勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡―   作:美風慶伍

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勇者カリナ最高奥義と、魔王の最後

 だが魔王は抗った。その体を起こすと残された左腕を高く掲げる。

 

「言われるままにやられるわけには行くか! 死影波動(レイスフォールサージ)!」

 

 魔王が左手を振り下ろせば、彼の背後の空間が開いて異界の大量の死霊が召喚される。生きとし行けるものへの恨みつらみを溜め込んだ哀れな死霊たちだった。

 カリナめがけて一斉に襲いかかる。だがカリナは聖剣レギオンブレイドを天高く掲げた。

 

「死霊ごときにやられない! エリュシオ!」

 

 カリナの呼びかけに聖剣は答えた。

 

『了解、ソウルサモンズゲート開放いたします』

 

 聖剣に組み込まれた人工精霊エリュシオが聖剣に秘められた機能を開放する。そしてカリナは魔法呪文を詠唱した。

 

「〝英霊(エイドロン)召喚(・イヴォーク)! 来たれ! 歴代の竜皇の魂よ! 今こそ一千年の無念を晴らすがいい!」

『聖地・ドラゴンの墓場に眠る歴代竜皇、召喚いたします』

「なに?! いにしえの竜皇だと?!」

 

 カリナが召喚した存在に魔王ヴァルガリアスは驚愕した。

 魔王謁見の間の頭上空間に巨大な光の扉が浮かび開く。そして、そこから巨躯の大型ドラゴンの魂が一体飛び出してきた。だが、その角は十二対あり、翼は六対あった。すなわち十二柱の竜皇の魂が一つとなって現れたのだ。

 

『呼んだか!? 勇者カリナよ!』

 

 その轟くような叫びが響く。

 

「はい! 今こそ魔王との決着の時! お力をお貸しください! そして貴方たちも勇者の英霊として共に戦ってください!」

『我らを勇者と呼ぶか! 面白い! この戦い、喜んで力を貸そう!』

 

 コレに驚いたのは、召喚されているエリアスとブレイズだった。

 

『これは――、竜皇ドラゴンまで仲間にしたのか?』

『つくづく規格外の勇者だな君は』

 

 呆れる二人の声にカリナは笑みを浮かべる。

 かたや、竜皇の魂は、息を吸うと思い切り吐き出す。竜の火炎吐息の代わりに霊波動が放たれ、大量に溢れ出している死霊の群れを次々に葬り去っていった。

 

『死霊どもの駆逐なら任せろ! 我等竜皇が冥府に送り返す!』

「恐縮です! 私たちは魔王を討ち滅ぼします!」

『心得た!』

 

 そして、竜皇の魂は死霊たちに立ち向かい続ける。その隣でカリナは更に魔法呪文を詠唱する。

 

「〝英霊(エイドロン)召喚(・イヴォーク)大隊(バタリオンズ)戦列(ビルドゥング)! 来たれ! 歴代のすべての勇者の魂よ!」

 

 詠唱とともにレギオンブレイドは光り輝いた。そして、まるで天界の門が開いたかのようにカリナの背後に数多の過去の勇者たち、その仲間たちが魂となりて現れたのだ。その数、総数200柱。かつてない規模の大規模召喚だった。

 魔王が召喚したその死霊の群れは200柱の英霊たちの持つ魂の輝きの前に身動き一つできなくなっていた。

 

『すごいな、大先輩方のお出ましだ』とブレイズ、

『僕たちも列に加わろう』とエアリス、

『ああ』

 

 ブレイズとエアリスはカリナとの連結を解いて英霊たちの列の中に加わった

 今の状況を見て巨大なバトルアックスを抱えた髭面の老齢の勇者が語る。

 

『どこに招かれるかと思えば、よもやここは魔王城!』

 

 まだ少年といって差し支えないあどけない容姿の若い勇者が語る。

 

『と、言う事はここは最終決戦の地!』

 

 腰にバスタードソードを帯びた、いかにも剣士風の麗女が語った。

 

『現世の勇者殿がついにたどり着いたということか』

 

 全身総鎧の騎士勇者が語る。

 

『なればここは現世魔王ヴァルガリアスの居城! 最後の覇王の軍勢が終焉の時を迎えるということだな?』

 

 その彼らにエアリスは告げた。

 

『いかにも! 現世勇者カリナ・ウイングス卿がついになし得たのです! 魔族と人間の長きにわたる戦いもついに終局!』

 

 ブレイズも告げる。

 

『勇者諸衆! 各々方も戦列に加わられよ!』

 

 その言葉に英霊たちは自ら武器を構えた。英霊たちの列の中央に立ついにしえの魔導士風の姿の麗しき老女の勇者がカリナに語りかけた。

 

『勇者カリナよ! 今こそ人間と魔族の決着の時! 我ら歴代の英霊、総力を上げて汝に力を貸そう』

「恐悦至極! 英霊諸衆! 戦列構築を! 絶対防御陣展開!」

『おう!!!!』

 

 カリナの掛け声とともにレギオンブレイドは輝き英霊たちは叫びを上げ隊列を組む。そして聖なる障壁となりて魔王の放つ死霊の負の波動を完璧に阻止した。その光景に驚愕したのは魔王だった。

 

「馬鹿な? 歴戦の勇者たちのすべての魂だと?!」

「そうよ! それが我れらがレギオンブレイドの力です! あなたたちが100年足らずと侮蔑する人間の魂が生きてきたその証をこの聖剣は記録し続けるのです! そして時を超えて平和をもたらすために力を与えてくれるのよ! エリュシオ! 攻撃発動!」

『了解、アサルトエフェクト発動します』

「行きます! 抗魔斬撃! 無限刃列発動!」

 

 レギオンブレイドのさらなる輝きのもとに歴代の偉大なる勇者たちが一斉に剣を抜いた。そしてその剣の力はレギオンブレイドに一つに重なる。

 エルリックが語りかける。

 

「カリナ今だ!」

 

 ソフィアも告げる。

 

「ヴァルガリアスの魔力が再活性化する前にとどめを!」

 

 ミリアも叫ぶ。

 

「全ての命に自由を!」

 

 その言葉を得てカリナは、足元を踏みしめると、ひときわ高く舞い上がった。その姿に魔王は驚愕の表情で防御魔力障壁を展開した。

 

「おおおおおおぉ?! おのれぇ!!」

 

 だが、カリナのレギオンブレイドはそれを易々と突き破る。

 

「魔王ヴァルガリアス! 覚悟!」

「人間ごときがぁああ!」

 

 それが魔王の最後の叫びだった。無限に近い聖なる力を宿したレギオンブレイドは振り下ろされ魔王の体を真っ二つに切り裂いた。

 

――ザヴァアアアッ!――

 

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