お金貯まったからホロウレイダー辞めるわ   作:イグアナ

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ヴィクトリア家政の描写に寄りすぎてて他の陣営書けてなくて草ンナ

草じゃねぇンナ反省しろ(自戒)

謝るンナ。ンナァ……(土下座ボンプ)

白文字で土下座すんじゃねぇンナ。





16話:ライカンさんはそんなこと言わない

 

 

「おっと、外に居ましたか。丁度良いですね」

「あ、ライカンさん」

 

 ライカンさんにバレた翌日、店内のことは二人に任せて店先の掃除をしていると、昨日来たばかりのライカンさんが再びビデオ屋に訪れた。

 

「本題の前に、まずは忠告を。リナにお気をつけて」

「リナさんに?」

 

 神妙な顔付きで言うところを見ると、どうやら割と真面目な話らしい。

 

「ええ、どうやら少し怪しまれていると思われます。特に何か聞かれたわけではありませんが、わたくしの様子を見て何か察するところがあったようです。……申し訳ありません」

「え。ライカンさん顔に出るタイプじゃないですよね?」

 

 付き合いの長さが為せる業なのか、それともリナさんがライカンさんの機微に聡いのか……。どちらにしろリナさん凄いな。

 

「……わかりました。リナさんの前では変なことはしないようにしておきます」

「……貴方に変でないときがありましたか?」

「やだなぁ。その言い方だとまるで俺が常に変人みたいじゃないですか」

「…………はぁ」

「何故そこで溜め息を!?」

 

 え。俺まともだよね? 変人じゃないよね?

 

「……少なくとも、貴方にはプロキシ様の周りに集まる方々と比べても遜色ない個性があると思っていますよ」

「絶対に褒められていないということはよくわかりました」

 

 いいんだぞ。言葉を選ばずに『プロキシ様の周りに集まるエージェントは異常者の集まりなのです』とか言っても。ライカンさんはそんなこと言わない。どっちかと言うと語尾的にビビアンが言いそう。てかビビアンですら言わない。なるほど、異常者はこんなこと考えてる俺ってことね。

 

 なんて考えていると、後ろから店の扉が開かれる音がした。

 

「イツキさん! この後お兄ちゃんと仕入れに行くから、そろそろ店内に──って、ライカンさん? 今日も来てくれたの?」

「ええ、少し彼と話がありまして」

「へぇー! 昨日会ったばかりなのにもうそんなに仲良く……」

「なるほど。リン、僕達も負けていられないね」

 

 リンさんだけかと思ったらアキラさんまで出てきた。ほんと仲良いなこの二人。

 

「どうだいイツキさん、今度の休みにでも一緒に出かけるというのは」

「えっ」

「私も行く! そろそろイツキさんとも仲を深めたいしね!」

「えっと……俺なんかで良ければ、是非……」

「"なんか"じゃない、イツキさんが良いんだ。いつも助けてもらってるし、そのお礼をしたいのは勿論だけど、もっとイツキさんのことを知りたいんだ」

「うんうん! それにね、私達のこともたくさん教えてあげる! 折角一緒に働いてるんだし、仲良くしたいもん!」

「ライカンさんどうしましょう。後光で目が潰れそうなんですけど」

「潰されてください」

 

 ライカンさんは溜め息をつくと、どこからかスマホを取り出した。

 

「ところで本題なのですが、連絡先を交換しませんか?」

「あっ、確かに」

 

 毎回ビデオ屋で話すよりもそっちのが安全じゃん。なんで昨日気づかなかったんだろ。

 

「ねぇお兄ちゃん、早速ライカンさんがイツキさんを取ろうとしてるよ」

「おっと。ウチの店員は渡さないよ、ライカンさん」

「はは、これは手厳しい」

 

 どうしよう、この茶番に乗るべきかな。『やめて! 私のために争わないで!』的な感じに。

 

 いや、やめとこ。ライカンさんがめっちゃこっち睨んでる。多分やったら後で蹴り飛んでくるわコレ。先読みやめてください。

 

 

 


 

 

 

 あのあと、連絡先の交換を終えたライカンさんは去っていき、アキラさんとリンさんは新しいビデオを仕入れに出かけていった。

 

 つまりまた一人でお店番というわけだ。

 

「ふぁぁ……」

 

 いかん、あまりにものどか過ぎてあくびが出てきた。

 

 のんびりしてるだけで給料入ってくるのは嬉しいけど、なんか申し訳なくなってくるな。いや、お店番が大事だってのはわかるんだけどさ。

 

 んー、店内の掃除はやったし、ビデオも棚に戻し終わってるし、本格的にやることがないな。

 

 お客さんも来ないし、今日は二人が帰ってくるまでこのままゆっくりしてる感じになるかなぁ。

 

 そんな風に考えて伸びをしたときだった。店の扉が開かれ、一人の女性が入ってきた。

 

 彼女は店内に居る俺を視認すると、ニコリと微笑みながら近づいてくる。

 

「お初にお目にかかりますわ。アレクサンドリナ・セバスチャン。リナとお呼びください」

「……は、初めまして、リナさん。店員のイツキです」

 

 よ、よりにもよってライカンさんが忠告してくれた日にリナさんが来ちゃった……。

 

 いや、大丈夫だ。普段通り普段通り。変なことしないで応対すれば良いんだ。

 

「店長様からお聞きしておりますわ。新しく入ったバイトの方が、確かそのようなお名前だと……」

「ああ、それなら俺のことですね。最近雇ってもらったんですよ」

「それでしたら丁度良かったですわ。実はお近づきの印にご用意したものがございまして──」

 

 言いながら、リナさんはいかにもケーキの入っていそうな箱を俺の目の前に出してきた。

 

「こちら、イツキ様の為に腕を振るってご用意したケーキですわ。いかがでしょう?」

 

 しかし、開かれた箱からはケーキとは似ても似つかない物質が姿を現した。あまりにも見た目が宇宙的(コズミック)すぎる。

 

「あー……えっと、その、お気持ちは大変ありがたいのですが、仕事中に食べるわけにはいかないので……」

「そう、ですか……」

「あ、後で! 後で食べますから! 絶対!」

 

 なんとか弁明してみるが、リナさんはしゅんとした顔のまま、悲しげにケーキを見つめるだけだった。

 

 …………まあ、少しくらいなら大丈夫か。

 

「……や、やっぱり少しもらって良いですか? いけないことではあるんですけど、その、実は結構お腹空いてて……」

「っ! そういうことでしたら、是非……!」

 

 急に満面の笑みになって俺にフォークを渡してくる。これが計算じゃないから酷い人だよなぁ、この人。

 

 とりあえず一番最初に目についたタコの足のようなものをフォークで刺し、それを口に運ぶ。

 

 ……うん。タコらしからぬゴリゴリした食感がすると思えば、カリカリしてたりコリコリしてたり、味もなんだかタコのようでタコらしからぬ味のようで──。

 

「ごくっ……ありがとうございますリナさん。()()()()()()()()()()()

「──ッ!」

 

 今言ったのは嘘じゃない。本当に美味いと思った。

 

 実際のところ、大多数の人にとってはリナさんの料理は見た目通り()()()()()がして、俺も以前までは口に合わなかったのだが、あの一件以来どうにもリナさんの料理がめちゃくちゃ美味しく感じるようになった。

 

 というのも、1週間ホロウを彷徨い続けて空腹の絶頂に居た俺が、ホロウを脱出して一番最初に食べたのがリナさんの料理だった。というか半ば無理矢理口にぶち込まれた。殺す気か。

 

 しかし、砂漠で見つけたオアシスとでも言うのだろうか。あのとき食べたリナさんの料理は、極限の空腹だったこともあってか、それはとても美味しく感じられた。

 

 それからと言うもの、リナさんの料理が普通に食べられるようになった。一度美味いと認識してしまえばどうにかなるもんなんだなぁと当時は思ったものだ。

 

「フォーク、お返ししますね。残りは仕事終わりに美味しくいただきます。冷蔵庫があっちに──」

「イツキ様」

 

 リナさんは俺が返したフォークでケーキを一口サイズに切り分けると、それを俺の方に差し出してきた。

 

「もう一口、いかがでしょう?」

「……え?」

「ほら、あ〜ん」

「あの、もう……」

「あ〜〜~ん」

「………………」

 

 何を言っても聞かなさそうなので、とりあえず差し出された一口はいただくことにした。

 

 うっま。まったくなんでこんなことを……? てかうまっ。

 

「本当に、美味しそうにいただいてくれますのね」

「そりゃ美味しいですから」

「……ふふっ、お上手ですわね。さあ、まだまだありますので……」

「えっ」

 

 この後、ニコニコしたリナさんに結局最後までケーキを食べさせられる羽目になってしまった。

 

 






・イツキ
リナさんの料理普通に食える勢
なんなら美味しくいただける勢


・ライカン
昨日連絡先を交換することを忘れてた人
あとリナが何か勘づいてそうでちょっと怖い


・プロキシ兄妹
特に裏があるわけではなく、単純にイツキと仲を深めたいだけ。実は会話が聞こえてたとかそういうわけではない。


・リナ
原作とは異なり、自分の料理が一般人にとってゲテモノだという自覚がある。




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