たまには本筋進まない話があっても良いかなって思ったンナ
ちなみにタイトルから分かるかもしれないけど、ビビアン発狂回ンナ
フルメットの正体を知って少し経ち、ビビアンはふと思った。
あんな情報リテラシーのガバガバ具合で本当に大丈夫なのかと。
何かの拍子に最愛のパエトーン様に正体がバレてしまうのではないかと。
ビビアンは激怒した。必ず、かの鈍感朴念仁の馬鹿を叩き直さねばならぬと決意した。
なのでとりあえず、明日のバイトの様子を観察して、様子を見てみようなどと思ったのだった。
「イツキ様! 本日はカリンがお手伝いいたしますね!」
「ありがとうカリンちゃん。助かるよ」
「はいっ!」
ペカーッと明るい笑顔をイツキに見せるカリンを、ビビアンは店内に仕掛けた隠しカメラ越しから見ていた。*1
(彼女は確か、ヴィクトリア家政の……。正体が既にバレている内の一人だったはずなのです)
なら問題ないか。……とはならない。
「とは言っても、今日もそんなに忙しくならないだろうし、あんまり気張らなくても大丈夫だと思うよ」
「いえ! それでも精一杯頑張ります! でないとイツキ様は一人で頑張りすぎてしまうようですからね?」
「その節は本当に申し訳なく思っております」
(頑張りすぎる……? また何かしたのですかこの人は……)
未だに風邪の件を根に持たれているイツキだったが、それについてビビアンに知る由は無く、彼女は『どうせまた何かしでかしたんだろう』と思いながら紅茶を口にした。
「今度からは、何かあればカリンにすぐ教えてくださいね?」
「あっ! もちろん何も無かったとしても、お望みであればいつでもカリンが甘やかして差し上げますので! いつでも!!ご遠慮なく!!」
言いながら手を広げて抱擁のポーズを取ったカリンを見て、ビビアンは飲んでいた紅茶を吹き出した。
翌日。昨日の時点で既に言いたいことを全部ぶちまけても良いような気がしていたが、ビビアンは念のためもう一日だけ観察することにした。
今日はイツキが一人のシフトのようで、特に何事もなく時間だけが過ぎていった。
(……そろそろ15時なのです。今日は昨日とは違って何も起こらずに終わりそうですね)
(まあ、流石に毎日のようにあんなことがあるわけ──)
「邪魔するぞ、お前さん」
「あ、儀玄さん」
あるかもしれない。ビビアンの表情に緊張が走った。
「今日も買ってきてくれたんですか?」
「当たり前だろう。何のためにここまで足を運んでいると思っている」
そう言って、儀玄はチャーシューまんの入った袋をイツキに手渡した。
「あれ? 今日は4つ……? つまり一人1個──」
「今日はノーマルチャーシューまんとカレーチャーシューまんを2個ずつ買ってきた。勿論今回もお前さんと私で半分こだ」
「ああ、そういう……」
イツキが袋からそれぞれのチャーシューまんを1つずつ取り出し、半分に割ろうとしたところで、儀玄が待ったをかけた。
「待て、半分には割るな。それぞれのチャーシューまんを手にしたら両手が塞がって食べにくいだろう」
「えっと……じゃあどうすれば?」
「……お互い半分まで食べたら交換すれば良いだろう」
「確かに」
「確かにじゃねぇのです!!」
ビビアンは自分の声が届かないとわかっていても叫ばずにはいられなかった。
「何を簡単に言い丸め込まれているのですか!!!!! こんなの目的なんてひとつしかないのです!!! 何故気づかないのですか!!?」
彼女が机をバンバン叩きながら文句を言っている間に、儀玄は店内の丸椅子に視線を向けていた。
「……それと、いつもはお前さんを壁代わりにして寄りかからせてもらっていたが、それではお前さんにも負担がかかるし、そもそも立ちっぱなしではあまり疲れが取れん」
「気づくの遅くないですかそれ」
「……ゴホン。それでだ、あの椅子ならばそれも解消出来るとは思わないか?」
「雑に誤魔化しましたね。 あぁ、でも確かに、儀玄さんが椅子に座って食べれば──」
「いや、お前さんが座れ」
「はい?」
儀玄の言葉の意味を理解出来ず、首を傾げたイツキだったが、とりあえず言われるがまま椅子に座り──
──儀玄がそのまま彼の膝の上に座った。
「ふむ、ジャストフィットだな。これで良い」
「パエトーン様のお店で真っ昼間から何をおっぱじめているのですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
心からの絶叫だった。しかし、当然この声は誰にも届くことはない。南無。
「……あの、これって俺の上に座る必要あります?」
「丸椅子には背もたれが無いだろ」
「……まあ、確かに」
「ふふ、そういうことだ」
得意気にそう言うと、儀玄は彼に寄りかかりながらチャーシューまんを食べ始めたのだった。
「今日は私が貴方の行動を監視するのです」
「は、はぁ……」
今日の店番は俺一人の予定だったのだが、急にビデオ屋に来たビビアンがそんなことを言い出した。
「私が居るからにはどんな些細なやらかしも見逃さないのです。覚悟するといいのです」
「……にしても、近くない?」
ビビアンは先程から俺の真横にぴったりくっついていて、じっと俺を観察している。こうもずっと近くに居られるとちょっと落ち着かない。
「へぇ……膝に女性を座らせるのは良くて、隣でじっと見られるのは嫌なのですね」
「えっ」
おい待て、何でそれを知って──。
「やましいことがないのでしたら……文句、ありませんよね?」
「………………はい」
にっこりと笑って言ったビビアンの言葉を、俺は否定出来なかった。
午前の仕事が終わり、昼休憩の時間になった。
流石にどこかのタイミングで離れるかと思ったが、未だにビビアンは俺の真横にべったりくっついて監視を続けていた。
「……えっと、昼飯食う時ですらその距離感なの?」
「当たり前なのです。貴方がいつ何をするのかわかりませんから」
「そ、そっか……」
信用無くて泣けてくる。俺が何したっていうんだ……。ただ5人に正体がバレただけなのに……。やらかしまくってるじゃねぇか。*2
こうして見に来てくれてるのも、俺が正体バレに繋がるような変なことをしないかって心配してくれてるからだとは思うんだけど……。
なんて思いながらいつものサンドイッチを口にしていると、隣からお腹が鳴る音が聞こえた。
「…………」
「…………」
「……
「
「ごめんて!!!!!」
ビビアンの拳を掌で受け止めながら謝罪するが、ビビアンは顔を赤く染めながらプルプルと震えたままだった。
「……えっと、もしかしてお昼ご飯用意してない、とか?」
「……監視している間に食べる時間なんて無いのです」
ストイックすぎるだろお前。何がお前をそこまで突き動かすんだ。
かと言ってこのままお昼以降も腹を空かせたままってのもアレだしな……。……あっ、そうだ。
「じゃあ、これ食べるか?」
「…………はい?」
まだ口をつけていないサンドイッチをビビアンに差し出すと、ビビアンの表情が固まった。
「……要らないのです」
「別に変なもんは入ってないよ。店で買ったやつだし」
「そういうことではなく! 貴方に借りは作りたくないというだけなのです!!」
「借り……ね」
その言葉を聞いた俺は、ビビアンの口にサンドイッチを突っ込んだ。
「むぐっ……!?」
「ばーか。こんくらいで借りを作ったなんて思うわけないだろ」
「もごごっ……!」
咀嚼しながらも不満そうな目でこちらを見てくるビビアンだったが、俺はそれを見て笑いながら続きを口にする。
「それにさ、飯は誰かと食った方が美味しいだろ? たまには一緒に飯食べようぜ、ビビアン」
「〜~~~~~ッ!!!!!」
口に入れた分のサンドイッチを飲み込んだビビアンは、少し不満気に目を逸らすと、ぽつりと呟いた。
「……これで勝ったと思わないでほしいのです」
「何も勝負してないだろ……」
『ずっとくっついてるせいで、貴女との時間が一番改竄に苦労するのですが……仕方ありませんね。マスター達にも見せたことのないその顔は
カリンがビデオ屋に来るよりも前の日。つまり、ビビアンがカメラを仕掛けるよりも前。
リナは手作りのケーキを持って、ビデオ屋を訪れていた。
「今日も美味しかったです。ありがとうございます」
「ふふ、今日も良い食べっぷりでございましたわ」
着々と
「あの……何か?」
「い、いえ……。そ、その……大したことでは、ないのですが……」
「わ、私も──」
そこまで切り出したところで、店に備え付けられていた電話が鳴り始めた。
「あ、すみませんリナさん。ちょっと出てきますね」
申し訳なさそうに言って、電話の方にパタパタと走っていくイツキの後ろ姿を、リナは唇に指を当てながら見つめていた。
「…………私も」
「私も、
「──なんて言ったら、貴方を困らせてしまうかしら?」
◆今回の簡単な時系列
リナ来訪。
イツキ帰宅後、こっそり忍び込んだビビアンがカメラ設置(Fairy黙認)
↓
次の日
カリンがビデオ屋の店番&ビビアンによる監視開始
甘やかし発言でビビアンが紅茶を吹き出す
↓
さらに次の日
儀玄の半分こ事変が膝の上座りにレベルアップ
ビビアンが発狂する
↓
さらにさらに次の日
ブチギレビビアン来訪
・アキラ&リン
もう少しイツキと交流しろ(戒め)
・カリン
早く甘えてきてほしい
・儀玄
膝の上に座って寄りかかりながらチャーシューまんを食べた挙句に、お互いに半分まで食べたチャーシューまんを交換して食べた。イツキがチョロすぎて心配。
・ビビアン
このあとカメラは回収した。
今後監視するときは真横で見続けてやるのです。
・リナ
何か言いたげだったが、本人には言えずじまい。
何だろうね。
主人公の相棒枠選手権(今後の内容に影響はないンナ)
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ライカン
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浅羽悠真