勇者カリナ/ソルスター世界、魔王城最終決戦録 ―少女勇者、異世界転移前の最後の足跡― 作:美風慶伍
エルリックの説明は更に続いた。
作戦会議の空気はダレることなく力強く進む。
「さらに次がダークスウォンプ駐屯地の攻略だ。魔王軍最大の兵站補給基地でもある同駐屯基地だが、先のデスウィンド塔の攻略が前提となり、デスウィンドの魔導砲台が無力化されたのちに、〝グレインリーフ王国国防兵軍〟〝エルフ部族連合戦闘団〟〝ドラゴン系種族軍団の一部〟の連携で攻略してもらう。兵站補給基地であるため防御陣地としては危険度は低いが、敵もここを落とされることは望んでおるまい。投入されている兵数の多さに苦戦する可能性があるのでくれぐれも注意してくれ」
穀倉地帯恵まれた農業国グレインリーフ、人口数が多く歩兵の数では群を抜き、長年の鍛錬により歩兵部隊全体の連携行動は卓越していた。戦闘ワゴンや銃火器、長槍などで敵を圧倒する戦術を特に好む傾向がある。魔法の技術では他国に遅れをとっていたが、今回それを補うのがエルフ部族連合の戦闘団だ。汎用的な魔法と弓技術では卓越していた。
「兵数の多さでしたらグレインリーフは引けを取りません。士気高く必ずや勝利してご覧に入れます!」
エルビスの言葉に、それを魔法面で支えるエルフのヴェネラも答えた。
「故郷を追われたエルフ部族を受け入れてくれたグレインリーフの方々の恩意に報いるためにも、ぜひ勝利してご覧にいれます」
カリナの声がかけられる。
「期待しています!」
「はっ!」
「では次だ。デスウィンド塔攻略と並行して。魔王城への進行ルートの守りとなるブラックリッジ砦の攻略が行われる。ブラックリッジ砦は馬列による迂回進行可能なルートが確認されている。ここを他の拠点攻撃と並行して落とすことで、残る2つの拠点グリムフォートとシェードヴェイルへの連絡路を断つことが可能だ。魔王城は他の陣地との綿密な連携により機能している。この連携を破壊することは最も重要だ。この大任は〝騎馬国ガルガンダイン騎馬騎士団〟〝騎士団国ヴァルハイト騎士団〟に対して発令される」
ガルガンダインとヴァルハイトは騎馬騎士団による伝統的な軍隊を保有している軍事国家だ。ガルガンダインが騎馬戦闘に優れ、ヴァルハイトは重装白兵戦闘に秀でたお国柄だ。共に対魔族戦闘では長年にわたり、最前線に立ち続けた有数の戦闘国家である。
「大任、お任せいただき光栄の極み」と、ガルガンダインの猛将ローランが答えれば、
「完膚なきまでに敵陣を灰燼に帰してみせましょう!」と、ヴァルハイトの闘将アルトゥールが答えた。
この両者、互いに競い合う良きライバルでもあるのだ。カリナは告げる。
「両閣下、ご武運を!」
「はっ!」
のこるは3つ。
「さて、ここまでの作戦が進行している間、残る勢力は、我々魔法剣士騎士団と共に第2野営拠点に進軍する。そして、先行する拠点攻撃の成功により、残る3地点への攻撃が開始される。
まず、シェードヴェイル塔だが。ここは敵の重要参謀のトップであるヴァルター・ダークハートの活動拠点でもある。魔王軍最大の魔導士にして学者でもあるヴァルター、やつの魔導研究の根拠地を破壊するのは魔王軍の再起を防ぐためにも必須だ。
これは〝エーテルノヴァ国家近衛軍〟を中心に〝女子魔導士飛行隊エーテルウィングス〟〝グラスランナー部隊〟の担当となる。飛行集団の支援のためドラゴン部隊も加わる。さらにドラゴン種族から竜将ラピデス・トナンス嬢が援護してくれることとなった。エテールノヴァとエーテルウィングスの諸君らはグラスランナーの諸衆らとともにシェイドヴェールを攻略してほしい」
エーテルノヴァは古くから魔法研究の総本山であり、魔導戦闘では最高峰として知られていた。そこから発展したのがエーテルウィングスであり、これに小柄な体躯ながら俊敏さと視聴覚に優れたグラスランナーが同行する。さらに戦闘の要として大型ドラゴンで雷魔法の名手であるラピデスが加わる。
「作戦詳細の通達を受けてから、エーテルウィングス、グラスランナー勢、そしてラピデス様と共に打ち合わせと連携訓練を行ってまいりました。悪漢ヴァルターの根城を完膚なきまで叩いてご覧に入れます」
そう答えるのはエーテルノヴァの軍事戦闘力を束ねる名将シルヴィアだ。優れた魔導剣士で魔導士としても高位を得ている。彼女と並んで待機するのがエーテルウィングスのルクレティアであり、グラスランナーのアルデンだ。ルクレティアが語る。
「竜将のラピデス様の準備も万全です」
その彼らにカリナは告げる。
「あのヴァルターの拠点です。一筋縄ではいかないでしょう。くれぐれも最新の注意を払ってください」
「お任せを」
そして残るは2つ。
「さて次、ここが本命の魔王城と並んで最も重要となる。主要機動部隊が駐屯するグリムフォート要塞だ。ここは魔王城と同時攻撃となる。担当するのは〝ネルガル解放義勇軍〟〝トロール部隊〟〝巨人種族部隊〟の3つだ。敵の予備戦力が待機している事もあり、激戦が予想される。その分、装備は充実させておいた。ネルガル解放義勇軍のゲリラ戦術と、トロールの担当する野戦砲技術、巨人種族の圧倒的な戦闘力を存分に活かしてくれ!」
ネルガル解放義勇軍は、かつて存在したネルガル国の残党からなるレジスタンス勢力だ。旧ネルガル国軍の下士官から構成されており、ネルガル国の民主的な再建をめざして活動している。それを率いるのがレグナントで、有能な野戦指揮官としてしられていた。
「はっ! かならずやご期待に答えてご覧に入れます!」
その彼らにカリナは告げる。
「レグナント殿、ご武運を! ドゥロック殿とバルグジン殿も」
「うむ」と、トロールのレグナント、
『まかせろ』と、オーガのバルグジン、
両種族ともかつては魔王軍支配下で酷使されていたが、カリナ率いる魔法剣士騎士団に助けられた経緯がある。今ではカリナの忠実なる戦力として活躍していた。
こうして各国軍、各種族軍への発令は終わった。残るはカリナ率いる魔法剣士騎士団自身への発令である。
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勇者カリナ・未来戦線クロスロード https://syosetu.org/novel/415520/