「位置について、レディ―――つっても女の子の事じゃねぇぞ」
「「だああああっ!!!?」」
「あっごめん、つい……」
サポートとして個性把握テストの手伝いをする事になった鋼流、と言っても個性把握テスト中はそれこそ大したことはしておらず、スタートの合図だったり、投げたボールを取ってきたりと補佐と言うよりもどっちかと言うと雑用のそれに近い扱いをされていた。
「なぁ先輩、アンタ結構面白いなぁ」
「おっそう言ってくれる?これでも留年生としてはぶられないように明るく振舞ってるのよ、仲良くしてくれるなら嬉しいよ」
「ケロケロ、仮にも先輩だから敬るべきだと思ったけど、そうじゃない方がよさそうね」
「仲良くしてくれた方が嬉しいなぁ~だからこうしてボケてる訳だからさ」
「成程、交友を円滑に進める為には適度な笑いも効果的という訳ですね!?」
「君はくそ真面目の見本市かな眼鏡君」
留年生になるのでクラスで弾かれないように明るく振舞って周囲に溶け込もうとしつつも時間は進んでいく。相澤も合理主義者だが、留年してるから必死なんだなと言う事は理解しているのか、多少は見逃してくれている。
「爆速っ!!!」
レベル0……なんて事を考えつつもスタートした緑谷とその幼馴染という爆豪がスタートした、爆豪の方は個性がレゼに似てるなぁと思いながらも見てみるが、やや異なる点もある。後で詳しい話をしてみたいな、と思っていたら両手から爆破を繰り返して加速していく彼に何とか追従するかのように駆け抜けていく緑谷が目の前を通り抜けた。
「うおおおおおおっ!!!」
「あ"あ"っ!!?」
これに爆豪は意識を削がれたが、ほんの僅かな時間だけで即座に体勢を直してスピードを一切落とさないままゴールし、4秒13と言う記録を打ち立てた。そして緑谷の記録は―――5秒65、悪くない数値が出た、のだが―――それと先程の緑谷のそれを見た爆豪は怒りを爆発させんばかりの形相でゆっくりと迫っていった。
「おい、どういう事だ、デクゥ……!!!」
「へ、ふえっ……ってか、かっちゃん!?」
鋼流はかなり息が乱れて疲労している緑谷に気づいた、50mで此処までの疲労を見せる、個性の制御に難儀しているという事なのだろうか、それゆえか迫って来る爆豪に戸惑い、足を縺れさせて尻もちをついてしまった。
「おいテメェどういう事だ」
爆破を繰り返し、その音と光で相手を威圧し屈服させんばかりの形相。余り言っていい事ではないがヴィランのようだ。このままではその個性を使って問題を起こしかねないので鋼流が動いた。
「説明、しやがれ、このくそデ――な、なんだこれ!!?」
繰り返し続けていた爆破が急にしなくなった、どういう事かと思って掌を見るとそこには光沢のある銀色の液体のようなものが覆っており、彼の個性、爆破を起こす部分を完全に塞がれている。仮にこのまま爆破をしたら、皮膚を大きく傷つける恐れがある。
「はいそこまで、なんかあるのは察するが此処まであくまで個性把握テストの場、そういう事は別の時にやんなさいな」
「テメ……くそ留年が……」
「はいはいはい留年生ですが何か、はいはい今の内にやめとけって。さっきので分かると思うけど相澤先生ってばこういう時容赦ない。入学初日だろうがそういうの一切関係なしに除籍処分にする奴なんだぞあの社会不適合者」
「お前を除籍にしてやろうか鋼流」
「ほれ見た事か」
そう、この個性把握テストは最下位の生徒を除籍処分にするという特大の爆弾が設置されている。しかも当てつけなのか危機感を持たせるためのか、例年は20人だけど今年はそこの留年生のせいで21人、一人減らすぐらいが良いだろうと言ってくれたのである。そのお陰で信憑性が上がってしまった。
「妙に手馴れてやがんな……爆破系個性と毎日仲良くしてんのかテメェ」
「毎日一緒に寝起きしてるようなもんだよ、ほれ、次のテストに向けて準備しときな」
「……ケッ」
興を削がれたと言わんばかりに鼻を鳴らしながらも去っていく爆豪を見送りながらも躓いてる緑谷へと手を伸ばして立ち上がらせる。
「す、すいません……」
「おう何時か返してくれな。にしても増強系の個性なのか?」
「あっは、はい!!で、でもなんか上限が凄いあるのか全然制御出来なくて……入試でも一発でダメになっちゃったのを何とか最近、1%レベルで使えるようになったんです」
「あれで1%……マジで?」
曰く、入試ではお邪魔虫として用意される仮想ヴィランロボの巨大機を一撃で破壊したという。だがその代償に腕はバキバキになり、跳躍する為に地面を蹴った足も同様……しかしそこで漸く個性の扱い方を理解し、現在はその制御と身体が耐えられるような身体作りに奮闘しているとの事。
「それで僕、鋼流さんが勝負だって言って貰えて、それで凄い嬉しくて、やる気が出て、今まで以上にトレーニングに身が入って、それで三日ぐらい前に漸くこの位までに使えるようになったって事なんです」
「ほえ~凄い個性もあったもんだね~常に100%出せたらもう無敵だね」
と次のテストに向けての準備やらをしつつも雑談をした。先程の50m走もスタートダッシュと途中途中で1%で個性を使って地面を蹴った事で出た記録なのだろう。だとしたら、常に100%だったらマジでオールマイトみたいな事が出来るのでは……
「いや流石に常には―――常、に……?」
「あっなんかいい所な悪いけど次のテスト行くから急いでね?」
「あっす、すいません!?」
何やら考え付いたのか、緑谷はテスト中にも何かを試すような仕草をし出した。その影響か、状態起こしや長座体前屈ではいい記憶が出たが、逆に握力や反復横跳びではそれが見られなかった。後で何を試しているのかを尋ねてみるとしよう。そんなこんなで個性把握テストが終了するし、結果を提示したのだが……
「よ、よかった……ギリギリ、下から三番目……」
「あ、危なかったぁぁ~……」
「終わった、オイラのバラ色ヒーローライフ……ははっ」
緑谷は18位でなんとか最下位を逃れ、次の透明な女の子の葉隠も透明な以外は個性として何の能力も無いのにこの順位は中々な物。そして……最下位、峰田という生徒が最下位となって除籍処分が決定したわけだが……
「ああ、因みに除籍は嘘な。君たちの最大限を引き出す合理的虚偽」
『……はぁっ~!?』
あれだけ死ぬ気でやらせといて合理的な虚偽ィ~!!!?と全員が言わんばかりの顔をしている。特に落ちる事を避けようと必死になった挙句、最下位ギリギリと最下位になった三人の顔面の崩れっぷりが凄い、いや一人は透明なので全然分からないが。
「あんなの嘘に決まってるじゃない、少し考えれば分かりますわ」
「(だったらどんだけよかったことか……)」
一先ずこの場で言うと相澤に怒られる事になるのでお口チャックをしていく。
「さて、この後は教室に戻ってカリキュラムとか書類に目を通す時間なんだが……グラウンドはまだ使える、なので―――鋼流」
「はい」
「こいつ等の相手してみろ」
唐突は模擬戦開始の言葉にいきなりテストの次は思いっきり個性を使った戦闘が出来ると全員のボルテージが上がっていく中で相澤が手を叩いてその場を支配する。
「改めて言うまでも無いと思うが、鋼流 心、こいつは白銀ヒーロー・ハルドメルグ。既にプロヒーローとしても通用する器として1年の段階でプロの現場にも出入りしている実力派だ。こいつが留年したのは落ちこぼれではなく、ヒーロー活動中に一般人を庇っての負傷による長期入院による単位不足だ。お前らが目指しているのはそういう世界だ、そして―――留年生として甘く見られないように鋼流、誰か叩き潰せ」
「そう言う事っすか……まあそれじゃあ、俺とやりたい人手ぇ挙げて!!」
『はいはいはいはい!!!!』
と一斉に手が上がった、戦ってみたいというよりももっと存分に個性を使いたいという割合が強そうに見えるが、自分との模擬戦を熱望する生徒は多かった。その中でも
「俺だ!!俺にやらせろぉ!!!!」
と爆豪が熱望していた、先程の事で嫌われてしまっただろうか……フラストレーション解消代わりじゃないよねこの挙手……と思いながらも鋼流が選択したのは―――
「んじゃ一番元気が良い爆豪君、今年の入学主席らしいじゃないか。同級生になる子のレベルを測るにはまずは一番を知りたいからね」
「上等だ、ぶっ潰してやる……!!!」
「おっ、良い所に来たってオールマイト先生じゃないですか」
「おおっレゼ少女、丁度いいから一緒に見ないかい?」
「ムフフッ先生もいい趣味してますな~?」
「いやいやレゼ少女こそ~……って君今日お休みじゃなかったっけ」
「彼氏の出迎えです」
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