「ハルドメルグってやっぱりあのハルドメルグだよな」
「ええ、数か月前にヴィランとの戦闘中に一般市民を庇って攻撃を受け続けた結果として意識不明の重体として入院こそしましたが、誰一人として怪我をさせずに守り抜いたヒーロー、白銀のハルドメルグ。雄英高校の1年生と言う事は聞いておりましたが、まさかそんな方と同級生になるなんて……」
「やっぱ入院による単位不足ってすげぇ痛いんだなぁ……」
ハルドメルグの名前は矢張りと言うべきか有名だった、鋼流も自分で調べてみたが、ニュース記事やら纏めサイト的なのもあったし個性に関する考察やらを行っている個人サイトも中々に面白かった。世間に周知されているヒーローではあったが、そんなヒーローも留年してしまう容赦のない雄英高校の厳しさを感じているのかもしれないが、意識不明でもなければリモートで授業を受けて単位を得る事自体は出来た。自分はそれらを意識不明で出来なかった上に補修で間に合わないレベルで単位を落としただけで……。
「さてと相澤先生終了条件は?」
「単純に参ったと言えば……いや合理的じゃないな、背中を地面につけたら敗北だ」
「分かりました」
極めてシンプルなルールだ、此方に何かしらの条件も無い、まあ今日の予定は既に終わっているし後は流す程度にするつもりなのだろう。が、それは相澤だけで目の前の爆豪はやる気満々と言う感じでいっぱいだ。やっぱりさっきのあれが利いてるのかなぁ……。
「それじゃあスタート」
「死いいいねえええええ!!!」
「仮にも先輩ぞ」
いきなりとんでもない事を言いながら突撃して来る爆豪、爆破を推進力にして迫る、50m走の時のような爆風、だがそのまま右腕を振り被って顔面目掛けてバチバチとスパークするような音を立てた手を向けて来る。防御をしようとして腕を上げようとした所で
「と思ったが馬鹿が!!!」
手の向きを変えて自らを回転させた、スピードと方向の転換を回転で行い、その勢いを用いたハイキックを首へと打ち据えた。爆破によるスピードでキックボクシングのヘビー級並のパワーが炸裂して、鋼流は身体を揺らすのだが
「死ねえええええ!!!」
回転の勢いが残っている間に左手を爆破させながら差し向ける、身体が浮いているからこそのアクロバティックな動きでの2連撃が炸裂する―――
「と思っていたのか?」
「何っ!!?」
爆豪は言葉を失いかけた、何故ならば爆発を起こしている自分の掌を逆に握り込んで来た。爆破の手を払う、弾くなどは想定してきたが爆破寸前の手を握り込んで来るのは考えた事も無かった。爆破の規模はそこまでの物ではなかったので手のダメージこそなかったが、そのまま腕を引いて真上へと投げられる。
「爆破の使い方としてはかなり上手いな、だけど―――爆破で作れるものをもっと想像してみろ!!」
「っ~~~ハッこういう風にかぁ!!?
両手を合わせ、まるでかめはめ波でも撃つかのような形にしながらもそこで猛烈な爆発を引き越し、その光と爆風そして爆音、それらを手で方向を絞って此方に浴びせて来る。上手い使い方だ、これならば目と耳が麻痺する事になる―――俺以外ならば。
「そこぉ!!!」
「がああっ!!!?」
手から伸びた液体金属、流体が爆豪へと突き刺さるように伸びてその身体を捕縛する。
「お生憎、俺の視界と耳はその程度じゃ聾さない」
「っそがぁぁあっ!!!オラアアアアアッ!!!」
首元を抑えつけられた状態にもかかわらず、両手を流体へと当てて連続的に爆破していく爆豪。容赦のない爆破の連射を浴びる事になるが流体は全く揺らがない。だがあの状態で反撃に転ずることの出来る度胸は気に入った。良い跳ねっ返り気質だ。
「そおらぁっ!!!」
「っくそがぁぁぁぁっ!!!!」
そのまま、爆豪は流体を破る事も出来ずに背中から地面へと叩きつけられてしまった。模擬戦の敗北条件は背中を地面につける事、つまり、爆豪の敗北と言う事になる。
「はい爆豪の負け、鋼流の勝ちだ」
「何度でもかかって来い」
「っ~……人間じゃねぇぞくそが!!!」
「応」
流石に爆豪相手では負ける事も無いか……と相澤は思う、何せリハビリの相手をずっと務めていた相手は爆弾の個性持ちでその規模も破壊力も練度も爆豪の上を行っている。良くも悪くも爆豪にとっては相手が悪すぎた。そんな相手にまだまだ戦う気と勝つ気がある爆豪も流石と言う他無い。
「すっげぇえええ先輩つえええええ!!!」
「カッコ良かったぁぁぁ!!!」
「ぜ、是非とも私もお手合わせをお願いしたいですわ!!」
「俺も俺も!!」
新入生への実力のお披露目とこれからこいつが一緒なんだから何かあったら遠慮なく頼って自分の糧にしろ、と言う意味合いがあったのだが掴みはバッチリだったらしい。これで鋼流に色々と押し付ける事が出来たので自分の仕事も多少減った上でクラスの実力向上に繋がるだろうという打算が相澤にはあったりする。
「それらはまあ自由にやってくれ、だけど取り敢えずお前、教室に戻っておけ。教科書やら書類やらに目を通しておけ。んじゃ鋼流後頼む」
「うん、ってええっ!?いや先生は!?」
「俺は教員室に戻ってる、後は適当に説明しとけ」
「うおおおい担任としての仕事しろよ!!?」
「合理的に考えろ」
「やっぱりあの人合理的を便利な言葉にし過ぎだって……」
まあ相澤的には此処からは鋼流に色々と任せておけば留年生としてのあれこれを緩和出来る上に年上としてある程度新入生にいい顔が出来るだろうという配慮なのだろう……決して自分に全部押し付けた訳ではない……と信じたい。
「あの人は……まあえ~っと、取り敢えず改めまして雄英高校にようこそ。俺は鋼流 心、怪我が原因で単位不足になって留年になっちゃって1年生をもう一回やる事になった。一先ずは皆、除籍にならなくてよかったね」
「除籍と言うのは合理的な虚偽なのでは?」
手を上げながらも丁寧な口調で尋ねられた、当の本人も居なくなった訳だしネタ晴らしをしてしまうとしよう。
「合理的な虚偽っていうのが合理的な虚偽さ、あの人は俺の時も担任だったけど俺ともう一人以外を全員除籍処分にした」
『えっ……』
「因みにこれマジ話ね、見込みがあったからこそ除籍を回避する事が出来たって事だよ」
「つう事は……オイラマジで除籍される所だったのか……?」
「うん、無事でよかったね」
最下位であった峰田は口から魂が出そうな程に驚いて腰を抜かしてしまう、がそれは他の生徒達も同じ事。見込みがなかった場合、高校を除籍処分になって……と思うと背筋が凍り付いてしまう。
「あ、ああああっ危なかったぁぁぁぁぁ!!?私マジで全力でやってよかったぁぁぁ!!?」
「め、滅茶苦茶危なかったんだ僕……」
「あ、あはははっでもオイラ生き残ったんだぁぁぁぁ!!!」
「そうそう、そう思って前向きに行こうよ。あの人厳しいけど評価とかは凄い的確だから先生としては凄い人よ?社会不適合者っぽく見えるのがご愛嬌……いや愛嬌はねぇな」
そんな話を交えながらも一同を率いて教室へと戻る事にした、一先ずはこのクラスで仲良くやっていけそうな感じで本当に良かった……と本気で思っている。一部生徒には何やら鋭い視線を投げかけられたりはしているのだが……まあ頑張っていこう。
「良いのかいレゼ少女、合流するんじゃなかったのかい?」
「いやぁ先輩ムーブするところが凄い可愛かったのでつい」
「HAHAHAラブラブだね、是非式には呼んでくれだぜ!!」
「なんだったらスピーチお願いしようかな」
「おおっ光栄だね!!何だったら色んな人を呼ぼうかな、今アメリカにいる私の親友とか」
「良いですね~それ是非呼んでくださいよ」
「OK!!」
その後相澤から学生の間は我慢しろ、と言われたり、他の先生から式は何時するの?スピーチとかやろうか?と言われたりして、いつの間にか完全に外堀が埋められていたのであった。