福岡。レゼのインターン先のホークス事務所がある県、珍しく事務所で楽しく事務仕事をしていたホークス。本当は毎日こういう感じに仕事をしつつ、偶にパトロールをして事故とかから人々を助ける程度のヒーロー活動をしたいなぁ~と思っていたのだが……彼の有能さがそれをさせないのがホークスがホークスである所以である。そんな中で鋼流から頼まれていた事を片手間に、友人から貰った千葉県の名物という甘さMAXな珈琲を飲みながらやっていると……とある情報にアクセスする事になった。
そこは公安の特殊ネットワーク情報保管庫。重要度、機密性などが高い情報のみがそこに収められる事になっている。ホークスは公安に属する者でありそれなりの立ち位置に居るのでアクセスが許可されている訳だが……
「これって……鋼流君、だよな……どう見ても、だけどこれは……」
そこにあったのは鋼流のデータ、だがこれは……公安に目を付けられている処の話ではない、彼は既に―――公安委員会によって管理されているといってもいい存在だ。
「こりゃ、藪蛇じゃないな……藪からティラノが出てきたみたいな感じだ」
「そう、そういう事も理解して調べてたんだよね」
「っ」
「動かないで、去勢、されたくないでしょ」
瞬間、思わず股間を覆うように太ももが間を狭めた。後ろからそっと差し伸べされるのはナイフ、軍でも使われるサバイバルナイフ……それを差し向けて来るのは、自分の事務所で受け入れているインターン生であるレゼだった。
「君が彼に調べさせなかったのはこういう事なのかな」
「普通に考えれば辿り着けない、でも辿り着かせちゃいけない。この世の中に絶対なんてないんだからね」
「それは、同感だね……ねぇレゼ、一つだけ聞いていいかな……君が彼といる理由は……?」
レゼの胸の内が知りたい、鋼流 心という存在と一緒に居る訳を。それがもしも、何かの目的があるのであれば……自分は仮に男としての重要な物を失っても尚、彼を救わなければならないと思っている。ナイフが収められる音がした、そしてレゼが窓際に寄り掛刈るのを感じながらも振り向くとそこには……頬を赤らめながらも髪を弄っている一人の少女がいる。
「……分けてくれたの、お菓子を。一人でいた私に、ほんの一欠片のチョコを半分にして、だから好きになった……」
「……ハァァァァァ……なんだよただのマジ惚れかよ」
「わ、悪い!!?」
そしてホークスはこの後の展開を察した、レゼはこうなると長い時間惚気て来るのである。これは覚悟をして付き合わなければ……。
「先日の対人戦闘訓練はVTRで見せてもらった。鋼流、オールマイトさんの相手お疲れ。時間切れとはいえよく勝ったな、悪質で狡猾なヴィランの見本としてもこれから資料として使わせて貰う事にした。これからもその調子でいけ」
「ねぇその言い方俺ヴィランに進む事にならない?可笑しくね、ヒーローアカデミアでヴィランの方面に進めって言ってんの大分可笑しいって自覚ないの、後俺の許可全くとられてないんだけど」
「レゼからは取ったぞ」
「俺は!!?」
「合理的に考えろ」
「おうMs.ジョークとのあることないことミッドナイト先生にぶちまけんぞくそ教師」
「それだけはマジでやめろ、後口が悪い」
「う~っす」
戦闘訓練の翌日、HRで相澤が戦闘訓練に対するお小言を賜っている鋼流。既に相澤には逆らってはいけないという意識が根付いているのか、相澤がその気になったら即座に黙るようになっているA組の中で唯一平然とツッコミを入れたり反論を入れたりする立場になっていたりしている。
「さてまず今日のHRだが……学級委員長を決めて貰う」
『学校っぽいの来たぁ~……』
と安堵する一同、雄英入学してまだ全く日数が立っていないのにも拘らず色々と濃い事があり過ぎて若干食傷気味になっていたが、仮にも高校、学校っぽいイベントもあるんだと皆が胸を撫で下ろした直後に次々と立候補者が手を上げていった。普通の学校などであればクラスを率いる学級委員長。普通ならば先生の助手的なイメージが強いだろうが、ここはヒーロー科。他者を率いて導くというのはトップヒーローに求められる素養の一つであり、それを鍛える事の出来る学級委員長は、異例の大人気となっている。
「静粛にしたまえ!」
そんなクラスの賑やかを通り過ぎた喧騒は飯田の一喝で沈下した。
「他を牽引する責任重大な仕事だぞ、やりたい者がやれる事ではないだろう!?周囲からの信頼があってこそ務まる政務だ、民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うのなら、これは投票で決めるべき議案!!!」
「やりたいオーラが溢れてる挙手しながらのご意見たぁ素晴らしい、民主主義者の鑑」
そんな飯田の意見を貰った相澤だが、当人は時間以内に決まれば文句がないスタンスなので結局投票で委員長を決める事になった。そしてその投票の結果―――
「誰だよレゼに入れたの、此処にいねぇぞ」
「「はい俺らです!!」」
「よ~し素直で宜しい、後でドラゴンスクリューなそこのバカ二人」
投票の結果、基本的には自分に入れている生徒が多い中で一番多い得票数を獲得したのは5票で鋼流だった。何故かレゼに投票したのもいたがまあ当然無効票である。
「ンで一応聞いとくけどなんで俺なん?」
「いやだって、鋼流先輩は先輩で頼りになるし」
「オールマイト相手に必殺技で競り勝つぐらいには強いし」
「人を纏めるの慣れてそうだし」
「せ、先生にも堂々と意見出来るし」
「「「「「適任かなぁ~って」」」」」
「はい理由有難う御座いました。だけど、辞退しま~す」
「「「「「え~!!?」」」」」
投票してくれたのは普通に嬉しいのだが、此処は遠慮させて貰う事にする。
「理由としては、俺は去年学級副委員長だった。確かに経験者がやると色々と助かるのも分かるが、此処は君達の学年という認識が俺は強いし俺はそれを外から補佐してやった方が成長にも繋がると合理的に思ってる」
「「本音は?」」
「いやこれが本音だよ、人の事をなんかコメディアンとか思ってる?という訳でやり直しで~す」
そしてもう一度やってみた結果として、緑谷が3票、八百万が2票で委員長と副委員長が決定する事になった。
『へ~緑谷君が委員長さんになったんだ、んじゃ今度先輩としてアドバイスでもしてあげようかな。あの子そういうのに慣れてない感じするし』
「流石元委員長、手慣れてんな」
『今年も委員長だよ?インターンで忙しいから大体副委員長に投げてるけど』
「それはそれでええんか?」
『だって私がいない間に私委員長に推挙されてたんだもん』
お昼頃、屋上に出ながらもレゼの作り置き弁当を頬張りながらもビデオ通話をしている。休み時間に連絡を取らないと無言でジト目で見つめられる事になる、3時間ぐらい。
「ンでそっちは如何なの、インターン忙しい?」
『大したことないよ、ホークスを去勢しようとしたぐらい』
「大した事あるだろそれ!!?大丈夫かそれ、ホークスのゴールデンホークスがバードストライクしてねぇか!?」
『ご心配有難うね~……いや、マジであと一歩でされる所だったよ』
「あっ生きてた」
レゼの後ろから半笑いのホークスが顔を覗かせてきた、レゼは乙女の通話に入り込むの重罪だよ~?と咎めるが、だったら応接室使えばいいじゃんと反撃を試みるが、レゼの鋭い視線におおっ怖い怖いと逃走する鷹がそこにいた。
『あれはほっといてお話ししよ、他に何かあったりした?』
「他って言われてもなァ……特に―――」
無いと言おうとした時、けたたましい警報の音が鳴り響く。そして同時にアナウンスが鳴り響いて来た。それはセキュリティが突破されたという情報と生徒は早急に屋外に退避しろという旨の事。だが屋上にいた鋼流はいち早く状況を察した。
『どうしたの大丈夫心ちゃん!?』
「大丈夫だ、如何やらマスコミが強引に敷地内に入って来たみたいだ」
視線を下に向けてみると、そこにはマスコミが大挙して押しかけて来るのが見えている。なんと卑しくも浅ましく、嫌なマスコミ達だ。あんなのに情報を握られていると思うと寒気がする。
『あっ心君、それ軽く写真かムービーにとってレゼちゃんの携帯に送ってくれない?俺の方からも抗議しとくからさ』
「うっす既にパシャパシャリ」
『あっ来た来た』
『お~よく取れてるね……しかし……っ心君、悪いけど職員室に向かえるかい?』
「へっ職員室に?」
唐突なホークスからの指示に首を傾げる、ホークスは手早く、その理由を放つ。
『マスコミ連中だって雄英のセキュリティが硬いのは知ってる筈だ、それを破る手立てがあったからってそれを実行する度胸はない、だが入ってきている。つまり誰かが背中を押したんだ、セキュリティを破壊してね。じゃあその理由は、雄英内部の侵入の可能性とカリキュラムの予定の確認が考えられる』
「っ悪いレゼ後出かけ直す!!」
電話を切って屋上から下を見る、一瞬足をすくむが、直ぐに飛び降りた。そして背中から光沢のある金属の翼を広げて、外から職員室へと向かう。職員室に到着すると運よく窓が開いていたのでそこから突入、内部はセキュリティが突破された事で対応の為に教師陣は素早く行動したであろう慌しさの跡が見れた。そして、その痕跡を物色する野党のように、書類を物色している全身の各部に手首を装着した男と、黒い霧のような身体を持った者が、そこにいた。
「よおっ体験入学は受け付けてねぇ筈だが、何の用だ不審者共」
「あ"あ"っ?おい、見つかってんじゃねぇかよ」
「流石に侮り過ぎましたか」
「……どうやらふざけてる場合じゃないな。警告する、大人しくしろ、出ないと―――ハルドメルグの名においてお前らを叩きのめしてから確保する」