勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
一方で、魔王城の城塞入り口の分厚い鉄製の扉が閉ざされようとしていた。
――ギギギギィ――
城内から繰り出した重装兵が葬り去られたのを察するとあっさり立てこもりに切り替えたのだ。
カリナの傍らに居た重装鎧歩兵の一人がいぶかる。カリナの右腕的存在のエルリックだ。カリナも優秀な剣士だがカリナが素早さを信条とした剣士なら、重厚さと力強さが戦士エルリックの強みだ。
名実ともにカリナの背中を守れる男なのだ。その彼が疑問を口にする。
「城塞入口を閉鎖して閉じこもる気か?」
「いいえ、違うわ」
「カリナ?」
「正面入り口を閉鎖しているうちに逃亡を図るつもりでしょうね。城外や城内に展開している配下の兵を犠牲にして」
「なるほど、魔族のやりそうな事だ! ならば俺に任せろ! 重装歩兵師団前へ! タワーシールドを前面に立てて並べ!」
「はっ!」
エルリックを始めとする勇壮かつ重武装の男たちが横隊一列に並ぶ。そして、人の身長ほどの巨大なタワーシールドを全面に押し立てて密集陣形を組んだ。
「詠唱!
横隊一列に並んだ巨大なタワーシールド群がその表面に魔法詠唱の紋章文様を浮かび上がらせ輝きを発した。そして、その陣容のまま重装歩兵群は突進を開始する。
「重装歩兵師団!
「おおおっ!!」
魔法の輝きを発したまま魔装塔甲盾を全面に押し立てて重武歩兵は突撃する。そして、それは巨大な打撃力を伴って魔王城の正面巨大扉と城壁に攻撃を仕掛ける。
――ドォオオンッ!――
大地を揺るがし男たちの攻撃は魔王城の扉を揺るがせた。
だが、魔王城は堅牢だ、扉とて魔導加工した鋼で出来ていた。
「一度でだめなら何度でも立ち向かうのみ! 重装歩兵師団距離を取れ! 再度突撃する!」
「はっ!」
タワーシールドの鉄壁を横列に守ったまま後方へ下がる。
「
「おおおっ!!」
――ミシッ! バキッ!――
再度突撃を繰り返し、今度は扉の蝶番が取り付けられている城壁の方に亀裂を生じさせた。
「あと一息!」とカリナが叫び、
「再度攻撃!
「おおおっ!!」
今度こそはと渾身の力を込めてエルリックたち重装歩兵たちは魔王城の鉄壁の扉に体当りした。
――ビシビシッ! バキィイン!――
城門を固定する蝶番を完全破壊し、蝶番がついていた城壁も粉砕する。そして、人間の背の3倍はあろうかという巨大な城門は巨大な攻城砲の砲撃を受けたかのようにふっとばされ城内の方へとゆっくりと倒れこんだ。
――ギィイイイイ、ドォオオオオン!――
土煙を挙げて分厚く巨大な城門は打ち破られたのだった。
「馬鹿な! 魔王城の絶対の扉が?!」
「嘘だろう――」
敵魔導兵の狼狽が声になる。だが、それを無視して魔法剣士騎士団や牙狼騎士団が怒涛のように流れ込んでいく。
リザードマンたちも城門部分だけでなく、外壁の窓をくぐったり、爆薬で壁面を破壊するなどして強引に乗り込んでくる。まさに雪崩を打つかのごとくである。
その勢いは、内部で控えていた魔族兵たちをなで斬りに斬り伏せるかのように、またたく間に平らげていった。
「うわ――」
「やべぇぞ」
魔王軍の将兵たちが狼狽する。扉を閉じ、立てこもろうとしたのがあっさりと崩されたのだ。その抵抗にも積極性がない。
カリナは、戦意を無くしつつある魔族兵を睨みつけ雄々しく叫ぶ。
「下級魔族兵諸君に告げる! 魔力が低く劣悪な地位に甘んじているあなた達は、降伏し我らに服属し処罰を受けるなら一命は助けましょう! しかし機会は一度きりです! なおも武器を取るなら上位魔族と共に遍く
――ガランッ――
――ガシャッ――
剣を、槍を、杖を、魔族兵は次々に手放していった。魔族はその魔力そのものが身分的地位に直結している。多種族との混血であったり、生まれついて魔力が低いものは、生涯を通じて低い身分のままだ。
戦場でも粗悪な装備しか持たされないことが多く使い捨てにされることもしばしばだ。そんな彼らではもはや抵抗は不可能だ。