主人公が新しい戦い方をするときってなんかワクワクしませんか?
私はそういうの好きです。
時間が経つのは早いもので、あっという間にライブ当日になった。
前回テロリストの侵入を許してしまったこともあり、それはもう警備はガチガチになっており、警備員の募集もイヴリンの手によって追加で行われたわけなのだが──。
「おい。今日のライブ、警備にあの星見雅が居るらしいぞ」
「星見雅って……あの虚狩りの?」
「なんなら対ホロウ6課が全員来てるとか」
「マジで? 前回色々あったとはいえ流石TOPS、金あるんだなぁ」
「さっき雲嶽山の宗主様を見かけたぞ。あの人も警備に回ってるみたいだ」
「また何かあったら面目丸潰れだしな。TOPSも本気出してきたか」
「なんか向こうにはメイド服の可愛い女の子が居たぞ。でけーハサミみたいなもん担いでた」
「メイド服……? 客寄せかなんかか?」
「抽選制チケットなのに客寄せは要らないだろ。多分アレだよ、可愛い格好で敵を油断させて、実はメチャクチャ強い──みたいな」
「ああ、そういう感じな」
「いや、ちょっと待て。確か富裕層向けのサービスで、
「そんな映画みたいな話あるのかよ。でもTOPS金あるもんなぁ……有り得る話だ」
あまりにも目立つ面子に、観客はもちろん近くを通りかかった人達まで浮き足立っていた。
ちなみにこのメンツに関してTOPSは何もしていない。なんか警備員の募集出したらこのイカれた面子から格安で警備を引き請けるという連絡が立て続けに入って、イヴリンが驚きのあまりしばらく固まっただけである。
それに加え、公表こそしていないものの、会場内および会場周辺の監視カメラについては、あの伝説のプロキシであるパエトーンが常に監視している。
まさに万全の警備体制。鼠一匹の侵入も許さない体制が今ここに完成していた。
「ごほっ……! 何でこの日に限って……ゲホゲホゲホッ!!」
一方その頃バカは家で風邪を引いて寝込んでいた。
「けほっ……。あー……辛い……」
よりにもよってライブの当日に風邪を引いてしまった。昨日の夜からなんか喉が怪しいなとか思って、薬飲んだりとか色々やったけど、結局ダメだった。
折角また休み取ったのに……。ま、風邪引いたからライブが無かったとしてもきっと休みをもらってたんだろうけど。
正直、この体調でもライブにはめちゃくちゃ行きたい。絶対に楽しめる自信がある。
けれど、それでアストラさんやファンの人に風邪をうつしてしまうようなことがあればファン失格だ。たかが風邪と侮ってはいけない。
とはいえ、流石に当選したチケットを無駄にするのも勿体ないので、アストラさんのファンだと言っていたアキラさんとリンさんに訳を話してチケットを譲渡することにした。
お見舞いに行こうかとも言われたが、気持ちだけ受け取っておいた。二人にもうつしたくないからね。
ちなみにチケットはリンさんが使うことになったらしい。さっき動画で物凄い剣幕で二人がジャンケンしてる様子が送られてきて、ジャンケンに勝ったリンさんがカメラに向かって笑顔でピースしてるのに対し、アキラさんは聞いたこともないような声音で慟哭を上げながら膝をついていた。喉痛いのに笑わせないでほしい。
とりあえず、生ライブの感想は次リンさんと会った時に聞くとして、今は快復に専念しないとな……。
「なんか頭ぼーっとしてきたな……。……ん?」
フルメット時代の癖で調べ物をしていると、気になる情報を見つけた。何でも、今日のライブに襲撃を仕掛けようとしている団体が居るらしい。
実はこういうのはそれほど珍しくはなく、流石に普通にSNSを見ていて流れてくるような情報ではないが、少し普通ではない調べ方をすると、ネットリテラシーに欠けた一部の人間から情報が漏れていることがある。今回もきっと同じタイプだろう。
流石に前回のことがあったから警備は過去最高レベルになってるとは思うけど……。
「ゲホッ……。……ま、会場からちょっと距離あるみたいだし、最悪襲撃犯になら風邪がうつっても良いか」
重い身体を起こして、俺はフラフラしながらとある装備を手に取った。
へへへ……仮にフルメット時代の知り合いに見つかっても問題ない。何故なら今回は、お面じゃない
行くンナよ。風邪を引いた状態で襲撃犯を倒すくらい朝飯前ンナ!*1
会場から少し離れた溜まり場。そこに襲撃犯達は集まっていた。
「そろそろライブの時間だな……。おい、警備の配備はどんな感じだ?」
「そ、それが……」
「どうした。早く言え」
「その、前回から警備が強化されているようでして……」
「当たり前だろう。だが、警備が強化されているという状況が逆に奴等の油断を誘う鍵になる。『これだけ人員が居るのなら大丈夫だ』。そんな一人一人の気の緩みが、全体的な警備の質を下げ──────」
「警備にあの星見雅が居ます」
「よしお前ら、今日の襲撃は止めだ」
「「「「「ウッス」」」」」
一瞬だった。襲撃犯と言えど、引き際は弁えている悪党だった。
しかし彼らの誤算だったのは、情報を漏らすバカが混じっていたことだった。
それにより、戦う必要のないバケモノを呼び寄せることとなる。
「──見ツケタ。オマエ達ガ、襲撃犯ンナネ?」
「あ?」
自動音声のような声が聞こえた方にボスが視線を向けると、ゴリゴリのロボットみたいな身体にボンプの頭が付いたバケモノが立っていた。
「……あの、どちら様ですか?」
思わず敬語になるボスに対し、バケモノは胸を張って言葉を発する。
「私ハ、TOPSガ秘密裏二開発シタ、対襲撃犯用ロボット──」
「──"殺戮戦士・キラーボンプマン3号"ンナ」
「嘘つけテメェ!! 無理あんだろうが!!」
「ネーミングがキテレツすぎんだろ!! ただの殺人マシーンじゃねぇか!!」
「そもそもボンプじゃねぇよお前!! パチモンだパチモン!!」
「1号と2号どこに居んだよ! 適当に3号って名前付けただろ!」
「てかどう見ても中に人入ってんだろ!!」
「そうだそうだ!! カタコトならロボット名乗れると思ってんじゃねぇぞ!!」
「お黙りンナ」
「「「「「うぎゃあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!?!!!?!」」」」」
突如キラーボンプマンの手の平から放たれたビームによって、文句を言った者達は秒で戦闘不能になった。
「ボス! こいつ言論封殺しやがった!!」
「あとカタコトも止めやがった! めんどくさかったんだコイツ!!」
「逃げろ! 物理的にも精神的にも勝てる相手じゃねぇぞ!!」
「悪いけど今のンナは頭がふわふわしてるンナ。手加減してもらえるとは思わないンナね……ゲホゲホゲホッ!!!」
「やっぱ中に人居るってコイツ!!」
ふざけたシリアルキラー2号に襲撃犯が全滅させられるまで、あと数分──。
なんかクソみたいな戦い方し始めたンナ。
なんだコイツ。