インフィニット・ストラトス Trinity B 作:ぷうち☆りん
第8話 take my blast away
「まさか俺がクラス代表になるなんてなあ……」
「どうした一夏。不満なのか?
というかだな。制服のままで横になるな」
部屋に戻った俺はベッドに身体を預け、天井を見上げながら呟いた。
御雷先輩、もとい沙耶先輩が代表を辞退し、
かつセシリアも代表を辞退したという事で俺が
クラス代表という事になった事を振り返る。
「あ、悪い。今トイレに行って着替えてくる」
「いや。そこでいい。いちいち行くのも面倒だろう?」
あれ? 箒の着替えを見るのは厳禁(まあ、当然だが)なのに俺の着替えを見られるのはいいのか? これも女尊男卑の流れ……だなんて下らない想像はさておき俺は寝間着姿になった。
「それで、まさか一夏。お前は繰り上げで当選しただなんて自分を卑下しているのではあるまいな。それはお前を応援はさた御雷のみでなく、布仏、相川を侮辱する事になるぞ。無論私もだ」
脱いだ俺の制服を箒は当然のように折り畳みながら言ってくれた。
知らない内に大人になった様な……。
別に変な意味じゃないからな!
「サンキューな」
「ふ、当然だ。私はお前の幼馴染なんだからな」
「いや、服を畳んでくれた事に」
「そっちか!?」
「冗談だよ。俺の事をちゃんと見てくれありがとな」
「何を今更。さ、今日は疲れたろう? 早く寝ろ」
ー
そして翌日の昼休みのこと……。
「あら。一夏さんはカレーがお好きなのですね。
素晴らしい事ですわ。我がイギリスが誇る栄養食ですもの」
「何を言っている。カレーはインド発祥ではないか。文化盗用も甚だしい。それに一夏が好きなのは鶏の唐揚げと酢豚だ」
「あらあら……酢豚も唐揚げも中華料理ではございませんの。どちらが文化盗用なのかしら?
それに清もインドも我がイギリスに膝を屈したのですから広義に於いてはいずれもイギリス料理になりましてよ」
「なるか馬鹿者!!」
「何ですって! 馬鹿と言った方が馬鹿でしてよ!」
俺としてはおばちゃんのオススメだったからなのだが……。ともかく箒と一夏に挟まれながら俺はカレーを頬張っていた。
「やっほー、色男の一夏くん! 元気?」
「まあ、ぼちぼちです……」
更に黛先輩がサンドイッチ片手に堂々と対面の席に座ってきた。そう言えばサンドイッチはイギリス料理だったかな? まあいいや。
「おやおや〜? そんな調子で四天王の地位が守れるかな?」
「四天王? 何だそれは? 聞いたこともないぞ」
「そりゃそうよ。これから私が広めるんだもん」
訝しむ箒に黛先輩は物怖じせずに言い放つ。
俺たちは彼女の無法ぶりにずっこけそうになった。
「その四天王というのは何者なんですの?」
「よくぞ聞いてくれたねセシリアちゃん!」
と、黛先輩は身を乗り出してきた。顔が近い。
「まず一組の一夏くん。
その剣術は動いているハエを真っ二つにできるとかできないとか」
いや、ハエを刀で切ったら危ないし、汚いでしょ。そもそも俺はそんな剣豪じみたできないけど。
「そして二組の鳳鈴音ちゃん。
彼女の甲龍はアリーナをも吹っ飛ばせる手から気功波を出せるとか出せないとか。かめ◯め波〜!って感じ?」
アジア一有名なポージングと共に黛先輩はまことしやかに言う。
気功波て。それもうISじゃなくて超能力じゃないかな? ホントだったらだけど。
「更に三組の九印 芥ちゃん。
一年の代表候補の中で唯一量産ISのラファールに乗って代表になったって話だよ」
「あら? 何か逸話はありませんの?」
「いや〜、それが全然。取材拒否されちゃって」
名前からして日本人だよな? なんで乗るISが打鉄じゃないんだ?
いや、野庭先生も名前は漢字なのに自由国籍だけどさ。あと箒の顔が険しくなった気がする。
「で、最後に一年四組の更識簪ちゃん。
彼女は凄いわよ〜。何でも日本の暗部を纏める家の生まれなだけじゃなくギフテッドらしいわ」
「ギフテッド? お中元か何かですか?」
「まあ一夏さんてばお上手ですこと。
ギフテッドとは天才の事ですわ」
「ふーん、セシリアみたいなもんか」
「まあ……」
セシリアが喜んだのはいいがなんか箒の顔がまた険しくなった様な……?
しかし四天王って何だよ。
それじゃ裏ボスでもいるのかって話になりそうだ。
それは沙耶先輩辺りが適任かな……。
ー
そしてその日の放課後の事だ。
俺は箒とセシリアとの間で板挟みになっていた。
「一夏さん。今日は私とISの訓練を致しませんか?」
「何を言っているセシリア。今日は私と剣道の特訓があるのだ」
「まあ? 聞いた話では箒さんとミス御雷の特訓は私を倒すためのものであったと聞きましたわ。
目的は果たしたのですから、貴方がたは御役御免というものでしょう?」
「そんな理屈が通るか! 御雷! お前からも言ってやれ!」
「成る程。一理ありますね」
「あるか! バカ者!」
熱り立つ箒は沙耶先輩に助勢を求める様に視線を向けたが、先輩はあっさりセシリアの言い分を認めてしまった。
……あれ? 何で俺はモヤモヤしているんだ?
まだ沙耶先輩から一本取っていないからか?
けど、勝ち負けに拘って俺はISに乗っているわけじゃないはずだし……わからん。
「その辺にしろ小娘ども。織斑の今日の予定はキャンセルだ」
「な、何ですって!?」
そこに現れたのは織斑先生だ。しかし今日の予定はキャンセルとはどういう事なんだ?
まさか、直接織斑先生が稽古をつけてくれるのだろうか?
「では織斑先生が直接訓練をするのですか?」
「そんなワケがないだろう御雷」
そ、そうなんだ……。
まさに踏んだり蹴ったり。落ち込むなあ。
「織斑、今日はクラス代表の懇親会があるのを忘れたか」
「あれ? そうだっけ?」
出席簿で叩かれるかとヒヤヒヤしたが意外に織斑先生はため息をつくだけだった。
「まぁな。本来なら二組のクラス代表が未定であったから順延の予定だったのだが……」
「その情報古いよ!」
と、教室のドアをスパーンと景気よく開くと小気味良い声が室内に響いた。
扉を開いて現れたのはいかにも勝ち気な雰囲気に満ちたツインテールの女子生徒だった。
箒同様、一目見て俺は彼女が何者か解った。
鳳鈴音。俺のもう一人の幼馴染だ。
「誰です貴方は?」
「は? 私を知らないってアンタどこの田舎者なのよ」
「K県は田舎ではありませんよ。Y市は幕末の頃より開港された後に臨海都市として栄え……」
「ちょっと一夏! この天然女を何とかしなさいよ!」
と、俺が気がつく合間にも相変わらず沙耶先輩は独自の空気を醸したトークを始め、鈴音は俺に助け舟を求めてきた。
「まあまあ沙耶先輩。Y市が都会なのはちゃんと解っていますから。今度鈴音に観光案内でもしてやって下さい」
「なんで見ず知らずの女と観光に行かなきゃいけないのよ! どうせ行くならアンタと……って何を言わせるのよバカッ!!」
「わかりました。前向きに検討します」
「それはやらないって事じゃないのよ!
というかなんでこんな高度な空気の読み合いを
しなくちゃいけないのよ! 衝撃砲じゃあるまいし……ってあわわ!
今のは聞かなかった事にしなさいよね!」
八重歯を剥き出しにし、顔を赤らめて苦情を言われてしまった。それもそうか。
しかも何故か空気の読み合いがどうこう言ったらあたふたし始め、果ては聞かなかった事にしろとまで言われた。 鈴音は変わらないなあ。
「鈴音は子供の頃と変わらないよなあ」
「何ジジイじみた事言ってんのよ〜……。
って何が変わらないって?」
え? なんか凄まれたぞ?
どこで虎の尾を踏んでしまったんだ!?
「……所で一夏。誰だその女は?」
「そうですわ。どこの野良猫かは知りませんが
少し一夏……さんに馴れ馴れしいのではなくて?」
えっ? 何か後ろの箒やセシリアの機嫌が悪くなり始めた? なんでだ?
「誰が野良猫よ! まあいいわ。
聞いて驚きなさい! 私は鳳鈴音! 一夏の幼馴染よ」
「何を勝ち誇っているのかは知らんが私も幼馴染だぞ」
「私は幼馴染ではありませんが一夏さんとは切磋琢磨するのを誓った仲です。つまりこれから馴染みですわ」
フフン、と鼻を高くして勝ち誇る鈴音に2人はたじろぎもせずに言い返していた。
しかしこれから馴染みって何だ?
「何よこれから馴染みって! 変な日本語を作るんじゃないっての!」
「所で織斑君、篠ノ之さん、セシリアさん。懇親会に行かなくても宜しいのですか?」
「だから私が迎えに来てやったんじゃないの」
沙耶先輩の言葉で場の空気が少し変わった。
というか迎えに来てくれたのか。
相変わらず面倒見がいいヤツでホッとした。
女尊男卑の空気に染まっていたらどうしようかと思ったぜ。
「迎えにきてやったとは随分恩着せがましい女だな」
「そうですわ。親切面をして恩に着せるだなんて。褒められるものではありませんわね」
「おいおい。止せよ二人とも。良かれと思って鈴音は来てくれたんだろ? ありがとな」
「わかればいいのよ。別に……」
と、俺は鈴音に左手を引かれる。
「っておいおい。一人で行けるぜ」
「いいからいいから」
面倒見はいいけど相変わらず強引だなあ……。
などと過去を振り返っていたら右手をセシリアに引っ張られた。
「では及ばずながら私も一夏さんをエスコート致しますわね。ほほほほほ」
手を引きながらお嬢様をするってセシリアは器用なヤツだぜ。ビット操作の賜物だろうか。
「ぐぬ……。では私は一夏の背中を押してやる!」
更にぐいぐい、と俺の背中を箒が押していく。
う、動きづらい……!!
今月中には後半