「それでは戦闘訓練の講評を行おうと思う。が、その前に少年少女諸君、鋼流少年とレゼ少女の戦い方を見てどう思った?」
部屋へと戻った一同、そこでまず行うのは戦闘の振り返りと講評。此処では戦闘訓練での文字通りの講評という名の反省会を行って自分の問題点を洗い出しを行う事で前に進もうという事になるのだが……まずは戦闘の感想を言い合う事になった。
「いやマジ凄かったよパイセン!!オールマイトと必殺技の打ち合いして競り勝つとかマジかよって叫んじまったよ!!?」
「あの瞬間もしかしてオールマイトにも勝てる!!?って思っちゃったらマジで勝っちゃうし!!」
「ケロケロ、心ちゃん先輩を疑ってたわけじゃないけど改めてこうして実力の高さを見せつけられるとやっぱり本当は2年生なのねって事をひしひし感じちゃったわ」
「しかも、真っ向勝負の後には計略でオールマイトの動きを完全に封じて時間制限まで待つとか流石すぎるぜ!!!」
「レゼ先輩もカッコ良かったけどなんか凄い怖かった!!」
「レゼパイセンって爆破系の個性なんですか!?」
と様々な質問や感想が飛び交うのでオールマイトは一旦それを収めながらも咳払いをしながらも言った。
「訓練中に二人が実践してくれたのは、正しく真に賢しいヴィランのやり方だ。ハッキリ言って奴らは手段を選ぶことがない、勝つ為には事前に手間を惜しむ事はないし、いざそれらが通じないと理解すれば次の手を即座に打って来るのが実情、そして此方が人を救う事をしなければいけない都合上の制限という物を突いてくる。今回の場合だと人質がいるかもしれない、ビルの爆破によって核の破損による放射能汚染が懸念材料になってしまったね。いやまさか私としても此処までやられるとは思わなかったよ」
「やるなら徹底的に、と思いまして。見本として」
「私はただ心ちゃんに合わせただけかな~楽しかったし」
「う~んこの愉快犯共め~!!」
軽く笑いながらも一同の目は二人への敬意と尊敬の物へと変わっていた。何せオールマイトを最後には完全に封殺していたのだから。そしてそれは同時に警戒と緊張にも変化する、何故ならば自分達は何れこういうヴィランを相手にしなければいけないのだから。
「あの鋼流さん、お二人の方針はあれは予定通りだったという事なのでしょうか」
「ああ、基本的にはね。オールマイトがまさかああいうスマッシュ持ってるとは思わなかった」
「HAHAHA!!私がパワーが制限される室内を想定してなかったと思ったのかい?」
「改めて考えるとそうでしたわ……」
と言ってもこれはオールマイト、というかヒーローオタクである緑谷ですら直ぐには思いつく事が出来なかったのでこれを考えて動けというのは中々に辛いものがあるのも事実である。
「だが、こういう脅威を乗り越えて言う者こそがヒーロー、そして君達はそれになりに来た筈だ!!先人として確かに私はこの訓練で勝利する事は出来なかった、だがそれは絶対に君達では勝利出来ない事と=などではない!!例えば私は電撃を放つ事は出来ないし自由に物を創造出来る訳でもない、戦闘の運び方や思考すらも皆とは異なる。つまり、君達ならば私には出来ない、出来なかった事をしてあの危機になる前に何とかできた可能性があるという事だ!!是非、これを自分達で成し遂げる、成し遂げる為に此処にいるという事を、胸に刻んで欲しい!!」
『はいっ!!!』
教師としては未熟な所があるオールマイト、戦闘訓練の説明の時にもカンペを見ていたが今度は中々にいい事を言っている事にレゼと共に感心してしまう。
「(な、中々良い事を言えたんじゃないかな!?徹夜で教育論の本を読み込んだ甲斐があった……!!そうだ、今の私だって成長出来るんだ……!!)」
そんなオールマイトは初授業に緊張し、寝ずに教育論の本を読み込んだ成果が出ていた事に思わずホッと胸を撫で下ろしている、と歯軋りのような音がして鋼流が膝を付いてしまった。
「こ、鋼流先輩!!?どうしたんすか!!?」
「あっやっぱり隠してたんだね?」
切島が慌てる中でレゼが冷静かつ呆れたような声でそう言うと、バツの悪そうな顔をしながらも目を反らす鋼流の頭をチョンと指で押す。
「ど、どういう事なんだレゼパイセン!?」
「オールマイトのスマッシュをまともに受けてるんだよ、そりゃダメージがあって当然だよ。個性のコスチュームの自動防御機能が働いてたとしてもあれは衝撃波を直接体内に撃ち込む系だから防御貫通してたんだよ」
「もうちょい、踏ん張りが利くと思ったんだけどなぁ……でも思った以上にキツい、あっやばい、マジでこれキツい……レゼ、悪いけど、リカバリーガールの、所にっ……」
「はいは~い運ぶよ~いいよねオールマイト先生」
「もっ勿論!!はいこれ許可証!!ああっあと無理に戻ってこなくてもいいから、なんだったら教室で待ってていいから!!」
意識を失いかけている鋼流を担ぎ上げるとそのままスタコラサッサと駆け出していくレゼを見送ると同時に心配そうな声が上がる。
「心ちゃん先輩大丈夫かしら……」
「流石にオールマイトの一撃受けたんだもんな……」
「改めて思うと、あれ俺の防御じゃ防げねぇんだよな……そうなると回避とかも考慮しないといけねぇのか……いやマジでいい気付きになったぜ、あとで先輩にお礼言わねぇと……」
そんな心配と回避と防御の見極めの重要性を再認識させた瞬間になったのだが、肝心要のオールマイトはだらだらと冷や汗を流してしまっていた。何故ならば、思い返すと鋼流の演技が現役時代にた対峙したマジでの凶悪ヴィランと被る部分があった為にちょっと本気になって打ち込んでしまったかもしれないと今更ながらに思い始めた。
「(マズい……私もあとで鋼流少年にマジで謝りに行かないと……!!!)」
「全くあの馬鹿は何をやってるんだい!?こんなにはっきりと手の跡が残る程のダメージを出す一撃を使ったのかい!!?アタシがいなかったらまた入院コースだよ」
プンプンと怒りながらも鋼流の怪我を詳しく書類に書き込んでいくのは雄英高校の屋台骨とも言われるヒーローのリカバリーガール。世間的に極めて貴重な治癒系の個性で、相手の治癒力を活性化させて怪我などを治療する事が出来るのだが……今回の鋼流の怪我は重傷の部類に入る物だった。
「肋骨の数本に罅まで入ってたじゃないか、まったくあの馬鹿は……アンタも災難だったねぇ、留年したってのにいきなりこんな大怪我を、しかもオールマイトから……アタシからもキツく言っとくよ、もう大丈夫かい?」
「なんか、凄い疲れた感じですけど元気です」
「無理はするんじゃないよ」
既に怪我はすっかりと全快こそしているが、リカバリーガールの個性は治癒力を活性化しているだけである。つまり怪我を直したのは鋼流自身の治癒力で、治癒力が力を発揮する為には体力が必要になって来る。その為か、鋼流は身体に大きな倦怠感が付き纏っているが、地獄の訓練に比べたら……という気分になっている。
「あっ治療終わりました?」
「ああ終わったよ、悪いレゼ心配かけた」
「お婆ちゃんは超一流だから心配はしてないかな~」
「嬉しい事を言ってくれるじゃないかい、ほれっハリボー食べるかい?」
ハリボーグミを受け取り、改めてリカバリーガールにお礼を言いながらも保健室を後にする。そして取り敢えず教室で待機する事にしたのだが……
「レゼ、教室行かんでいいの?」
「心ちゃんと一緒いる事優先」
「さいですか……」
こんな調子でクラスで浮いたりしていないのかと若干心配になるのだが……と思っていると自分の机に座りながらも自分の目を覗き込んで来た。
「何考えてるのか当ててあげようか?」
「いえ結構です」
「残念―――大丈夫だよ、心ちゃん以外興味ないから」
「それはそれで問題なのでは、色んな意味で」
更に近づかれる、逃げたいと思っている訳でもないのに少し引いてしまうと、首に手を回されて、更に深く見つめられる。だが……この瞳で見られるのは嫌いじゃない。
「本当は気が気じゃなかったよ、君が我慢してる所。オールマイトに殴り掛かろうか凄い迷ったよ、でも多分やっても君は喜んでくれないと思ったら我慢したよ、偉いでしょ」
「サラッととんでもないカミングアウトしないで頂けます!?」
「知らないの、唐突な告白は女の子の特権なんだよ」
「せめて愛の告白だけにしてください」