雄英のセキュリティ突破とヴィランの侵入、その二つが雄英の危機感を高めながらも鋼流は生徒として授業を受けていた。そして同時に委員長となった緑谷はセキュリティ騒ぎの際にパニックを起こした生徒達を必死に行動し、それを鎮めようと尽力し続けた飯田への委員長へと座を譲り渡した。それを副委員長となっていた八百万は自分は……?と若干不服そうな顔で見つめていた。騒ぎも落ち着いたころ、今日も今日とて学科数の多いヒーロー基礎学の時間がやって来た。
「今回のヒーロー基礎学だが、俺とオールマイト、そしてもう一人、ついでに鋼流の4人体制で見る事になった」
「また何も言われてない……俺、影薄いの……?」
「お前も含めると言っても結局のところ、纏め役をやれというだけの話に過ぎん、要するにいつもと変わらない、合理性ついてに本気出して考えた結果だ」
「ポルノグラフィティか!!?」
そんな鋼流のツッコミに笑いが起きながら、今回のヒーロー基礎学は災難災害何でもござれ、レスキュー訓練であることが告げられる。ヒーローとはただヴィランを倒すだけの存在ではなく災害時には公的機関の警察や救急隊よりも先に現場で救助作業を行い、尊い人命を救う事が要求される。ヴィラン退治ばかりが取り沙汰される事が多いが、これこそヒーローの本分として心血を注ぎ続けている者も多いのである。
「緑谷、お前コスは?」
「ああその、前の戦闘訓練で破損しちゃって……サポート会社で今修復中なんです」
救助訓練を行う演習場へとバスで向かう、雄英の規模の大きさが窺い知れる移動中の車内で、コスチュームではなく、体操着の緑谷が気になった。今回の授業ではコスチュームの着用は自由となっている、コスチュームは唯着れば能力が向上する者だけではなく、敢て能力の方向性を絞る事で出力を上げたりする者も多い。例えれば水を放つ個性、ただ漠然と水を放つのではなく、水の発射口を絞るなどのコスチュームであれば威力は一気に向上するが汎用性は落ちる。そう言った場合もあるのでコスチューム着用は自由となっている。
「あ~大変だったらしいな、爆豪との勝負」
鋼流はオールマイトとの見本訓練で大きなダメージを負ったのでその後のあれこれを知らなかったが、緑谷は麗日とタッグで爆豪と飯田のチームと挑んだが、そこで爆豪を引き付ける為にかなりの無茶をしたらしい。結果的に勝ちこそしたが、あまり褒められたものではなかったと聞いている。
「爆破の個性は単純に破壊力があるからなあ……俺もレゼに何度ぶっ飛ばされた事か……」
「えっレゼ先輩って鋼流さんをぶっ飛ばせるんですか!!?」
「個性の関係もあるけど、純粋な攻撃力と機動力だと俺はレゼに勝てねぇぜ。防御力と汎用性は俺の方が上なんだけどねぇ……素直にあの破壊力は羨ましいんだよねぇ」
車内でそんな言葉を聞いて矢張りレゼは強いのか、と思う一同。戦闘訓練の見本では基本戦っていたのは鋼流であり、レゼは搦め手の決め手として動いていたので直接的な戦闘力は見せ付けていない。だがそんな中で爆豪は笑って見せる。
「ハッ爆破の個性って聞くが、俺程じゃねぇだろうがな」
「だと良いね~」
「ンだその適当な声はぁ!!?」
爆豪に関しては下手に言葉で納得させるよりも実際にレゼの戦いを見せつけた方が早いし納得も出来るだろうからその時までは待って貰おう。
「それよりさ!!パイセンとパイセンってどっちが告ったの!!?」
「私も知りた~い!!」
「ちょ、ちょっと皆、そういう事を聞くのは―――」
「いやぁ同時に告ったらしいからどっちが告ったという問いには答えられないね~」
「あら、両想いなのね、そして普通に喋るのね心ちゃん先輩」
まあもう同棲してる事をバラされてしまったからこれ以上隠しても意味がないと諦めているだけとも言える。
「はいはいはい!!パイセンとの出会いは!!?」
「いやぁもうずっとに居るので昔の事とかどうでもいいので覚えてませんね」
「いやぁいきなりのラブラブ発言!!やっぱりそのままゴールインなんですかぁ!!?」
「いつの間にか結婚式のスピーチをオールマイトに頼むとかいう話まで行ってる上にオールマイトがアメリカの友人呼ぶとかそういう話になってるそうなので、もう逃げられないと思ってます。分かるかい、逃げる気はないのにいつの間にか外堀どこか内堀も完全に埋め立てられた上に教師の皆様から卒業するまでは色々我慢しろとか何時やるの?とか言われる人の気持ちが」
『お、お祝いしたいのにし辛い……』
本来であれば色んな意味でお祝いをするべきなのに全く出来ないという妙な状況、流石の峰田もこれには閉口して煽ったりする事は出来ずにいた。
「皆さん待ってましたよ!!」
演習場の前で待っていたの宇宙服のようなコスチュームに身を包んだヒーロー、スペースヒーロー・13号。災害救助などで目覚ましい活躍をしたヒーローとして名声を高めながらも雄英の教師として教育に携わっている。そんな13号が受け持つレスキュー訓練を行う演習場、そこへ入ると思わずUSJのような施設だという声が聞こえて来て、鋼流は笑いそうになった。何故ならば
「水難事故、土砂災害、火災、暴風、エトセトラ。あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場、嘘の災害や事故ルーム、略して―――USJ!!」
『本当にUSJだった……!?』
「いつも思うんすけど怒られないっすよねそれ」
「僕が勝手且つ一方的に愛称として呼んでるだけなので問題ないです。実際は災害事故仮想体験型演習場、という堅苦しい上に長い名前なんですよ鋼流君」
そんなこんなでここでは13号と相澤ことイレイザーヘッド、ハルドメルグ、そしてオールマイトの4人体制で授業を見る事になったのだが……肝心のオールマイトの姿が見えない。それに関しては何やら相澤と13号が何かを話しているが……そんな時、土煙と共にそれは現れた。オールマイトが上から降って来た。
「い~やごめん遅れちゃって!!だけどギリギリセーフかな!!」
「いや授業時間に間に合うようにしてくれませんとセーフにはなりません、なのでアウトです」
「くっ~厳しいな相澤君は!!」
「教師なんすから遅刻は生徒にあれこれ立たないってことですよオールマイト先生、そんなんだから俺も教師側に立たないといけなくなるですよ、ですよね相澤先生」
「大体あってる」
「あってたよ……」「合ってるのかい!!?13号、私ってそんなに教師としてあれ!?」
「えっとまあその……は、発展途上という事で」
「くっ~事実だから何とも言えない~!!!」
そんなやり取りがありながらも13号がこの救助訓練で大切な事を学んでくださいという旨を話し、生徒達はその話に感動をしている中で今度は13号が鋼流へとバトンを渡して来た。
「では、折角なので鋼流君からも一言お願いします」
「えっなんで?」
「お前は現地で個性を使って人を助ける事を知ってる生徒、だからだろ」
「それが原因で入院して留年した俺にそれ振ります~?」
自虐をしながらも向けられてくる視線は熱い物ばかり、皆の中で自分はどういう評価になっているだ……と思いながらも口を開く。
「さて、救助訓練な訳ですが……俺が皆に言えることは一つ―――人を救う前に、自分を守れ、という事だ」
他者を救う為の訓練、その前に自分を守れという言葉に皆は驚くが、相澤はらしい言葉だな……と瞳を閉じる。
「他人救うのがヒーローとして当然?それはまあ御尤もな訳だけどさ、俺をそれをやった結果として泣かせなくても良かった人を泣かせた、自分を守り切れなくて守れたかもしれない人を守れなかったかもしれない。ヒーローは自分を切り売りして他者を救う商売って俺は思ってるよ、だから高潔だって思う人もいると思うけどさ……自分を助けられずに他人を救える人にはなれないって俺は思ったね」
自分を助けられない人には他人を救えない、それに大きく頷いたのは13号、やや耳が痛いなぁという顔をしているのがオールマイト、お前は人の事言えんけどなと思っている相澤と見事に分かれている。
「俺もまだまだ立派なヒーローになれてる訳じゃないからさ、此処で色々学んで前に進んでいきましょう。それでは皆さん、元気よく授業へと参りましょう!!」
『はいっ宜しくお願いしま~す!!』
オールマイトが先生似合ってるじゃないか~と肘で軽く小突いていると、USJの証明が怪しく点滅し始める。何かの不調かと思う中で、相澤、13号、オールマイト、そして鋼流の4人が一斉に振り向いた。注がれる視線の先には広場にある噴水、不規則に水が出なくなったりし始める、だが問題はそこではない、噴水の目の前の空間が歪み始めている。黒い霧のようなものが突如として出現して侵食するように広がっていく。
「一塊になって動くな!!」
同時に鋼流は腰のシリンダーを開け、そこに手を添えると二本の刀を生成し構える。
「こ、鋼流パイセン!?」
「皆冷静になって聞いてくれ、ヴィランが来やがった……この雄英に!!」
命を救う為の授業の場に、悪意を持って命を奪いに来る者共が来た……その中心には、鋼流が以前見た死柄木弔の姿と―――その隣に陣取る、黒い肌で脳が剥き出しになっている巨漢と肌が岩のようになりつつも各部から棘のようなものが飛び出している翼を持った巨漢があった。
「よぉっ会いに来てやったぜ……ハルドメルグ」