「入って入って~」
「お、お邪魔します……」
「心ちゃん、此処は貴方の家なのよ」
「た、ただいま」
「お帰りなさい」
「ってエヴァかよ!!?」
「おおっ流石、即気付いた」
まさかまさかの自宅はレゼと同じ家だった、同棲していたとは驚きすぎて何も言えなくなりそうだった……思わずグロンギ語が出てしまったぐらいだ。
「と言っても私も1週間インターン先にいたからお掃除とか出来てないんだよねぇ……明日はお掃除スタートかな」
ハッキリ言って女子の家という事で緊張していたのだが……変哲もない一軒家、というのが素直な印象だった。自分も一緒に住んでいるという事もあって男の趣味が所々に見え隠れしているし、小物が可愛い物だったりはするが……。
「というか、ご家族は……」
「あっその辺りも無いんだ……えっとね、じゃあ少しお話しようか。待ってね今お茶入れるから」
「あっ手伝うよ」
「大丈夫大丈夫、座ってて~」
一先ず腰を落ち着ける、人の家という感じは確かにしないが……本当にここに住んでいたのかと思っているとお茶が運ばれてきた。妙に早いな、と思ったらポットに入った冷えた麦茶だった。
「それじゃあまずは私の事からかな、私の家族は……生まれた時からいないんだよね。正確には居たらしいんだけど、直ぐに交通事故にあって死んじゃって、私だけが残った感じ。それで孤児院で育って……それからなんやかんやあって、心ちゃんとは小学校からの幼馴染。雄英高校に入学と同時に孤児院の先生が個人的に管理してるこの家を使っていいよ、ってなって一緒に住み始めた感じだね」
「割と端折ったな」
「だってぶっちゃけ、お父さんお母さんの事でしょんぼりされても何ともコメントし難いしそれだったらカットした方が良いかなって。それにね」
ワザとらしく立ち上がると自分の隣に座り直しながら、肩に頭を預けてきた。
「私には心ちゃん居るから寂しくないもん」
「お、おう……え、えっとそれじゃあ、俺の家族は―――」
「そんなこと思い出さなくていいよ、知らなくていいの」
気になっていた事の一つを尋ねれようとしたら、レゼは膝の上に乗っかりながらも真っ直ぐに見つめてきた。鼻と鼻がぶつかり、吐息が混ざり合うような距離に言葉を失い掛けるが……
「貴方の家族は私、私の家族は貴方。もうそれでいいよね、考えてみて、貴方が目覚めてからお見舞いに来てた、来てなかった、そんなの有り得ないでしょ。お見舞いの品は私か雄英の先生かインターン先のヒーローからとかなんだよ、家族なら普通はその位するよね、でもしなかったんだよ。そんなのを気にする意味ってある、無いよね、相澤先生が言ってたでしょ合理的に考えようって。だから考えようよ、貴方を愛してくれる人だけを家族って呼べばいいの、私とかね」
光がない瞳、全てを吸い込むような瞳で内面まで見透かされているような感覚に陥りながらも投げかけられる言葉にはどうしようもない程の苛立ちと怒りが込められていた。それから察せられるのは自分の親は割とろくでなしという事、それか毒親なのか分からないが……取り敢えずもうこの話題を扱うのはやめておいた方が良いかもしれない……。
「―――分かった、俺の家族はレゼ、だけでいいんだな」
「そう♡私は貴方の彼女で未来の伴侶、なんだぞ♡」
先程の暗い瞳から一転して明るい笑みで胸に頬ずりして来る姿は同一人物とはとても思えない。自分の家族については、彼女だけという認識で居た方が良いかもしれない。さっきのレゼは凄く怖かった……。
「あ~ドキドキしてるね?フフッ抱き着かれて嬉しいんだ」
「まあはい、嬉しい、です」
「正直で宜しい♪」
本当は怖くてビクビクしてますなんて言えない……これは、上手く立ち回らないと言えでも落ち着ける時間がないぞ……。
「それじゃあ、一緒に寝ようか♪」
「いや別々でしょ!!?」
「え~でも退院してばっかりだし、サポートいるでしょ?」
「サポートいる身だったらあんな訓練を耐えきれてないんですよ!!」
「あっは♪」
「―――これの、どこが、軽いランニングだよ……」
早朝、太陽も昇り切っていない朝早くに走っている、入院によって錆び付いてしまった身体のキレを取り戻す為のメニューの下準備の準備運動の一部としてランニングが取り入れられているのだが……濡れマスクをつけた上のフルマラソンをしろと相澤からのメニューにはあった、何処が軽いんだよツッコんでしまった。と言ってもこれをこなす以外にないので黙々とこなしていく。
「全然……軽くねぇんだよなぁ……」
42.195キロを走り終えて軽い休憩を入れる、この後はまた同じ道のりで帰れとある、つまり軽いランニングで84.39キロ走らされる事になっている。しかも濡れマスクで酸素を強制的に制限されて走るので余計にキッツい……キツい程度ですまされるこの身体は余程鍛え込まれていたことになるのだが……これで錆び付いているって本当なのかと思いたくなってきた。
「此処は……海浜公園、にしては随分とゴミがあるな……」
走り付いたゴールは多古場海浜公園という海浜公園、だが砂浜には異様にゴミがあり、中には軽トラのようなものまである。軽くスマホで調べてみると……此処は海流的な問題でゴミが漂着しやすく、それに託けて不法投棄が頻発しているとの事。だからと言ってここまで酷くなるのか……と思ってしまった。
「少しでも、片づけていくか……んっ?」
流石にヒーロー志望として放置は出来ないと思い、片づけでも行こうと思ったのだが、砂浜には既に一人の少年がいた、もじゃもじゃとした緑髪の少年がゴミを持って公園の駐車場にある軽トラに積み込んでいるのが見えた。
「もう直ぐ年が明けてしまうぞ~!!!さあ頑張れ少年、此処まで大分綺麗になっているんだから気合を入れて~!!!」
「は、はい~!!!」
そんな少年の近くにまるで骸骨のような風貌の金髪の男が声援を送りながらも、指示を飛ばしている。よく分からないが、掃除がてらに掃除をしているという事になるのだろうか……そうなると彼はヒーロー志望なのかな、と思っていると男はいっぱいになった軽トラを運転して何処かに行ってしまった。処理場とかに行ったのだろう、少年の方はかなり疲れているようだが、帰って来るまでに少しでもゴミを運ぼうと次の山へと向かっていった。
「良い根性してるな」
例えお金を貰ってもこれを片付けようとするなんて事は簡単じゃない、それにあの男が言っていた言葉が確かなら、此処をずっと掃除していたことになる。なら自分も少し手伝いを―――と思った時、少年がゴミを持ち上げた時、それによって山が揺れて崩れ出した。しかも少年は気付いていなかった。その時、自分は飛び出していた。
「チェエエエストオオオッ!!!!」
金属を放出して足を巨大化させながらもゴミ山を蹴り飛ばした。逆方向に崩落していくゴミ山に少年は突然の事過ぎてなになになに!!?と大声を上げながらも後ろに下がった。なんとか怪我をさせる事も無く助ける事が出来てホッとしながらも着地、金属の吸収も問題なく出来ている。それにも安心しながらも少年に声を掛ける。
「無事か!?」
「あっはい、えっと今何が―――」
「ああ、ゴミ山が君に向けて崩れてそうになっててな、驚かせて悪かった。俺が今それを蹴って」
「わああああああああああああああああああっ白銀ヒーローのハルドメルグ!!?1年でありながらも仮免取得してインターンで大活躍してたっていうヒーローが如何して此処に!!?えっしかも回復したんですか!!?そんなニュース全くなかったのに!!?」
「えっあの、その……お、落ち着いて落ち着いて……?」