなただけは……あの人のようにならないで……!』
『お母様……!』
彼女は涙をホロリと流しながらメイのことを抱きしめる。
『最後にこれをあなたに……。これを私だと思って、離れ離れになっても私はあなたのことを愛しているわ』
家を出る前に御守りをメイに手渡し、再び娘のことを抱きしめた。
神しか知らない『不条理』を突きつけられたメイ、当時の彼女に出来ることは家を去る母の背中を只々見送るだけだった。
――
「お母様は辛い思いでこの家を去った……。だからお父様達との決着を此処でつけたかった」
「あの『女』はお父様の考えを何も分かっていなかっただけ。此方からしてみれば居なくなって清々したよ」
メイの母を想い続けるが故の怒りを、轟は冷酷な笑みで否定する。
「テメェ、母親まで侮辱してんじゃねえ!!」
彼の徹底的な冷徹さにソウタは思わずその場に割って入ってしまった、それでも轟は一切動揺しない。
「おぉ怖い怖い……」
「ソウタ、ここは私が決着をつける。あなたが託してくれた力で……」
「さあ始めようか、メイ。僕の『レイゼウス』が裁きを下す……」
轟が取り出したのは天空神ゼウスモチーフのベイ「レイゼウス」。
ブレード内部には上下左右4方向に鉄球が入っていた。
3・2・1 ゴーシュート!
ハデスはスタジアム外周を旋回し、徐々に距離を詰めていく。
ギミックブレードを固定したディフェンスモードでゼウスに重い初撃を与えるが……。
「無駄だよ」
最初の攻撃などまるでなかったかのようにゼウスの回転は安定していた。
「僕のゼウスはブレード内部に配置された鉄球が遠心力で動くことでスタミナを確保できる。それに対しメイ、君のハデスは元はディフェンスタイプ」
「ギミックブレードを固定してあるとはいえ、防御に特化した形状でアタックタイプにしても無理があるよ……」
その仕組み《メカニズム》にはブレード内部の鉄球による遠心力のスタミナの保持だった。
ゼウスはスタジアム中央に居座ったまま、その場を動かなかった。
「……ッ!!」
「悪いけど、もうカタをつけようかな。レイゼウス!」
轟の声に共鳴し、ゼウスのオーラが現れる。
「轟雷雷鳴走《ライトニングオーバードライブ》!!」
雷鳴の如くスタジアム内を駆け抜け、デミスハデスをスタジアムの壁の方まで弾き出した。
(やっぱり私は轟お兄様には……)
メイがそう考える中、誰かの手が彼女の肩に触れる。
それはどこか懐かしい気配がした。
『メイ!』
「カイお兄様……? それにハルトお兄様まで……!」
彼女の後ろにはカイとハルトの「思念体」が現れ、話しかけてきた。
『メイ、君はこんなところで終わる奴じゃない』
『蒼龍ソウタから託された想いはまだ死んでいない』
『カイの言う通りだ、ベイが回っている内はベイ自身を信じろ』
「そのアドバイスは嬉しいけど……どうして……」
『俺達からのせめてもの「罪滅ぼし」だ』
『話は終わりだ。今は君が向かうべき道を……』
カイとハルト、それぞれの思念体は罪滅ぼしとしてメイにアドバイスした後、消えていった。
「カイお兄様、ハルトお兄様……ありがとう……」
「何を言っているんだい? メイ」
「そして……轟お兄様、私はあなたを超えるッ!!」
(何だ……!? この気迫は……!)
突如として轟の身体は震えだし、顔に冷や汗を流し始めた。
「行くわよ、ハデス!!」
ハデスが向かった先……そこはスタジアムの壁だった。
だが、それを見てソウタはあることに気づき出した。
「あ……あれは……!」
(間違いない……! それは嘗て俺が披露した……メイ、お前も……!)
驚きつつも、真剣な眼差しとともに微笑をたたえた。
レガシーギアのディスク部分が衝撃を和らげ、その直後軸先が格納。
轟音を立てて加速し始めた。
「なッ……!! 何ィィィ!?」
加速を発動させたハデスはゼウスに一切動く隙を与えず、そこに連続攻撃を叩き込む。
「これはカイお兄様の……」
「あ……」
「次にこれはハルトお兄様の……」
「あぁぁ……」
「そしてこれは……お母様の分よぉぉぉ!!」
「あぁぁぁぁ………ぁぁぁぁ!!」
兄2人と母、その想いを込めた攻撃にゼウスはたまらずバースト。
神世家最後の刺客に勝利を掴み取った。
「や……やったぁぁぁ!! メイの勝ちだァーッ!!」
「良かっだ……! 本当に良がっだよぉぉぉ!!」
「もう……。そんな泣いちゃって……」
「涙拭きなさいよ」
「ああゴメン……」
ソウタは喜びのあまり、男泣きをしてしまった。
(お母様……勝ったよ)
勝利の余韻に浸ることはせず、ポケットから御守りを取り出し、母を想う。
「そんな……僕が負けるなんてあり得ない……!」
「これは何かの間違いだ……! きっと夢なんだ……!」
「無様だな」
敗北を受け入れられない轟のもとにルシフェルが突然現れた。
「ルシフェル……!!」
「く……ッ……!」
そんな中、轟は突如として首根っこを掴まれ、苦しみだした。
「な……! 何のつもりだ……! ルシフェル!」
「僕達は同志じゃなかったのか……!?」
「……やはり人間は愚かだ」
「私が貴様に兄弟を吸収させたのは、最終的に私がそれを取り込む為だ。貴様が勝とうが、負けようがな……。更に言えばそれさえ出来れば後はどうでもいい、ハナから貴様らなど同志ではなかったのだよ……」
「そん……な……!」
(兄弟を取り込んで全てを手に入れた……そんな気になっていた……)
(むしろ最初から踊らされていたっていうのか……!?)
ルシフェルは神世家のことは最初から同志としては見ておらず、利用するために轟に能力を与えたに過ぎなかったと言う。
「フザ……け……るな……!」
轟は怨み言を呟いた後、ルシフェルに吸収されてしまった。
「そんな…轟お兄様が吸収された…!」
「根尾中ベイブレード部といったか」
「ロキもエリスも神世轟も誰も役に立たなかった……。よって私と我が主・ソラナキがこの世界を掌握するッ!!」
「私を討ちたいのならば5階へ行け……。我がサタンが貴様らを絶望へ包みこんでやろう…」
振り向いた後、ルシフェルは創星学園最上階・5階の方へ階段を上っていく。
眷属のトップだけあって、威圧側は相当のものであった。
「やってやるさ! この世界はお前らの思い通りにはさせねぇ!! ルシフェル、この戦いは俺達が勝つ!!」
ソウタ達も彼を追って、5階へ向かっていった。
神世家長男・神世轟に勝利したメイ。
その後、ルシフェルから轟に告げられたのは彼らに利用されていたに過ぎなかったという残酷な事実。
ベイブレード部は最後の刺客を討つために立ち向かっていく。
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ-小林千晃
一角ヒカル-小野賢章
神世メイ-竹達彩奈
キング・ジン-子安武人
神世轟-石田彰
神世カイ-興津和幸
神世ハルト-中村悠一
ルシフェル-関智一
神世杏子-三石琴乃
(髪型:黒のレイヤーセミロング/目の色:深い青)
ナレーション-森川智之
ベイブレード
レイゼウス.Wg4.MB
(ウエイトフォー・メタルボール)
(ゼウスモチーフのスタミナタイプ。)
スタミナモード→ギミックブレードをずらすことでブレード内部の鉄球が範囲内で可動。
ロックモード→ギミックブレードをアンダーブレードの突起に合わせることで鉄球の可動を抑制。
カスタム機
デミスハデス.Lg
(レガシー)
(ハデスの下のパーツをアルティメットドラグニルのギアに換装。)