勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
今、カリナとエルリックたちの前には、本作戦に関わる諸軍団の指導者たちが集っている。
いずれも、カリナの掲げる政権の輝きの元、心を一つにして戦い続けてきた八つの国と、十の種族の勇猛なる英傑たちである。
エルリックが最初の軍令を発した。
「まず1つ目が敵の最前線拠点であるブラッドレイブン要塞だ。かつては難攻不落とされていたが、長年の調査により構造上の弱点が判明した、西側の水路周辺が地盤が脆く場内から破壊可能だと判明した。水路を一時的に流れを変えれば、崩落予兆のある地盤が瓦解し、城壁の一部が自己崩壊するとの証拠を掴んだ。敵はまだこの点に対して対策を講じておらず攻めるなら今との確信を得た!
参戦部隊は〝光国ルミナリア王国騎士団〟〝獣人系戦闘軍団〟〝ケンタウロス戦闘兵団〟及び〝ゴブリン部隊〟だ」
ルミナリアはセプタリアで最も権威のある国家だ。その軍隊は王国直下の騎士団と、市民から選抜された国民兵から成っている。魔法や武装にも優れ、精鋭が揃っているので有名で、カリナの母国でもある。そこに動物的な特性に優れた獣人勢や、脚力や持久力に優れたケンタウロス勢が参戦する。異色なのがゴブリンたちだが――
「なおこの作戦ではゴブリン部隊が最も重要となる。これまでの小規模な攻城作戦で訓練してきたが、ゴブリン部隊が先行して要塞内に侵入、要塞西側の水路を破壊し地盤崩壊を誘発し突入口を確保する。さらに、要塞の各所に爆薬を設置、敵守備部隊を混乱させ一気に突入を図る! ゴブリン諸君に真価を発揮してもらう!」
「ギャッ!」
人間の赤子ほどの背丈の3人のゴブリンが代表として参加している。言葉は発せないが聞くことも書くこともできるので意思疎通可能だ。人間用の
「諸君らの機敏さはこれまでにも見せてもらった! 期待しているぞ!」
「ギャッ!」
醜悪と魔族からも蔑まれていたゴブリンだったが、勇者カリナの言葉に救われ魔王軍と決別してからは、そのしぶとさとすばしっこさを生かして戦場の敵地工作では無くてはならぬ存在と成っていた。加えて悪知恵もなかなかにはたらく。ゴブリンの悪名は伊達ではない。
「お前たちが突破口となる」と牡鹿獣人のアーンスランド、
「戦場では我々が必ず回収する、案ずること無く戦ってくれ!」とケンタウロスのヴェロス、
「ギャッ!」
小さな彼らも重要な戦力なのだ。
「次に、ブラッドレイブン要塞攻略と同時に、要塞北東部のナイトフォール砦、同南西部のデスウィンド塔を攻略する。これにより敵の監視防衛網の〝目〟を潰す!
参戦部隊はナイトフォール砦が、〝アクアリス国防海軍海兵部隊〟〝グローム戦闘兵団〟となる。ナイトフォールは湖に面した城塞で監視網が厳重だが、今回はあえて湖側からの攻略を目指す。国際魔導アカデミー機関から支給された光学魔法装備を用いて、水上から偽装接近、上陸を果たすとともに、グローム種族の特技である土魔法でナイトフォール砦の基礎を破壊。砦としての機能を阻害して一気に攻略する」
アクアリスは海洋王国であり屈強な海兵が居た。その陸戦部隊の上陸戦闘兵は屈強で有名であり、船舶の艦載砲の取り扱いから砲撃にも秀でている。グロームは豚に似た容姿の種族で体力に富み戦闘力は群を抜いていた。さらにグロームには地盤を自在に操る伝統的な〝土魔法〟を得意としていた。水と土に秀でたそれぞれの勢力は今回の作戦にまさにうってつけだった。
分厚い毛皮の上下衣の上に鉄製の重装鎧を纏ったのがグロームの族長ブルータスだ。勇猛で全身に傷跡を持つ有数の猛将だった。
「お任せください。カリナの姉御の名誉にかけて砦を潰してみせます」
「俺たちもブルータスの旦那に負けてられんな」
「あぁ、期待しているぜ」
ブルータスと語り合うのは屈強な海兵を率いる老将オーシアだ。種族の垣根を超えてお互いを深く信頼していた。
「さらにデスウィンド塔だが、高山に位置し、また魔族の魔導技術による強力な魔導砲台が設置されている。これの攻略についてはモントクラウドとドワーフ勢から連名で作戦案が上申されていた。従来の野戦砲の数倍の飛距離の新型砲を投入するそうだな?」
それに答えたのはモントクラウドを率いる麗しき女性軍人のヘレナだ。
「はっ、モントクラウドの有する火砲技術と、ドワーフ勢の有する優れた冶金技術、これを組み合わせて分解式の後装砲を開発。今回の作戦に投入します」
モントクラウドはゲリラ戦を得意とする山岳民族の連邦国家だ。当然、銃砲や火砲に強く機動戦に秀でている。冶金技術に優れた山岳種族であるドワーフとは以前から連携が成功していた。そんな腕自慢技術自慢のドワーフたちを束ねるのは若き族長のアルブレヒトだ。
「事前資料で敵の魔法砲台の有効距離が想像以上に長かったんで、それを超える可搬式の野戦砲が必要と判断した。地上に存在する火砲技術の粋を集めた傑作だ。若年の翼竜ドラゴンの手を借り、一気に目的地点に展開して攻撃を開始する。かならずや敵を撃ち抜いて見せるぜ」
その言葉にカリナは期待の言葉をかける。
「事前情報ではデスウィンド塔の魔導砲は魔王軍攻略の最大の障害となることは分かっていました。そこを突破することがそこから先の作戦の成否を握ります。成果に期待します」
「はっ!」
「雷神ブロンテスに誓い勝利の凱歌をもたらします」
2人は力強く答えるのだった。
作戦会議は後半に進もうとしていた。
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勇者カリナ・未来戦線クロスロード https://syosetu.org/novel/415520/