お金貯まったからホロウレイダー辞めるわ   作:イグアナ

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最近タイトルは毎回主人公のセリフから一部抜き出してるんですが、今回は珍しく主人公じゃないキャラからセリフ取りました。

たまにはこういうのも良いかなと思ったンナね。





19話:何見られてんですか

「流石カリンちゃん。あっという間に任務完了だな」

「い、いえいえ! フルメット様のお力あってこそです!」

「カリンちゃんは自己評価が低すぎると思うよ。……ふわぁ……」

 

 言いながら欠伸をするフルメットに、カリンは首を傾げて尋ねる。

 

「そ、そう言えばフルメット様。最近欠伸が多い気がしますが、眠いんですか?」

「ん〜……そうだね。最近忙しくてあんまり寝れてなくて……。……あ、これ寝てない自慢とかじゃないからねホントに」

「そうなんですね……。も、もしかして、この後も依頼を受けてたりするんですか……?」

「うん。あと2時間後くらいかな」

「2時間、ですか……」

 

 フルメットの言葉を聞いて少し考え込むように俯いたカリンは、何かを思いついたような表情で顔を上げた。

 

「フルメット様! も、もしよろしければ、少しお眠りになりませんか!?」

「えっ?」

「短時間でも睡眠を取っておけば、少しは眠気や疲れが取れると思うんです! 私はこのあと予定はありませんから、寝ている間の見張りが出来ますし、時間が近づいたら起こせますよ!」

「な、なるほど……? いやでも、ちょっと悪いというか……」

「気にしないでください! こういうのはエレンさんで慣れてますし、それに、頼ってほしいと言ったのはカリンですから !」

「……そっか。じゃあ1時間……いや、30分だけ寝かせてもらおっかな」

「1時間で大丈夫です! カリンにお任せください!」

「……ありがとう。じゃあ、お願いしようかな」

 

 

 


 

 

 

「もうやることなくなっちゃった」

「なくなっちゃいましたね……」

『仕事が身について来たようで私も嬉しいです』

 ただでさえカリンちゃんが手伝ってくれているというのに、お客さんが全然来ないこともあって、普段定例的にやっている作業はあっという間に終わってしまった。

 

 こういうとき、ライカンさんが相手のときは正体バレしてることもあってそれはもう雑談しまくってたんだが、カリンちゃんは話を振りまくっても大丈夫だろうか。人と話すのが嫌いってわけではないと思うんだが……。

 

 なんて考えながらチラリとカリンちゃんに視線を向けると、彼女も時折こちらへ視線を向けてきていた。

 

「あの……カリンさん、何か気になることでもありますか?」

「わひゃっ!? え、えっと、その……」

「なんでも言ってください。どうせお客さんも居なくて暇ですし、雑談でもしましょう」

「そ、そうですね。でしたら、呼び方をカリンさ(・)ん(・)ではなく、カリンち(・)ゃ(・)ん(・)にしていただけませんか? そ、それと、敬語も止めていただきたいです……」

「なんと」

『恐らくバレてますねこれは』

 つまりフルメット時代とまったく同じ接し方で良いというわけか。確かにそのほうがボロが出なくて俺的には助かるけど、カリンちゃんはどうしてそっちの方が良いんだろうか。

 

「俺はその、構いませんけど……もしかして、さっきからそうしてもらいたくてこっちを見てたんですか?」

「はい。だって、以(・)前(・)ま(・)で(・)は(・)そ(・)の(・)よ(・)う(・)に(・)し(・)て(・)い(・)た(・)だ(・)い(・)て(・)い(・)た(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)で(・)す(・)か(・)」

「……ん?」

『今の発言で確定しました。手遅れです』

 なんか今おかしかったな。以前まで俺がそうしてたって?

 

「急に他人行儀にされたら、ちょっと悲しいです」

「ちょ、ちょっと待ってくださいカリンさん。今の言葉は──」

「カリンち(・)ゃ(・)ん(・)です」

「……カリンちゃん。その、今の言葉はどういう意味なんだ……?」

「イツキ様こそ、どうして今日はカリンによそよそしいのですか?」

『何故まだ隠し通せていると思っているんですか?』

 ニッコリ笑っているはずなのに、全然笑っている気がしない。なんなら圧が強い気がする。

 

 思わず後退してしまうが、カリンちゃんはじりじりとこちらに近づいてくる。

 

 広い店内ではないためか、後退を始めてすぐに壁が背中に当たって追い詰められたかと思うと、逃げ道を塞ぐようにカリンちゃんが両の手を壁に突いた。

 

「──教えてください、フ(・)ル(・)メ(・)ッ(・)ト(・)様(・)。何かあったらカリンに頼ると、そう言ってくれましたよね?」

「え、あ、いや……俺は、フルメットって人じゃ……」

「誤魔化しちゃダメです。だってカリンは、フルメット様の素顔を知ってますから」

「………………えっ」

『何見られてんですか』

 

 


 

 

 

 カリンがフルメットに睡眠を取るように促してすぐに、彼は寝息を立て始めた。

 

(よっぽど疲れてたんですね……)

 

 これで少しでも元気になってくれれば嬉しいとカリンが微笑んでいると、フルメットの様子が急変した。

 

「ぁ……ゔぅっ……」

「フルメット様!?」

「ごめん……俺のせいで、俺の、せいで……」

(……もしかして、魘されてる……? まさか……)

 

 カリンの中で、ひとつの仮説が浮かび上がる。

 

(忙しくて寝れてないんじゃなくて、寝(・)れ(・)な(・)い(・)か(・)ら(・)忙(・)し(・)く(・)な(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)し(・)た(・)ってこと……?)

 

(ずっとこうして、一人で苦しんでいたんですか……?)

 

 今なお魘され続けるフルメットを見て、カリンは居てもたってもいられなくなった。

 

 こういうときにどうすれば良いのか。彼女の頭は考えるまでもなくその答えを導き出した。

 

「……大丈夫ですよ、フルメット様」

 

 自分の膝に彼の頭が来るように寝かせ、そのまま無意識に彼(・)の(・)ヘ(・)ル(・)メ(・)ッ(・)ト(・)を(・)取(・)っ(・)た(・)。

 

 そして頭を撫でながら、優しく声をかけ続ける。

 

「カリンが居ます。フルメット様は一人じゃありません。だから、安心してください」

 

 しばらくそうやって撫で続けると、彼の表情が和らいでいき、徐々に寝言も収まっていく。

 

 やがて、安らかな寝顔が彼に戻った。

 

「良かった……。なんとかなりました……」

 

「………………………………あっ」

 

 そうして、落ち着いた瞬間に自分のやらかしに気がついた。

 

(あ……あぁっ!? わひゃあああああああああっ!? わ、わたっ、私っ、フルメット様のヘルメットを、はっ、外してっ……!?)

 

(で、でもでもでもでもっ! ヘルメットの上からじゃ撫でてあげられなかったし、だから、思わず──!)

 

 わたわたと内心焦りながらも、起きる前に再び被せねばと、ヘルメットを手に取って彼の顔に目を向け──。

 

 その気持ちよさそうな寝顔を見て、カリンは思わずもう一度フルメットの頭を撫で始めた。

 

「えへ……カリンが絶対守ってみせます。だから、頼ってくださいね?」

 

 

 


 

 

「……あのときに?」

「はい。あのときです」

『驚愕、魘されてたとか初耳なのですが』

 き、気づかなかった……。ヘルメットを外そうとする人は今までにも居たが、大抵その気配がすぐにわかってさらりと回避出来ていた。

 

 でもカリンちゃんには悪意が無かった。ただただ俺のことを助けようと、無意識にヘルメットを外したんだ。だから俺も反応できなかった……んだと思う。

 

「あれからカリンは、ずっと、ずっと心配で、フルメット様がそのヘルメットの下で苦しそうなお顔をしていないか、いつも気にしていました」

 

 カリンちゃんは壁から手を離すと、俺の両頬に手を添えた。

 

「フルメット様。……今は、ちゃんと寝れていますか?」

『ナイスな質問です。感謝します』

 先ほどのような圧は無く、ただただ慈愛に満ちた優しい目で問いかけてくる。

 

 ……そっか、カリンちゃんを心配させちゃったんだな。

 

「……ごめん、心配かけて」

 

 顔をはっきり見せるためにも、少ししゃがんでカリンちゃんと視線を合わせる。

 

「色(・)々(・)あってさ、もう大丈夫だよ。今はしっかり寝れてる」

「……なら、良かったです。クマもないみたいですし、しっかり寝れているみたいで安心しました」

『なるほど、現状は問題ないのですね。安心しました』

「……で(・)も(・)」

 

 彼女は俺の頭の後ろに手を回すと、そのまま自分の胸の辺りに抱き寄せてきた。

 

「……あの?」

「ふふ、また何かあったら、すぐに教えてくださいね? もし苦しくなったら、そのときは──」

 

 俺の頭を撫でながら、カリンちゃんは優しい声音で続きを囁く。

 

「──カリンがたくさん、甘やかしてあげますから」

 

『こんなのマスター達には見せられませんね……。まったく、いつも誰が隠蔽してあげているのかわかっているんでしょうか』

 

『今回も監視カメラの映像記録は改竄してあげます。有能な人工知能である私に感謝してくださいね』






・イツキ
最後の場面、絵面が犯罪的すぎないかと内心冷や汗かいてたりする。
それはそれとしてカリンに心配かけてたのは申し訳ないと思っている。

・カリン
包容力レベルMAXなメイドさん。
以前までメイド服の胸の辺りにはネジの装飾を付けていたが、誰かさんをいつでも抱き寄せられるように少し前から外している。

それと誰ですか前回ホラーとか言ってた人は、こんなに優しい女の子なのに(←元凶)


・Fairy
今回のタイトルは君のセリフからもらいました。
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