個性「炎」   作:ドゥルガー

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そして投稿が遅れてしまい申し訳ありません。
風邪ひいてました。

第三十話もよろしくお願いします。


第三十話

 5時30分、エンデヴァー事務所、宿泊室。

昨日までの疲れは残っておらず、むしろ脳が冴え渡っている。昨日は夢すら見ずに9時間眠れたからな、あんな長時間の熟睡は久し振りだ。

ベッドから降りて軽いストレッチをし、水でシャワーを浴びる。コスチュームに着替えて社員食堂に降り、そこで朝食。今日はかなり動くはずなので軽めに鶏天うどん。

そして、

 

「おはようございます、エンデヴァー。」

「おはよう、早かったな。」

「エンデヴァーこそ、いつから待ってたんですか…」

トレーニングルームでエンデヴァーと会う。何で4時起きの自分より準備万端で待ってるんだこの人。

「会社の者から受け取っていたからだ、

 

貴様のコスチュームをな。ほら、これだ。」

…そう、新しいコスチューム。本当に1日で着れるとは思っていなかったからびっくりした。

「どうも。では着替えてきます。」

スーツケースを受け取って隣の更衣室に急ぐ。正直顔のニヤけとワクワクが止まらない。いや見た目は殆ど変わっていないとは聞いているが、それでもワクワクするものはワクワクするのだ。

 

 

 

「ほぉ?中々様になっているな。」

新しいコスチューム。変わった点は幾つかある。

まず1つ目、前腕を覆う指貫手袋。手や指の甲、腕には特殊な鋼板が仕込まれていて、防御に役立つ。そして何より、炎を出すのを邪魔しない。何故か手袋の上から炎を出せるのだ。仕組みは良く分からないが、聞いた所エンデヴァーですら概要しか知る事の出来ない社外秘事項らしい。何でも人の個性が絡んでいるのだとか。凄いな。

ちなみに脚のコンバットブーツも同じ感じになっている。

2つ目、服に冷却機構が付いた。腰の辺りにファンが2つ付いたのだ。これは単純に有難い。

3つ目、かなり丈夫になった。不燃防刃防弾その他諸々。何でこれで厚さが殆ど変わっていないんだ?

 

…

 

「これ本当に貰って良かったんですか?」

「一昨日も言っただろう、構わん。先行投資だ。」

「…どうも…」

どうやらエンデヴァーは自分の事を随分と高く買っているらしい。

「それより、もうそろそろアイツも来るだろう。準備をしておけ。」

「はい!」

 

 

 

 

 

「イグニス、ショート、準備は良いか?」

「はい!」

「あぁ…。」

朝6時50分、トレーニングルーム。最終確認。

「今日はパトロールだ。午前中は市内を。そして午後は保須に行く。理由は分かるな?」

「…最近出没している凶悪ヴィラン、ヒーロー殺しですか。」

パトロール。ヒーローの基本的業務。姿を見せる事で犯罪を抑止し、市民に安心感を与える。だが…

「そう、ヒーロー殺し。インゲニウムを始め数々のヒーローが奴の手によって傷付けられている。本来なら免許も持たん学生を連れて行く案件では無いが…貴様等なら何とかなるだろう。」

「良いんですか?」

「あぁ。2人共実力はある。卒業すればすぐトップクラスのヒーローになれるだろう。ならば多少の危険を冒してでも見ておくべきだろう。

 

本物の悪というものを。」

…ヒーロー殺し。これまでに17人を殺害、23人を再起不能に追い込んだ史上最悪と言って良いヴィラン。そんな場所に学生を連れて行くなんて駄目だろとは思うが…

「だがいくら実力があるとは言え貴様等は学生だ。そこで最低限のルールを設ける。1つ、ヒーロー活動中に俺の監視下から離れるな。貴様等の実力なら万が一は無いとは思うが、あるから万が一だ。絶対に守れ。」

まぁ万が一があれば責任問題云々があるからこれは当然か。

「2つ、ヒーロー活動中は俺の指示に遵守しろ。戦闘、避難、救出その他諸々。活動中は必ず関わる事になる。だが貴様等には経験も知識も足りん。下手に手を出して現場を混乱させるな。」

これも当然。素人は基本的に手を出してはならない。

「最後、先程の2つを遵守してなお己の身が危ういと判断した場合のみ、特例として俺から離れて撤退する事を許可する。それに伴う個性使用もだ。俺がいてそんな事が起こる事など無いだろうが、何事にも例外はある。その時は迷わず逃げろ。

…以上3つだ、質問はあるか?」

…轟君は無さそうだな。なら自分が。

「なんだイグニス。」

「最後の撤退に判断基準とかはありますか?」

「無い、自分で判断しろ。俺は出来ない事をやれとは言わない。」

「…成程、ありがとうございました。」

全く以て期待されているな。

「ショートも理解したか?」

「…あぁ。」

「良いだろう、では最終確認だ。12時まで市内でパトロール、昼食を食べてそのまま新幹線で保須まで行く。分かったな?」

「はい!」

「あぁ。」

 

 

 

 

 

 街を歩くと流石No.2、行く人来る人全員が振り向く。ただ声をかけに来る人は少ない。精々が遠目で騒ぐ位だ。まぁ確かにエンデヴァーはファンサービスが少ない。サインなんて噂でしか聞いたことがない。

 

が、

 

「…体育祭からのファンです!ヒーロー名でサインお願いします!」

「…あぁ、あの時の駅での。こんな風で良いですか?」

「ーーっっっ!覚えて下さってありがとうございます!パトロール頑張って下さい!」

 

「おっ!体育祭準優勝の!これ食ってパトロール頑張れよ!」

「…どうも…?」

 

…

 

「写真一緒に撮って貰って良いですか!?」

「えっズル!私も撮って欲しい!」

「じゃあ3人で…2人が良い?じゃあ順番で…」

 

「キャー焦凍君!手ェ振って下さーい!!」

「…?」

「アッ尊」

「…!不知火、人が倒れ…!」

「大丈夫だ轟君、すぐに立ち直る。」

 

……

 

 

 

「…おじいさんから何を貰ったんだい?」

「…カルパスとさけるチーズ…」

自分達は別だ。一応1週間程度は経ったのに、まだ自分達の事を覚えている人が何人も。なんだ、体育祭で優勝したら絶対こうなるものなのか?ファンサービスは疲れるからこうも続かれるとキツいんだが…

「随分と人気だな。」

「お陰様で…」

「今のヒーローは規模の違いこそあれどこんなものだ。だがファンサービスに現を抜かして活動を疎かにするな。分かったか。」

「…はい。」

確かにヒーローはアイドルではない。そこは分けなければ

 

「…ショート、イグニス。急行するぞ。

 

銀行強盗だ。」

 

 

 

 

 

「犯行グループは軽バンで逃走中!今は逃走時に通るであろう場所に向かっている!今回は2人で対応してみろ!」

「本気で言ってます?」

「2度も言わせるな。俺は出来ない事をやれとは言わん。失敗しても俺がカバーする、行け。」

「だとさ轟君!車を止めてくれ!逃げ出した人は自分が止める!」

「任せろ。」

目の前に超スピードで走る車が突っ込んでくる。どうやって予想したんだこれ。

 

「退けそこのガキ!轢くぞ!オレ達『ファイブスターズ』を舐めんなよ!」

「名前ダッサ。てか子供1人轢く度胸すら無いのか、強盗なんざする癖に。顔出して車運転したら怪我しますよー?」

わざわざこんな距離空けて停まって叫ぶあたり律儀だなこのヴィラン。

「…テメェ…ブチ殺!…な、なんだ!車が急に…」

やっぱりこういう手合は少し煽れば注意を向ける。もう車の後方は完全に凍っているな。

「アアアニキ!車の後ろが凍ってる!不味いよ!」

「クソ、前から逃げるぞ!」

叫び声がここまで聞こえる。随分と大きい声な事。

運転席側のドアから2人、助手席側のドアから3人出てくるみたいだ。勿論そんな出方は想定されていないので流れが悪い。そろそろ行くか。

まずは助手席側。最初に出て来た岩みたいな肌をした巨漢の顎を蹴飛ばす。巨漢が後ろ2人を巻き込んで車に戻される。後ろ2人は巨漢に押し潰されてるな。巨漢は気絶してるっぽいからそっちからはもう出られないだろうが、

「ショート!この3人固めといて欲しい!」

氷で固めればすぐには

次いで後の2人、分かれたか。走り始めた猿みたいな男の脚を払う。そのまま後頭部を掴んで叩き付ける。加減はした、精々鼻の骨が折れる位だろう。気絶確認。

そしてラスト、リーダー格らしき男。鞄を持ってるな。

「クソ!せめてオレだけでも

 

「逃げれると思ったのか?」

右肩に一発回し蹴り。持っていた鞄が落ちる。そのまま首に腕を回してスリーパーホールド。気絶させる。

…1分も経っていないな。時間だけなら及第点だろう。

 

 

 

 

 

「アンタは…体育祭で優勝してた子か!来た時にはもう終わってたからエンデヴァーがやったのかと思ったが、まさかアンタが1人でやったのか!」

「いや、あの彼…ショートも手伝ってくれましたよ。」

「準優勝の子か!どっちにしろ凄いじゃないか、学生の身で!後の事はこっちでやっとくから、アンタ達はパトロールに行きな!頑張れよ!

けどこの氷は溶かしてくれ!」

「…ショート、はファンに捕まってるな。分かりました、すぐ溶かします。」

少し遅れて来た警察官に伸した5人を任せる。内3人は氷で一塊になっているが…

…人の応援は暖かいな。

 

「終わったか?」

「エンデヴァー、なんとか終わりましたよ。」

「ではパトロールを再開する。批評は歩きながらだ。」

「…分かりました。轟…あぁいや、ショート!パトロール再開だ!来れそうかな!」

「…後少し待ってくれ。サインを書く。」

 

 

 

 

 

「今回の出来は7点と言った所か。」

「…何点満点中ですか?」

「流石に10点だ。何で引かれたと思う?」

「…俺が自分から動かなかった。今回は不知火が作戦立てたからな。」

「それもある。可能なら話さずに動けるのが望ましい。他には?」

「ヴィランの処理の仕方が不味かった、特に最後のスリーパーホールドは反撃の危険があった、とかですか?」

「それも正解だ。相手が何の個性を持っているか分からない。相手が動ける時間を限界まで短くしろ。他にも話す事はあるが…、初めてにしては中々に動けていた。ここから更に伸びるだろう。精進しろ。」

「…ありがとうございます!」

…まぁ確かに粗は多かったか。後から考えるとまぁ改善点が見つかる。と言うより7点も貰えるとは思っていなかったから驚いた。

…これから午後もあるのか。正直さっきの銀行強盗で割と疲れたんだかな。

 

 

 

 




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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