文体ガタガタかもしれません。もう遅いかもだけど。
あと、無駄なギャグシーンがたびたび挟まれます。
十二話目で突然変なギャグを入れてもいいんだろうか。
翌日。
俺の起床時間、なんと朝の四時。
「ふわぁ……ヤバ。俺ってば健康体じゃん」
もっとも、俺が現代日本学生にあるまじき起床時間をしているわけじゃない。
そもそもの睡眠時間がおかしかったのだ。
「まっさ夜八時には就寝とは……日本だったら七時間でも多い方なのに」
いつもは夜十一時に寝て朝六時半とかそれぐらいだったからな……
なんなら一時とかに寝るなんてのもざらだったし。
そんな俺がいきなり八時に寝れるわけもなかったが、ハスールは何か話してくれるでもないし、スマホは見れないしで、布団にくるまるしかない分、意外と寝るのは早かった。
「…まぁ、ハスールは流石に起きてないか。これで起きてたら驚き……いやぁ、そうでもねぇか?」
洗面所に向かいながら、独り言つ。
ひとり~ごつ~
「…くだらな」
我ながら非常にしょうもない一日の始まりだ。
朝の洗面をしながら、自分に自分でツッコむ。多分、漫画の主人公はこんなことをしてない。
…それはいいとして。
「二日目かぁ……落ち着くと意外に現実感がないな…もう夢だって言われた方が納得する」
まあ、どうせ今日も魔法でも食らったらこんな気持ちも吹き飛ぶんだろう。
昨日もそんな感じだったし。
「んむぅ……」
そんな独り言とも、独り思考ともいえないような中間の何かをしてた時。
ハスールが寝息を立てた。
それにビクッとしてしまう。
別に何かやましいことでもしてるわけじゃないし、早く起きただけなんだが、なんか驚いてしまう。
思わずハスールの方を見るが、特段変なところもない。起きたわけじゃなく、ただ寝息が聞こえただけらしい。
「はぁ……何を俺はびくびくしてんだ…何にも悪いことしてないだろ……」
そう言いつつ、ついハスールのベッドの方に足を向ける。
ベッドに眠るハスールは、意外とかわいい顔をしていた。
というか、元は可愛めなんだ。煽り癖と話し方がクソったれなだけで。
「……なんか、犯罪臭のする絵面な気がする」
ハスールが男に見えにくいのもあると思う。
そのせいで、俺が女子の寝顔を覗くような変態っぽくなっているんだ。
別に俺は何も思わないんだが……むしろ、イタズラとかしたい。
昨日の鬱憤を晴らすために。もっとも、そんなことをしたら倍どころではなさそうなのでやめるけど。
そういえば、なぜか学園長により俺のベッドがこいつの隣になったし、なんなら「ダブルベッドの要望があれば言ってね♡」と書かれたメモが置いてあった。
ハスールに渡した瞬間燃やしてたけど。
「……覚えてなくていい記憶だなぁ…」
とりあえず、もう一回俺のベッドに寝ることにした。
スマホも見れないし、ハスールは起きてないしで、やることもない。
やっぱり、寝れなかったが。
◇◇◇
「ん……あ、そうか。お前がいるのか」
「起床一番結構な挨拶だな。おはようさん」
「ん。おはよう。……凄い違和感だ。ボクの部屋にお前がいるの」
「偶然だな。俺もそう思ってた」
だが、おはようと言ったらおはようと返すだけの優しさはあったらしい。
ハスールは目覚めはいい方らしく、目ボケ眼なんて一切見せなかった。
サービスシーンもゼロの、つまらないキャラだ。まあ、男だしいいけど。
「で、今日はどうす──なにしてんの?」
「朝のストレッチ。…なんだ。見世物じゃないぞ」
「見る気もねぇよ」
日本で見たことがあんまりなさげなポーズをとっているハスール。
まあ、そういうのが大切ってのは聞いたことがある。
「まあ別にルーティンはどうでもいいんだけど…今日、どうするんだ、って聞きたかったんだよ」
「学園案内を見ろ。それすらできないのか?」
「朝からキレッキレだなお前。昨日見る暇もなく俺のこと寝かせたのはどこのどいつだよ」
「さあ。酷い奴もいたもんだね」
もうどうしようもない。暖簾に腕押しとか、そういうレベルだ。
俺が文字読めなかったらどうするんだよ…一応、読めるけど。なんでか。
「ま、いちいち読むのを待ってるのも面倒だし、教えてあげる」
案外ハスールは優しかった。
あるいは、本当に面倒くさがってるだけかもだが。
「と言っても、これと言って特にないけどね。ボクの気分次第」
相変わらずストレッチをしながらハスールは話す。
というか…気分次第?
「お前、昨日Aランクの授業に出るって言ってなかったか?」
「
「んな言葉遊びみてぇな……」
「あの待遇で入ったから特殊Aランク、とかいうよくわからないランクになってるけど、ランクが上がれば魔法が使えるわけじゃない」
「それぐらいわかってるって」
「それなら
「だったら──」
そこまで俺が口を開いたところで、ハスールが背中からジャンプし、ベッドから飛び降りた。
俺のすぐ横、なんならぶつかるんじゃないかってところに着地し、俺を指さして口を開く。
「安心しろ。ボクが教えるって言っただろ。勝手に出てることにしとけばいい。その裏でボクが教えるから」
◇◇◇
なんかいい感じに過ごされそうになったが結局昨日の続きかよ、とツッコんだ所で、ハスールはキッチンに向かっていった。
「お前、何してんの?」
「朝食」
「……作れんの?」
「作れなかったら困るでしょ」
そう言いながら、ハスールは棚から何かを取り出していく。
白いパンに、見たことのない果物。あとは卵と、細長い野菜。昨日の食堂でも似たようなものを見た気がする。
異世界に来て二日目。
二回目の飯。
なのに、朝飯の内容は妙に普通だ。
「なんか……普通だな」
「何を期待していたの?」
「いや、異世界なんだからさ。朝飯からドラゴンの卵とか」
「そんなものを朝から食べる人間がいるなら見てみたいね」
「お前なら食いそうだと思ってた」
「ボクを何だと思ってるんだ?」
「首席だろ?」
「その答えは間違っていないけど、今の質問の意図には合っていないだろ」
ハスールは俺の軽口を尻目に、手際よく卵を焼いていく。
昨日、魔法を使っているところを見たときも思ったが、こいつは何をやらせても妙に手際がいい。
魔法では学園首席。
勉強も首席。
そのうえ料理までできる。
……なんだこいつ。
逆にお前は何を持ちえないんだ。
「お前、できないことないのか?」
「ある」
「何?」
「人付き合い」
「自覚あったのかよ」
「失礼だね。自覚なく過ごしてると?」
「いや、他の人間とかくだらないとか思ってそうだし」
「否定はしない」
「しないのかよ」
なんとなく納得できてしまう。
完全に下、というか…悪役みたいに人を人として扱わないみたいなことはない。
でも、人を見下してはいる。
あらゆる意味で、個人主義なんだ。こいつ。
「…まあ、でも俺とは結構喋ってるよな」
「研究対象だから」
「それ、友達に言う言葉じゃねえからな」
「友達になった覚えはないけど」
「そこは否定してほしかったんだがな……」
「何を?」
「……もういい」
朝っぱらから疲れる。
俺は椅子に座り、テーブルに置かれたパンを一枚取った。
「食べていい?」
「どうぞ」
「いただきます」
一口。
普通にうまい。
……うまいな。
特別な味付けがされているわけでもない。ただ焼いたパンに、卵と野菜。それだけだ。
なのに、妙に安心する。
昨日は何もかもが突然だった。
知らない場所。
知らない人。
そして──魔法が効かない。
その事実を知っただけで、俺の人生は昨日までとは完全に別物になった。
それでも朝になれば腹は減る。
飯を食えばうまいと思う。
そういうところだけは、昨日までと何も変わらない。
「……うまい」
思わず口から漏れた。
「そう」
ハスールはそれだけ返した。
けれど、ほんの少しだけ口元が緩んだ気がした。
「お前、今ちょっと嬉しそうじゃなかった?」
「気のせいでしょ」
「いや、絶対――」
「食べないなら返して」
「食うわ!」
パンを取られそうになったので、慌てて皿を引き寄せる。
そんな俺を見て、ハスールは小さく息を吐いた。
「……本当に騒がしいな。お前」
「お前のせいでな」
「ボクは静かにしててほしいんだけど」
「じゃあ煽るなよ」
なんだかんだで、会話は続いていた。
昨日会ったばかりの相手とは思えないくらいに。
……まあ?こいつが俺を研究対象としか思っていない可能性については、一旦考えないことにした。
朝から考えるには、あまりにも胃に悪い。
昼から考えても夜から考えても、多分変わらないけど。
「それで?」
ハスールが皿を片付けながら言った。
「食べ終わったら、さっさと始めるから」
「……やっぱりかよ」
「当然でしょ」
「朝飯食って即魔法の特訓って、体育会系の部活かよ」
「また意味不明なことを言うね」
「こっちの話だ」
こうして俺の異世界二日目は、昨日とほぼ同じ感じで始まった。
◇◇◇
「つーか、特訓って何するんだよ。というか、授業に欠席とか許されるのか?」
朝食を食べ終わった後、俺とハスールは机に座って話していた。
「別に許されるだろ。お前は昨日来たばっかりだし、ボクは主席だし」
「主席ってそんな何でもいい役職とかじゃないだろ。生徒会でもあるまいし」
「あれは面倒だから入ってない。そうじゃなくて…ボクはもう授業内容は大体先取りしてるから」
「じゃあなんでここに来たんだよ」
俺のツッコミにも反応せず、ハスールは話を先に進めた。
「で、何するかだけど。今日はお前が魔法を使えるかの実験。昨日、学園長にもらってたろ。それを読み込んで、感覚をつかんでもらう」
「座学かよ。また魔法を撃ち込まれるかと思った」
「昨日大体試したから……というか、お前。ボクのこと、人に魔法を打ちたがる変人とでも思ってるのか?」
「そうじゃねぇの?」
はぁ…と溜息をつかれた。
俺の方が吐きたいのに、なんて自由な奴だ。
まあ、何回も感じたことではあるけど。
「まあいいや。とにかく、今日はそれだけ。撃てるようになるまで」
「…授業休んでまでやることがそれかぁ……」
「逆。授業中にこんなことされたら周りに迷惑がかかる」
周りに迷惑を掛けてそうなやつがなんか言ってらぁな。
とにかく、そういうことらしかった。
俺は小学生用、と書かれている教科書をもらった分の数冊手に取り、机に持ってきた。
「…そういや、お前は何するんだ?教師役?」
「面倒だからしない。質問があったら呼べ」
面倒だからって……
「…じゃあ、質問だ。先生」
「ん。なんだ生徒」
こういうことにはノってくれるのにな。
「俺は杖を持ってないんだが、どうすればいい」
「暴発してもお前に効かないんだからいいだろ。どうしても欲しいなら昨日もらった耳かきでも使えば?」
いらない伏線回収だった。
誰も耳かきの伏線回収なんて望んでねぇよ!
◇◇◇
「……」
「……」
教科書を読み始める前はどやどや話していたが、俺が教科書に集中してからはたんと話が続かなくなった。
ハスールもどうやら自分の学習をしているようだった。
「……」
教科書に目を落とす。
魔法の歴史とか、安全のための、とかはある程度流し見にした。
歴史は知らなくてもたぶん何とかなるし、安全のため、っていうのは俺は大体無視できる。
無視できなさそうな部分がないか探してみたが、やっぱり無効化、なんて能力は思いつかれてもないようで。
特に見る必要がある場所もなさそうだった。
そして、必要そうなのが魔素の動きの章。
小学生用なだけあって、難しい理論やらなんやらは書いてない。
逆に、感覚的な発動条件がいっぱい書かれていた。
第一章
『魔素を感じよう!』
……
「雑だな」
思わず声に出た。
「何が?」
向かい側からハスールの声が飛んでくる。
「ここ。『魔素を感じよう!』って。感じようで感じられるなら誰も苦労しねぇだろ」
「感じるものなんだから、感じるしかないでしょ」
「精神論じゃねぇか」
「魔法は精神論じゃないよ」
「だったらもっと具体的に書けよ」
「具体的に書けないから感覚なんじゃない?」
正論だった。
正論だったので腹が立つ。
俺はもう一度教科書に目を落とした。
『まずは目を閉じ、体の中に流れる魔素を意識してみましょう』
目を閉じる。
意識する。
「…………」
何もない。
「……初手でつまずいたぞ。先生」
「まあそんな気はしたけど」
「だったら他のことさせろよ!」
俺の抗議もどこ吹く風で、ハスールは話を続ける。
「焦るなって」
ハスールは口の端を釣り上げた。