書いてたらいつの間にか寝落ちてて朝になってて草。
草じゃないが。
さて、とりあえず首謀者を倒せたのはOK。
ただ、問題はここからだ。2人の縄を外してあげたいところなのだが、そのためにはこの見た目と言動で2人に敵意が無いことを示す必要がある。
最悪怖がられながら無理矢理外すことも出来るっちゃ出来るけど、あんまり嫌がることはしたくないしな……。
「ふーっ……ジェノサイドに満足したからもう暴れるつもりは無いンナ。折角だしその縄も外してあげるンナ」
無理があるだろうそれは。我ながらなんだそのカスみたいな理由。こんなんで納得されるわけないだろうが。
「ええ! お願いするわ!」
「すまない、感謝する」
……あれっ、なんか予想してた反応と違う。いや、スムーズに行くから良いんだけどさ。全然警戒されてなさそうに見えるのは何なの……?
もしかして怖がられてない? でも今の我ひょっとこぞ? ひょっとこのシリアルキラーぞ?
もしかして平静を装ってる……ようにも見えないな。アストラさんめっちゃ笑顔だし、イヴリンさんもライブが無事に終わった後と同じくらい気を抜いてる気がする。
どこか釈然としない思いを抱きつつも、一旦2人の縄を外すことにした。
まずはアストラさんから。人差し指と中指の2本を立ててナイフの代用にし、そのままスッと縄を切ってみる。おお、このくらいの縄でも思ったよりすんなり切れるンナね。いかん存在しないシリアルキラーに語尾が侵食されてる。
「外れたンナ」
「凄いわイヴ! スパッて切れたわよスパッて!!」
「流石だフルメット。君以外に易々と出来る芸当ではないだろう」
「そんなことないンナ」
流れでそのままイヴリンさんの縄も外す。よし、これでひとまず大丈──────。
「……あとンナはフルメットじゃねぇンナ」
「「
気が狂って一人称がンナになってしまった。あと無理とか言わないでほしい。もしかして
「じゃあもう帰るンナね」
「待てフルメット。君には言いたいことがある」
「だからンナはフルメットじゃないンナ」
「君のような一人称"ンナ"のシリアルキラーが居てたまるか」
判断基準そこ? 絶対違くない?
「君がホロウレイダーを辞めるときに送ってきたメッセージ……あれはなんだ?」
「だからンナはフルメットじゃ──」
「黙れ!! 君はフルメットだ!! それよりも質問に答えろ!! どうして私にはお嬢様に送ったような個別メッセージが無かったんだ!?」
「……ンナ?」
個別メッセージ……? ああ、確かアストラさんには『応援しています』みたいな文章を付け加えたんだっけ。そのことかな。
……なんでそんなことを気にしてるんだ?
「私は誰よりも君を評価しているつもりだったのだが……もしかして、私は君に嫌われるようなことをしてしまったのか……?」
「ン、ンナ……? ンナナ……?」
えっ? 評価されてたの……? てっきり全然評価されてないのかと思ってたんだが……。
じゃあ任務終わりによく掛けてくれてた労いの言葉って、全部本心だったってこと……?
「……えっと、改めて言うけどンナはフルメットじゃないンナ。フルメットじゃないンナけど……多分、フルメットはイヴリンさんの褒め言葉を社交辞令としてしか受け取ってなかった……と、思うンナ」
「社交辞令!?」
『がーん』という擬音が似合うくらい、イヴリンさんはショックを受けたような表情になった。
「ふふっ、イヴったら私とあの二人以外にはそっけないものね」
「お嬢様!?」
「それに……」
「まだあるのかフルメット!?」
「だからフルメットじゃないンナ」
もう自分でも言ってて無理がある気がする。泣いていいかな。
「その……一回もアストラさんの周辺警護に配備されなかったから、信用されてないと感じた……んじゃないかと、思う、ンナ」
「ち、ちがっ……! あれはフルメットに外回りを任せておけば間違いないという信頼から来る配備であって──!!」
「……多分だけど、それ伝わってないンナ」
「そんな……」
イヴリンさんが膝から崩れ落ちた。これなんの勝負してんの?
「ダメじゃないイヴ。そういうのはちゃんと言葉にしてあげないと」
「お嬢様……」
「ほら、今までがダメでもこれからがあるでしょう? 今がチャンスよ!」
「……そうだな、お嬢様」
イヴリンさんは晴れたような表情をして立ち上がると、俺に向けて真剣な視線を向けてきた。
「……フルメット、表の仕事を探しているらしいな?」
「だからフルメットじゃ──……ンナ?」
「先程も言ったように、私は君を評価している。……だから、その……どうだ? 私と同じように、お嬢様の護衛になってみないか?」
「……ンナ?」
「ちなみに私も大歓迎よ! フルメットさん!」
「ンナァ!?」
……ぶっちゃけ、ファンの俺からすればめちゃくちゃ魅力的な提案ではある。
でも、それはホロウレイダーを辞めてまで実現させた自分を曲げることになるし、何より『元ホロウレイダーが護衛になった』なんてことがあれば、アストラさんを良く思っていない勢力に叩く口実を与えてしまうことになる。それだけは絶対にダメだ。
「……大変魅力的な話だけど、お断りさせてもらうンナ」
「……そうか」
少し残念そうにしたイヴリンさんだったが、すぐに口元を歪ませた。
「だが、フルメットであることを否定しなかったな?」
「…………あ"っ」
「詰めが甘いな。……まあ、そうやって誠実にあろうとするところがキミの好ましいところだが」
そう言って、イヴリンさんは微笑みながらこちらに顔を寄せてきた。
「今はダメでも、いつか必ず首を縦に振らせてみせる。覚悟しておくんだな、フルメット」
「…………ふぅ」
なんとか会場から逃げ出してきた。特定されないように手は打ったが、それでも少し不安は残る。
手を打ったとは言ったが、単に館内の警報を鳴らすだけ鳴らしまくって、その爆音で無理矢理観客の人にも目覚めてもらっただけだけだ。睡眠ガスは既に止めていたから、それにより大多数の人が目覚めてくれた。
警報が鳴り響く会場内にそのまま残り続けようと思う人はそう多くない。脱出する人が多数現れ、混乱を招いたことは申し訳なかったが、これであのタイミングに客席から姿を消していた人物を特定するのはほぼほぼ不可能になったはずだ。
俺も会場内でお面を外して流れに乗じて外に出ても良かったのだが、万が一にも外すところを誰かに見られるわけにはいかないので、お面は付けたままにしつつ、出来るだけ人の視線に触れないようにして、会場から離れた
なので後はお面を外すだけ、なんだが……。
なんだろう、さっきからすんごい嫌な予感がする。会場を出てすぐくらいから感じていたが、なんというか、
──瞬間、ぞわりと寒気がした。
「な──ッ!?」
咄嗟に後ろに下がったと同時に、何者かが俺の居た場所に剣を振るっていた。
「ふふっ……
その言葉と、
「あの歌姫の公演には奴が出没する。そんな噂を聞いてもしやと思って会場近くを張っていたが……なるほど、どうやら功を奏したらしい」
「──お前、フルメットだろう?」
そう言って嗤うのは、公的組織「H.A.N.D」に属する対ホロウ事務特別行動部第六課……通称"対ホロウ6課"の課長である星見雅だった。
見つかってて草。