勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
「来た! 援軍です!」
「軍旗は?!」
「目視確認! 灰青の地に白銀の峰――、モントクラウド山岳連邦軍です! ドワーフ工作戦闘団も健在です!」
観測斥候兵の報告に背後を振り返れば、そこには野戦砲を並べたモントクラウドの山岳兵と、ドワーフ達の一団の姿があった。
山岳戦でならしたゲリラ戦術と、ドワーフたちの冶金工作技術が組合わさり、彼らの連帯は無敵の砲兵集団として名を挙げていた。
魔王軍支配域の要衝、デスウィンド塔の魔導砲台を撃破したのも彼等なのだ。
――ゴォオオオオンッ ゴゴゴォオオオオンッ!――
アルカナヴァンガードの頭上を超えて、無数の砲弾が魔王軍側へと打ち込まれる。これにより魔王軍側の迎撃行動は混乱し停止するに至った。
「来た! 来てくれた!」
気色ばんだように声を上げれば、戦場に立ち上げられる
「皆のもの! アレを見よ!」
カリナが剣先で示す先、遥か彼方の稜線の向こうに翻った色を見た。
白に金、灰青に白銀、緑と黄金、深青、紅褐、漆黒に銀、紫紺、そして、赤と緑――。
その色は希望から確信に変わる。勝利の確信へと――
「おお!」
「全軍、来るぞ!」
「あれは8大国の
次の瞬間、山の峰を越えて、谷間を抜けて、草原を疾駆して、河川を渡河して――
複数の進軍路から、8大国の軍旗が一斉に戦場へ躍り出た。
白地に黄金の輝きを宿すルミナリア王室聖騎士団ルミナス・ガーダー。
灰青の地に白銀の峰を刻んだモントクラウド山岳連邦軍。
緑と黄金の穂を掲げるグレインリーフ王国国防兵軍。
深青に銀波を走らせるアクアリス国防海兵軍。
紅褐の旗を疾風のごとくなびかせるガルガンダイン騎馬騎士団。
漆黒に銀の紋章を掲げたヴァルハイト正騎士団。
紫紺の旗布に魔法紋を輝かせるエーテルノヴァ国家近衛軍。
そして、赤と緑で常緑の大地を示すのが、祖国再興の執念をその一旒に託したネルガル解放義勇軍だ
カリナはエルリックに問うた。
「エルリック! これで総戦力数は?!」
「致命的な損失が無いと考慮するなら最低でも、現状総数は1万5000以上! しかし、有力な攻撃手段は失われていない模様だ!」
「敵の守備隊を超えるわね?」
「少なくとも今、城の外に出ている連中に対してならな」
「よし!」
カリナは手を振り上げて魔導通信兵を呼び寄る。
「仔細伺います!」
「よし! 全力を持って、魔王城外部に躍り出た敵守備隊を撃滅せよと全軍通達!」
「はっ!」
各軍団の指揮官や主要人物に向けて方針を伝達する。
――シャッ!――
さらに、聖剣レギオンブレイドを抜くと、エリュシオに呼びかける。
「エリュシオ! 〝啓示〟の力で私の声を届けて!」
『承知しました。カリナ様のお声をソルスター自由連合軍全域に伝えます』
エリュシオは人々の記憶と認識に〝啓示〟と言う形でメッセージを送ることが出来る。
頭上高くレギオンブレイドを掲げれば、その剣先から金色の波動を送り始めカリナは力強く叫んだ。
「傾注!」
その声にソルスター自由連合軍全員が一斉に動きを止める。大規模に大軍が山津波のように押し寄せていたのが、時が止まったかのように静止したのだ。
「今こそ! 我らの策は成った! 長い踏破の道を越えてかかる決戦の地に我らは再び集った! 慣れば我らが無すべきことは一つ!」
声が遥か遠くまで響き残響を残す。混乱の極みにあった魔王城守備部隊からは、ざわめきは聞こえるものの反撃のための再統率はまだ見えてこない。
ならばこそだ。カリナは叫ぶ。
「魔王城を灰燼と化し! 魔の軍勢の兵卒を最後の一人に至るまで撃ち倒し! かかるこの大地を魔の者たちに蹂躙される前の清浄なる大地に還すののだ!」
頭上に突き上げた聖剣レギオンブレイドを前方に向けて一斉に振り下ろす。
「撃滅せよ!」
「おおおおおおおっ!」
今まさに8大国と、10の種族の軍勢は一つに集い、総力をかけて戦いはじめたのである。