真面目なわけないだろ(タイトルへの文句)
殺戮戦士・キラーボンプマン3号は、簡単に言えばイツキがホロウレイダー現役時代に集めたガラクタで作成した着ぐるみだ。
なので、キラーボンプマン3号自体にはビームを放つ機能など当然存在しない。それを可能にしているのは、全てイツキ本人の体質によるものだった。
要するに、機械の力でビームを打っているように見せかけて、実際のところはイツキが自分でエーテルをエネルギーに変換してビームを放っているということだ。
だが、イツキがエーテルを扱えるのは基本的にホロウ内に居る時に限られる。では何故今ホロウの外でエーテルを扱えるのかと言えば──。
「ン〜ナンナンナンナ!! まだまだホロウで溜め込んだエネルギーは有り余ってるンナよ〜!!!」
ホロウに入って一時的に身体にエーテルを溜め込む。そうすることで、イツキは溜め込んだ分だけのエーテルをホロウ外でも扱うことが出来る。
体内のエーテルを使い切ったらその時点で戦い方を徒手空拳に切り替えるしかなくなるので、ホロウ内に比べれば遥かに使いづらくはあるのだが、それでも丸一日ホロウでビームを撃ち続けたバカなだけはあり、効率良くエーテルを使用するのはお手の物だった。
「ンナレーザー!! ンナドライブ!! エーテルパンチ! エーテルサーベル!!」
「こいつヘンテコ技のバーゲンセールだ! 対策出来ねぇ!!」
「なんでいちいち振る技全部違うんだよ!! 常に初見対応押し付けてんじゃねぇぞ!!」
「そもそもンナなのかエーテルなのかどっちかにしろテメェ!!」
文句には聞く耳も持たず、キラーボンプマン3号は次々と襲撃(未遂)犯を殲滅していく。
やがて自身を除いた最後の一人が倒されたのを見て、ボスは一歩後ずさった。
「そんな、有り得ねぇ……。俺達がこんなふざけた奴にやられるなんて……」
「ふざけてないンナ。ンナは大真面目ンナ」
「お前、只者じゃねぇな!? 一体何者だ!?」
「だから最初から言ってるンナ。ンナは──」
キラーボンプマン3号は手のひらをボスに向け、改めて名乗りを上げる。
「──"正義の戦士・ジャスティスボンプマン0号"ンナ」
「おまっ、お前っ……」
ボスはプルプルと身体を震わせ、これまでの人生で一番大きな声で叫んだ。
「せめてちゃんと設定練って来いよ!! コロコロ名前変えてんじゃねぇ!!」
「ジャスティスレーザー」
「ああああああああああああああ!?」
まさに無慈悲。ジャスティスボンプマン0号は、悪党の言葉を聞く耳を持っていない。
レーザーに焼き払われた男の甲高い悲鳴だけが、辺りに響き渡ったのだった。
「……終わった、かな」
襲撃(未遂)犯を全員倒したことを確認して、俺は壁に寄りかかると、そのままズルズルと座り込んだ。
あ゙〜……なんか意識がぼやけてるというか、頭がふわふわするというか……。流石に無茶しすぎたかな……。
身体から力が抜けて立ち上がれそうにない。しまったな……家に帰れるくらいの体力は残してたつもりだったんだけど……。
少し休憩したらコイツらの通報だけして、さっさとこの場から離れないと──。
「ふむ、ここか」
「…………え?」
聞き覚えのある声に顔だけそちらに向けると、気付かぬ内に儀玄さんがこの場に立ち入って来ていた。
「そのやばいデザイン……。なるほど、こんなところに居たか」
「……何の、ことですか?」
まさかこの外見で判断した? マジで言ってる?
「誤魔化すな、お前さんのエーテル運用は特殊すぎる。会場から然程離れていないこんなところでエーテルを扱えば、感知出来るに決まっているだろう?」
呆れたような表情で言いながら、儀玄さんはこちらに近づいてくる。
「私以外にも反応を見せた者がいた。じきに他の者達もここに到着するだろう」
「まあ、なんだ。そろそろ観念して、捕まっても良いのではないか?」
「それはちょっと……困りますね」
まずい、頭が回らない。否定する言葉がまったく思い浮かばないし、ここから逃げ出す力も残っていない。こんなところで見つかるわけにはいかないのに……。
「……? お前さん、何か様子が変だな。あまりにも身体から力が抜けすぎている」
「……まさかとは思うが、体調でも悪いか?」
「そ、そんなことないですよ! 元気なんて有り余って──ゲホッ!」
「……なるほど、風邪か」
儀玄さんはこちらの目の前まで来てしゃがみ込むと、俺の頭に手を置いた。
「ほれ、元気があるというなら抵抗しろ。私に顔を見られるぞ」
「……ッ」
腕を上げて彼女の手を掴むが、自分でもわかるくらいあまりにも弱々しい力しか出ない。それを見て、儀玄さんは溜め息をついて俺から手を離した。
「このままだと他の者達が来るのは時間の問題だ。だから、提案がある」
「提案……?」
「そうだ。
「……どういう、ことですか?」
「今からお前さんを誰にも見られないように安全な場所へ運ぶ。動けるようになったら好きに帰ってくれて構わない。そして当然だが、私に正体を明かす必要もない」
「……それは、儀玄さんに何の得も──」
「お前さんこそ損得で人を助けるような人間じゃないだろう? ずっと助ける側だったんだ、たまには助けられる経験でもしてみてはどうだ?」
「…………」
嘘をついているような顔じゃない。というか、儀玄さんは約束を守ってくれる人だ。見ないと言ったからには本当に見ないだろう。
どうせまともに動けないんだ。だったら、儀玄さんの提案に乗るしかない。
「……すみません。お願いします」
俺の言葉に、儀玄さんがコクリと頷いた。
かつて、ミアズマフィーンドというエーテリアスが存在した。
しかし、それは本物には遠く及ばない最早別物と言えるレベルの存在であり、言ってしまえばただの強力なエーテリアスでしかなかった。
だからこそ、その怪物と対峙した儀玄でさえ、それが姉を模したものだと気付くのは倒す直前であったのだが……。
そのミアズマフィーンドを"紛い物"と称し、研究データを利用して『
強さだけではなく、姿形まで本物と見紛う程に似せて作られたその怪物は──。
「儀玄……ねぇ、儀玄。置いていかないで……。私を、一人にしないで……」
「何も視えないの。何も聴こえないの。何も嗅げないの。何も味わえないの。何も感触がないの。何も、何も何も何も何も何も──」
「姉、様……」
「あぁ、儀玄。儀玄、儀玄──」
「──今度は私を、
当時の儀玄の心を折るには、これ以上ない存在だった。
ミアズマフィーンド・名は名なれど
ミアズマ仮想再創体・儀降