インフィニット・ストラトス Trinity B   作:ぷうち☆りん

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第9話  志望遊戯

 ー

 

 そんなこんなで俺は三人に引っ張られて懇親会が行われるという談話室に案内された。

 

 中にいるのは数人の女子生徒。

 他のクラス代表の生徒らしいのは間違いない。

 

「……3分遅刻ですね」

 

 と、まず目を閉じた女子生徒から注意を受ける。少し時間を食ってしまった様だ。

 鈴音と同じツインテールではあるがサイドではある後ろの方で結わえているから大分雰囲気が違って見える。

 

「すいません。色々立て込んでいて……」

「何よ。静虎は相変わらずねー。主役は遅れて登場するものじゃないの」

 

 俺が詫びを入れようとする前に鈴音が口を開いた。

 

「主役? 我々は貴方がたの引き立て役とでも仰りたいのですか?」

「そうは言ってないわよ。アンタって向こうにいた頃から僻みっぽいわね」

「…………」

 

 マズい。鈴音の悪いクセが出てしまっている。

 昔から鈴音は何でもできるせいか、小学生の頃も

 クラスメイトに歯に衣着せないものの言い方をしていたっけ。

 

「悪い。色々あって遅れた」

 

(遅刻は遅刻だからな)

 

 俺は鈴音のクラスメイトに頭を下げた。

 遅れてきた以上言い訳の余地はない。

 

「……まあいいでしょう。時間に不正確な殿方は嫌われますよ」

「覚えとく。えーと……」

「静虎。李静虎です」

 

 笑顔は見せなかったが静虎から刺々しさは大分抜けていた。

 

「おい。全員揃ったんならさっさと始めようぜ。座れよ織斑」

 

 空気が治まったかと思えば蓮っ葉な物言いでまた見知らぬ女子生徒が声をかけてくる。

 ふんぞり返って椅子にもたれかかる彼女の目つきの鋭さはまるで研いだナイフの様にも見えた。

 或いは一匹狼といった感じでもある。

 

「なんですのその口の利き方は!」

「何だとは何だ。オメーに話しているんじゃねえんだからいいだろうが」

 

 たじろぎもせずにセシリアに言い返すのだからすごい度胸だ。とは言え……。

 

「なあ、そんなケンカ腰になることはないんじゃないか? えっと……」

「何だオメー? 仲良しゴッコがやりたくてわざわざIS学園に来たのか? ヘラヘラニタニタと日常が過ごしてぇなら別の学校でやれ。

 真面目にやっているオレの足引っ張るんじゃねえよ」

 

 ギロリ、とまるで槍の穂先でも向けてくる様な剣幕と態度だった。

 

「誰がヘラヘラしてるんだよ」

「オメー以外に誰がいるんだよ織斑。

 大した実力もねえくせに取り巻きを引き連れて殿様気分でご来場か?」

「そんなつもりは……」

「そんなつもりがあろうとなかろうとそういう風にしか見えねえって言ってんだよ色男」

 

 そんなつもりはなかったが……クラス代表になってどこか調子に乗っていたのかもしれない。

 セシリアには勝ったがあくまであれはセシリアが俺を格下と見くびり、勝ち方に拘りすぎたからスキを付けたというのも大きい。

 今やったらどう転ぶかはわからない。

 油断のないセシリアは攻めも守りも隙がないからな。

 そもそも沙耶さんからもまだ一本は取っていないし……。

 

「相変わらずだな九印」

「テメーもな、篠ノ之」

 

 俺が彼女に反論できずにいると箒がどこか呆れた様な顔でため息をついて彼女の名を呼んだ。

 すると九印……恐らく黛先輩の言っていた九印芥。三組のクラス代表の子だろう。

 

「何よ箒、アンタの知り合い?」

「まあそうなる。ヤツの名前は九印芥。

 全国大会に出場するまで無敗という記録を打ち立てた。ある意味天才剣士だ」

 

 無敗か、そりゃ凄いな。

 けど剣道少女というには不良っぽすぎる様な。

 

「イヤミな言い方しやがって。

 オメーは全国優勝したかと思えば引退したじゃねえか。勝ち逃げみたいなナメた真似しやがって。世間じゃオメーが出場しなくなった後に連覇したオレの方が格下みたいな扱いになっちまったぜ」

「……」

 

 明らかに箒へ敵意を抱いている言葉遣い。

 箒は反論せずに一歩下がった。

 けど箒を責めるのは筋違いじゃないのか? 

 

「九印。お前さ世間じゃなくて、自分で薄々箒より実力がないと思っているからイライラしているんじゃないのか? 世間のせいにして箒に八つ当たりじみた真似をするのは止めろよ」

「……」

 

 少しキツい言い方だったかもしれないが言わずにはおれなかった。

 箒は勝ち逃げする様な卑怯なヤツじゃない。

 誤解されたくなかったんだ。

 

「九印って言ったけ? アンタは昔を引きずりすぎなのよ!」

「貴方は箒さんが引退した後に連覇なさったのでしょう? それでよいではありませんか」

 

 俺の後に鈴音とセシリアが九印に言ったが、彼女は尚も怯まない。

 

「外野は黙ってろ」

「私は二組の代表だから外野じゃないわよ」

 

 鈴音と九印は睨み合って互いに一歩も引かない。

 いかん。今日は懇親会の筈なのにこんなにギスギスしてどうするんだ。なんとかしないと。

 しかし女子の諍いにどうやって入ったものか。

 

「はいはいはい。もうええでしょ。

 リンリンもあくたんもおこぷんしすぎだし。

 お姫ちんがありえんてぃーって顔してんじゃん」

「そんな顔してない……」

「してるってー」

 

 戸惑っているとよく解らない言葉回しでギャルっぽい子が鈴音と九印を制した。

 ありえんてぃーって何だろう。紅茶の仲間か? 

 そして話を振られた物静かな女の子は淡々と答えているのにギャルっぽい子は構わず距離を詰めていた。

 

「で、あんた誰よ」

「あーし? あーしは識宮結! 

 お姫ちんのルームメイトでマブって感じだからよろしく!」

 

 決めポーズを取って彼女は宣言した。

 いや、宜しくと言われてもな。そもそもクラス代表でもないのに。

 俺でさえ呆然としてしまう強烈なキャラだからか鈴音も九印もすっかり毒気を抜かれてしまったらしく、改めて席に座った。

 

 ー

 

「で、懇親会って何やるん? 

 ウノ? 大富豪? ケツから言うとあーし、まあまあ強いよ」

「だから……そんなわけない……」

「いーや、わかんないし! おりむーは何か聞いてるん?」

「お、おりむー?」

「そ、本音も言ってたろーけど織斑だからおりむー。 それともワンサマーの方が良かった系?」

 

 と、結が話し始めた。

 俺は千冬姉、もとい織斑先生からは懇親会があるとしか聞いていなかったな。

 しかしワンサマーは何かしっくりこない。

 

「い、いや。おりむーの方がいいな」

「でしょでしょ!」

「……結。少し、彼に馴れ馴れしい」

 

 恐らく四組代表であろう女の子、簪が結に言った。しかし結を咎めるというよりは何か俺と親しくなるのを嫌がっている様な顔だった。

 俺、あの子に何かしたかな? 

 

「そうですね。ここは順当に各々が持つISのスペックなどを話してみるのは如何でしょう」

「それは結構。私が駆るブルー・ティアーズはビット操作と狙撃能力を備えた英国が誇る最新鋭の機体でしてよ」

「……面制圧を前提としたビット操作と一点突破型の狙撃が両立できるとは思えない」

「ほー、そりゃすげぇ。そんな機体を操ってド素人に負けたってんだから大したもんだ」

 

 静虎が提案した途端ふんす、と心持ち誇らしげにセシリアがブルー・ティアーズの性能を説明した途端急なダメ出しが来た。

 確かに俺はド素人だがセシリアがたった1回負けた位でそこまで言われちゃかなわない。

 

「とは言うけど、性能だけでもパイロットだけでもISの戦いは決まるものじゃないだろ。

 要はどれだけISとシンクロできるかじゃないのか」

「一夏さんのいう通りですわ! 皆さんも一夏さんを見習うように!」

 

 俺の言葉にセシリアがいち早く追随してきた。

 最もこの言葉は野庭先生や沙耶先輩からの受け売りなんだけど。

 

「いや、アンタがISとシンクロできてないって遠回しにディスられてるんだけど……」

「それはそれ! これはこれでしてよ! 

 私もブルー・ティアーズもまだ未完成なのですからこれから強くなればいいのですわ! 

 私の祖国にこういう諺がありますの。

 最後に笑うものが、一番よく笑うのだ。と」

「もうなんでもありね、アンタ……」

「お前は無敵か……」

 

 あの箒と鈴音が絶句するとは。

 セシリアのへこたれなさは見倣うべきかもしれない。ISの戦いに置いて重要なのは、平常心と折れない心だって聞いたからな。

 

「では続きまして私を破った白式の性能を一夏さん自身の口から説明して頂きましょう」

「え」

 

 と、セシリアに水を向けられたが困った。

 不勉強、と言われればそれまでだが俺はまだ白式の性能を掴みきっていない。

 俺は数日前、白式のデータ採取と統合の場に送られた時の事を思い出した。

 

『白式については自分からはあまり調べない様にしろ?』

『えぇ。下手にパイロットである貴方が白式をこうでならねばならない。ああでなければならないと決めつけるのは双方の枠を狭めますからねぇ。人間はISに屈服するものでもない。

 ISは人間に隷属するものでもない。

 それこそ無限の成層圏の様に互いを高め合うのが本来の意図なんですからねぇ。んふふふふ♪』

 

 その言葉に俺は感動した。

 先生はただ変なマシーンや甘い飲み物ばかり作っている変わった養護教諭ではなかったのだと。

 

『極端な話雪片弐型からビームが出たり織斑くんの目からビームが出たっていい。効率やコストはともかく』

 

 しかしその直後に野庭先生はおどけていた。

 いや、流石にそれはなあ……。

 

「それがな。俺自身まだ白式の事を分かりきっているワケじゃないんだ」

「なんだ? クラス対抗戦が近いからって出し惜しみしてんのか? 意外とセコい手を使うヤツだぜ」

「はあ? アンタ一夏をバカにしてんの!? 

 コイツはボーッとしてお人好しでフニャフニャヘラヘラしている様に見えるけどキメる時はバッチリキメるヤツなんだからね!」

 

 と、またしても鈴音が九印に食ってかかる。

 

「まあ、いいでしょう。彼を知らずとも己を知らば五十戦危うからずとも言いますし。今回は私が軽率でした」

「いや、そんなつもりじゃなかったんだ。

 悪かった」

「……別にいい。知ってる。白式は不様な機体だから」

 

 静虎は軽く頭を下げ、詫びの言葉を入れてくる。

 ちょっと恐縮してしまった矢先に簪からの辛辣な言葉が飛んできた。不様とはご挨拶だな。

 俺はともかく白式を不様と決めつけられたくはない。「不様って……。そりゃ俺が未熟なだけだろ」

「違う。貴方の機体は野庭先生は他の皆がかかりきりになっても剣で斬るしかできない機体。

 その点……私の打鉄弐型は違う。

 貴方と違って、この子は私が一から考えた」

 

 と言ってノートパソコンに映る設計図を見せてきた。

 薙刀に荷電粒子砲を積んだ機体というくらいしか俺には解らないが……数々の書き込まれた内容から簪の熱の入れようの凄さは解った。「で、専用機の自慢大会は終わりか?」

「そう言えばアンタはラファールに乗っていたんだっけ。何で打鉄に乗らないの?」

「アッチの方がオレのやり方に合うからだ。

 お前らだって自転車の乗り心地が合わなかったら別の自転車に乗り換えるだろ?」

「九印。ISはモノじゃないぜ」

「何を抜かしやがる。ISも剣も道具だろ」

 

 物怖じせず九印は言い放ってきた。

 ……イヤな事を言うやつだ。

 と、俺の顔に出てしまっていたらしい。

 ぐっ、と箒が腕を絡めてきた。

 無闇に熱くなるな、ということだろう。

 

「何だ、オレに文句あんのか? ケンカならいつでも買うぜ?」

「俺はもう意味のないケンカはしない。鈴音に昔約束したからな。それにルールのある試合なら今度のクラス対抗戦がある」

「い、一夏……あんな昔の話を覚えてたの!?」

 

 心なし、鈴音の顔が赤らんでいた。

 

「何だそりゃ? ノロケか?」

「誰がノロケだ! 取り消せ!」

「そうですわ! 取り消しなさいな!」

「な、何でお前らがキレるんだ……。わかったよォ。今のはナシだ。オレらのイザコザのケリはクラス対抗戦でつける。これでいいだろ?」

 

 九印が鼻で笑った途端、セシリアと箒の二人が掴みかからんばかりの勢いで迫っていく。

 すると九印は両手を挙げて降参するかの様に宣言してきた。 

 口は荒いが根っからイヤなヤツではないのかな? 

 

 ー

 




昔の約束と鎬+αの登場は次回。
打鉄弐式は完成するの? 簪ちゃんは意地になっていますから。
一夏が一次移行が終わったばかりでもセッシーに辛勝していますので山嵐が未完成でも出るでしょう。

芥って名前ひどくない?
九印芥に悲しい過去……。

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