勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
魔王の握りしめた両手が魔力の輝きを放ち始める。魔導攻撃の発動のための予備動作だ。それに対して最初に動いたのはソフィアだった。
彼女はキャソック衣装の胸元から一枚の水晶板を取り出した。その表面には刻印で微細な魔導文字が刻まれていた。そして、その水晶板の最上段にはこう記されている。
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そしてソフィアは一言唱える。
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その瞬間水晶版がまばゆく発光して刻まれた魔導文字が明滅する。
――キュゥゥウウウウウウン――
甲高い鳥のさえずりのような音が水晶版から響く。それは高密度の呪文だった。魔王の周囲に光で空間に描かれた魔法陣が展開され、魔王から驚きの声が漏れる。
「なにっ!? 口頭詠唱も無しに高密度魔法を展開するだと!?」
展開された魔法陣が力を発し、魔王の身の動きを制限していく。強力な抗魔力が展開されることにより、魔王自身の持つ魔力が制限されるのだ。しかも、魔王自身がどう動こうが魔法陣の方から追従してくるのだから事さらに厄介だった。
「ぐっ! ぐぉぉおっ! 我を! 我の動きを戒めると言うのか?」
魔王の持つ絶大な魔力、それを着実にソフィアの魔法は削り取っていく。
「悪いわね、真っ向から素直に戦おうなんて私思ってないから。ちょっとズルさせてもらうわよ」
そしてソフィアは2枚目の魔法水晶板を取り出し突きつけた。そこには【
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――ズゥウン――
重い音が鳴り響き、魔王の周囲一帯の重力場が荷重される。当然ながらカリナたちの側は変化はない。魔王だけがその場に重く縛り付けられる。
「ぐおぉっ? 重力効果か!」
――ブブブブブブゥゥン――
重く響く振動音、ソフィアが示した2枚の魔法水晶板――
――
――
その2つを同時作動させることで、魔力の発現と、移動の自由、その両者を同時に制限する。
「ばっ! 馬鹿な!? これだけの高位高出力魔法! 数人がかりの長時間詠唱で成し得るものだぞ!?」
眼の前の女性魔導士が示してみせた魔法の現実を魔王は理解しきれていないようだ。そんな姿をあざ笑うようにソフィアは吐き捨てた。
「バカね、人間界では媒介を用いた自動詠唱はもはや常識よ。いちいち口頭で詠唱なんてアンタたちが遅れてるのよ」
それに続いて声を発したのはミリアだ。
「
そのミリアも魔法水晶板を取り出しかざしてみせる。そこには魔導文字でこう記されている。
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「
水晶板の微細な魔導文字が光を放って作動すれば、ミリアの両サイド、そこに突如として亜空間を超えて〝
「
追加呪文を詠唱すると、召喚された
まさに、魔王狩りのはじまりである。
「なんだ? 何を始める?」
ソフィアの2重魔法により身動きできなくなっている魔王に向けて初手の攻撃を加えたのはエルリックだ。
「喰らえ!」
エルリックが左手に持った大型のタワーシールド、それにしっかりと保持すると、魔法実行の聖句を詠唱する。
「
タワーシールドの表面に火花がかすかに散る。それと同時に魔王に肉薄して、タワーシールドごと体当たりを食らわせる。それと同時にタワーシールドから猛烈な雷撃波が放出され魔王の体を焼いた
――ゴォオオオオンッ!――
さらに打撃の物理効果も確実に効果を表していた。魔王の体がよろめいた。
その隙を逃さぬのはミリアだ、最初に手にした大口径フリントロックライフル銃で魔王の頭部を狙って引き金を引く。
――ダァアンッ!――
当然ながら弾丸は対魔族用の抗魔処置済みであり、魔族の肉体にも有効なものだ。ミリアは素早く駆け抜けながら銃を撃ち、即座に投げ出し、別の
――ダンッ!――
撃てばそれを即座に手放し、戦闘領域に分散して配置した
「くっ! くそっ! 小賢しい!」
歯噛みする魔王をよそに、3人は巧妙に魔王の動きを封じていた。
エルリックが直接に攻撃して魔王の意識を引き、ソフィアの魔法陣が魔王の魔導と動きを封じる。そして、意識集中を撹乱させるためにミリアの射撃と続く。
3人が魔王を引き付ける間にカリナは英霊召喚の準備を進める。
「今度は私の番です!」
カリナも自ら動き出したのだった。