お金貯まったからホロウレイダー辞めるわ   作:イグアナ

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平和な閑話ンナ。
嵐の前の静けさかもしれないンナね。





20話:これもガチンナ

 新エリー都のとある場所に存在する人気(ひとけ)の少ない路地裏。

 

 そこでライカン、カリン、イツキの三人が顔を合わせていた。

 

「──てな感じで、ハイ。バレました……」

「なるほど、まさかカリンが素顔を知っていたとは……」

「だ、黙っていてすみません! ライカンさん!」

「いえ、謝る必要はありませんよカリン。全ての責は彼にあります」

「やっぱライカンさん俺に対する当たり強いですよね?」

「はて、何のことやら」

 

 とぼけたフリしてるけど今小さく笑ったの見えたぞ。やっぱりわざとじゃねぇか。

 

「しかし、不幸中の幸いなのは、バレたのがカリンだということです。リナはともかくとして、エレンにバレでもしたら……」

「……ど、どうなるんです?」

「えっと、エレンさんは見つけたら噛むって言ってた気がします」

「噛む!?」

 

 噛む!? Bite!? エレンに見つかったら噛まれんの俺!?

 

「ま、マジで……? 下手したらバイト中にBiteされるってこと……?」

「そのふざけたダジャレは置いておいて、カリンの言っていることは本当です。貴方風に言うのであればガチンナ」

「ガチンナ!?」

 

 じゃあガチじゃん。ホントに言ってたってことじゃん。

 

「……ち、ちなみに、エレンのお茶目な冗談って可能性は……?」

「カリンの目には冗談には見えませんでした……」

「あれは本気の言葉でしょうね。これもガチンナ」

「これもガチンナ!?」

 

 ダブルガチンナだったら疑う余地もない。見つかったら確実に噛まれるンナね。

 

 おいやめろ脳内のひょっとこシリアルキラー。最近は表面に出てこなかっただろお前。

 

「イツキ様、お辛かったら言ってくださいね。カリンが抱きしめて癒やして差し上げますから」

「イツキ様……?」

「違くて」

 

 信じられないような視線を向けてくるライカンさんに、俺は全力で首を横に振った。

 

 違うんだって。カリンちゃんが優しすぎるだけなんだって。俺が何か吹き込んだわけじゃないんだよ。

 

「あー、えっと……。カリンちゃん、気持ちは嬉しいんだけど、それだと絵面が酷いというか、俺が犯罪者にしか見えなくなっちゃうから、気持ちだけ受け取っておくね?」

「……ということは、カリンがもっと大きくなったら、いつでもイツキ様を抱き締めて差し上げてもよろしいということですか?」

「おい」

「違くて!!!!!!!」

 

 本当に違うんですライカンさん(お父さん)、カリンちゃんが優しすぎるだけなんです。

 

「まったく……ただでさえ貴方のせいでカリンが変なことを覚えていたというのに……」

「ま、待ってください! いくらなんでも俺がカリンちゃんにそんなことをするわけが──!」

「カリン、あ(・)れ(・)を」

「はい! 『武器の手入れと床磨きは日々欠かさぬように』。そ(・)れ(・)と(・)、『悪質なカスクレーマーに対する脳内制裁シミュレーションは毎時間欠かさぬように』、です!」

「どういうことですかコレは」

「すみませんでした」

 

 潔く土下座した。だって最後の教えたの明らかに俺だもん。はっきり覚えてる。

 

 ちなみに例題として、『"お客様は神様だ"と言いながら文句を言ってくるクレーマーに対しては、"神は死んだ"と言いながらぶん殴るが吉』とか教えた気がする。

 

「……とまあ、このように貴方の存在した痕跡など至る所にあるのですから、バレたくなければ軽率に気を抜かないことをオススメいたします」

「…………はい」

 

 

 


 

 

 同時刻、一人の女性がビデオ屋を訪ねていた。

 

「アキラ、リン。居るか?」

「あれっ、師匠?」

「師匠がこっちまで来るなんて、何かあったのかい?」

「この辺りに美味いチャーシューまんの店があると聞いてな。何でも、チャーシューまんの味を広めたいと考えた者が衛非地区の店で修行を積み、こちらに出店したらしい」

 

 言いながら、儀玄は片手に持った袋を二人に向けた。

 

「お前さん達の分も買ってある。後で食べるといい」

「ほんと!? ありがとう!」

「ありがたいけど……師匠は食べなくて良いのかい?」

「私はもう食べた。噂に違わぬ美味だったぞ」

「あれっ? じゃあなんで3つも入ってるの?」

「この店に新しいバイトが入ったのだろう? 全員分用意するのは当然だ」

「なるほど、イツキさんの分まで買ってくれたのか。イツキさんは今日午後からのシフトだから、そのときに渡しておくよ」

「うむ」

 

 儀玄はアキラの言葉に頷くと、顔色を変えた。

 

「して、本題なのだが……」

「今のが本題じゃなかったの!?」

「当然。それで──あのバ(・)カ(・)は見つかったか?」

「……まだ、手がかりすら掴めてないんだ」

「ふむ……。まあ、お前さん達から一報もないということはそういうことなのだろうとは思ったが……」

 

 腕を組みながら顎に手を当て、儀玄は二人に尋ねる。

 

「だが、何も進展がないというわけではないだろう? 少なくとも、その顔を見るにチ(・)ャ(・)ン(・)ス(・)は(・)あ(・)る(・)と(・)見(・)た(・)」

「……流石、師匠は鋭いね」

 

 アキラはそう言うと、一枚のパンフレットを儀玄に渡した。

 

「最後に彼が姿を見せたのは、前回のアストラさんのライブだ。なんでも、会場に侵入したテロリストを制圧して、被害をゼロに抑えた刀使いが居たらしい。確証はないけれど、実際にその刀使いと会ったアストラさん達から聞いた話を考えると、間違いなく彼だと思う」

 

「そのライブはテロリストのせいで結局中止になったけど、その高すぎる抽選倍率から、『このまま終わりだと当選した人が報われない』とのことで、再びライブの開催が決定したんだ」

 

「彼が前回観客として参加するつもりだったのか、テロリストの存在に気がついて外部から潜入したのかはわからない。けれど、またライブが開催するということであれば──」

 

「──また奴が現れる可能性がある。そういうことだな?」

 

 彼女の言葉にアキラとリンが頷く。それを確認して、儀玄はパンフレットに目を落とした。

 

「……1週間後、か」

 

 

 


 

 

 新エリー都の各地で、アストラ・ヤオのライブ再開催の情報が出回っていた。

 

「……へぇ、またライブやるんだ」

 

 とあるサメのシリオンのメイドはどこか昏い瞳でそう呟き、

 

「フルメット……今度こそ、お前を……」

「パンフレット……? あぁ、そういう……」

「ナギねぇ! ボスがいつものアレだよ!」

「また仕事中に抜け出されたら困りますね……。いっそのこと、六課全員で……」

 

 とある副課長は頭を抱え、

 

「Fairy。今のうちに会場周辺の監視カメラの場所を押さえておこうか」

「かしこまりました」

「よーし! 今度こそ見つけようね! お兄ちゃん!」

『いつでも隠蔽出来るよう準備が必要ですね……』

 とあるビデオ屋では計画が練られ、

 

「……1人で食べるには、少々大きかったな」

 

「やはりチャーシューまんは誰かと分け合うべきだ。そうは思わないか? お前さん」

 

 とある宗主は、どこかのバカを思い浮かべてそう呟いた。

 






賑やかなライブになりそうンナね〜!(おめめキラキラボンプ)

・儀玄
フルメットとチャーシューまんを分け合ったことがある。

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