今回ほとんど過去編になっちゃった。
というか過去編と今を行き来しすぎて読者さんが混乱してないか少し不安ンナ。
フルメットがホロウ内に取り残されて1週間が経過した。未だにパエトーンの2人やヴィクトリア家政のメンバーの中に、一人として彼からの連絡を受けた者は居ない。
その事実が意味するところは、言葉にせずとも全員が理解していた。
「……Fairy、どうだい?」
「はい。結論からお伝えすると、マスターの予想通りです」
アキラはフルメットがホロウ内に取り残されたその日から、ずっとこの件に関して調査を続けていた。
この世界は誰にだって厳しい。ホロウ内に取り残された人物と数日連絡が付かない時点で、彼の生存が絶望的だということはアキラも十分理解している。
悲しくないわけではない、むしろ、今すぐにでも調査の手を止めたいと思うほどには彼の心は追い詰められている。それでも、ここで止まるわけにはいかなかった。
悲しむのはいつでも出来る。けれど、この事態を引き起こした犯人を捕らえることは今しかできない。時間が経ってしまえばやがて全てが風化し、足取りを追うことが難しくなるばかりか、また同じような悲劇が起こってしまう。
それだけは許せなかった。彼の死を無駄にしないためにも、妹や大事な仲間を助けてもらったことに報いるためにも、何があっても下手人を見つけ出してみせる。その一心だけで彼は手を動かし続けていた。
「あのエーテリアスの大群を差し向けてきたのは、讃頌会の構成員であるマーヴィルという男です」
「やっぱり讃頌会か……。……それで、マーヴィルは今どこに?」
「場所は──」
「お兄ちゃん!!!!!!」
部屋の扉が勢い良く開かれた。落ち込みながらも調査に協力してくれていた
「い、今ライカンさんから連絡があって、エレンが──!」
「一人で乗り込んでくるとは……不用心な娘だ」
「あんた……その、エーテリアス……」
1週間前にフルメットを置き去りにしたホロウの中で、一人の男がエーテリアスを3体後ろに従えてエレンの前に立ちはだかっていた。
「とても焦っていたな。もしや彼を探しに来たのか? もう生きているはずもあるまいに」
「……っ!」
「わからないな。どうして死んだとわかりきっている人間を探すことにそこまで執着するのか。
「……わかったような口、聞かないでもらえる?」
「おぉ、怖い怖い。……あぁ、そうか。その顔を見て思い出したよ」
「──彼が死んだの、
「──────ッ!!」
ギッと男を睨み、エレンは己の武器であるハサミを構えた。しかし、男の余裕そうな表情は揺るがない。
「やる気があるのは良いことだ。けれど、それは無謀というものだよ」
「後ろのエーテリアス、まさか忘れたわけじゃあないだろう? キミとライカンへの対策に用意させてもらった、物理と氷に耐性を持った個体だ」
「キミ一人ではどう足掻いても、倒すことは不可能だ」
男の後ろに居たエーテリアス達が、エレンの方へとゆっくり進んでいく。
とある場所からこのホロウに繋がる入り口があると知り、衝動的に飛び込んでしまったエレンは、このエーテリアスへの対策は持ち合わせていなかった。
(……何やってんだろ、あたし)
(もう生きてるはずないって、わかってたはずなのに。ホロウに何も考えずに飛び込んだ人の末路なんて、腐るほど見てきたはずなのに……)
『フルメットさん! えっと……
『了解! 外で合流な!!』
あのとき、意識を失う前にかすかに聞こえた会話。それを聞いた彼女は、どこか安心して眠りについたのを覚えていた。
(ウソつき……)
どこか諦観したような表情で武器を握る力が弱まる彼女を見て、男は口元を歪める。
「まずは1人目。次は誰を標的に────」
「そこの人、危な──────い!!」
「は?」
声が聞こえた方向に顔を向けると、フルフェイスヘルメットを被った不審者が、男の後ろに居るエーテリアスの方へと高速で向かってきていた。
「
掛け声と共に不審者の身体が光り始める。男が止めようと手を飛ばしたが、そのときには既に不審者がエーテリアスの目前へと迫っていた。
「──────
瞬間すさまじい爆音が響き渡り、三体のエーテリアスは全員吹き飛ばされた。
「いやぁ危ないところでしたねおじさん! 後ろにエーテリアス居ましたよ! あっ、今の爆発で怪我とかしてないですか!?」
「それと実は迷っちゃって道が全然わからなくて……出口の場所とか知ってます?」
「お、お前……」
ふるふると男の身体が震え出す。不審者が首を傾げていると、男が怒りに染まった表情で口を開いた。
「誰だお前!? 何してくれちゃってるんだお前!? 何が危ないだ!! あれは俺のエーテリアスだ!! 余計なことしやがって!! これからそこの娘を始末するところだったんだ!!」
「なるほどお前悪者だな!!」
「ごはっ!?!!?」
パンチ一発で男は沈んだ。南無。
「……あっ、出口の場所聞く前に倒しちゃった」
『やっべ』と口にして頭を抱える不審者を見て、エレンの口から自然と言葉が溢れた。
「あんた、なの……?」
「へ? ……あっ、エレンじゃん!! てことは近くにプロキシ兄妹も居たりする!? いやぁ助かった! 実は出口わからなくてずっと彷徨っててさぁ!」
「な、なんで、生きて……?」
「勝手に殺さないでほしい。いや、死にかけたのは確かだけどさ……」
「ほら、外で合流って約束したじゃん?」
「〜~~~~~~ッ!!」
あまりにも能天気な雰囲気でそう言ったフルメットを見て、エレンは拳を握った。
「てた……なら……」
「ん?」
「生きてたなら早く連絡くらい寄越せバカ!!」
そのときの拳は下手したらヘルメットが壊れるくらいの威力だったと、後にフルメットは語った。
「ライカン。今日もビデオ屋にいくのですか?」
「ええ、今日は少し野暮用が」
「そう」
準備を整えるライカンに対し、リナはどこか訝しむような視線を向ける。
「……何かあったのかしら?」
「それは……どういう?」
「だってライカン、嬉しそうなんですもの」
「っ……。そう、見えますか?」
「えぇ、まるで失せ物が見つかった子供のよう」
「……やけに具体的なイメージですね。ですが、別に何かあったわけではありませんよ」
「あら、そう? ふふっ……」
どこか妖艶な笑みを浮かべる彼女に、ライカンは内心焦りながらもその場を後にした。
「──お料理、持っていってあげたほうが良いかしら?」
・イツキ
「ふぇぇ……出口わからないよぅ……。誰か居ませんか……?(震え声)」
↓
「人発見! 出口知ってるかも! ……はっ! 後ろにエーテリアスが!!」
↓
「
こんな感じ。
ちなみに連絡したくても出来なかっただけなので許してあげて欲しい。
・エレン
フルメットが死んだことを受け止めきれなくて、ホロウの入り口があることを知って衝動的に乗り込んじゃった。
・ライカン
(え……? 顔に出てた……?)
・アキラ
当時は生存報告を聞いてめちゃくちゃ喜んだ。
それはそれとして小一時間説教した。
・リン
同上。
この日以降、フルメットの名前や顔を知ろうとする回数が著しく増加した。
・マーヴィル
テロ組織のオリキャラ。
エーテルパンチでワンパンされた。
・リナ