※今日までにンナ語尾はギリ直しました。
「昨日は災難だったみたいだね。怪我とかしてないかい?」
「大丈夫です。でも生ライブが楽しめなかったのが本当に残念で……」
「折角当たったのにねー」
ライブの翌日、俺はバイト先でアキラさんとリンさんに昨日のことを聞かれていた。
「流石にこのまま終わりじゃ当選した人達が報われないし、それは運営側もわかっているはずだ。何か補填があるかもしれないし、気を落とすのはまだ早いかもしれないよ」
「うんうん! 元気出してこ!」
「そう、ですね……」
アキラさんが励ましてくれて、続くようにリンさんも俺の肩に手を置いて励ましてくれる。
あ、あったけぇ……! マジで帰ってこれて良かった。今日からここ自認実家で良い?
「……そうだ。イツキさん、ひとつ聞きたいことがあるんだ」
「何でも聞いてください。アキラさんの質問なら何でも答えます」
「急にビビアンみたいなこと言い始めた!?」
マジか。ビビアンがパエトーン以外にそんなことを言うとは。
でもまあ気持ちはわかる。何か徐々に俺も沼ってたりする?
「はは、それなら遠慮せず聞かせてもらおう。覚えていたらで良いんだけど、会場で変な人を見なかったかい?」
「変な人、ですか?」
「そう、例えば──ひょっとこのお面を被った人とか」
「見てません」
嘘じゃない。だってそれ俺だもん。自分の姿なんて見てないんだから、見てないって答えは嘘じゃない。
「気がついたら意識が飛んでたみたいで、起きたときには会場に警報が鳴り響いてたので急いで外に出たんですよ。だから周りを確認する余裕もなくって……」
「いや、知らないならいいんだ。変なことを聞いてしまってすまない」
「そっかぁ、イツキさんも見てないかぁ……」
リンさんが残念そうにがっくり肩を落とした。そもそもなんで二人は俺を……?
「あの、そのひょっとこの人が何か……?」
「え? だって気になるじゃん! ニュース見た!? テロリスト
「テロリストの脅迫がニュースになっていた以上、会場は一度彼らに制圧されていたはずだ。それを一人で覆したとなれば、それを成し遂げた人物のことは気になるだろう?」
「まあ、確かに……?」
なるほど、つまり純粋に興味本位ってことか。この2人もそういうのは気になったりするんだなぁ。
「あ、それとね、今日はお兄ちゃんとちょっと作業したいから、お店のことはイツキさんに任せても良いかな?」
「わかりました。任せてください」
「度々すまない。念のためもう一人呼んでいるから、今日はその人と一緒に仕事をしてほしいんだ」
「もう1人……?」
まさかビビアンか? もしくは邪兎屋の誰か……少なくとも星見雅ではないだろう。
てか候補が知り合いばっかで泣きそう。どうしてこの店にはこんなにも知り合いが訪れるんだ……。
「今日来てくれるのはライカンさん! クールで格好いいオオカミのシリオンさんだよ!」
候補の誰でもないしまた知り合いだった。
「アキラ様、リン様のご指名により参りました、ライカンと申します。よろしくお願いいたします、イツキ様」
「よ、よろしくお願いします……」
なんかこうやって挨拶されるのも新鮮だなぁ。なんせ、フルメットとして接してた時は雑な扱いを受けてたからな。最初の方はこんな風に丁寧だったのに……。
「では早速業務に取りかかりましょう。まずは──────おや?」
「ど、どうかしました……?」
顎に手を当て、少し俯くような姿勢で黙り込んでしまった。
……い、いや、大丈夫なはずだ。対策は過去に打ってある。いくら嗅覚に優れたオオカミのシリオンとは言え、流石に──!
「失礼。つかぬことをお伺いしますが、以前どこかでわたくしとお会いしたことは?」
「アッヒョ」
「あっひょ……?」
「い、いえ! ないです! 今日が初めてです!」
「……そう、ですね。
「いえいえ! 気にしないでください!」
勝った。一瞬終わったかと思ったが、ライカンさんを欺けるなら実質嗅覚によるバレは無いと見て良いだろう。
裏の人間御用達の
重要なのは、俺の臭いを別の臭いで上書きするのではなく、本当に臭い自体を消してくれるところにある。強い臭いで上書きとかしちゃうと、嗅覚に強いシリオンさんと一緒の任務になったとき負担をかけちゃうからね。
その香水をフルメットとして活動するときは毎回使用していたので、偶然嗅覚に強い誰かと出会うことがあっても安心して活動できていたわけだ。
ちなみに当時ライカンさんに聞いたときは『殆ど臭いがわからない』と言っていたので、それなら大丈夫だろうと余裕を持てていた。嘘ですさっきめちゃくちゃ心臓バクバクしてました。
でも殆どわかんないのに探り入れてきたのは何? 怖いから辞めてほしいんだけど。
「失礼いたしました。それでは気を取り直して仕事といたしましょう」
そう言って動き始めたライカンさんだったが、なんかめちゃくちゃテキパキしてる。というか俺より手慣れてるんだけどこの人。
流石ヴィクトリア家政、こういう作業もお手の物ってわけだ。というか家政だからむしろこういう作業が本来メインだったりするんだろうか。
でもヴィクトリア家政は荒事に強いイメージの方があるんだよなぁ。彼らとは何回か任務を一緒にこなしたことがあるのだが、それはもう頼りになることこの上なかった。
ちなみにどうでも良い余談ではあるが、ライカンさんが『私共はヴィクトリア家政です』と名乗りを上げたときに、さりげなくライカンさんの後ろで俺もメンバーっぽくポーズを取ってたらエレンからぶん殴られたことがある。
だってあのときのメンツ俺だけヴィクトリア家政じゃなかったんだもん。相手からしたら『そしたら横のフルフェイスヘルメットは誰なんだよ。野良ヘルメットか?』ってなるじゃん。何だよ野良ヘルメットって。怪しすぎて存在が名誉エーテリアスじゃん。
なので、次回からは彼らとは少し離れたポジションに位置取り、ライカンさんが名乗った後に『そして俺はヴィクトリア家政2号店──』と名乗ろうとしたのだが、『そして俺は』の時点でエレンのハサミとライカンさんの蹴りが飛んできたため、エセヴィクトリア家政は営業開始を目前にして廃業を余儀なくされた。まだ何も言ってなかっただろうが。
……でも、彼らとの任務は本当に楽しかった。リナさんやエレン、カリンちゃんも元気だと良いな。
・イツキ
香水を使っていたのはフルメット時代のみで、現在は使用していない。
・ライカン
なんか微かに知ってる臭いな気がする……。
思い出せそうで思い出せない……。
的な感じ。
フルメットがヴィクトリア家政入りとか冗談でもシャレにならないので全力で止めた。