勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
【――一方、第2野営拠点――】
ここまでの戦闘が侵攻している間に、カリナ率いる魔法剣士騎士団をはじめとする奥地進行の戦力――
シェードヴェイル塔攻略部隊、
グリムフォート要塞攻略部隊、
そして、ダークフォージ城攻略部隊――
彼らは、それぞれの兵要素に適した異なるルートを取りながら第2野営拠点へと駒を進めた。そこで再集結して臨戦態勢で待機する。周囲を警戒しつつひたすら時を待つ。カリナは随伴する兵士たちの疲労度を鑑みながら指示を出した。
「簡易休憩を認めます。携帯糧食も許可。ただし、いつでも進軍再開できるように」
「はっ」
カリナの指示が随伴するすべての部隊に伝えられる。周囲の敵影に警戒しつつ息を潜める。そして、先行して攻撃を始めた各軍団からの知らせをじっと待った。そして――
その時、奥地進行勢力に随伴している大型ドラゴン4体――
竜将マルセウス・ドラコニウス、4体の中では小柄だが火竜としては卓越した戦闘力を有している。
同じくヴォルカノス・アウグストゥス、巨大な翼を持つウィングドラゴンで、彼も火炎攻撃に秀でていた。
同じくテラクサー・テルリウス、頑強な体を持つグランドドラゴン、魔導攻撃すら跳ね返す巨体の持ち主だ。
同じくラピデス・トナンス、最も美しいとされるメスのライトニングドラゴンで雷精魔法の使い手である。
――彼ら4体の大型ドラゴンが分離霊体として姿を表した。高位のドラゴンはその巨体ゆえの不利を補うために、霊体と魔力の一部を分離した分身体を作ることができる。これをドラゴニュートと呼ぶ。
4人の中から比較的小柄な体躯の貴族風のチュニック姿の金髪の若者が語りかけてくる。ドラゴン勢のまとめ役のマルセウスだ。
「聖剣の巫女殿」
「マルセウス様、皆様」
「大任、ご苦労さまです」
「ありがとうございます。何かありましたか?」
ドラゴニュートの4人の素振りにカリナは即座に気づいた。
「先行して行われていた戦闘状況が伝令役の翼竜ドラゴンによって伝えられました」
その言葉にカリナはもとより同道していた他の軍団の幹部たちも集まってくる。
「それで、戦況は?」
答えたのは4人のドラゴニュートの中でもっとも長身で黒髪のヴォルカノスだ。
「報告だ。翼竜ドラゴンによれば、ブラッドレイブン要塞、ナイトフォール砦、デスウィンド塔、ダークスウォンプ駐屯地、ブラックリッジ砦、以上5地点ともに攻略に成功したとのことだ」
それに言葉を添えるのはラピデスだ。美しさに定評のあるライトニング・ドラゴンの本体同様に流麗にして壮麗な美しさを放つ銀髪の美女である。
「いずれも多少の損失は生じましたが大規模な失態は無いとのことです。特にブラックリッジ砦は、ヴァルハイトのアルトゥール卿、ガルガンダインのローラン卿、それぞれ砦守備部隊の指揮官2名と一騎打ちを行い、これに勝利し砦の開放を勝ち得たそうです」
「えっ? 一騎打ちで?」
「はい、敵指揮官が部下の過度の損耗を防ぐために一騎打ちを自ら申し出たとのこと」
カリナはその言葉に守備部隊指揮官の魔族の彼が何を思ってその考えに至ったかを思わずには居られなかった。
「ご遺骸は丁重に扱うように伝えてください」
「承知しました」
さらに巨躯の鎧姿の栗毛の男がテラクサーだ。4人の中では最も高い物理戦闘力を持っている。
「聖剣の巫女様、皆、出陣の準備整っております。ご発声を」
「はい、では――」
カリナは目立つ場所へと移動し、進行部隊に向けて檄を飛ばした。
「先行する5つの戦いの趨勢が決着しました! 5地点全てにおいて勝利! これでこれから先の進行の憂いは何もありません! 世界の平和と自由のため、今こそ全力を尽くす時! 悔いの無いように使命を果たして下さい!」
「はっ!」
人間も様々な種族も、乱れること無く揃って声を返した。これで残る攻略対象は3つとなる。カリナの補佐役たるエルリックが号令する。
「残るは3つ! シェードヴェイル塔、グリムフォート要塞、そして、ダークフォージ城だ! 各方面に向けて隊列を組み進軍再開!」
「応っ!」
その言葉を受けて進行部隊は3つに分かれてさらに進むのだった。
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