厄災・ソラナキとの最終決戦、ジエンドベリアルの桁外れの性能にソウタはなす術なく叩きのめされる……。
更に追い打ちのごとくドラグニルを破壊されてしまった……。
「厄災・ソラナキと蒼龍ソウタ選手の戦い、依然決着がついていません……。現在、現場は煙幕に包まれています……」
戦場となった根尾中学校の校庭は激しいぶつかり合い故か、煙幕に包まれていた。
「煙幕が……!」
「! そ……、そんなッ! 蒼龍ソウタ選手が……倒れています! アルティメットドラグニルも大きなダメージを受けたのでしょうか……『破壊』されています……!」
暫くしてそれも晴れたが、古面は怪我をして倒れ込んでいるソウタと破壊されたドラグニルを目撃。
凄惨な光景に唖然としていた。
「ソ……、ソウタ!!」
「フハハハハッ……! いくら足掻こうと所詮、神と人間……」
「自身の傲慢さ、弱みを悔やみながら消えるがいい!!」
「ジ・エンドだ!!」
「ぐっ……! 体が動かない……!」
(俺……もう死ぬのか?)
(俺は……この世界を守れないのか?)
(ドラグニルも……壊されて……もう……)
体がまともに動かず、意識が遠のく中、ある声がソウタの鼓膜を揺らした。
「いい加減にしなさいよ!!」
「メイ!?」
「ソウタは傲慢でもないし弱くもないわ!!」
「少し抜けてるけどその実力、ベイを愛する心と正義の心は確かなものよ!」
「アンタみたいな『タタリ神』なんかちっとも怖くないんだから!」
「メ……メイ……!」
「小娘ェ……! 先ずは貴様から始末してくれる……!!」
「やってみなさいよ!」
メイがソラナキに向かって啖呵を切り、デミスハデスをシュート。
その時、ジエンドベリアルの左側に僅かな「ヒビ」を入れるも、すぐさま修復されてしまう。
「……!」
「ハデス!」
「ごめんね、ハデス。けど……あなたの攻撃は決して無駄ではないわ」
上空から落下したハデスを間一髪キャッチ、相棒の一瞬の攻撃を涙ながらに称えた。
「よくも我をコケにしおってェェェ……!」
「この星もろとも消え失せろォォ!」
想定外の瞬間にソラナキは苛立ち、ベリアルに向かって負のエネルギーを集めだした。
「やってみろッ!!」
「お前に出来るのならな……!」
「僕達の絆はお前に屈することはない!! 決して……!!」
それに対し、ベイブレード部のメンバーであるバン、ヒカル、ツバサがソウタを庇い立てる。
「お……、お前ら……!」
「俺もこんなところで倒れてる場合じゃねぇな……!」
それを見て、ソウタは少しずつ腰を上げ……。
「ソウタ……!」
遂に立ち上がった。
「なんと! 蒼龍ソウタ選手、立ち上がりましたーーーッ!!」
古面のまくし立てるような実況は相変わらずだったが、今の場合、そこには嬉しさが込められていた。
「皆ーー! 聞いてくれーーーッ!!」
「ソラナキに勝つために皆の力を俺に貸してくれーーッ!!!!」
ソウタはバラバラになったドラグニルをかざし、根尾町内に向かって叫ぶ。
その瞬間、ハデス、ケルベロス、ユニコーン、フェニックスがまばゆい光を放ちだした。
4人とも無意識に自分達のベイをかざし、ドラグニルにエネルギーを送り込む。
「おーーっと! 根尾中ベイブレード部のベイからエネルギーが送り込まれています! これは一体……!?」
「……! シオン、私達も……!」
「そうだね、マイ!」
「ソウタさん、私達の力……受け取ってください」
それを見ていたマイとシオン、そして聖永学園のメンバーは一斉に自分達のベイをかざし、エネルギーを送り込む。
「僕達も彼に力を貸そう……姉さん」
「そうね、ライ」
弐階堂姉弟をはじめ、星楼中の面々も力を貸す。
「蒼龍ソウタ、お前なら任せられるぜ……」
「受け取ってくれ、僕達……血族の力を」
象栄学園のユウマ達、天晶学園の龍真達も、更には冥来、獣界、爽海、和真、王谷、豪龍も……。
「おいおい、俺達も忘れるんじゃねぇぜ……?」
「愛弟子のピンチに駆けつける……それが師というものさ!」
「ソウタ、手を貸すぞ!」
「頑張って!」
「聖、師匠、父さん、母さん……!」
聖、ジン、両親、神世学園からコウ、ダイ、リンも加勢。
「僕達も力を貸そう……」
「だからよ……」
「負けないで……!」
「お前ら……!」
そして……
「ソウタ、あのタタリ神風情に負けることはこの俺のプライドが許さん……」
「だから……この世界を……この町を守れ……!」
(ありがとな……龍……)
ソウタにとって永遠にして最高のライバル・皇龍。
彼は今まで以上のエネルギーをソウタに送り込む。
常に高め合ってきた存在が自分に力を貸してくれていることへの嬉しさ、溢れんばかりの希望がソウタの体を伝っていく。
そして遂にドラグニルのパーツが一つとなり、復活を遂げる。
「甦っただと……!?」
「だがそれがどうしたというのだ! 今度こそ神の裁きを受けるがいい!!」
(皆……、ありがとな。そして……)
「行こうぜ、相棒《ドラグニル》!!」
ソウタとドラグニルは激しく共鳴……、更には軸先が格納して超加速。
一直線にベリアルへ向かっていく。
「ソラナキ!! お前にたった一つ……たった一つだが言わせてもらうぜ!」
「俺達の思い出も……仲間との絆も誰にも奪わせねえ!」
「アルティメットバスター・ネオ!!」
超加速したドラグニルは凄まじい勢いでベリアルに激突し、ハデスがヒビを入れた部分に当たる。
それと同時に……。
「なッ……!?」
「ナァァァニイィィィッ……!?!?!?」
ソラナキの肉体にもヒビが入り始めた。
彼は今までとは打って変わって何が起きたのかという混乱、動揺を顕にした。
「ばっ……バカな……!?」
「わ……! 我は……神ぞ……! ごく短い時しか生きられぬ……雑種如きに……!」
「我は……! 神ぞォォォォォ!?!?!?」
肉体のヒビが広がったソラナキは断末魔を上げ消滅。
それに呼応するかのようにベリアルも完全に粉砕された。
「やっ……! やりました! 蒼龍ソウタ選手! 厄災・ソラナキを打ち倒し、世界は……根尾町は救われました!!」
町中が歓声に包まれる中、ソウタは上空から落ちてきたドラグニルをキャッチする。
(ありがとな……バン……ヒカル……ツバサ……メイ……。根尾町の皆……龍……)
(そして……、ドラグニル……お前は最高の相棒だ……!!)
「ソウタ!」
そんな中、体力を使い果たして倒れそうになる彼をバンが抱きかかえる。
「ソウタ、よくやってくれた」
「頑張ったね!」
「バン、ヒカル、ツバサ……」
チームメイトの顔を見て安心したのか、ソウタは一瞬だけ微笑をたたえた。
「うわぁぁぁ……!?」
「…………」
「…………(すまなかった……。メイ……)」
神世三兄弟の思念体も消滅する。
カイとハルトの思念体は断末魔さえ上げなかった。
しかしカイの思念体は心の中でメイに自分の行いを詫びた。
「カイお兄様、ハルトお兄様……」
「おのれ……! おのれェェェェェェ!!」
メイが感傷に浸る中、背後か征二狼が彼女の首を掴む。
計画を邪魔され、台無しにされた怒りからか彼の目は完全に血眼になっていた。
「!!」
「いい加減にしろッ!!」
「ぶはぁ……!」
しかし、聖がロードエクスカリバーを征二狼の腰めがけてシュートし、間一髪凶行を防ぐ。
そして……
「器物損壊及び傷害罪で逮捕する!」
「……! その薄汚い手で私に触れるなぁぁぁぁ……!! この……クソったれがぁぁぁ!」
遂に征二狼に手錠がかけられた。
長きに渡って根尾町を蝕んだ邪悪は遂にその正義のもとに打ち砕かれたのだ。
――2ヶ月後――
「先々月逮捕された神世征二狼被告は器物損壊罪、傷害罪の併合罪が成立していましたが、厄災・ソラナキの封印からの解放を幇助したことから裁判ではそれらを加味し、最終的な判決を下すとのことです」
「また、ソラナキの眷属のベイブレードは根尾博物館地下室にて厳重管理されることとなり……」
「全く……。これに加えて実の娘まで手にかけようとしたからな……」
根尾町を救ったソウタ達は部室にて他校との交流を交えた祝勝会を行っていた。
「にしても聖、アレはファインプレーだったぜ」
「ファインプレーも何もシンプルにヤベーだろ。アレは……」
聖の言うとおり、実の娘を手にかけようとしたのは相当の悔しさがあったのだろうが、端から見れば引かれても仕方のないものだ。
「あはは……」
「でも、瀬際刑事も悲願が達成されましたね!」
「あぁ、これもソウタ君達のおかげだ。ありがとう」
「それにメイ君、君の勇気は世界を救う第一歩となった」
「大袈裟よ、おじさま。でも否定はしないわ」
瀬際刑事はソウタとメイにそれぞれ顔を向け、2人に礼を言う。
それに対し、メイは気恥ずかしそうな笑みを浮かべていた。
「龍もありがとな!」
「……勘違いするな。今のお前に死なれては困る…そう思っただけだ」
「そういえば……神世学園は今後どうなるんだ?」
「そこは代理者を立てる予定だ。もっとも事情説明で忙しくはなるだろうが」
学校のトップが不祥事を起こした場合、当事者の職務停止及び副理事長に指揮権が移行し、直ぐに立て直しを行う。
「そっか……。でも、お前らとの戦いがあったから俺達はここまで来れた。改めて礼を言うぜ」
「フン……」
龍の無骨な態度は相変わらずだったがそこには少し笑みを含んでいた。
「さて、私はそろそろ本部に帰らねばならん」
「そうですか……」
「あぁ、寂しいことだが……」
やるべきことを成し遂げた瀬際刑事は本部へ帰る準備をしていた。
「おじさま、少しだけお見送りに行ってもいいかしら?」
「メイ君……!」
「メイ……!」
「おじさまには世話になったから」
「……あくまで行くのは私だからね!絶対後をついてくなんてことはしないでよ……!」
「分かってる、分かってるって!」
メイはあくまで見送りに行くのは自分であり、「絶対」に後をついて行くなと釘を差す。
ソウタは一応、分かっていると返事をするが……。
――根尾通り――
瀬際刑事とメイは根尾通りを通っていく。
(本当に後をつけてくるなんてな……。俺達も大概だが……)
(ヒカル……。いや、絶対って言うからてっきりそういう前フリかと……)
(そういう問題じゃないぞ……)
それでも、こっそりとソウタ達とマイ、シオンは後をつけていた。
「痛っ……!」
「メイ君!」
(メイ!)
(メイちゃん!)
そんな中、曲がり角で誰かとぶつかった。
「ごめんなさいねぇ……」
「ちょっとあんた、どこ見て歩い――」
しかし、その直後に互いの顔を見て驚き始めた。
それはというと……。
「えっ……!?!?」
「お母様……!?」
「メイ……!?」
「お母様……、本当にお母様なの……!?」
「えぇ……! お母さんよ……!」
「メイ……見ない内に大きくなったね……!」
「お母様ぁぁぁぁぁ!!」
3年前に離れ離れになってしまった母・杏子だった。
突然の母との再会、メイと杏子は互いに涙を流しながらハグをし、それを大いに喜んだ。
「(良かった……良かったよぉぉぉ、メイ!!)
(良かったね、メイちゃん……!)
「良かっだ、良がっだ……!!」
ソウタ、マイ、シオン、瀬際刑事は無意識の内に涙を流していた。
尤も瀬際刑事はかなりの男泣きだったが。
「メイ、ソラナキに立ち向かった姿…かっこよかったわ」
「ありがとう、お母様!」
「そういえばあの人は捕まったって聞いたけど、あの子達は……?」
「皆、もうこの世には……」
「そうだったのね……。いつかはあの子達と仲直りしたかったわ……」
「お母様……」
残酷な話だが、轟をはじめとする息子たちは既にこの世にはいない。
杏子はそれでも彼らのことを愛したかったのだ。
そんな中、彼女は瀬際刑事に注目する。
「……そこの方、少しいいですか?」
「はい?」
「あの人……征二狼を逮捕した人って知っていますか? 見たところ、刑事さんのようですが……」
「えぇと……実はですね……」
「その人ってのは私なのです……」
「え……!?」
征二狼が逮捕されたことはテレビで知ったが、まさか彼を逮捕した張本人だということに驚きを隠せなかった。
「驚くのも無理はありません」
「ですが前からやつを追っていたのは事実……。娘さんとその仲間達のおかげで無事成就いたしました」
「ありがとうございます……!」
「それで……お名前は……」
「私は瀬際勝と申します」
「瀬際さん……」
「……お母さん、娘さんは立派にやり遂げましたよ」
「家に帰ったら褒めてあげてください」
「恥ずかしいわよ……。おじさま……」
通りの温かい会話はさながら親子のようであった。
闇が祓われ、そこには多くの光が差し込んでいた。
「……」
「瀬際さん……」
「なんでしょう?」
そして、杏子はある話を瀬際刑事に持ちかける。
――さらに1ヶ月後――
「メイのやつ、転校してからしばらく経つけど元気にしてるかなぁ……」
ソラナキとの戦いから2ヶ月後、母・杏子との再会を果たしたメイは転校していった。
いつもの4人メンバーの生活に戻ったソウタ達はかえって退屈そうにしていた。
すると……。
「久しぶりね、あなた達」
「娘がお世話になりました……」
「久しぶりだな、君達!」
「メイ! 久しぶりだな!」
「それにメイのお母さんと瀬際刑事!」
部室のドアが勢いよく開かれ、メイと杏子、瀬際刑事が入室してきた。
「今日はあなた達に重要なお知らせがあって来たの」
「重要なお知らせ……?」
「実はお母様、新しいお義父様と再婚したの」
メイからの重要なお知らせ……それは母が再婚したということ。
「え……? えーーーーーッ!?!?」
「新しいお義父様!?」
「その人は一体……!?」
「ここにいるぞ!!」
「瀬際刑事!?」
「実はね……」
更に言えばその再婚相手はなんと瀬際刑事だった。
――
『瀬際さん……』
『はい?』
『あなたが征二狼を逮捕したこと、メイを守ってくれたこと感謝してもしきれません……』
『ど、どうも……』
『そこで私から提案があります』
『メイを守るために私と家族になってくれませんか?』
『そ……それは……!?』
『急な申込みですが、私もメイとやり直したいのです……!』
『今度こそ家族として……!』
3年前、夫との価値観の違いから家を離れることとなってしまった後悔は未だ絶えることのない「呪い」だった。
それでも子に対する愛は変わらない、だからこそ新しい形で「再生」を目指していきたかったのだろう。
(間違いない……。この人の家族愛は本物だ……!)
『分かりました。その提案、受け入れましょう』
『ありがとうございます……!』
――
「この人の家族愛には強い決意があった……」
「これから私は家族と平和、どちらも守れる男を目指すよ。」
「そういうことよ」
「ちなみに養子縁組に入ったからもう『神世』じゃないわ」
「これから私は『瀬際』として新たな人生《みち》を歩んでいくわ。お母様、お義父様と一緒に」
メイは再婚に伴い、養子縁組にも入ったことで名字を「神世」から「瀬際」へ。
長きに渡って彼女を苦しめてきた「呪い」は今、解かれた。
「……なぁ、メイ」
「何かしら?」
「俺達、これからベイバトルしに行くんだけど……。根尾公園に」
「お前も一緒に来てくれないか?」
「……!」
「そういうとこ、変わってないわね。いいわ……行きましょ」
「ありがとな!」
__根尾公園__
「公園に人集りが……」
「噂をすればなんとやらだな……」
「!!」
「龍!! それにお前らも……!」
公園の人集り……そこには龍達をはじめとするブレーダー達が集まっていた。
「ソウタ、貴様の腕が鈍っていないか確かめてやる」
「ああ!」
「……待ちな、メイ、マイ……貴様らもだ」
「ええ」
「はい……!」
「じゃあ……掛け声は皆で!!」
「3・2・1 ゴーシュート!」
――ベイブレードはただの遊びじゃない。
それは青春となり魂、そして……勇気となるもの。
ベイブレードが好きな少年少女たちの魂は消えることなく永遠《とわ》に受け継がれていくだろう。
それを手に取った瞬間、ブレーダーは1人の人間として輝いていくのだから――
____Fin____
__イメージCAST__
蒼龍ソウタ:小林千晃
門守バン:梶裕貴
一角ヒカル:小野賢章
焔ツバサ:榎木淳弥
神世メイ(→瀬際メイ):竹達彩奈
瀬際勝:玄田哲章
神世杏子(→瀬際杏子):三石琴乃
神世征二狼:遊佐浩二
剣山聖:小野友樹
キング・ジン:子安武人
蒼龍龍二:小山力也
蒼龍龍海:井上喜久子
ソラナキ:若本規夫
風馬マイ:水瀬いのり
天道シオン:悠木碧
弐階堂レイ:鬼頭明里
弐階堂ライ:八代拓
羽田ユウマ:林勇
金山龍真:櫻井孝宏
皇龍:諏訪部順一
水城コウ:内山昂輝
白牙ダイ:鈴木達央
華炎リン:沼倉愛美
神世轟:石田彰
神世カイ:興津和幸
古面定太:小野坂昌也
ナレーション:森川智之
ベイブレードNEO Season3 堂々完結です!
執筆当初は台本形式だったり、全話ごとに擬音を置いたりなど見事なまでにやらかしがありました。
表に出すのに相応しくないのだろうと考え、チラ裏でやっていましたが、それでも自分のしたいことを貫き、最後まで書き切ることが出来ました。
少しだけ休暇を挟んだ後、新しい物語を紡いでいきます。
本当にありがとうございました!!