お金貯まったからホロウレイダー辞めるわ   作:イグアナ

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強火担当パート2

別の作品も書いてるので、更新頻度はちょっと見通し立ってませんが、とりま書けたら出してく感じにしていきやす。





5話:心臓飛び出るかと思った

 ビビアンにとって、フルメットの第一印象はパエトーンに擦り寄るいけ好かない男という評価だった。

 

 その男がパエトーンの右腕などと揶揄されているのも不愉快だったし、アキラとリンがその噂を聞いて満更でも無さそうにしていたのが、フルメットへの心象の悪さに更に拍車をかけた。

 

 所詮自分より早くパエトーンに出会っていただけだ。もっと時間を重ねれば、やがて自分のほうがパエトーンに相応しいということを理解させられると、そう思っていた。

 

 だが、とある任務の日に、その認識は覆されることになる。

 

「二人とも、ちょっといいかい?」

「そのシリアスなお声……緊急の事態なのですね?」

「ああ」

「お前の判断基準こえーよ。で、どーした?」

 

 ホロウ内にて、のんびりと目的地に向かっていた三人だったが、ボンプ(アキラ)が真剣味を帯びた声音で二人を呼び止めた。

 

「今入った情報によると、目的地付近に要救護者……ホロウに迷って出られない人が居るみたいなんだ。あの辺りにエーテリアスが出てこないとも限らないし、出来るだけ早めに目的地に向かって、その人を保護したい」

「つまり急いで目的地に向かうのですね! でしたらビビアンがパエトーン様をお運びするのです!」

「すまない。お願い出来るかな」

「はい! 光栄なのです!」

 

 偶然舞い込んだ合法的に抱き抱えるチャンス(ラッキー)にビビアンが目を輝かせていると、フルメットは少し考える素振りを見せてアキラに問いかけた。

 

「で、ルートは予定通りで行くのか?」

「そうだね。足を早めてさえくれれば問題ないよ」

「ふーん……」

「なんなのです? もしや、パエトーン様のおっしゃることに文句でもあるのですか?」

「文句というか、なんというか……()()()()()()()()、あるんだろ?」

「!?」

「……やっぱり、キミにはバレてしまうか。うん、その通りだ」

「そ、そんな……」

 

 フルメットが自分よりもパエトーンを理解している。その事実が、ビビアンの胸にどこか深い傷を与えた。

 

「でも、そのルートの途中には20……いや、30体近くのエーテリアスが蠢いている。中には強力な個体も居るようだし、このルートは危険だ」

「そうか。ならそのルートにしよう」

「はい!? 貴方、パエトーン様の話を聞いていたのですか!? エーテリアスが大量に居ると仰っていたのですよ!?」

「聞いてたよ。エーテリアスが居るだけだろ? そんならさ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「何を、言って……?」

 

 あまりにもふざけた言い分にビビアンの言葉が止まると、アキラは小さく溜め息をついて口を開いた。

 

「……わかった。任せても良いかい?」

「パエトーン様!?」

「ごめんビビアン。でも、どうか彼を信じてやってほしい。きっと期待は裏切らないさ」

「ハードル上げないでもらって良い?」

「ははっ、でも言い出しっぺはキミだろう?」

「それはそう」

 

 数十体のエーテリアスの巣窟。そこに戦闘員二人で足を踏み入れるというのは、死地へ向かうに等しい行為のはず。それなのに、フルメットとアキラにはそんなことを感じさせないくらい軽い雰囲気が漂っていた。

 

「じゃあルートを共有するよ。そして、エーテリアスが居るのはこの辺りだ」

「了解。んじゃ、先行っとくから後から来てくれ。二人が来るまでは全部倒しとくからさ」

「なっ……!? 先に行くって、どういう──!?」

 

 ビビアンが止めようとした頃には、フルメットは二人の前から姿を消していた。

 

 

「……大丈夫だよ、ビビアン」

 

 

「──僕の知る限り、彼は最強のホロウレイダーだ」

 

 

 


 

 

 

 店内でやることも無いので、どうせならと店先の掃除もしていると、見知った姿がこちらに向かってくるのが見えた。

 

(来たか……ビビアン)

 

 とはいえ、やることは変わらない。二人の代わりに荷物を受け取って、それで終わり。

 

 ……なんて、スムーズに行けばいいんだけどなぁ。まあ、変なことしなきゃ大丈夫だと思いたいけど。

 

 一旦気にしないフリをしつつ掃除を続けていると、近くまで来たビビアンに話しかけられた。

 

「……貴方、どちら様なのです?」

「へ……?」

 

 何故かどこか怪しむような視線を向けられている。

 

 あれっ? もしかしてリンさん、自分が不在だってビビアンに伝え忘れてる……? なんなら俺のことも伝えてない……?

 

「もしかして、パ……店長様のことを嗅ぎ回って──」

「ば、バイトです! 最近ここに雇われたんですよ!」

「バイト? ……そう言えば、店長様がそのようなことを仰っていたのです」

 

 良かった……。バイトを雇ったことくらいは話してたのか……。

 

「じ、実は今二人とも留守なんですよ。店を出る前に"ビビアン"という方から荷物を受け取るようお願いされているんですが、もしかして貴方がビビアンさんですか?」

「へ……?」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、ビビアンは手に持っていた紙バッグを落とした。

 

 中からはパエトーングッズの数々が転がり出てきている。見たことないグッズばっかりなところを見ると、また新作を作ったらしい。

 

「そ、そんな……。お会い出来るのを楽しみにしていたのに……」

「す、すみません……」

 

 でも、まさかそんなに落ち込むとは思ってなかった。プロキシ兄妹に予定をドタキャンされたときくらい落ち込んでるじゃん。

 

 流石人たらしのアキラさんとリンさんだ。あのパエトーン信者のビビアンにここまで好かれるなんてなぁ。

 

「……店長様が居ないのなら意味はありません。後日また来るとお伝えしてほしいのです」

「え? あ、あの、荷物は……?」

「いいのです、落として汚れてしまいましたから。これは廃棄して、次来るときに新しいものを持ってくるのです」

 

 別に気にするほど汚れてないと思うけど……。折角作ったのに、捨てちゃうのか……。

 

「じゃあそれ、俺が貰っても良いですか?」

「……はい?」

 

 不思議そうに首を傾げながら、ビビアンが口を開く。

 

「構いませんが、何故なのです? ……もしや、貴方もパエトーン様のファンなのですか!?」

「違いますよ。……いや、好意的な印象は持っていますけど」

「ファンなのでしたら遠慮せずそう言うのです! そういうことであれば家から新品のグッズを──!」

「ああ、いや、そうではなく……」

 

 俺は知っている。こいつが自分でパエトーンのグッズを作るくらいの強火なファンだってことを。

 

 つまり今日持ってきたグッズってのも、きっとビビアンが丹精込めて作ったものに違いない。

 

 パエトーンのことで妥協をしたくないコイツからすれば、このくらいの汚れでも廃棄するってのも理解出来る。ビビアンはそういうやつだ。

 

 でも、ひとつひとつが他の人にもパエトーンの良さを知ってほしいという想い()が込められたものだ。なら、少しでもその想いが浮かばれる数が増えてほしいと思うのは、勝手すぎるだろうか。

 

「俺はそれが欲しいんです。……ダメ、ですかね?」

「ふぅん……変わった人なのです」

 

 『そんなに言うのでしたら……』と、ビビアンは俺にグッズをくれた。

 

 貰ったはいいけど、ビビアンからグッズ貰いすぎて俺の部屋の一角にパエトーングッズコーナー出来てるんだよな。

 

 ま、プロキシ兄妹には元気でやっていてもらいたいし、応援している気持ちも本当だから、それくらい構わないけど。

 

 もしかしたら、ビビアンの言う通り俺はアイツらのファンなのかもしれない。

 

 ……コイツには絶対言わないけど。言ったら数時間はパエトーン話題でマシンガントークされるだろうし。

 

「ありがとうございます。大事にします」

「よい心がけです。もし転売なんてしようものならグーなのです」

「しませんが!?」

 

 コイツいっつもこうやって転売に釘刺して来るのなんなんだ。今までもらったグッズは全部家で保管してるから、安心してもらいたいもんだけど。

 

「……ところで、少し話は変わるのですが、店長様がご不在になるのは今回が初めてですか?」

「? いえ、何度か留守を任されたことがあるので、今回が初めてというわけではありませんが……」

「そうなのですね。でしたら──」

 

 ずいっと、ビビアンさんが詰め寄ってきた。

 

「これまで店長様が不在の間に、"フルメット"と名乗る人物は来ませんでしたか?」

「…………へ?」

「もしくは、フルフェイスヘルメットを被った男が来店したことはありますか?」

「……えっと、そのような方がいらっしゃった覚えはない、ですね……」

「……そうですか」

 

 思わず顔に出そうになったが、なんとか冷静に努めた。

 

 どうしてビビアンが俺のことを……? もしかして、まだ恨まれてたりするのか……?

 

 なんて考えていると、ビビアンの口からとんでもない言葉が吐き出された。

 

「では──貴方が"フルメット"ですか?」

「はい!?」

 

 ば、バレた!? んなワケあるか!! だって俺は一度たりともコイツに表の情報を開示した覚えはないんだぞ!?

 

 で、でも、だったらどうしてこんな質問を──!?

 

「ちがっ、違います! 俺はその人とはまったく関係無くて──!」

「……なんて、冗談なのです。そんなわけないのですから」

「じょ、冗談ですか……。ははっ……」

 

 なんつー質の悪い冗談かましてきやがるんだコイツは!? 危うく心臓止まるかと思ったぞ!?

 

「貴方がちょっとだけあの人に似ていたので、つい意地悪してしまったのです」

「に、似ている……?」

 

 えっ、どこだそれ。めちゃくちゃ聞きたい。身バレ防止のためにめちゃくちゃ聞いておきたいんだがそれ!!

 

「ち、ちなみにどの辺りが……とか、聞いても?」

 

 俺がそう聞くと、ビビアンは自分の口元に人差し指を当てて、からかうように笑みを浮かべた。

 

「ナイショ、なのです」

 

 


 

 Random_Playからの帰り道にて、ビビアンはフルメットとのやりとりを思い出していた。

 

『あぁっ!? パエトーン様へのプレゼントが汚れてしまったのです!』

『任務の時に持ち歩くなよそんなの……』

『すっ、すぐにでも渡したかったのです! それに、今日の任務はこんなに汚れるようなものではなかったはずで……!』

『……まあ、それもそうだな。今回のはイレギュラーだった』

『うぅ……汚れてしまったのなら仕方ありません。このグッズは廃棄するのです』

『廃棄? マジで?』

『当たり前なのです。パエトーン様にお渡しする上で、こんな汚れたものは相応しくないのです。かと言ってファンの方に渡すわけにもいきませんし、そうなると廃棄しかないのです』

『……じゃあ、俺にくれないか?』

『……はい?』

 

 かつて、先程のイツキと同じように、フルメットとしての彼もビビアンにグッズを貰おうとしていた。

 

『どういう風の吹き回しなのです? もしかして、貴方もパエトーン様のファンなのですか?』

『違うって。だってそれ、ビビアンの手作りだろ?』

『……それが何か?』

『きっと、心を込めて作ったモノなんだろ? それがこんな形で捨てられちゃうなんてさ、なんか勿体ないなって』

『……わかったような口を利かないで欲しいのです』

『はいはい。どうせ俺にはビビアンのことなんて理解出来ないよ』

『ちなみにあげても良いですが、転売したらグーなのです』

『しないが!?』

 

 

(……あのときは、悔しくて言えませんでしたが……)

 

 

(貴方の言葉に……どこか心を救われた私が居たのです)





・イツキ
マジで心臓飛び出そうになってた。

・ビビアン
色々あってこうなった←

ちなみに没案ではイツキの不幸な未来として『正体バレ→アキラとリンにもみくちゃにされるイツキ』を予兆して、正体を看破される、もしくは『あの二人にもみくちゃにされるのが不幸とはどういうことなのです!?』と肩をぐわんぐわん揺らされるルートがあった。今回はそういうのナシ←
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