勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
ほとんどの下級兵が自ら武器を放棄した。戦意はないに等しい。
「それでいい、皆地面に――」
「させるか! 敗残者どもが!
詠唱とともに城内奥から増援部隊が現れた。その場に居合わせていた下級魔族の将兵たちとは比べ物にならないくらい装備や防具も充実していた。
それら増援部隊の中でも、現れた魔導士姿の高位魔族が右掌を前に掲げて業火の弾丸を無数にうちはなった。その火弾は敵も味方も無関係に打ち抜いていく。
これに対してエルリック率いる重装歩兵が守りの陣形を講じる。火弾は尽く阻止され人間たちに傷一つ負わせられなかった。
「重装歩兵! 防御陣!」
「おうっ!」
だが、投降の意思を見せた下級の魔族兵は同族たる魔族に無残にもその体を焼かれていった。
「ぎゃああああ!」
「ぐぁあああ!」
下級魔族の将兵たちが次々に燃え上がり灰になっていく。敵とはいえ味方からのその無残な仕打ちにカリナたちは強い義憤にかられる。
「仲間たちを!?」
「相変わらず血も涙もない」
「ほざけ! 弱い奴が悪いのだ!」
もはや会話は成り立たない。ならば倒すしか道はない。カリナも覚悟を決めたその時だ。
「姐御! あんたが戦うのはここじゃない!」
その声は牙狼騎士団のゲオルグの声だった。さらに、
「ここは我らにお任せあれ! そのための随伴部隊としての我らなのですから!」
リザードマンのケラブノスが頼もしくも力強く叫んだ。
その声に応じるように牙狼騎士団とリザードマン兵団たちは、巨大な魔王城の入り口エントランス空間へと次々に乗り込んでくる。そして戦列を構築した。
ケラブノスは問い詰める。
「貴様ら、悪名高き
「いかにも、我らは
増援部隊を率いる男の1人が誇らしげに語る。スリムな全身鎧を身につけてるように見えるが、よくよく見るとそれは鎧ではなく金属などで形作られた人工的なものだった。彼らの体は作り物である。
「我らが偉大なる大魔導師ヴァルター様のお力によってな!」
その言葉に反発するようにケラブノスが叫ぶ。
「ほざけ! 自らの我欲のために魔王軍という組織を作り替え、好き勝手に権力を欲しいままにする。気に入らぬ者はゴミを投げ捨てるかのように放逐していく。そんなやつの作った技術など何の価値があろうものか!」
それに続いてゲオルグも吠える。
「俺ならどんなに強くなれると言われてもごめん被るぜ、自分自身の自力で強くなってこそ誇れるってもんさ。お前たちがやっているのは自分から弱さを認めているようなものだ」
「そういうことだ」
「ああ」
だが食い下がるかのように、重装兵の魔族は叫んだ。
「ほざけ! ならば我らに勝ってみせよ! 我らの力の前にひれ伏すが良いわ!」
リザードマンと狼たちは気圧されることなく攻撃態勢に入る。士気を高めるため、突撃のための掛け声を唱えた。
「グロリアス! サラマンダー! スケイリックの怒り! 我らに勝利を!」
「万草枯れても命は枯れず! 敵命落とすまで、我らの
武器を抜いて攻撃の体制をとる。そしてゲオルグとケラブノスは同時に叫んだ。
「突撃! 敵重装兵をうち倒せ!」
「おおおおおおお!」
狼獣人とリザードマンたちの戦列は雪崩を打つかのように敵兵に遅いかかっていった。そして魔王の玉座へと繋がる道を切り開くかのように敵重装兵〝
「今です! カリナ様!」
ケラブノスは叫ぶ。
「ゲオルグ! お前もカリナ様たちといっしょに先を急いでくれ! ここは我々リザードマン兵団が引き受けた!」
頼もしくも力強い言葉だった。ゲオルグは頷きながら応えた。
「かたじけない! 牙狼騎士団! 行くぞ!」
そして、リザードマンたちが作ってくれた好機を逃すまいとカリナたちは先を急いだ。
「ケラブノス殿ご武運を!」
カリナ率いる魔法剣士騎士団アルカナヴァンガードと牙狼騎士団は魔王城の奥部へと駒を進める。彼らの背後でリザードマンたちが
魔王城入り口を突破しカリナは仲間たちへと告げた。
「行きましょう! 今こそ魔王を討つ時です!」
カリナ率いる騎士団は魔王城の奥へと進軍して行った。