勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
ゲオルグは即座に指示を出しアルカナヴァンガードの隊員たちの動きを掌握した。
「重装歩兵は前に出ろ! 標準武装兵は重装歩兵の側面支援! 弓兵銃火兵は互いに連携しながら適時支援攻撃を行え! 魔導士勢は支援魔導士・直撃魔導士ともに万全な体制で臨め! 牙狼騎士団の狼どもは適時、連携して魔族を葬れ!」
「はっ!」
伊達に牙狼騎士団の団長をしているわけではなかった。ゲオルグの指示通りにアルカナヴァンガードの隊員たちと牙狼騎士団は列をなし陣を敷く。
さらにゲオルグは果敢にもヴァルターの動きを止めて見せた。
「邪魔だ! 野良犬が!」
怒りと苛立ちを交えてヴァルターは吐き捨てた。
「野良犬ではない! 牙狼騎士団団長! 〝白銀の牙〟のゲオルグだ!」
「知るか! 死んでしまえばただの肉の塊だ!」
お互いに強い言葉をぶつけながら武器を打ち付け合う。
――ヴォッ! ギィイイインッ!――
ヴァルターは右手のショートソードで敵を牽制しつつ、左手の手の平から繰り出す衝撃魔法のインパクトを組み合わせたメソッドで攻めてくる。
だが、ゲオルグはそれ以上の体捌きとフットワークで攻撃を躱しつつ、ヴァルターの懐に飛び込み、手にしたスクラマサクス刀でヴァルターを斬り伏せようとする。
「もらったぁ!」
「ちぃっ!」
スクラマサクスでヴァルターの脇腹を突き刺そうとすると、ヴァルターは衝撃魔法でスクラマサクスの刀身を弾き返してこれを躱す。
「この程度か! 狼よ! 貴様の牙は! 」
「やかましい! 腐れ魔導師野郎が!」
ヴァルターとゲオルグは互いを罵りながら一進一退の攻防を続けている。
二人のぶつかり合いを皮切りにアルカナヴァンガードや牙狼騎士団の隊員たちも戦闘を開始した。
さらに――
「聖剣の巫女様、ここで何をしておられる! あなたが武器を振るう相手はこいつではない!」
勢いよく駆け込んできたのはリザードマン兵団を率いるケラブノスだった。
「なに? 貴様、下の階で我が
焦りをあらわにするヴァルターだが、ケラブノスは愛用武器のパルチザン槍を構えながら攻撃の勢いを殺さずに確実にヴァルター目がけて飛び込んでいく。
慌てるヴァルターにケラブノスは告げる。
「我らは戦いの最前線で常に自らを鍛え続けてきた! その中で貴様ご自慢の改造魔族の
つまりはすでにあらかたの
語りながらもケラブノスは襲い来る
――ガッ!――
敵の胸部装甲の隙間にケラブノスは槍のが切っ先を確実に食い込ませた。それと同時に愛用するパルチザン槍の魔導機構を作動させる。
「機能発動、抗魔浄化高圧水流波!」
『浄化高圧水流、発動します』
槍の中に組み込まれた機構がかすかな音を立てて動き出す。そして水魔法を自動的に稼働させて魔族戦闘に有効な強力な一撃を生み出すのだ。そして――
――ヴシュゥ――
水が弾けるような音がしたかと思うと、
――ヴッ! ゴッバァアアアッ!――
ケラブノスを押そった
「お前さんご自慢の改造魔族の兵たちは外部からの攻撃には強いが、体内からの高圧には極めて弱い! 我らリザードマン兵団は水魔法を得意とする。この方法なら特別な魔法を必要とせず貴様の自慢の改造魔族の
「なぜ今までその技を見せなかった!?」
ヴァルターの苛立ちの言葉にケラブノスは冷ややかに答えた。
「迂闊に手の内を見せて対策を取られるなどと言う間抜けな真似はしたくなかったのでな!」
「くっ!」
思わず歯噛みするヴァルターに、ケラブノスは突きつけた。
「お前はそもそもが傲慢すぎる。自信過剰であり自らが生み出したものに絶対の自信を持つ。そもそも魔族は長い寿命を持つがゆえに〝改善〟とか〝改良〟と言う言葉に極めて疎い! 俺もかつてはそうだった。だが、人間たちと歩みを共にして考えが変わったのだ!」
ケラブノスの視線はカリナやエルリックたちを見つめていた。
「一日一日を無駄にせず常に鍛錬と自己改善を続ける。それが人々に平穏を齎すと信じて! だからこそだ! 勇者カリナと共に歩むためにも、昨日の自分を超えて、未来を目指すと決めた! そして今がある! 過去と自分自身に執着する貴様には永劫に分かるまい!」
「おのれぇ!」
ケラブノスはゲオルグに告げる。
「ゲオルグ! 加勢するぞ!」
「かたじけない!」
ヴァルターは2対1の構図に追い詰められ始めた。さらには、
「ケラブノス卿の話を聞いたな?」
「はい!」
「我らもそれに倣うぞ! 外面よりも内部構造の破壊に集中しろ!」
「はっ!」
アルカナヴァンガードの隊員たちの戦いにも変化が現れていた。
カリナは皆に告げた。
「お任せします! ご武運を!」
そう叫びながらカリナは3人の仲間たちとともに魔王の元へと向かったのだった。