勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
決戦、魔王軍対勇者の軍勢:ブラッドレイブン要塞戦
戦いは一進一退を――否、三進一退を繰り返しながら少しづつ魔王城へと着実に侵攻していった。
【――ブラッドレイブン要塞――】
ブラッドレイブン要塞はシャドウクレスト山脈の山麓の高原地帯に設置された古い形式の長城型の要塞だ。一見すると非常に巨大で威圧感がある。だが――
「よし! 3軍団主力部隊は遠距離攻撃を主体に敵守備隊をおびき出せ! 攻略初期段階での囮となる!」
「はっ!」
ルミナリア騎士団は正統派の騎馬部隊と重装歩兵部隊が主力となる。彼らを中心に戦闘陣形が組まれる。
それを左右にて援護するように展開するのが獣人軍団であり、その戦力の多彩が彼らの真価だ。腕力に優れた大型の体躯の獣人や、近接戦闘力に優れた肉食獣系の獣人、草食獣系の獣人たちも脚力や機動力では引けを取らなかった。美しい容姿の雌の獣人戦士が見られるのも特徴だ。
そして、かれらを更にうわまわる機動力を持つのがケンタウロスだ。大型のジャベリンやランス、馬上槍はもちろんのこと長弓にも優れ、勇者カリナの軍勢に参加してからは火薬式の銃火器にも通じるようになった。
まさにこの3軍団の陣容の隙は一切なかった。
そして、それらに影に隠れ、ケンタウロス勢や翼を持つ鳥類系の獣人の支援をえてゴブリン勢は要塞の監視網の隙をついて着実に潜入を果たしつつあった。
3人のゴブリンが背中を外にして輪になり固まる。ボールのようになった彼らをケンタウロスたちは渾身の力を込めて投げ放ち、鳥類獣人たちは空中から投下した。
「ふんっ!」
気合一閃、ケンタウロスが投げれば、
「気をつけて行けよ!」
荒鷲の獣人は労いの言葉をかけた。
ゴブリンたちは背中に人間用のバックラーシールドを背負っている。そのシールドで衝撃を吸収しつつ転がりながら敵要塞内へと侵入を果たす。即座に散開し物陰に隠れて、破壊工作の目標へと向かう。
目指すは敵要塞敷地内に引かれた水路だ。飲料水として山の湧き水を引いたのだが、これが思わぬ可能性を秘めていた。
背中のバックラーシールドの裏側には作戦の手順書と、その他、破壊工作用の道具が仕込まれていた、腰には自衛用のナイフが下げられている他、吹き矢も得意としていた。
「ギャ?」
「ギャギャッ!」
「ギャゥギャゥ」
作戦の手順書を互いに確かめながら破壊目標を見つける。要塞内水路の大型の水管だった。監視役の魔導兵を毒の吹き矢で排除すると、大理石製の水管を土魔法系の魔導巫術符で破壊する。場所は一箇所ではなく、水流が効果的な場所へ誘導されるように壁や地盤を次々に破壊していった。
そして――
――ゴゴゴゴゴ――
不気味な地響きが響いたと思うと、要塞の一角が地盤ごと崩壊を始めた。
「ギャッ!」
「ギャギャッ!」
ゴブリンたちはお互いに手をたたき合い喜び合う。だが別の仲間のゴブリンが苛立ちながら手招きする。
「グアグアッ!」
「ギャウー」
怒られつつも慌てて姿を消す。ここで見つかっては命が危ない。回収されるまで身を潜めることにした。一方――
「観測班より報告! 敵要塞、一部、基礎地盤に崩壊あり! これにより敵要塞側からの攻撃に混乱が生じております!」
報告を受けて光国ルミナリアのセリアスは次なる行動を下命した。
「よし! 遠距離攻撃可能な部隊に敵崩壊部分に攻撃を加えるように伝達! 確実な突入口を作る!」
「敵守備部隊! 要塞の崩壊部分を守るように追加の守備部隊が現れました!」
「そちらはあくまでも牽制にとどめ、こちら側の力を敵要塞構造物を突破することで全力を注げ! 守りが破られれば要塞は脆い!」
「はっ!」
と、その時だ。
――ズッ、ゴォオオオオオン!――
敵要塞の中央正門付近、その周辺で大規模爆発が起こった。
――ドォオオン!――
――ゴォオオン!――
――ゴボォオオオンッ!――
しかも爆発は立て続けに起こった。
「あれは?!」
獣人たちを率いる牡鹿の獣人のアーンスランドがうなずきながら答えた
「ゴブリンたちがやったのでしょう。おそらくは敵の武器庫の火薬や弾薬に火をつけたものかと思われます」
「うむ! 見事だ! これで勝機は我々の元に傾いた! 見よ! 向こうからの攻撃が止まってる! この機を逃す手はない! こちらを2つに分けて左手要塞崩落部分と中央正門付近の2箇所から突入を果たす! 全軍突入準備!」
「はっ!」
セリアスの指示に全部隊が一気に動いた。
「進め! 敵陣地要塞砲はゴブリンたちの働きで破壊された! 残るは守備兵! 魔法攻撃と物理白兵攻撃で連携し確実に魔族兵を削れ!」
「おおおっ!」
こうして要塞は人間側勢力の突入を許しあっけなく陥落したのであった。
これによりソルスター自由連合軍の突入を許しブラッドレイブン要塞は陥落したのであった。