「そう言えばさ、レゼは何でその格好なのコスチューム。カッコいい奴とかしなかったの?防具ついてますみたいなの」
「これ?初デートの時に、これ着ていったら凄い褒めてくれたんだよ心ちゃん。だから勝負服にして、コスチュームって言われて真っ先にこれが思いついたの。私にとっての戦闘服はこれですみたいな感じで」
「全然覚えてなくてすいません……」
「んじゃ今度デートしよ♡」
「まあいいけど、インターンは良いの?」
「んな事より心ちゃんが優先だよ」
「ホークス泣いてるよ、と言うかホークスってワシだっけタカだっけ?」
「どっちも同じようなもんだからいいんじゃないどっちでも」
そんな事を話している二人がいるのは屋内戦闘訓練で使うビルの内部、二人の傍には巨大な如何にもミサイルや爆弾ですと言わんばかりの見た目の物が置かれているのだが、これが戦闘訓練では重要なものとなっている。
戦闘訓練はヴィランがビルの何処かに核兵器を隠し持っており、ヒーローはそれを確保する為に来たという設定になっている。ヒーローは核に確保するか、ヴィランを全員捕縛する事。ヴィランは核兵器を制限時間以内に守り切るか、ヒーローを確保するかという事になっている。
『それじゃあどっちがヒーローかヴィランだけど、どっちがいい?』
『『ヴィランで』』
『異口同音!!?因みに何故?』
『だってオールマイトがヴィラン役って似合わないし』
『そういう事で』
『えっそんな理由!?』
そういう理由でヴィランチームとなった訳だが……改めて核を見てみると、張りぼてだとしても中々なサイズだ。これを守りながらオールマイト相手に制限時間まで守り切れ……と言うのは中々に辛い、そうなると確保になる訳だが……其方も現実的じゃない。
「んじゃ俺が前に出るからレゼは此処で待機して貰ってもいいか?」
「え~アタシも行くよ?」
「頼みがある」
「何々?」
耳打ちでこっそりと告げると、一瞬驚いたような顔をしつつもすぐに頷いてくれた。
「中々に悪辣な考えだよそれ」
「だろ?」
「頑張って来てね」
「そっちも」
もう直ぐ始まる訳だが、早速準備をしようとした鋼流の手を引いて無理矢理振り向かせると唇を重ねるレゼ。突然のそれに目を見開くが、レゼは構う事も無く舌まで入れてじっくりねっとりと唾液を絡ませたそれをしてから、離れる。
「御呪いだよ、頑張って来てねダーリン♡」
「……家帰ったら絶対泣かす……」
「期待してるね♡」
鋼流の内心はバクバクのドキドキのしっぱなし、本当に最後の最後に離れる時の上目遣いとはもう卑怯すぎんだろうが……などと思いながらも深呼吸を繰り返していると耳に付けているインカムから声がした。
『時間です!!それでは僭越ながら飯田 天哉開始の合図をさせて頂きます!!屋内戦闘訓練、開始してください!!!』
審判役、という訳でもなくスタートの合図役の真面目眼鏡の飯田が開始の合図をした。
「さて、始めるか」
そういいながらも鋼流はまるでマッドサイエンティストのように指の間にベルトから取り出したシリンダーを挟みながらも歩みを進めた。
「にしてもまさかいきなり心ちゃん先輩のバトルがまた見れるとはなァ……」
「あら、切島ちゃんもそう呼んでるの?」
「応っ!!親しみも持ってほしそうな事言ってたろ、だからそう呼ぶことにしてんだ!!」
「アタシもそう呼んでるわ、心ちゃん先輩って結構面白い人よね」
観戦室ではビル内に仕込まれている各種センサーとカメラからの映像を複数投映されており、観戦する事が出来るようになっている。1階ではオールマイトが手早く各部屋を調べているが、その際にも扉にトラップがないかを確認しておりプロヒーローとしての熟練した手際と身のこなしに皆が感嘆の息を漏らしている。
「すげぇオールマイト、もう1階調べ切っちまったぜ。1分、もかかってないぜおい」
「どんだけだよオールマイト……」
「ねぇデク君、あのレゼ先輩?のこと知ってる?」
緑谷は仲良くなった女子の麗日からの質問を受けて少しだけ頷いた。レゼ、その名前はよくニュースにも上がっているからだ。それは彼女の見た目が優れているという意味でもあるが、同時にその能力も相応と言う意味でもある。
「福岡で活躍してる女性ヒーローでホークスのサイドキックをしてるはずだよ。ホークスにも負けず劣らずの実力で卒業後のオファーが既に引っ切り無しって」
「マジかよあのねーちゃんそんなにすげぇのかよ!!?」
「確か、ボムヒーロー・レゼって呼ばれたはずだよ」
「―――ボムだぁ?」
爆豪はそこまでニュースは見ていなかった、オールマイトを超える為に努力している彼にとってはオールマイト以外のヒーローにはそこまでの興味が引かれないのかもしれない。だが、ボム、つまり爆弾、自分と同じ個性を持っているという事なのか……
「(俺の個性への対応がバカみてぇに早かったのはあの女との経験があるってことか)」
爆豪が物思いにふけっている中でオールマイトが二階へと足を踏み入れた瞬間に―――
『ぬおおおおおっ!!!?』
「なんだ足元が爆発した!!?」
オールマイトの足元が炸裂して金属質は棘が命を穿とうと迫っていた光景に皆が瞳を奪われていた。だがそこはオールマイト、咄嗟のバックステップで一気に数メートルは飛び退きながらも踊り場へと退避する。
「いきなり来るかぁ……まあヴィランとしては当然の事だな……」
笑顔を絶やさないようにしているが、それでも冷や冷やはした。本気でビックリした。棘は解けるように床の奥へと浸透していって消えていくが……考えられるのは二つ、鋼流が操作している、それか或いはトラップ式の操作、恐らく後者ではあると思う。ならば足を踏み入れたらまた襲い掛かって来る、ならばっ!!!
「ふんぬっ!!!」
拳を振るう、唯振るっただけ。それだけならば何も起きない筈だが、階段の一部どころか先程棘が飛び出した部分も崩壊し崩れ落ちていく。ただ拳を振っただけでこれだ、なんて出鱈目な存在か……そして崩壊した場所を軽い声と共に軽く飛び越えて2階へと到達。
「まさか堂々たる待ち伏せとは、思わなかったよ鋼流少年」
「下手に虚を突こうとした所でアンタには無意味だろうからな、なんだったら真正面からってね」
「HAHAHA思い切りが良いね!!」
そこには仁王立ちしている鋼流の姿があった、が、彼の身体の周囲に銀色に輝く球体がまるで衛星のように浮かび上がっている。資料で読んだがあれが彼のコスチュームのサポートアイテム……と自然と構えてしまう。
「レゼ少女と一緒じゃないんだね」
「このビルごと解体していいなら呼びますけど、但しそうなったら核の安全は保障しねぇぜ?」
というか、レゼの個性はその性質上屋内戦闘向きではない。一応静穏性特化のサイレントボムとか局所爆発なんかもお手の物だがそれでも屋外に比べて破壊力は大幅に抑えられてしまう。
「ならば君を倒して確保、その後でレゼ少女を確保するかな」
「やってみろ―――あいつには指一本触らせねぇ」
そう言い切りながらも衛星の一つが高速で動き、その周囲で線のように見える程の高速移動をした後に鋼流の右手へと一体化していく。その右手は激しく、そして銀色から青、翠色へと発光し始めていく。
「オールマイト、アンタの拳はすげぇんだってな。俺の指だって捨てたもんじゃねぇんだぜ」
「だったら、試してみるかい!!」
「上等!!!」
駆け出して行く鋼流、それに合わせてオールマイトも迎撃の構えを取り腕を思いっきり引く。矢を番えた弓を思わせるような引き方に合わせて輝きを増していく掌をオールマイトへと向けて構えを取った。互いの構えが取れた時、互いにその名を叫んだ。
「DETROIT SMASH!!!!!」
「シャアアアアアイニングッフィンガアアアアア!!!」
液体金属を使った必殺技を検索中―――液体金属に包まれエネルギーを纏った緑色に輝いた手で相手にアイアンクローをするのがシャイニングフィンガーだと知る。
成程!!シャイニングフィンガーとはこういうものか!!
か、感想頂けると嬉しいです……。