最短距離で轟君に突進する。狙うは腹部。次点で足か顎のどちらか。勢いそのまま右脚を振る。
「…っ!」
身体を捻って氷塊を放ってくる。噴射火力を高めて無理矢理離脱。
やり辛いが、今ので勝機が見えた。
恐らく、轟君は左…炎を使えない。
個性把握テストの時氷を溶かす以外に使用していないのを考えると、恐らく火力が高すぎるのか、何らかの原因で制御出来ないかの2択。
どちらにしろ、炎を使ってこないのであればまだどうにか…どうにか…
…千日手だ。自分は轟君の氷をどうにかは出来るが決定打が無い。轟君は自分を引き剥がすことは出来るが同じく決定打が無い。あんな啖呵を切っといてなんだが、互いに睨み合う時間が続く。個性の相性上仕方無いが…
…賭けに出るしかない。まぁ耳郎さんが何時まで障子君と睨み合えるか分からない以上、遅かれ早かれと言った所だったが…
全力で炎を灯し続ける。目の前の氷が溶けると同時に全力で突っ込む。全力の火力なら多少の氷結は無視出来る。こんな火力と速度は人には向けたくないが…轟君なら軽減位は出来るだろう。
氷が溶ける。溶けて、溶けて、溶けて…今!
黄色い炎を両手足に纏って進む。
「轟君…耐えてほしい…!」
「お前…!」
轟君の焦った顔が見える。そのまま右脚を振り抜いて轟君をくの字に吹き飛ばす。軽減は…出来てそう。
だがダメージは大きそうだ、立ち上がらないし苦し紛れの氷結もどこか弱々しい。
「お前…なんだその速度…」
「轟君のような実力者に一杯食わせる為の奥の手だ。こうしないと勝てるか怪しかったから、勘弁してほしい。」
というより反応されて軽減されてる時点で負けに等しい。多分次からは通用しないだろう。
「じゃあ確保させてもら『タイムアップ!15分経過だ!よってこの試合、ヴィランチームWIIIIIIIN!!』…」
…締まらないし呆気ないものだ。
ふらつく轟君に肩を貸し講評の時間。
「では、講評だ!まず今回のベストは不知火少年だ!
何故だか分かる人!」
おぉ、MVP。正直取れると思っていなかった。
「はい、オールマイト先生!」
「うむ、では飯田少年!」
「不知火君がベストな理由、それは轟君をその場に拘束し続けた判断力であると思います。勝負を急がず睨み合いを続け、最後まで膠着状態を維持して障子君の加勢に行かせないよう動く。素晴らしい判断力だと思います。」
…そう、正直に言うと、あの時自分を無視して障子君に加勢されるのが1番最悪のパターンだった。そうなれば後は2対1を繰り返すだけで負けていた。と言うより…
「耳郎さんはどうやって耐久してたんだ…?」
「あぁそれ?こう…核を背にして睨み合ってた。ハッタリで核を爆破させるって言ったら向こうが警戒してくれて。」
あぁ、成程…咄嗟の機転が凄いな。ヒーロー側の敗北条件が核爆破なことを考えると、試験だとしても最適解に近い。試験であることに甘えた動きをしたら評価が下がるから。
「そう、耳郎少女の機転も素晴らしかった。ヒーロー側は核を使われると敗北だからね。だが障子少年も轟少年も初めてにしては動けていたぞ!そして今後の課題もそれぞれ見つかっただろう!次はその課題を克服しよう!
以上だ!轟少年は出来れば保健室に行くように!」
…疲れたな。だがそれを言うなら轟君の方が疲れているだろう。
「大丈夫かい轟君?保健室に行くなら肩を貸すが…」
「…大丈夫だ。」
…まぁ自分の脇腹を全力で蹴った人に気を遣われても、とは思うか。
「…まぁ駄目そうならすぐ言ってくれ。…あぁ後、反省点も分かったし、良い勝負だった。ありがとう。」
「…お、おう?」
…握手を求めただけなんだが…何か変な事してしまっただろうか?
「おお、不知火来た!お疲れ!お前凄かったな!!」
着替え終わって教室に戻ると、既に居た身体が硬くなる…切島君がいきなり詰め寄って来る。次いで芦戸さんに砂糖君も。
「最後の凄く速かったね!」
「出番の前にあんなの見せられたから俺らも力入っちまったぜ!」
「あ、ありがとう…」
やっぱりこの高校に来るだけあって、皆グイグイ来る。正直自分は静かに居るタイプだからどう対応すれば良いか分からない。
「俺ァ切島鋭児郎!今皆で訓練の反省会してたんだ!」
「おぉ、じゃあ自分も入れてもらって良いかな?」
「当たり前だろ!」
「じゃあまずは…」
人生初の反省会は中々に賑わった。
しかし、爆豪君を追いかけて帰った緑谷君は大丈夫だろうか?
書いてると無知とにわかを晒しそうでどんどん不安になってきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。