白銀ヒーロー・ハルドメルグ。ドイツ語で硬いを意味する
「という訳でして俺は今身体の錆を落とす為に色々やってるって訳」
「はぁ~……そういう事になってるなんて、知りませんでした……」
「ンで君は?なんかのボランティアか?」
退院したので今は鈍った身体を鍛え直しているという事を話しつつも相手の事を伺ってみると、相手の少年である緑谷は少し恥ずかしそうにしながらも語る。
「実はその、僕雄英高校に受験する為に今、特訓中で……その身体作りの一環で、此処の海浜公園のごみを全部片づけようとしてるんです」
「全部……全部!?」
「は、はい、これでもかなり片付いてきた方で……」
確かに改めて見直してみると、浜は片付いている部分もあるが……スマホの写真を見てみると水平線が見えない程に積み上がったゴミの山があった。だがそれがない……それと付随するように小さい個人サイトには海浜公園を一人で片付けている少年の活動を賞賛する記事もあった。しかも日付を見ると半年以上も前からという記録もある。
「―――凄いな緑谷君は」
「い、いえいえそんな!!?ボ、ボク何てプロの現場で活躍してた貴方に比べたらそんな……」
「いや素直に尊敬するさ、雄英志望だったっけ、だったら―――来たら歓迎するぜ、俺も人の事をとやかく言えるような立場の人間ではない、せめて錆を落としきってからじゃないと言えない。だから―――勝負しようぜ緑谷君」
「しょっ勝負ですか!?」
おっかなびっくりな反応を見せるが、勝負と言ってもそこまでの物じゃない。
「俺は新学期までに確りと以前まで戻って見せるから君はちゃんと入学を勝ち取る、これが勝負だ。負けたら買った方にジュース一本を奢る、こんなかわいい勝負さ。だけど―――ただ漠然と、雄英を目指すよりも誰かと勝負してますって意識は精神的に言い影響を与えてくれると思うぜ」
「勝負、誰かと競う……ぜ、是非お願いします鋼流先輩!!!」
「よし元気の良い子は好きだぜ、実は片付けしてるなら手伝おうかと思ったが、これがトレーニングメニューなら邪魔になっちまうな」
そのまま足から金属を放出してその場から跳び上がって遠くに着地する。
「楽しみにさせて貰うよ、また会おうぜ後輩、同輩になる時を待ってるよ」
そう言いながら濡れマスクをし直して駆け出して行く背中を見送った緑谷はそっと胸の前で握り拳を作りながらも思いを新たにゴミを運び始めた。軽トラが戻って来た時、もう処理場にUターン!?と驚く声がしたとかしなかったとか……。
「お帰り~随分と時間掛かったね?」
「仮にもフルマラソンを2連続なんですからこの位は当たり前だと思うんですよアタシ、ただいまです」
早朝に出て、帰ってきたのは昼頃。フルマラソンなんだからこの位は当たり前、寧ろ世界記録的なタイムだと褒めてくれてもいいのではないだろうか……と思いながらも軽くシャワーを浴びて汗を流す。
「それで今日のメニューは……」
「この後は腕立て伏せと腹筋と背筋にスクワットとかだね」
「……因みに回数は?」
「沢山です」
「いやだからどん位よ!!?」
「100回以上ですから沢山です」
「マジで殺す気じゃあるまいなあの社会不適合教師……」
というかなんかこのやり取りもどっかで聞いた事あるな……と思うと、レゼがワザとらしくクンクン……と言いながらも鼻を鳴らしながらも臭いを嗅ぎ始めた。ちゃんと汗は流したし汗臭くはないと思うのだが……嗅ぎ終えるとニッコリと笑った。
「男の子だね」
「いや生物学上も精神的にも普通に男のつもりですが」
「そうだね、男の子、だもんね~……♡」
「何処見てんのよ!!?」
「ひ・み・つ♡」
「怖いんですけど!!?寝てる間にも何時の間にか隣にいて寝息立ててるのもホラー通り越してコズミックホラーだからな!!?」
「じゃあ産み直して私の子供になる~?それも良いな……それで私好みに育てて……」
「もうこの話終わりにしましょうはいそうしましょう!!」
「1、2、3……」
部分的に濃くなっている匂いがあった、同い年か少し年下の男の子の臭い……やや腐臭や金属臭がしたからゴミ拾いのボランティアをしている男の子と休憩中に話した……という所だろう。これが女の子だったら、軽く爆発を起こしてその匂いを上書きしたくなるところだった。
「ンガァッ!!?」
「ほらほらほら頑張らないと駄目だよ?」
「待て何で乗る!!?」
「増量キャンペーン中で~す♪」
「それが許されるのが同額だけど量が増えるからだろ!?これ完全に罰ゲームじゃねぇか!?」
「恋人の身体の感触があるからきっとご褒美ね♪」
こういう事しても貴方は結局やり遂げてしまう、それになんだかんだで貴方も頬が緩んでいるのも見えてるよ。私のお尻も大好きだもんね。
「し、死ぬ……結局全部で乗ってきやがって……こ、恋人だからって許されるラインと許せないラインってのがあるんだぞ……!?」
「大丈夫だよその辺りもちゃんと見極めてやってるから」
「嘘つけ!!!」
結局、腕立て伏せだけではなくそれ以外のメニューでも絡んで来て本当に大変だった……ま、まあ美味しい思いが出来たのは確かだが……。
「それじゃあこの後は雄英高校で個性の訓練だね」
「そう言えばさ……レゼは普通に進級するんだよな?」
「うんするよ」
「じゃあさ、今日普通に俺と一緒なのはマズかったのでは?」
「……あっ」
素で忘れてたのかこの子……本当に大丈夫か、と言いたくなってきた。それだけ自分を優先してくれているのは嬉しい事ではあるが、それで将来を台無しにする事だけはしないで欲しい。
「まあその時はあれだよ、私も留年すればいいから」
「全然よくないから……進級できるならちゃんとしなさい」
「ブ~ブ~これからは私が先輩なのに上から意見は失礼だと思いま~す」
「立場が上な相手にも確りと意見を言えることは重要だと思いま~す」
「ぬぅ正論……」
兎も角、明日からは確りと授業を受ける事を厳命するのだが、その代わりに一緒に寝る事を条件にされてしまった。これについてはゴネたが……死ぬほど可愛い上目遣いをされてしまい、つい……許可を出してしまい、毎晩抱き枕にされる事が決定されるのであった。
「フゥッ……」
今日は個性訓練、雄英高校の施設である運動場γ、授業で使うクラスもいなかったので借りる事が出来たので、そこで個性を鍛え直していく。改めてこの個性は汎用性がやばい、イメージ次第で様々な形にも変じる事が可能、自らに纏って鎧を形作る事も可能。しかも触れてさえいれば金属の放出限界は実質的に無い、限界があるのはあくまで放出して身体から完全に切り離されるか、一度に大量に放出した場合になる事が分かった。
「そうなると基礎的には鎧で纏いながらもそっから武器なんかを作ってリーチを伸ばしていくのが基本でいいかもしれないな……」
「それは俺も賛成だね、君の場合は液体金属だから鎧による動きの鈍さはないだろうからそういう利点はどんどんと活かしていくことが肝要だと思うよ。後は遠距離攻撃にどういう風に対応するかだね……何か考えてる?」
「う~ん……放出金属で殴るにしても限界があるし、密度を上げた金属を打ち出すとかかな……今はその位しか……って何方なぁ!?って何か前にもこんな事あったな……」
なんかデジャブを感じつつも隣を見ると、そこには何処か軽薄そうな笑みを浮かべながらも自分を見つめて来る翼を持った男がいた。
「やぁっどうも、俺の事はレゼちゃんから聞いてるから知ってるよね?」
「えっと……顔と情報が一致しないです」
「あら?自分でも言うのもなんだけど、俺って割と有名……ってそうか、記憶がないんだっけ、こりゃまた失礼、それじゃあ自己紹介からだね。俺はホークス、レゼちゃんのインターン先のヒーローだよ、これでも№3ヒーローって言われてる結構有名なヒーローなんだよ」