お金貯まったからホロウレイダー辞めるわ   作:イグアナ

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昨日の夜書いてたら寝落ちてて草ンナ。




9話:ぶっ殺すぞンナ

「ン……ンナはフルメットなんて人じゃないンナよ……?」

「一人称"ンナ"の怪人などフルメット以外に考えられん」

 

 だからなんで判断基準そこなんだよ。フルメット時代にそんな狂人ムーブしたことないだろうが。

 

「ホ、ホントに違うンナ! ンナはフルメットじゃないンナ!」

「では本名は?」

「浅羽悠真」

「やはりフルメットか」

 

 なんでこの返答でむしろ断定されるんだよ。おかしいだろ。

 

「ところでさっきからその語尾は何だ。 私も真似をしたほうが良いか?」

「ンナは最初からこうンナ! イメチェンじゃないンナよ!」

「嘘をつくな。ぶっ殺すぞンナ」

「ぶっ殺すぞンナ!?」

 

 あまりにも強すぎる言葉に思わず確認してしまった。

 

 無理に語尾を真似ようとしたせいで語尾とまったく関係ないところまでとんでもないことになってるじゃん。

 

 シリアルキラー適性俺よりあるだろ。お前才能あるよ。

 

 

 

「……まあ、否定するのならばそれでも良い」

 

 

「──どちらにしろ、斬ればわかるのだからな」

 

 

 


 

 

 

 星見雅の剣戟を捌き続けて数分。俺は彼女に向かって不満を叫んだ。

 

「さっきから顔ばっか狙ってんじゃねぇンナ!!!!!!!!」

「何を言っている。顔が割れれば逃げる必要はなくなるだろう?」

「わかっててやってるの質悪いンナねぇ!?」

 

 前ではこんなことしてこなかったくせに、今回は執拗に顔の辺りを狙い続けてくる。

 

 本当に勘弁してほしい。今すぐ家に帰りたい。あとバイト先が恋しい。それと家に帰りたい。

 

「そうだ! 美味しいメロンのデザートがある店教えるンナ! それで見逃してほしいンナ!」

「ほう。ならば訓練終わりに二人で食べに行くとしよう」

「話聞いてたンナ!?」

 

 ダメだコイツ聞く耳持たねぇ! 二兎追うのやめろマジで!

 

「──はぁっ!!」

「ぐっ……!?」

 

 彼女の剣を受け流し切れず、ほんの少しお面にヒビが入ってしまった。このままではお面が壊れてお顔がこんにちはするのは時間の問題だろう。

 

 ちなみにお顔がこんにちはすると平穏な人生がさよならする。なんで顔と人生が月と太陽の関係なんだよ。ぶっ殺すぞンナ。

 

「ふふ……言葉では否定していても、その技量が物語っている。やはりお前はフルメット以外に有りえん」

 

「H.A.N.D……いや、対ホロウ6課に来い、フルメット。お前ほどの者なら誰も文句は言わん。というか言わせん」

「嫌ンナ!! どうせ毎日修行とかさせられるンナ!!」

「以心伝心とは素晴らしいな」

言葉にならない悲鳴(ンナアアアアアアアアア)!!!!!」

 

 無敵かよコイツ。無敵だったわ。

 

 とはいえ、俺にも今のバイト先(帰る場所)がある。気に入っているというのも勿論あるが、優しくライブに送り出したバイトに即辞められるとか、流石に2人も傷つくだろう。

 

 そうならないためにも、俺はなんとしてもこの場を切り抜けなければならない。

 

 ……やるしかない。この星見雅という怪物を、出し抜くしかない。

 

「……悪い。お前の話は受けれない」

 

「──だから、本気で逃げさせてもらう」

 

 納刀し、俺は刀に手を添えて構えを取る。それを見た彼女は、少し口角を上げて剣を構えた。

 

「ようやくやる気になったか」

 

「──来い。正面から受け止めてやる」

 

 どうやら俺の攻撃を真正面から正々堂々受けてくれるつもりらしい。

 

 でも、だからと言ってこちらも正々堂々である必要はない。俺はただ、星見雅から逃げることだけを考えれば良いだけだ。

 

「行くぞ、星見雅」

 

 すまんが、真っ当に戦うつもりはさらさらない。

 

 これからやるのはただの初見殺しだ。悪く思え。

 

 

 

 


 

 

 

 数分後、星見雅はその場に大の字になって仰向けに倒れていた。

 

「うっそ……課長負けたんですか?」

「……悠真か」

 

 目線を一瞬悠真に向けて、雅は再び空へと視線を戻す。

 

「特に怪我とかしてないように見えますけど、実はどっか痛めてたりします?」

「いや、大事ない。というか負けてない」

「でも倒れてるじゃないですか」

「それだけで判断するな。あんなものを見せられれば、誰だって放心くらいする」

「あんなもの……?」

 

 つい先ほど身に受けた絶技を思い浮かべ、雅は身体を震わせながら自分を抱き締めた。

 

「あぁ、フルメット……。お前は、どれだけ……」

「うっわぁ……」

 

 半ばドン引きしている悠真に向かって、雅は抗議のジト目を向ける。

 

「なんだ。何か文句でも?」

「ち、違いますよ課長! 僕はただあの人が一体何をしでかしたのか気になっただけですってば!」

「……ふふ、知りたいか?」

 

 まるで子どもがその日の出来事を親に語るときのように、雅は話し始めた。

 

「悠真。お前は()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 


 

 

「──ぜぇっ、はぁっ、……っく、はぁっ……」

 

 全力であの場から離れ続け、ようやく人目に付かない路地裏に駆け込むことが出来た俺は、壁に寄りかかって息を整えていた。

 

「……ふぅ」

 

 あああああああああああああああっぶねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!

 

 逃げれた!! 逃げれた逃げれた逃げれた!!

 

 まだ生きてる!! 生きてるよ俺!!*1

 

 周りにカメラや人の気配がないことを確認し、俺はようやくお面を外した。

 

「あ゙ー……生き返るぅ……」

 

 路地裏だってのに空気が美味しい。これが明日を迎えられる感動ってやつか。とりあえずこのお面は原型が残らないくらい粉砕して内密に処理しておかねば。

 

 今まであの技を見せたことがなくて本当に良かった。2回目以降だったら平然と対応してくるに決まってる。

 

 てか初見でアレを防いできたのは本当に何? いや、受け止めてくれると信用してたからこそ使ったわけだけど、だからって普通に防いで来るのはちょっと意味がわからない。

 

 もしまたアイツと戦うことになったら……考えたくもないな。

 

「本当に勘弁してほしいンナ……。…………あ゙っ」

 

 とりあえず、明日のバイトまでにこの口癖は直しておかないとな……。

*1
社会的な意味で




・イツキ
『初見の技にて驚かせた隙に逃げ出す作戦』に成功し、なんとか星見雅を撒いた。語尾ンナは早急に直せ。


・星見雅
直感で防いだとはいえ、自分の見たものが信じられず一瞬放心し、身体から力が抜けてしまったことで、防いだときの勢いを殺しきれずに後ろへ倒れ込んでしまった。

ちなみにイツキにはその隙に逃げられている。

え、執着? 増してるんじゃないすかね(他人事)


・絶技(?)
斬る前に斬るらしい。なんだろね。
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