お金貯まったからホロウレイダー辞めるわ   作:イグアナ

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そろそろタグ付けるべきなんかなとも思いつつ、必須タグだけ付けてそのままになってるンナ

どうしたもんンナかね





18話:俺要らなかったじゃんね

 

「あ、あのっ! どうしたらフルメット様みたいに強くなれますか!?」

「……へ?」

 

 俺がホロウに取り残された件からしばらく経ったある日、とある任務で一緒になったカリンちゃんからいきなりそんなことを聞かれた。

 

「カリンちゃんは今でも十分強いだろ? なんで急にそんなことを……?」

「そ、そうじゃないんです! そのっ、そういう強さではなくて……」

「というと?」

「……あの日、フルメット様は命を賭して私達をホロウから脱出させてくれました。お客様にご奉仕するヴィクトリア家政の一員として、誰かのお役に立つことの喜びというのは理解しているつもりなんです。……で、でも、自分の命を犠牲にしてでも人の為になるようなことをするなんて、今の私に出来るとは到底思えません。だから……」

 

 ぐいっと、カリンちゃんは意気込んだような表情でこちらに踏み込んでくる。

 

「し、知りたいんです! どうしたらフルメット様のような"心の強さ"を持てるのか!」

 

「そしたらカリンも、今はダメダメでも、きっと──!」

 

「……ごめんカリンちゃん。俺じゃきっと、君の期待には応えられない」

「……え?」

 

 驚いたように目をパチパチとさせるカリンちゃんを見て、俺は少し笑って続きを話す。

 

「『仲間のためならいつでも死ぬ覚悟は出来てる』とか、『誰かのために死ねるなら本望』とか、そんな強い心を持ててれば良かったんだけどさ、違うんだよ」

 

「格好悪いし、情けないから言わなかったんだけどさ、本当は皆が脱出したあと、死ぬのが怖くて一人で震えてたんだ。強い心なんて、俺にはないんだよ」

 

「そ、それなら、尚更どうして……」

 

「……皆に死んでほしくなかったってのは勿論ある。だけどそれ以上に、もう目の前で誰にも死んでほしくなかったんだよ」

 

「それって、あの……」

 

「まあ、うん。よくある話だよ」

 

 

 

『みんな、将来はどうするつもりなん?』

『将来か? 俺はさっさと金稼いで仕事辞めてさ! あとはパーッと人生楽しむつもりよ!』

『バカかお前。どうやってそんな金稼ぐんだよ』

『それはお前……アレだよ。これから考えんだよ! お前こそ将来は何するんだよ!』

『俺は大手企業で安定した生活をだな──』

『俺と同じバカの癖によく言えたなお前』

『アァン!? やってみないとわからんだろうが!! それにお前よりは現実的な将来だと思うが!?』

『あ!? やんのか!?』

『こんな話ですら喧嘩になるんか……。……せや、イツキは将来どうするつもりなん?』

『え、俺? 俺は……将来とか、まだよくわからないけど……』

 

 

 

『皆とこうやってずっとバカやれてれば、それで良いかな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「旧都陥落のとき、仲良くしてた奴らが皆死んじゃったんだ。……俺なんか助けなけりゃ、今頃生きてただろうにさ」

 

「辛かったけど、俺も死んで後を追うなんて許されるはずがない。アイツらに託されたわけだし、皆の分まで楽しく生きなきゃって、そう思った」

 

「だけど、たまに思うんだ。誰(・)か(・)の(・)た(・)め(・)に(・)死(・)ね(・)ば(・)、あ(・)い(・)つ(・)ら(・)だ(・)っ(・)て(・)許(・)し(・)て(・)く(・)れ(・)る(・)ん(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)か(・)って」

 

「……フルメット様」

 

「でも、結果は言った通りだよ。どこか死のうとしてた癖に、死ぬ直前で死ぬのが怖くなった。矛盾も良いとこだよ。……俺は、強くなんかないんだ」

 

「……すみません。確かに、そうかもしれません」

 

「だろ? だから──」

 

「──でも」

 

 カリンちゃんは真っ直ぐな目で俺を見て、口を開く。

 

「きっと、皆そうなんですよ」

 

「わ、私、ずっと勘違いしてました。大人の人はみんな悩みなんてなくて、苦しんでなんかいなくって、とにかく前に進める強い人なんだって。だ、だから、いつまでもミスしてばかりの私は、少し焦ってしまって……」

 

「で、でもっ、今のお話を聞いて思いました! フルメット様だけじゃなく、きっとライカンさんやリナさんも、私には見えないところでたくさん悩んだり苦しんだりして、それでも自分の選択が正しいと信じて、前に進み続けてるんじゃないかって!」

 

「完(・)璧(・)に(・)強(・)い(・)人(・)間(・)な(・)ん(・)て(・)居(・)な(・)い(・)。だから、いつだって強くあろうと頑張っている。それが大人なんだと、カリンは思いました。だから、カリンも焦りません。急に強くなろうとするんじゃなくて、少しずつでもいいから、前に進もうと思います!」

 

「……凄いな、カリンちゃんは」

 

 『フルメット様! 流石にダサすぎます!』なんて言われるかなとか一瞬でも思った俺がアホだった。まさかそんな風に受け取ってくれるなんて思いもしなかった。というかカリンちゃんはそんなこと言わない。

 

 ライカンさん、リナさん……。カリンちゃんの感性は間違いなく立派に成長してますよ……。

 

 てかこれもうカリンちゃんが自己解決したじゃん。俺要らなかったじゃんね。

 

「……その、ありがとうございます。あまり喋りたくないようなことを、教えていただいて……」

「いやいや、別にそんな……」

「なので……フルメット様!」

「はい?」

「も、もし何かあれば、私に教えてください! お役に立ってみせます!」

「へ? いや、流石にそれは申し訳ないというか……」

「そんなこと、ないです」

 

 引こうとした俺の手を、カリンちゃんが両手で優しく包みこんでくる。

 

「た、頼ってほしいです。誰にも見せたことがない弱さをカリンに見せてくれたのなら……私は、その弱さをお守りしたいです」

「……そっか」

 

 

 

「わかった。何かあれば頼らせてもらうよ、カリンちゃん」

「──はいっ! 絶対ですよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フルメットから別れのメールが一斉送信されたあの日、カリンはそのメッセージを見てピシリと固まった。

 

「……何かあれば、言ってくれるって、そう約束しましたよね?」

 

「どうして何も言わずに、消えてしまったんですか……?」

 

 

 


 

 

 

「今日、カリンがそちらに向かいます」

「えっ、カリンちゃんが?」

「はい。二人にイツキ様とお店番をするように頼まれたと」

「てことはまた二人とも外出するんすね。最近忙しくて大変そうだなぁ……」

「そうですね」

「……なんですか今の圧」

「いえ、こちらの話です。ということで、彼女なら問題ないと思いますが、くれぐれもご注意くださいますようお願いいたします」

「もちろんです!」

 

 その返事を最後にライカンさんとの電話を切り、俺はカリンちゃんを待つことにする。

 

 アキラさんから直々に兄妹で外出する件を聞き、出ていく二人を見送ってから程なくして、店の扉がおずおずと開かれた。

 

「あ、あのっ、カリンです! お手伝いに来ました!」

「こんにちはカリンさん、店員のイツキです。二人から話は聞いてるので、どうぞ入ってください」

「──あっ、は、はいっ……! よ、よろしくお願いします!」

 

 あの丁寧なお辞儀、カリンちゃんらしいなぁ。見てて少し微笑ましい。

 

 よし、今日は二人で頑張りますか!






・イツキ
あのときは別の想いもありましたということで。
今回はカリンちゃんだから大丈夫そうだな! ガハハ!

・カリン
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