ちゃんと事前にお金貯まったら引退する話はしてるからセーフだと思ってるバカが居るらしい。どこのバカンナ
あ、それと最後のは書き忘れじゃないワタ
それだけは言っておくマイ
邪兎屋の拠点にて、ニコはソファーに座りながら天井を見上げていた。
(……皆出払ってるし、今日は久々にあたし一人……か。普段が騒がしすぎて、こうも静かだと逆に落ち着かないわね……)
そんなことを考えながら、ニコはとある場所へとチラリと視線を向ける。
そこには、かつてイツキから借りた
それを見るたび、ニコは
『……悪い、ニコ』
『今の話、誰にも言わないでくれないか?』
そして、いつもこう思うのだ。
(あのとき、あたしがもっと強かったら──)
(──
「いやー、イツキさん大人気だったねー」
「あれを人気と表現するのはどうなんです?」
プロキシ妹が電話で抜けている間、ショウタ達にジュースを持って行ったのだが、その流れで彼らの遊びに混ぜてもらえることになった。
やっていた遊びはドッジボールだったようで、基本俺はボールを投げずに避けに専念していたのだが、まったく俺に当たらないことで熱を持ったのか、いつの間にか俺にボールを当てることが目的になっていって、最終的には四方八方から飛んでくるボールを俺が避けるゲームになっていた。
それはもうゲームが違うじゃん。集団リンチじゃんこれ。しかも途中から『おもしろそー!』とか言って別のグループの子供達も混ざってきてたし。なんだあの地獄。
あと野球ボール投げてきた奴は絶対に許さん。誰だ執拗にデッドボール狙ってたの。
「ただの的ですよ的。まったく、サンドバッグじゃないんだから……」
「あははっ、でも皆楽しそうにしてたよ?」
「……まあ、それならいいんですけどね。……ん?」
ふと前を見てみると、見知った顔がキョロキョロと周りを見渡していた。
その人物は俺たちの方に顔を向けると、ハッとした表情になってこちらに向かってきた。
「リン店長! ちょっと良いか!?」
「セス? そんなに慌ててどうしたの?」
「この辺りでひったくりがあったらしいんだ。犯人は未だ逃走中らしいんだが、目撃情報がこの周辺で途絶えてしまって……」
「そうなんだ……犯人の特徴は?」
「サングラスをかけたオレくらいの背丈の男で、手には女性から盗んだブランド物のバッグを持っているらしい。心当たりはないか?」
「うーん……ごめん、特に見た覚えは──」
「それなら向こうで見かけましたよ」
「本当か!?」
「はい。あっちの広場で見かけて、そのまま通りの方に走っていきましたよ」
「ありがとう! 協力、感謝する!」
セスは俺に礼を言うと、教えた方向に走っていった。
……相変わらず大変そうだなぁ。でも、いつだって全力投球なところを見ると、なんだか元気をもらえる気がしてくるな。
「……凄いね、イツキさん」
「凄い? たまたま見かけたのを覚えてただけですよ?」
「そんなことないよ! 誰にでも出来ることじゃないもん!」
「そ、そうですかね……?」
「そうだよ!自信持って!」
これくらいのことでもこんなに褒めてくれるとか、ほんと人たらしだよなプロキシ妹。
まあ人たらし度で言えば
「聞いたわセスくん。迅速な犯人逮捕、お手柄ね」
「ありがとうございます。班長」
あのあと無事に犯人を確保したセスだったが、その表情はどこか釈然としないものだった。
「……何か、気になることでも?」
「いえ、その……犯人の捜索にあたって、リン店長のお知り合いから犯人らしき人物を見かけたという証言を聞いたんです。オレはその場所に向かって、無事犯人を見つけました」
「それが、何か?」
「……この映像を見てもらえますか?」
セスが朱鳶に見せたのは、とある広場の監視カメラの映像だった。
そこには、犯人と思わしき特徴の男がそそくさと走り去っていく様子と──。
──四方八方から次々と投げ込まれるボールを難なく避け続けるイツキの姿が映っていた。
「……オレが証言を聞いたのはこの人からです。信じられますか? こんな状況で、この人は周囲の状況に目を配る余裕があったってことです」
「いくら子供が相手と言っても、この数のボールを捌きながら周りに目を向けるなんてオレには出来ません。間違いなく、只者じゃない」
「……一体何者なんだ、この人は……」
セスがフルメットのことを知ったのは、朱鳶と青衣の任務に同行したときのことだった。
たまたまホロウ内で遭遇したフルフェイスヘルメットを被ったホロウレイダーに、セスはすぐさま警戒態勢を作ったものの、朱鳶と青衣は特に警戒することなく、むしろ仲よさげに一言二言会話すると、男はすぐにその場から去っていった。
「……あの、班長? 今の、ホロウレイダーだったのでは?」
「あの人はその、何というか……」
「放し飼いするが吉。と言ったところであろうな」
「は、はぁ……」
二人がそう言うならと、一度納得しかけたセスだったが、相手は仮にも犯罪者であるホロウレイダーだ。
もしかすると、あの手この手で尊敬する朱鳶を騙したりしている可能性だってゼロではない。
せめて自分くらいは……と、警戒していたのだが──。
「きょ、興味本位でホロウに入って、迷って出られなくなってたところだったのを、フルフェイスヘルメットの男の人に助けてもらったんです……」
「……またか」
新エリー都では度々、誰かがホロウに迷い込んでしまうという事案が様々な要因で発生していた。
キャロットも無しにホロウを自力で脱出するのはとても困難であり、悲惨な末路になってしまう者も少なくないのだが、不思議なことに治安局などの助けもなく脱出に成功するケースがそこそこ発生した。
勿論自力で脱出に成功するケースもある。しかし、脱出出来た人々の口からは、喋るボンプやフルフェイスヘルメットの男のことが語られることも珍しくなかった。
喋るボンプのことは一旦置いておくとしても、フルフェイスヘルメットの男と聞いてセスが思い浮かべるのはあのときの男だ。
朱鳶と青衣は『彼に違いない』と口にしており、セスも『二人が言うのなら、きっとあの男の仕業なのだろう』と結論づけた。
だが、その男はホロウレイダー。名の通りホロウへの侵入者であり、略奪者でもある。そのはずなのに、こうも人命救助をしているという事実が、セスにはどうしても理解できなかった。
(『放し飼いするが吉』……確かにその通りかもしれない。でも、どうして、アイツは──)
「セス・ローウェル巡査だな?」
「……誰だ?」
セスが考えながら路地裏を歩いていると、彼の後ろから男が話しかけてきた。
「何も言わずに着いてこい。でないと、その辺でさっき拐ったガキがどうなるかわからんぞ?」
「オマエ……」
「おお、怖い怖い。その反抗的な顔、もう一度見せればわかっているな?」
「……ッ!」
自分に言うことを聞かせるためだけに行われた、無関係な子供の誘拐。セスはその事実に憤りを覚えながらも、一旦男の言うことを聞くことにした。
男は当たり前のようにホロウの中へと入っていき、セスも何も言わずにその後ろを着いていく。
しばらくホロウの中を進んでいくと、男はやがてとある建物の前で足を止めた。
「この中にガキが居る。おっと、会わせる前に武器は全部捨ててもらおうか。その武器も売りゃあ金になんだろ」
「……わかった」
子供に危害を加えられる訳には行かない。セスはその一心で武器を捨て、それを見てニヤニヤと笑う男に内心歯噛みしながらも、男の後を着いていく。
「さあ、まずは市民のヒーローとガキの顔合わせだ。話はそのあと、ゆっくりとしようじゃねぇか。ほら、よーく見ておけよ──」
言いながら男が建物の扉を開けた、その先には──
──床に倒れた男の仲間達と、部屋の奥で男の方を見ている子供の姿があった。
「なんだこれは!?一体、何が──!」
「あの人!!!」
ビシッと、子供が男に指を指す。
「ボクを拐ったのは、あのおじさんだよ!!」
「お前が誘拐犯かぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
入り口近くの天井に張り付いてスタンバっていた不審者が、ジャンプスケアよろしくな突発さで男に襲いかかった。
「オマエは……」
「お? ああ、あのときの。そっか、あんたがこいつらの恨みを買ってた治安官さんか」
フルメットがここに居たことに、特に深い理由はない。
たまたま彼がこの建物の前を通りかかると、中から子供の泣き声が聞こえてきた。
なんだなんだと中の様子をこっそり確認して、どうやら子供が誘拐されているらしいと気づいた彼は、そのまま建物に押し入って男の仲間達を全員制圧。そして子供から『ボクを人質に治安官さんを連れて来るって……』という話を聞き、待ち伏せをすることにしたというわけだ。
という説明をフルメット本人から聞かされ、セスは顔を手で覆った。
「……経緯はわかった。その上で、ひとつ聞かせてくれ」
「なんだ?」
「……どうして、天井なんだ?」
「気分」
「気分!?」
「凄いんだよ!! この人、蜘蛛みたいに天井に張り付いてたんだ!」
「いやいや、キミの協力あってのことだよ。ナイス犯人指差し」
「「イェーイ!!」」
「何なんだオマエは!!!」
目の前の光景を見て、セスは今まで気にしていたことが全てアホらしくなるような結論に至った。
(班長も見逃すわけだ……。この男、
ホロウレイダーよりも治安官の方が向いてるんじゃないか。そんな言葉を一瞬口にしそうになったセスだったが、その言葉は内心に封印した。
・セス
班長達が騙されてるかも……! せめて俺くらいは警戒しないと……!
↓
全然悪い話聞かないんだけど……。それどころか人命救助までしてる話ばっかりだし……。なんだコイツ……。
↓
あ、コイツただのバカだわ(警戒0に引き下げ)
・朱鳶
治安官にも関わらず、とあるホロウレイダーに対して無警戒の人。
なんならホロウ内であっても軽く世間話して見逃すレベル。
連絡先を交換していないのでお別れのメッセージは貰えなかった。
・リン
もしかしてイツキさんって強かったりするのかな……?
・ニコ
主人公の相棒枠選手権(今後の内容に影響はないンナ)
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ライカン
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浅羽悠真