№3ヒーローのホークス、と言われるよりもレゼのインターン先のヒーローと言われた方がしっくりと来る。そんな男は缶コーヒーを片手に自分に会いに来た。通称速過ぎる男、常識ではありえない速度で実績と実力を積み上げていった超実力若手ヒーローが自分に何の用だと思ってしまう。
「ああそんなに構えないで、単純にこっちで仕事あってついでにレゼちゃんの彼氏君の顔を見に来ただけだから」
「成程、レゼを寝取りに来た宣言ですか」
「ちょっ!?待ってそんなつもりなんだけど!!?」
「そうですか?あんたみたいな男はレゼを見逃さないと思いますけどね」
「参ったな……俺なんか君に嫌われるような事してる?」
軽いジョークのつもりだったが、如何やら相手からすると本気で辛い冗談だったらしい。
「アンタが公安の人間でレゼを取り込もうとしてるって話は聞いた」
「他言無用って言ったじゃんレゼちゃん……」
なんで言っちゃったのさぁ……と頭を抱えるホークス、そりゃ鋼流からしたら公安は何としても、レゼを手に入れたい、その手っ取り早い手段としてという想像をしても致し方ない、いや明らかにそう考えるの早過ぎるだろ!?とホークスは言葉に詰まる。
「いや、誤解を解かせてもらうけど俺そんなつもりないからね、というか君にあの子がどんだけゾッコンだったか……とあるヒーローが慰めようとしてだけどさ、軽く何だったら俺が支えるよ?的な事言ったんだよ、そしたら何起きたと思う?」
「……まさかですけど顔面爆破?」
「うん、顔面と男の大切な所を爆破で加速して蹴りかました」
ホークスもだが、思わず内股になってしまった。というか何やってんだよ……と言いたくもなった。仮にも慰めようとしてくれた相手に何やってんの!?と顔に出ていたのか、ホークスは遠い目をしながらもそのまま語った。
「何も知らない癖に私に踏み込もうとするな、私の支えは一人だけ、次同じ事したら生殖不能にしてやるって言いながら頭踏みつけたんだよ」
「……お股がヒュンとなるお話で」
「いや全くだよ……」
「というか、そんな事する子を公安って欲しがるんですかね……どう考えても首輪必須の問題児じゃないっすか」
とはならない、公安のターゲットとなるのは全員がヴィランという訳ではない。時には同じヒーロー社会を支える同胞を殺す事もあるので、それを踏まえると相手を誰であろうとも攻撃出来るというのは決してマイナスなどではない、との事。
「というか、それ問題にならなかったんですか……?」
「表向きはレゼちゃんへのセクハラと不用意な接触って事で厳重注意、あとその時は建物の中で目撃者も俺含めて全員ヒーローとヴィランだったから問題にはならなかったというかならずに済んだというか……まあ、そのヒーロー女性恐怖症になったって話だけど」
「Oh……」
何処の何方が存じ上げませんが、自分の彼女が本当に申し訳ありませんでした。
「あの子の個性の力は半端な物じゃないからね、俺にもついて来れる生徒なんて今の家から囲っておけば将来的には絶大な戦力になる。だから確保しておきたいってのが素直な所なんだ、後君から奪うとか無理ゲーだからね、君がまだ入院する前に彼氏君良い活躍してるねって言ったらさ、すっごい嬉しそうにニヤニヤしながらも私も彼氏ですもん~って物凄く甘ったるい声出してたよ」
「……いやなんかご苦労お掛けしてました……」
「あ~いやいや、個人的には楽しんでたよ。若い子の青春物語なんて見てても聞いても娯楽になるし、その気になれば彼女とか作れちゃうから、ほら、俺ってば中々にイケメンだし」
「ええ、是非とも顔面整形手術をしてあげたい位にイケてますね、砕いていいですか?」
「なんで君たちそんな物騒なん?」
イケメンがあからさまに自分っていい面してんだろドヤァって顔をされたら砕いて無駄な自信とその源を正してあげたくなるのが良心という奴だから気にしないで欲しい。
「ンで、本当の目的は?」
「いやだから」
「仕事のついでだからって態々来るほど暇な人にも思えないんですけど、俺自身に用があるんじゃないですか?」
「アハハ、バレた?俺個人としてはヒーローが暇になる世の中にしたいとは思ってるんだけどねぇ……だけど、その為に若人が犠牲になる世界なんてもっとごめんなんだ。警戒させて申し訳ない、本題に入ろうか」
やっぱり本当の所があったのか、と思っているとホークスは真面目な顔になって言葉を紡ぐ。
「公安が君にも目を付けている」
「……えっ俺?」
「分かり易くレゼちゃんの方が派手で攻撃力もあるけど、君の場合はその爆撃の中でも動けて近接戦が出来る、そして個性としても汎用性が極めて高い。バディとして組ませて仕事をさせるという意味では君たち以上の組み合わせは中々ない」
大丈夫かと言われたら何方かと言ったら大丈夫かな、というのはある。爆発の嵐を突破して彼女を組み伏せるという訓練も最近やっている。入院前はこれが出来ていたらしいし、恐らくまた出来るようになると思う。
「そして何より君が居れば彼女を制御できると思ってる」
「本気でそれ思ってます?俺でもあれを制御するのは無理ですよ」
「あっ振り回されてる感じ?」
「ベッドに入ってきたり、トレーニング中に身体の上に乗ってきたり色々です」
「ははっ青春してるねぇ~?」
「こんな青春いやや」
そう言いながらも鋼流の顔は嬉しそうにしている、なんだかんだで彼女のあれこれで美味しい想いなんかもしているからだろう。兎も角自分の目的はそれを公安云々について知らせる事だった。知らせておいた所でなんだという所もあるかもしれないが、情報は握らせておくに越した事はない。
「あっそうだ、ホークスさん寝取り疑惑の払拭の条件に頼み事していいです?」
「それまだ残ってたの!?まあいいか、不安を抱かせた俺の責任だね。何だい?俺の所でインターンしたいとか?」
「公安のお膝元でしょアンタの所、さっきのあれこれと矛盾しまくってる」
「はははっだね、んで何?」
「俺の家族について調べて貰ってもいいです?」
家族?とホークスは首を傾げた。記憶がないから家族の事も分からないのか、と少しだけ可哀そうに思っていると毛色が違う事情が見えて来る。
「どうにもレゼ曰く、俺の家族の事は気にするなの一点張りでして……」
「それで俺に調べて欲しいってこと?」
「俺がやろうとしても、レゼにバレそうですので」
「成程ね、片手間でやるから時間は貰うけどいい?」
「片手間で十分なんでしょ、速過ぎる男さん」
「ははっ言うね~、よしやっとくよ、んじゃその代金として―――」
ワザとらしく肩を回しながら、首の骨を鳴らし、前に立ちふさがるように構えを取って見せる鷹。文字通りに高みにいる男が此方を見下ろしながらも足を揃えて構えを取った。
「少し、君を鍛えてあげるよ。レゼちゃんの彼氏君の実力、是非知りたい」
「お手柔らかに頼みますよ、これでもまだ錆取りは終わってない」
「液体金属って錆びるんだっけ?」
「そう言う事じゃねぇっす」
「ハハッさあ来い!!」
軽口を叩きながらも鋼流は飛び出していく、それと同時に背中から金属を放出、それらを複数の尻尾のように扱いながらも手数を稼ぐようにしながら攻撃を始めた後輩にホークスは笑いながらも羽を飛ばして対処する。羽の一本一本が、液体金属を切断するようにして自分との接続を断った。即座に切られた断面から再び金属を伸ばして接続するが、再度切断される。
「さあどうするかな、心ちゃん」
「男にそう呼ばれると吐き気を催したくなりますね」
この日の訓練は今までの中で極めて実戦的且つ、為になったと思える内容となった、が―――
「ホークス、あの男来たんだ……変な事されなかった?精神的な苦痛を味わったりしなかった?」
「あ~……まあ、精神的な苦痛ではないけど不愉快にはなった、かな?」
「……次のインターンであいつを生殖不能にしておくね」
「やめたげてよぉ!?」