アキラとリンどっちを重くするかちょっと悩むンナねぇ
「えっと……つまり? アキラさんがプロキシ兄で、リンさんがプロキシ妹。ビデオ屋のレジ奥にある個室は二人がプロキシ業で使ってる仕事部屋だから立ち入り禁止だったってことですか……?」
「そうなりますね」
なんじゃそら。そんなことがあってたまるか。
でも二人のお人好しさは確かにプロキシ兄妹と重なるところがあるし、そもそもあのビデオ屋はやけにプロキシ兄妹が懇意にしてた人達がよく来てたし、加えてプロキシ兄は前に映画が好きって言ってたし……。
……あれ? よくよく考えたらほぼほぼ答え出てないかこれ? そもそもビビアンがあれだけ2人を気に入ってる時点で気づくべきだったのでは……。
い、いやいやいや! でもまさか偶然バイト先に選んだ店の経営者がプロキシ兄妹だなんて思うわけないだろ!? なんだこのヘンテコミラクル! いい加減にしろ!
内心で少し不満を垂らしていると、アキラさんがようやく俺から離れた。
「それにしても、まさかイツキさんがフルメットだったなんて……。ははっ、灯台下暗しとはこういうときに言うんだろうね」
「俺だって、まさか正体を隠したい人の元で働いてるとは思わなかったですよ」
「う〜ん……君から敬語を使われるのは、距離を感じて少し寂しいかな」
「そっちもイツキ"さん"のままじゃないですか」
「ふふ、それもそうか。なら今後はお互いに"さん"付けと敬語は無しで行こう。これからもよろしく頼むよ、イツキ」
「了解。バレちゃったもんはしょうがないし……改めて、これからよろしくな、アキラ」
差し出された手を掴み、これからは
と、なればだ。当然もう1人打ち明けるべき人物がいるはずだ。
「てことはリンさんにも俺の正体を──」
「「いやいやいや」」
「えっ」
えっ。言わないの? だってリンさんってプロキシ妹でしょ?
言っても別に問題ないんじゃ……?
「イツキ様……貴方は何も理解しておりません」
「考え直してくれイツキ。今リンに君の正体を伝えたらどうなるか……。せめてこう、タイミングや対処を考えてからにさせてほしいんだ」
「……えっと、ちなみに今リンさんに伝えるとどうなるんだ?」
「そうだね。兄としてリンを見てきた僕が考えるに──」
「──最低でも半月は膝の上を占領して動かないだろうね」
「半月!?」
半月!? てことは2週間!? 長い長い長い。流石に長すぎる。
ライカンさんも驚いて口開いちゃってるじゃん。『見積もりが足りていませんでしたか……』とか言ってるし。え、見積もり?
「いいかいイツキ。君はわかっていないんだろうけど、リンは君にとても懐いていたんだ。もう一度君に会うために、今なお活動を続けているくらいにはね」
「えぇ……。でも、プロキシ妹が人懐っこいのは俺に対してだけじゃなかったような……」
「……わかっていないな、君は」
顔に手を当てて、アキラは溜め息をつく。
「リンが今もあんな風なのは、君のおかげだっていうのに」
まだ、アキラとリンがプロキシになりたての頃。2人はとあるホロウレイダーの一団から依頼を受け、プロキシとして任務に同行していた。
報酬は均等に分けるという契約で請け負い、そのまま彼らと一緒に任務も達成したところまでは良かったのだが──。
「よーし、もういいぜボンプの嬢ちゃん!」
「えっ? まだホロウの中だよ? 出口までは案内するつもりだったんだけど……」
「大丈夫大丈夫! ここで仲間と落ち合う予定なんだ! キャロットもあるしよ!」
「そ、そっか……。じゃあ……」
「ああ、報酬の話だな。報酬は均等に、だったな?」
そう言って、男は報酬の半分どころか、1割にも満たない金額を渡してきた。
「ほら、これでいいだろ?」
「い、良いわけないでしょ!? 報酬は均等に分けるって約束だったじゃん!」
「いいや、均等だぜ?
「えっ……?」
そうだとしても計算が合わない。今回の依頼で現地に来たホロウレイダーは2人。そして同行したリンと、裏でサポートしていたアキラを合わせて丁度4人。彼らの理屈で言ったとしても、均等に分けるのなら半分ずつになるはずだった。
「おいおい兄弟。その言い方だと嬢ちゃんに伝わらねぇだろ?」
「おっと、わりぃわりぃ」
わざとらしく頭を掻いて笑うと、男は意地の汚い笑みを見せて口を開く。
「──
「──ッ!! そんなの、
「普通ってなんだ? 自分と同じ尺度を必ずしも相手が持ってるわけじゃあないだろ?」
「そうそう。気になったなら確認してくれれば良かったのさ。それとも何だ? 俺達があんたらに嘘をついたとでも?」
「……それは」
言葉に詰まるリンの肩に、アキラが手を置いた。
「リン、悔しいがここは退こう。僕らが甘かった」
「でもっ……!」
「反省は次に活かせばいい。ここで彼らと争って、イアスの身に何かある方が損失だ」
「…………うん」
なんとか不満を飲み込み、アキラの言葉に従ってその場を後にしようとしたリンだったが、その背中に向けて男達が声をかける。
「あっ! おいおいちょっと待った待った! まだ話しとくことがあんだよ!」
「……何?」
「ここ、ホロウの中だろう? 要するに、嬢ちゃんの帰り道には出る可能性があるわけだ。エーテリアスがさ」
「──どうだ? ホロウの外に出るまでの護衛として俺達と雇わねぇか? なぁに、一緒に任務を片付けた仲だ。特別に今回の報酬の
「──最ッ低!!」
リンが走り去った後ろからは、人を馬鹿にしたような下品な笑い声が響いていた。
(もうやだ!! プロキシを始めてからこんなのばっかり! どうしてこんな、こんな目ばっかり──!)
「リン! 落ち着くんだリン!」
アキラの言葉も耳に入らず、リンは出口に向かって走り続ける。だが──。
「止まるんだリン! その先には、エーテリアスが──!」
「……えっ?」
リンが気づいて足を止めたときには、既にエーテリアスが彼女を捕捉しており、そのまま彼女へと飛び掛ってきていた。
「──あ」
もう回避は間に合わない。目の前の光景がどこかスローに見えて、リンは自分の失態を悟った。
これから来るであろう衝撃を想像してしまい、思わずギュッと目を瞑ってしまうリンだったが、いくら待っても衝撃が来ない。
不思議に思いながら恐る恐る目を開けてみると、目の前には両断されて消滅していくエーテリアスと、一人のフルフェイスヘルメットの男が立っていた。
男は一息ついて納刀すると、リンの方を振り向いてしゃがんだ。
「よし、エーテリアスは倒したからもう大丈夫だぞ。どっか怪我とかしてないか? いや、ボンプだから破損か……? まあ、どっちでもいっか!」
呆然とするリンを持ち上げて、男はボンプの全体を見渡した。
「う〜ん……見たとこ特にどっか壊れたりとかはしてなさそうだな……。良かった良かった。最近はここのホロウもエーテリアスが増えてきてるからさ、お前も気をつけてな」
「そうだ。俺はこれからホロウから出るとこだけど、お前も一緒に来るか? エーテリアスがまた出ないとも限らないし、俺も心配だからさ」
「安心してくれ。もしまだエーテリアスが出ても、お前には指一本触れさせないからさ。なっ?」
そう言いながらリンを胸に抱いて頭を撫でるイツキは、ただ単に野良のボンプをあやしているだけのつもりだったのだが──。
イアスと感覚を共有しているリンがそれをどう受け取ったのかは、また別のお話。
「あっ……ああっ、うあぁっ……」
「リン!? どうしたんだリン!? リン!?」
悩んだのでとりあえず両方情緒ぶっ壊したンナ
ンナは天才ンナね(自画自賛)
主人公の相棒枠選手権(今後の内容に影響はないンナ)
-
ライカン
-
浅羽悠真